S :Society
持続的な企業価値向上を実現する人材力

人権に関するマネジメント

考え方

人権は、全ての人に与えられた基本的権利であり、原材料調達の段階まで遡って考えるならば、横浜ゴムの事業において関わる人は非常に多く、尊重すべき人権も非常に多様です。また、当社の事業活動がグローバルに広がってゆく中で、多様な人とのかかわりが増えるに従い、人権侵害に直接的、間接的に影響を及ぼす可能性が増しています。
そのため、当社の影響力の範囲を考慮しながら人権を尊重する責任を果たすことが重要と考え、「横浜ゴムグループ行動指針」の中で、社内外を問わず人権を尊重する旨を掲げ、従業員がどのような行動を取るべきかを定めています。
さらに、国際連合の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、「横浜ゴムグループ人権方針」を策定し、当社の事業活動に関わる全ての人々の人権の尊重を目指して取り組みを進めています。
横浜ゴムグループは、広く社会から信頼される企業として持続可能な社会の実現に貢献するため、事業活動の基本としてグループ全体で人権尊重の取り組みを実践することが重要であると認識しています。

  • 「ビジネスと人権に関する指導原則」は、全ての国家と全ての企業に適用される人権尊重の枠組みとして2011年に国際連合人権理事会において承認されました。同指導原則では、「人権を保護する国家の義務」と並び、「人権を尊重する企業の責任」が重要な柱と位置付けられています。

方針

横浜ゴムグループ行動指針(抜粋)

社内外を問わず人権を尊重します。

横浜ゴムグループ行動指針(2014年12月制定)

<横浜ゴムグループの基本姿勢>

人権を尊重し、差別・ハラスメントを行わず、加担しません。

<基本姿勢を実現するために - 私たちの行動>

  1. 働く人たちの多様性を認識し、人種、民族、出身国籍、宗教、性別などを理由とした差別的行動をとらず、またそのようなものを見たら毅然として注意し、訂正を促します。
  2. あらゆる形態のハラスメントを行いません。
  3. 職場内の暴力を許しません。

横浜ゴムグループ人権方針

横浜ゴムグループ人権方針(2022年4月制定)
2022年4月、横浜ゴムグループは、「横浜ゴムグループ人権方針」を策定しました。
横浜ゴムグループ人権方針は、「企業理念」、「横浜ゴムグループ行動指針」に基づいた人権に関する最上位の方針として、横浜ゴムグループ全ての事業活動における基盤となるものです。
私たちの人権方針は、横浜ゴムグループ各社の全ての役員・社員(取締役、監査役、執行役員その他経営に係る業務執行に携わる者のほか、横浜ゴムグループ各社との雇用契約がある者や出向受入者、派遣社員)に適用します。私たちの事業活動において人権に対するコミットメントを実現できるようにするために、仕入先や販売先を含む全てのビジネスパートナーの皆様にも、本方針を理解し、支持していただくことを期待しています。

CSR調達ガイドライン

CSR調達ガイドライン
横浜ゴムグループは、バリューチェーンに置けるCSR活動推進のため、「CSR調達ガイドライン」を策定し、社内や取引先の皆さまへの説明会などを通じてCSRに対する方針・理念の共有を目指しています。
「CSR調達ガイドライン」は、社会情勢の変化、当社の活動の広がりを反映して改訂を重ねてきましたが、横浜ゴムグループ人権方針の策定等に伴い、2022年10月に改訂を行い、サプライチェーンにおける人権擁護、差別やハラスメントの禁止などを取引先の皆さまにより強くお願いする人権方針の内容を反映しました。

持続可能な天然ゴムの調達方針

持続可能な天然ゴムの調達方針
横浜ゴムは2021年9月、「持続可能な天然ゴムの調達方針」を改訂しました。本方針は2018年10月に策定し、今回の改定では2020年9月に開催された持続可能な天然ゴムのためのグローバルプラットフォーム(GPSNR)の第2回総会で承認されたポリシーフレームワークを当社の調達方針に組み込み、より高いレベルで天然ゴムの持続可能性の実現を目指す意志を明確にしています。
横浜ゴムは、「持続可能な天然ゴムの調達方針」の中で、「人権の尊重」、「公平で平等な処遇」、「ハラスメント」、「児童労働」、「強制労働」、「適切な労働条件」などの方針を定め、人権尊重の取り組みを実践しています。

推進体制・ガバナンス

横浜ゴムグループは、「企業理念」、「横浜ゴムグループ行動指針」、「横浜ゴムグループ人権方針」に基づき、事業活動の基本としてグループ全体で人権尊重の取り組みを実践するため、各部門の責任者がビジネスと人権に関するリスクを洗い出し、CSR本部経営管理本部およびが各部門と連携して取り組み方針を取りまとめています。
人権課題に関する取り組みは、年4回開催される「コンプライアンス委員会」(委員長:経営管理本部担当取締役)および年2回開催される「CSR会議」(議長:代表取締役会長兼CEO)において報告、議論しており、取締役会、監査等委員にも定期的に報告しています。特に経営に影響を及ぼすような重要なリスクやその対応方針については、経営管理本部長を議長とする「リスクマネジメント委員会」において議論し、経営会議および取締役会にて審議・決定し、対応方針に基づき、関連部門がと協働して対策を実施する体制となっています。
「横浜ゴムグループ人権方針」は海外も含めたグループ会社に研修などを通して周知され、各社の取締役・従業員の人権に関する最上位の方針として、横浜ゴムグループ全ての事業活動における基盤となっています。
コーポレートガバナンス体制図

責任者からのメッセージ

横浜ゴムグループは、サステナビリティ経営において「未来への思いやり」をスローガンに掲げており、広く社会から信頼される企業として持続可能な社会の実現に貢献するため、「企業理念」、「横浜ゴムグループ行動指針」、「横浜ゴムグループ人権方針」に基づき、事業活動の基本としてグループ全体で人権尊重の取り組みを実践しています。
その取り組みの一つとして、持続可能な発展のための世界経済人会議(WBCSD)のタイヤ産業プロジェクト(TIP)が中心となって立ち上げた持続可能な天然ゴムのためのプラットフォーム(GPSNR)に参画し、人権・労働問題など、さまざまな危険を内包している天然ゴムの調達について、トレーサビリティの確立や地域や農園が抱えている問題に寄り添い、持続可能な調達となることを目指しています。
2023年3月までに当社天然ゴム加工工場があるタイのスラタニ地区において、これまでに506件の天然ゴム農家の調査を独自に行ってきました。
今後は、第三者機関の協力を得て、人権課題の再確認と対応を進めていく予定です。
天然ゴム以外の調達品についても、CSR調達ガイドラインに基づき、サプライチェーンにおける人権擁護、差別やハラスメントの禁止などを取引先の皆さまにより強くお願いする予定です。
横浜ゴムグループは、関係するサプライチェーン全体でこれらの考え方を共有し、事業活動に関わる全ての人々の人権を尊重し、改善を続けてまいります。

CSR本部 本部長 山本 忠治(やまもと ただはる)

2026年度の目指す姿

  • 国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた人権尊重のマネジメント・サイクルを通じて、横浜ゴムグループ全ての事業活動に関連するステークホルダーの人権への負の影響を防止・軽減する。
  • 人権デューデリジェンスの取り組みや苦情処理メカニズムによる救済措置については、定期的にその実効性を評価し、社内外に報告・開示を行う。

人権尊重のマネジメント・サイクル

人権尊重の取り組みロードマップ

優先的に取り組む重要な施策

人権デューデリジェンス

横浜ゴムグループでは、2022年4月に策定した「横浜ゴムグループ人権方針」に基づき、人権尊重の責務が果たされ、その業務執行が適正に行われているかを確認するため、人権デューデリジェンス(人権DD)の体制を整備・強化し、定期的に人権デューデリジェンスを実施していきます。

2023年度の取り組み

2023年度は、サプライチェーンにおける人権の観点で潜在的なリスクとなりうる重要な人権テーマを特定するため、関連部署を集めた「人権デューデリジェンス・ワークショップ」を開催し、バリューチェーンにおける重要な人権テーマを抽出しました。その後、抽出した人権テーマについてのインパクト・アセスメントを実施しました。
  • 特定の人権課題およびライツホルダー(企業活動が負の影響を与える可能性のある対象)を対象として、現場でのライツホルダーへのインタビュー等を通じ、誰の、どのような人権に実際に影響を与えているか/いないかを確認する調査。

1. 人権デューデリジェンス・ワークショップの開催

2023年5月、横浜ゴムグループがグローバルに展開する事業のサプライチェーンにおける人権の観点で、潜在的なリスクとなりうる事項についてグループ横断で議論する「人権デューデリジェンス・ワークショップ」を開催しました。講師・アドバイザーとして第三者機関の経済人コー円卓会議(CRT)日本委員会の石田寛事務局長を招き、当社グループの国内外の拠点から部課長クラスを中心に32名(会議室参加20名、オンライン参加12名)が参加して議論を行い、CRT日本委員会からのアドバイスも参考に、横浜ゴムグループの「重要な人権テーマ」を特定しました。
<重要な人権テーマ>
  1. 国内における外国人労働者の労働環境
  2. ゴムの原料調達先(タイ・インドネシア等)における労働者の労働環境および近隣住民の環境への影響
  3. 委託会社(製造・物流・販売・廃棄)における労働者の職場環境

CRT日本委員会 石田氏による講義

6つのチームに分かれてのグループワーク

2. インパクト・アセスメントの実施

2023年度の人権デューデリジェンス・ワークショップにおいて特定された3つの重要な人権テーマについては、影響を受けている可能性のあるステークホルダーに対して、実際の人権への負の影響の有無や影響の程度についてインパクト・アセスメントにより調査・評価し、必要な救済・予防措置を行う方針です。
2023年度は、テーマ1「国内における外国人労働者の労働環境」についてインパクト・アセスメントを実施しました。
<国内製造拠点で働く外国人労働者へのアンケート>
2023年9月から10月にかけて、国内の7つの製造拠点(平塚製造所、三重工場、三島工場、尾道工場、新城工場、茨城工場、長野工場)で業務に従事する外国人労働者(派遣労働者を含む)を対象に、その雇用および労働環境に関するアンケートを実施しました。
アンケートは、QRコードを各外国人労働者のスマートフォンで読み取って設問(日本語、英語、ポルトガル語、タガログ語、ミャンマー語、中国語の6言語に対応)に無記名で回答する形式で実施し、対象者536名のうち484名から回答を得ました(回答率90.3%)。
アンケートの内容を分析し、全体としての傾向および各製造拠点における外国人労働者の人権尊重レベルを測るとともに、外国人労働者に直接インタビューを実施する拠点を選定しました。
<外国人労働者へのインタビュー>
2023年12月、上記アンケートの分析結果をふまえて、2拠点において外国人労働者への直接インタビューを実施しました。インタビューには横浜ゴムの管理者や担当者は立ち会わず、CRT日本委員会のみによる1グループ4~5名の外国人労働者へのグループインタビューの形で行いました。通訳については、それぞれの拠点のインタビュー対象の外国人労働者の中の1名が行いました。

工場における外国人労働者インタビューの様子

工場における外国人労働者インタビューの様子

インタビューの結果、人権に負の影響を与える重大な問題は確認されませんでしたが、CRT日本委員会からは、当社拠点で働く外国人の派遣労働者の労働環境について、以下のような提言を受けました。
  1. 派遣会社に対して、契約時における労働者の権利について説明の徹底を促進する。
  2. 派遣会社に対して、契約通りの給与の支給の徹底を促進する。
  3. 実質的な救済手段の整備を促進する。
  4. 生活賃金が保障されているか定期的に確認する。
  5. 相談内容およびその対応を記録する。
  6. 労働者へのフィードバック(取り組み内容に関する報告および開示)を行う。
今後は、CRT日本委員会からの提言もふまえ、派遣会社への働きかけや外国人労働者とのエンゲージメントを強化し、その取り組みの状況を定期的にモニタリングしていきます。

3. グリーバンスリスト(苦情処理制度を通じて受け付けた通報)

2022~2023年度に苦情処理制度を通じて受け付けた人権に関する通報とその対応状況は以下の通りです。

画面を左右に動かすと、表組みの情報がご覧になれます

通報時期 通報者 国内/海外 通報内容 対応 進行状況
2022年12月 下請業者 国内 他社と比較して差別的な待遇 対話により、差別的行為や下請法に抵触する行為がなかったとの理解が得られ解決 クローズ(対応終了)
2023年7月 グループ企業従業員(匿名) 国内 パワーハラスメント 匿名かつ通報受付後の連絡が取れないため、ハラスメント防止教育等の是正・予防措置を実施 クローズ(対応終了)
2023年11月 グループ企業元従業員(匿名) 海外 正当な理由のない解雇、在職中のハラスメント 事実関係の調査を実施 調査継続
2023年12月 消費者(匿名) 国内 グループ会社におけるハラスメント 調査の結果、通報内容の事実関係が確認できたため、社内で処分等の対応を行い、通報者に報告を実施 クローズ(対応終了)

2024年度の取り組み方針

2024年度は、2023年度の人権デューデリジェンス・ワークショップにおいて特定された3つの重要な人権テーマのうち、テーマ2「ゴムの原料調達先(タイ・インドネシア等)における労働者の労働環境および近隣住民の環境への影響」についてのインパクト・アセスメントを実施することを計画しています。今後も、国連「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)」に沿って、横浜ゴムグループの事業拠点およびサプライチェーンにおいて定期的に人権デューデリジェンスなどの取り組みを拡充・加速していきます。

人権に関する苦情処理制度

1. 国内の横浜ゴムグループで働く人を対象とした苦情処理制度

横浜ゴムグループの国内外の事業所や子会社でさまざまな人が働き、その働き方も多様化する中、人権に関する苦情内容も多岐にわたり、人権問題を直接相談できる窓口の存在は、重要であると認識しています。
国内においては、コンプライアンス推進室が「コンプライアンス・ホットライン」と「何でも相談室」の2つの窓口を設置し、苦情や相談を電話や電子メールにて直接受け付けています。これらの窓口においては、通報者・相談者のプライバシーは保護され、通報・相談のあった事実およびその内容についての秘密は保持されます。また、虚偽または不正な目的の場合を除き、通報・相談を行ったことを理由として通報者・相談者が不利益な取り扱いを受けることがないよう配慮されています。
さらに、全ての部門には「コンプライアンス推進室兼務者」、関係子会社には「コンプライアンス推進責任者」を配置し、構成員の苦情や相談をコンプライアンス推進室につなぐネットワークを確立しています。
人権に関する苦情については、コンプライアンス推進室と人事部門、CSR部門等の社内関係部門が共同で解決に当たります。
<苦情処理制度利用の対象範囲>
対象者は国内の横浜ゴムグループで働く役員・従業員・パート社員・アルバイト・派遣社員・請負会社従業員等とし、退職後も一年以内であれば利用できます。
<苦情処理制度利用の周知方法>
横浜ゴムグループ内で利用できるイントラネットに掲載し、記名通報・匿名通報のいずれでも相談、通報ができる旨を明示しています。
また、通報プロセス等を明記した「コンプライアンスカード」を対象者全員に配布し、窓口の存在を周知しています。
<苦情が申し立てられた場合の解決プロセス>
  1. 相談者からの相談内容をコンプライアンス推進室が事実確認をします。
  2. 社内の関係部門と協議し必要な対策を講じます。
  3. 通報者が名前を明らかにしている場合は結果を直接伝えます。匿名の場合には、必要に応じて社内に注意喚起します。
<苦情処理制度の有効性についてのモニタリング>
年4回開催される経営管理本部担当取締役を委員長とした「コンプライアンス委員会」で報告し、対応の妥当性を評価し、対策の実施、フォローを行っています。

2. 国内外の全てのステークホルダーの皆さまを対象とした苦情処理制度

横浜ゴムグループは、「一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)」に加入しており、同機構の苦情通報窓口を通じて横浜ゴムグループの国内外の全てのステークホルダーの皆さまの苦情を受け付け、適切な対応を行う体制を整備しています。JaCERは、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠して非司法的な苦情処理プラットフォームを提供し、専門的な立場から参加企業の苦情処理の支援を行い、対話・救済を推進する公正で独立した機関です。苦情処理プラットフォームを通じた通報においては、通報者のプライバシーは保護され、通報のあった事実およびその内容についての秘密は保持されます。また、虚偽または不正な目的の場合を除き、通報を行ったことを理由として通報者が不利益な取り扱いを受けることがないよう配慮されています。
一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)苦情処理窓口(外部サイトに移動します。)
<苦情処理制度利用の対象範囲>
人権の観点から、悪影響を受ける人、または悪影響を受ける可能性があると信じる合理的な根拠を持つ人(ライツホルダー)、もしくはその代理となる人や組織が苦情を通報することができます。
横浜ゴムのグループ企業やサプライチェーン、バリューチェーン等での事案も対象となります。
<苦情処理制度利用の周知方法>
横浜ゴムのホームページに掲載する他、ポスターやカードなどの広報物を使った周知や、CSR取引先説明会等を通じた取引先への周知を行っています。
<苦情が申し立てられた場合の解決プロセス>
  1. JaCERが通報案件の内容確認をし、苦情該当案件と判断された場合には、JaCERよりコンプライアンス推進室に連絡が入ります。
  2. JaCERから連絡を受けた通報内容についてコンプライアンス推進室が事実確認をします。
  3. JaCERおよび社内関係部門と協議し必要な対策を講じます。
  4. 通報者が名前を明らかにしている場合は結果を直接伝えます。また、記名、匿名にかかわらず、JaCERのホームページに掲載される苦情処理案件リストで進捗状況の情報が定期的に更新されます。
<苦情処理制度の有効性についてのモニタリング>
年4回開催される経営管理本部担当取締役を委員長とした「コンプライアンス委員会」で報告し、対応の妥当性を評価し、対策の実施、フォローを行っています。

優先的に取り組む重要な活動項目

事業活動における影響度、社会からの関心の高さを考慮し、以下の項目を優先的に取り組む横浜ゴムグループの重要な活動項目として定めました。