環境

生物多様性

KPI

画面を左右に動かすと、表組みの情報がご覧になれます

項目 2021年度実績 2022年度実績
生産拠点における周辺地域生態系の生物多様性保全実施率 (連結)50%
(国内13拠点、海外9拠点、バウンダリー見直し)
(連結)50%
(国内12拠点、海外9拠点、バウンダリー見直し)
該当地域で生物多様性に及ぼす影響 ヨコハマタイヤリトレッド(YTRH)
ウトナイ湖の近隣
ヨコハマタイヤリトレッド(YTRH)
ウトナイ湖の近隣
保護または復元されている生息地 長野県豊丘村の里山保全および神奈川県平塚市土屋地区での里山保全、三重県伊勢市大湊海岸でのアカウミガメ産卵地の保全、バージニア工場でのルリツグミ繁殖地の保全 長野県豊丘村の里山保全および神奈川県平塚市土屋地区での里山保全、三重県伊勢市大湊海岸でのアカウミガメ産卵地の保全、バージニア工場でのルリツグミ繁殖地の保全
IUCNレッドリストおよび国内保全種リスト対象の生物総数

<絶滅危惧種区分>
・絶滅危惧IA類(CR)
・絶滅危惧IB類(EN)
・絶滅危惧Ⅱ類(VU)
・準絶滅危惧(NT)
・軽度懸念
排水先河川
CR+EN:ニホンウナギ(金目川、桧尻川)の1種
VU:メダカ(各河川)、アカザ(天竜川)の2種
NT:カワヂシャ(金目川)、コオイムシ(園部川)、カジカ大卵型(黒田川)、トノサマガエル(天竜川)、ニホンイシガメ(御殿川)の5種

工場敷地内および里山
VU:キンランの1種
NT:オオムラサキ、マツバラン、エビネ、アカハライモリの4種
軽度懸念:ケリの1種

流下先の海岸
EN:アカウミガメ(大湊海岸)の1種
排水先河川
CR+EN:ニホンウナギ(金目川、桧尻川)の1種
VU:メダカ(各河川)1種
NT:カワヂシャ(金目川)、コオイムシ(園部川)、カジカ大卵型(黒田川)、トノサマガエル(天竜川)、ニホンイシガメ(御殿川)の5種

工場敷地内および里山
VU:キンラン、サシバの2種
NT:オオムラサキ、マツバラン、エビネ、アカハライモリの4種
軽度懸念:ケリの1種

流下先の海岸
EN:アカウミガメ(大湊海岸)の1種

責任部門

各拠点
  • 活動は事業所が行い、環境保護推進室は事務局として生物多様性分科会を組織し、全社方針の審議や情報共有・活動の推進を行っています。

考え方・目標

なぜ「生物多様性」が重要取り組み項目なのか
理由と背景の解説

当社は天然ゴムをはじめとする自然資本(自然の恵み)に依存して事業を営んでいます。また、多くの生産工場では、生産工程で大量の水を利用し、熱・二酸化炭素を放出しています。事業所の存在それ自体が土地の改変による地域生態系の撹乱や分断、微気候の変化をもたらしています。このような事業活動によって生じる自然環境への負荷が、現在地球規模で進んでいる生物多様性の喪失と決して無関係ではないと認識しています。
横浜ゴムは2010年に「生物多様性ガイドライン」を策定し、バリューチェーンの生物多様性保全に取り組んできました。生産拠点周辺地域において植樹・苗木提供を行う「YOKOHAMA千年の杜活動」や生産拠点の敷地内が地域生態系にプラスに作用するための生物多様性保全活動に取り組んでいます。2023年1月にネイチャーポジティブというゴールに向け、2030年までに陸と海の30%以上を保全・保護することを目指す国際的な目標である「30by30」の達成に向けた取り組みをオールジャパンで進めるための企業・自治体・団体の有志連合「生物多様性のための30by30アライアンス」への参画、自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures、以下、TNFD)の理念に賛同し、自然関連財務情報開示フレームワークの構築を支援する国際的なステークホルダー組織である「TNFDフォーラム」への参画および「経団連生物多様性宣言イニシアチブ」に参画しました。

横浜ゴムグループ生物多様性ガイドライン 

横浜ゴムグループは、2022年12月の国連・生物多様性条約の第15回締約国会議(COP15)における「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の採択や、2023年3月の日本政府「生物多様性国家戦略2023-2030」の閣議決定を踏まえ、2023年12月に「生物多様性ガイドライン」を見直しました。今後もバリューチェーン全体で生物多様性の保全と復元・再生に取り組んでいきます。

<基本方針>

横浜ゴムグループの事業は、自然が生み出す恵み(生態系サービス)に依存していると同時に生物多様性に影響を与えています。横浜ゴムグループではこの認識に基づき「自然と共生する世界」の実現に向けて、昆明・モントリオール生物多様性枠組など国際的な目標や取り決め・法規を遵守し、事業全体を通して生物多様性への負の影響を減らすとともに自然の復元・再生を進めることで、ネイチャーポジティブに貢献することを目指します。

<行動指針>

  1. 経営課題として認識し、自然資源の持続可能な利用と生物多様性の保全の状況を継続的に監視します。
    横浜ゴムグループは生物多様性を経営課題として認識し、自然資源の持続可能な利用と生物多様性の保全への対応を進めます。また、自然関連のリスクと機会の評価を定期的に実施し、経営層が監視できる体制をつくります。
  2. 事業の生物多様性への影響と依存の関係を科学的な方法で把握します。
    原材料調達から廃棄に至るまで事業全体にわたる関連地域の自然を対象に、事業活動による生物多様性への影響および依存の把握を科学的アプローチにより進めます。影響の大きな事業活動を特定し、目標設定を行い、継続的なモニタリングに努めます。
  3. 事業活動による負の影響を減らし、正の影響を増やします。
    事業活動による土地利用・天然ゴムや水などの資源利用・気候変動・汚染・外来種などに対する生物多様性の負の影響の回避・低減を図り、また、事業活動を行う地域での自然の復元と再生により正の影響を増やし、生物多様性の保全に貢献します。
  4. バリューチェーン全体で、技術革新による自然資源の持続可能な利用を推進します。
    資源利用など生産段階で生じる負の影響だけでなく、廃棄段階などのバリューチェーン下流で発生する負の影響を抑え、持続可能な資源利用を進めるため、革新的な技術の開発などを推進します。
  5. 生物多様性、気候変動とその他の社会課題を統合的に解決する視点を持ちます。
    生物多様性と気候変動のトレードオフを無くし、活動の効果を高めるため同時に解決する対策を推進します。また、人権や労働、貧困などの社会課題との統合的な解決の視点を持って行動します。特に先住民や地域コミュニティの権利、ジェンダー平等に配慮します。
  6. サプライヤーと連携した生物多様性保全を進め、自然資源の持続可能性を高めます。
    事業では天然ゴムや水など様々な自然資源を利用しています。生産者を含むサプライヤーと連携してそれらの保全を進め、トレーサビリティを確保し、サプライチェーン全体で自然資源の持続可能性を高めます。
  7. すべての社員が生物多様性保全に貢献できるように支援します。
    社員の生物多様性に関する意識改革を進め、実践につながる行動変容を通じて、すべての社員が業務や地域社会で生物多様性保全に貢献することを支援します。
  8. ステークホルダーとの対話と連携を通じて信頼関係を構築し、取り組みの実効性を高めます。
    国や地方公共団体、非政府機関(NGO)、研究・教育機関、地域住民などさまざまなステークホルダーとの対話と連携を通じて信頼関係を構築し、取り組みの改善や能力強化を図り、取り組みの実効性を高めます。
  9. 本指針に沿った生物多様性保全の取り組みについて定期的・積極的な情報開示を行います。
    サステナビリティ経営の推進に向けて、社内外のステークホルダーの理解を得るため、本方針に沿った生物多様性の取り組みについてあらゆる機会を利用して定期的かつ積極的に情報開示を行います。

目指す姿(達成像)/目標
短期・中期目標

1.持続可能な天然ゴム調達
項目 目標値 達成時期 2022年 進捗
天然ゴム農園調査戸数 累計 500戸 2023年 累計 437 戸
(2023年2月に累計500戸達成)
天然ゴムサプライヤー調査実施率(Tier1) 100% 2023年 85%(供給量に対して)
苦情処理メカニズムの導入・運用 導入完了 2023年 導入完了

2.アグロフォレストリー(※)
項目 目標値 達成時期 2022年 進捗
天然ゴム農園へのアグロフォレストリー用苗木提供本数 累計 13万本 2030年 累計 5.3万本
アグロフォレストリー導入済農家数 累計 170戸 2030年 累計 63戸
  • アグロフォレストリー(Agroforestry)とは、農業(Agriculture)と林業/森林地(Forestry)からの造語で、樹木の植栽の間で家畜を放牧したり農作物などを栽培したりすることをいいます。横浜ゴムは天然ゴム農園でのアグロフォレストリーを推進しています。

3.「YOKOHAMA千年の杜」活動
項目 目標値 達成時期 2022年 進捗
植樹・苗木提供本数 累計 130万本 2030年 累計 120万本

横浜ゴムの事業活動は、天然ゴムをはじめとする森林、土壌、水、大気、生物資源など自然資本から生み出される生態系サービスに依存しています。持続可能な事業活動のためには、自然資本に配慮した経営や生物多様性の保全が重要な課題と認識しています。
横浜ゴムでは、事業活動全体を通して自然と共生する社会の実現を目指した取り組みを行っていきます。事業活動が自然環境や生態系に与える影響を評価し、その影響がより良いものになるように保全活動を行っています。また、自然と共生し、環境マインドを持った従業員の育成を目指しています。
「YOKOHAMA千年の杜」活動では目標としていた国内外の生産拠点および関連部門の敷地内に50万本の苗木を植えることを2017年9月に達成しました。今後、生産拠点および関連部門敷地内の植樹と地域への苗木提供をあわせ累計130万本を2030年までに達成することを目標にしています。

<横浜ゴムの環境活動の方針>

目指す姿に向けた施策

当社の事業活動の中では特に原料調達段階と生産段階における生物多様性への事業リスクが高いと考えています。
原料調達段階では特に天然ゴム調達が、生産段階では事業所の土地利用と水利用に伴う取水・排水による事業影響が高いと判断しています。事業所は地理的、歴史的、文化的に異なる立地に位置しています。事業所をとりまく生態系も異なることから、事業所ごとの状況把握と課題設定が必要と考え、当社の生物多様性保全活動はステップ展開を行っています。事業所周辺の水域・緑地・自然保護区や住居・工場など、周辺環境を大まかに把握した後に調査した事業所のある周辺地域で、事業活動の影響のある河川などで水質の調査や出現生物のモニタリングを行い、評価対象生物を設定します。モニタリングを、年間を通して継続することにより事業活動の影響を評価し、保全する生物の対象を決定して保全活動を行い、結果を公表しています。
水質の調査として水温・電気伝導度・pHなど、生物のモニタリングとしては野鳥観察、植生調査、水生生物や昆虫の観察を行っています。

画面を左右に動かすと、表組みの情報がご覧になれます

  拠点 場所 水質 水生生物 植生 野鳥 昆虫 その他
国内 三重工場 構内
構外 アカウミガメ
三島工場 構外
新城工場 構内 カワニナ増殖
構外 両生類
尾道工場 構内
構外
平塚製造所 構内
構外
茨城工場 構内 サシバ成育環境
(両生類・爬虫類)
構外
長野工場 構外
ヨコハマタイヤリトレッド・北海道 構外
ヨコハマタイヤリトレッド・名古屋 構外 ビオトープ
ヨコハマタイヤリトレッド・尾道 構外
ヨコハマモールド 構外
海外 YTMT(タイ) 構内
YTRC(タイ) 構内
Y-CH(中国) 構外 老君山プロジェクト
CHZY(中国) 構内
構外
CSZY(中国) 構内
YTPI(フィリピン) 構内
構外 流域保全
YTMV(アメリカ) 構内 哺乳類
YTVI(ベトナム) 構外
  • 生物多様性活動での実施の有無

YOKOHAMA千年の杜

2022年末までの植樹本数は累計69.9万本に達しました。また植樹本数に苗提供をあわせた本数は119.8万本に達しました。2030年までに130万本を達成するという目標に対して92%の達成率となりました。千年の杜の成長と環境の変化を評価するために、成長量の調査(樹高、胸高直径の測定)と工場敷地内に出現する野鳥の調査を行っています。苗木の成長量の調査から千年の杜の二酸化炭素の固定量を算出しており、2022年末までに千年の杜全体で1,649トンのCO2を吸収したと推定しています。
平塚製造所での野鳥調査では、これまでに工場敷地内で61種類の野鳥が観察されています。植樹3年目からは、森林を好むアカハラが見られるようになりました。これは、野鳥にとって千年の杜が本来の森として機能していると考えられます。また、センダイムシクイや水辺で見られるオオヨシキリが観察されており、野鳥が生息域を移動する途中で寄る中継地点として千年の杜が機能しているのではないかと考えられます。さらにメジロなどの営巣や、さまざまな鳥の子育てに千年の杜が使っている姿が確認されており、千年の杜が野鳥の繁殖に寄与しているものと思われます。
2023年4月より、「こまたん」の皆さんの参加を再開して観察しています

2022年度の活動レビュー

天然ゴムを持続可能な資源とするための取り組みを開始

横浜ゴムは、天然ゴムを持続可能な資源にするために2018年10月に「持続可能な天然ゴム調達方針」を発表。また、国際的なプラットフォームであるGPSNR(Global Platform for Sustainable Natural Rubber)に創設メンバーとして参画し、活動を開始しました。さらにGPSNRのポリシーフレームワークを調達方針に組み込むために2021年9月に調達方針を改定し、より高いレベルで天然ゴムの持続可能性の実現を目指す意志を明確にしています。 2019年からタイ・スラタニ地区での農園調査を開始し、2022年12月末までに437戸の農家を訪問しました。これまでのところ人権侵害や違法な森林伐採などの問題は見つかっていませんが調査を通じて農園の抱える問題や解決すべき課題を知ることができました。この調査は、2023年2月末に目標としていた500戸に達成しました。調査により得られる情報と農家の方とのコミュニケーションは貴重なものですのでこの調査は今後も継続して実施することにしています。
2020年1月にはタイ天然ゴム公社(Rubber Authority of Thailand: RAOT)と天然ゴム農家の経営支援およびサプライチェーンの透明性と健全性を確保するためのトレーサビリティの向上に向けて協力していく覚書を締結しました。
覚書にもとづき、2020年12月より天然ゴム農家を対象としたセミナーイベントを開催しています。これまでに5回実施し累計250名の農家の方に参加いただき、RAOTの知見を活かした肥料を累計75トン無償提供しています。

地域コミュニケーション

平塚製造所での施設公開イベント「ThinkEcoひらつか」での企画として開催してきた生物多様性パネルディスカッションを2020年からはオンラインで開催しています。2023年3月には「世界目標に貢献する私たちの保全活動~OECMを活用する」をテーマに日本自然保護協会OECMタスクフォース室長の高川晋一様から基調講演をいただき、その後、当社茨城工場でのサシバの暮らす工場を目指した取り組みを紹介し議論を深めました。イベントにはグループ会社を含む生産拠点の従業員、関係のある行政の方、地域住民、環境NPO等の方にご参加いただきました。

従業員教育

生物多様性保全に事業を通して取り組み、従業員全員が生物多様性の恵みを意識して行動するために人材育成を通して従業員への浸透を図っています。若手従業員を対象とした必須研修の1コースで生物多様性を取り上げています。2022年度は新型コロナウイルス感染のためオンラインで実施しました。

事例紹介

平塚製造所

平塚製造所は2013年度から地域を流れる金目川水系の水資源の保護を目的とした生物多様性保全活動を行っています。金目川下流域でのモニタリング活動では、従業員が体験型で順次参加し、累計で346名が体験しました。モニタリングと並行して外来植物(オオブタクサやアレチウリなど)の抜根活動を行ってきました。活動の結果として、外来種の植物を減らすことができましたが、「外来植物が減って生物多様性が守れたか」という(保全)効果が明確でないことが課題となり、見直しを行った結果、金目川下流域での保全活動については一旦収束としました。
現在は金目川上流に位置する市内里山で活動しています。具体的には、金目川の水源涵養と里山の原風景の復元等を目的として、谷戸田での手づくりのビオトープの創設や谷戸の周りの放置されたスギ林の再生などの活動を2015年から開始しています。また、同じ地区にある大学の協力を得て、スギの間伐による照度変化などについても調査を行っています。谷戸の環境をゾーンごとに目標種や活動内容、目指す姿などを決め、活動の効果やゴールがわかるようにしています。
2022年度はコロナ禍の影響もあり活動を中止しました。
毎年3月には金目川水系流域ネットワークの呼びかけに賛同して、地域の自治体や団体とともに河川清掃を行っています。 2022年度はコロナ禍の影響もあり活動を中止しました。
スギ林の林床変化 落葉実生
林内設置のトレイルカメラ
里山に出没したタヌキ
2017年5月には事業所敷地内に手作りのトンボ池を設置し、この池に集まるトンボやチョウ、カエルなどを観察して生き物のつながりを身近に感じられる活動を開始しました。
こうした生物多様性活動や2007年に事業所の周囲に植樹した千年の杜の成長に伴う継続的なCO2吸収固定量調査などが評価され、2017年3月に生物多様性に配慮した工場として「いきもの共生事業所®(ABINC)認証」を取得し、その後も認証を維持しています。
ABINC認証
平塚市が推進する生物多様性への取り組み「ひらつか生物多様性推進協議会」に参画し、平塚の生態系保全についても活動の場を広げています。
また、毎年2月には神奈川県自然保護協会が主催する「さがみ自然フォーラム」に、さらには7月には平塚市が主催する「ひらつか環境フェア」にパネル展示し、平塚製造所の生物多様性活動を紹介しています。
さがみ自然フォーラム
ひらつか環境フェア

三重工場

3つのチームで以下のとおり、生物多様性保全活動を継続しています。
  • ブラックチーム:工場排水先河川(桧尻川・ほとす川)での水質調査とメダカなどの水生生物調査
  • ノッポチーム:流下先の海岸(大湊海岸)での外来種抜根と在来植物の株数の測定、アカウミガメの産卵調査の実施
  • チビッコチーム:工場の雨水調整池でのビオトープづくり、水質調査と生物調査の実施、とんぼ、水生生物調査、水質測定
伊勢市立みなと小学校が開校し、2021年より出前授業を再開。なぜ植樹をするのかを紙芝居で、外来植物のコマツヨイグサ抜根大会、学校からの要望で生徒たちによる海岸ゴミ清掃を一緒に活動しました。
コロナ禍により毎年実施している植樹体験、生物多様性保全活動体験が開催できませんでしたが、2023年度より小学生を工場に招いての環境学習を再開しています。
2022年3月に生物多様性に配慮した工場として「いきもの共生事業所認証®(ABINC認証)」を取得しました。
桧尻川での水生生物調査
大湊海岸での外来植物の伐根と海岸清掃
小学生を招いた生物多様性保全活動のためのビオトープ再生活動

三島工場

三島工場は工場東側に三島駅前にある白滝公園の湧水を使った農業用水路があり、西側には工場排水の流出先である一級河川御殿川と水に恵まれています。工場では2013年から御殿川を活動対象として水質調査、生物調査などを、どぜう・すっぽん・うなぎの3つのチームで活動しています。
御殿川ではコヤマトンボのヤゴやハグロトンボなどの昆虫類、オイカワやカワムツ、ナマズなどの魚類、スッポン、アカミミガメなどの爬虫類、また、住宅に囲まれる工場では珍しく三島市のシンボルであるカワセミが工場内で営巣しています。一方、河川に投棄されるゴミが多く、御殿川を美しく保つために少しでも貢献していきたいとモニタリングの後に河川清掃を行っています。2019年5月に静岡県沼津土木事務所、三島市と三島工場の三者による「リバーフレンドシップ」の同意書に調印し、その後、静岡県沼津土木事務所の方々と協働活動で「バーブ工法」施工など行ってきました。活動を継続的に行った結果、河川浚渫後にはほぼいなくなってしまった生き物が戻り始めたことが確認できています。
また、工場横の御殿川では見ることがなかった、静岡県レッドリスト絶滅危惧Ⅱ類のミシマバイカモやマツバランも発見し見守っています。将来的には地域住民も参加していただける活動にしていきます。自然災害や豪雨が増加していますが、可能な範囲で活動を続けています。
河川管轄協働での「バーブ工」施工の様子
チーム活動の様子
チーム活動の様子
工場排水口で観察されたナマズ、スッポン、アカミミガメ
工場排水口で観察されたナマズ、スッポン、アカミミガメ
工場排水口先の下流で発見した絶滅危惧Ⅱ類のミシマバイカモ、マツバラン
工場排水口先の下流で発見した絶滅危惧Ⅱ類のミシマバイカモ、マツバラン

新城工場

2022年度:生物多様性保全活動は新城工場のリスク管理として直接的な環境影響を与えている野田川と黒田川での水質調査・生物モニタリングと、地域環境への貢献活動として水源涵養のために豊川水源地のひとつ四谷千枚田での保全活動を実施しました。四谷千枚田、野田川・黒田川、工場ビオトープの3カ所を3チーム総勢75名のメンバーで地域の生態系に適合した保全活動を進めてきました。
コロナ禍の影響も緩和されてきたため、活動人数を徐々に増やし、通常活動の水質調査・生物モニタリングに加え、新たな活動として地域とのコラボレーションによる野田川ホタルプロジェクト活動も開始しました。
工場敷地内では水辺ビオトープ創出なども含め樹林地や草地が一体的に整備されている点や、地域、周辺企業や団体と連携して取り組む「千年の杜」づくりやモニタリング活動が高く評価され、2022年2月にいきもの共生事業所認定®(ABINC認証)を取得しました。同年11月には、愛知県が創設した生物多様性保全に関する優れた取り組みを実践している企業を認証する「あいち生物多様性企業認証制度」の優良企業認証も取得しました。
いきもの共生事業所®(ABINC)認証書
あいち生物多様性優良企業認証書
<新城市四谷千枚田水源地域>
工場冷却水の水源地として生物群集の生息域を確保し、清流と準絶滅危惧種の維持を助け、水に関連する生態系の保護を行い、千枚田に望ましい生態系の生息環境を支援する活動を行いました。
四谷千枚田での保全活動
四谷千枚田での保全活動
生き物モニタリングと確認されたアカハライモリ
生き物モニタリングと確認されたアカハライモリ
<野田川/黒田川:水質・水生生物モニタリング調査>
新城工場・新城南工場からの排水が、地域河川への水質や水生生物に悪影響を与えていない事を確認し、維持継続する活動を行いました。
野田川での生き物モニタリングと確認されたモクズガニやエビ、カワムツ
黒田川での水質調査と生き物のモニタリング
黒田川での水質調査と生き物のモニタリング
<構内工場ビオトープ>
新城工場で使用する冷却水は工場近くの野田川より取水され、また野田川に排水しています。排水を工場内のビオトープに導入することで工場排水でも生き物が生息できる環境を作れることを実証するために2010年よりビオトープでの生き物の観察をしています。ビオトープ周りの整備・修復作業も毎年継続して実施しています。
工場内ビオトープで確認されたヤゴと準絶滅危惧種のヤマアカカエル
工場内ビオトープで確認されたヤゴと準絶滅危惧種のヤマアカカエル
ビオトープ修復
ビオトープ修復
<野田川ホタルプロジェクト>
昔はホタルがたくさんいたという近隣住民の方々の声を受け、工場が取水・排水をしている野田川の環境保全の柱としてホタル復活を目指す「野田川ホタルプロジェクト」を5カ年計画で開始しました。
小学4年生とのコラボ水生生物調査
ホタル幼虫の餌となるカワニナを放流
ホタル幼虫の餌とカワニナの養殖
ホタル幼虫の餌とカワニナの養殖
ホタルキャベツ農園
構内での外来種植物伐根の様子
抜き取ったセイタカアワダチソウ
新城設楽生態系ネットワーク協議会のスギ・ヒノキ林皆伐後の里山化植樹の植樹体験バスツアーの支援として新城工場から15名が参加しました。地域性樹種のアベマキ、コナラ、ヤマザクラ等落葉広葉樹の苗木490本全数の提供と、参加者の植樹サポートを行いました。
植樹体験バスツアーの様子(愛知県北設楽郡東栄町御園)
植樹体験バスツアーの様子(愛知県北設楽郡東栄町御園)
御園地区には国蝶のオオムラサキが確認されているので、保護と増殖を兼ねて幼虫の餌となる新城産のエノキを植え続けています。また愛知県の絶滅危惧I類に指定されているコバノチョウセンエノキの種子から育てた苗も保護保全を兼ねて地元のNPO法人御園夢村興し隊さまと多数植えています。
御園地区で見つかったオオムラサキ
愛知県絶滅危惧種コバノチョウセンエノキ

尾道工場

尾道工場は、2013年から工場東側の瀬戸内海に流れ込む河川の藤井川親水公園および工場敷地内で保全活動を開始しました。藤井川親水公園では水質調査と水生生物・鳥類・植生の調査、工場敷地内では鳥類・昆虫類の調査を実施しています。
藤井川での水生生物調査では、モンカゲロウ、ニホンカワトンボ、ヤマサナエなどの水生昆虫、タモロコやドンコ、シマヨシノボリなどの魚類、モクズガニやスジエビなどの甲殻類が観察されていましたが、コロナ禍の影響により2022年は野鳥観察と河川清掃のみの活動となりました。
工場敷地内では、千年の杜の成長による森の形成や、藪、草地、雨水による池と湿地形成により生き物のためのさまざまな環境がモザイク状に提供されており、トンボ類、チョウ類、コオロギ類、キリギリス類の生息環境となっていることが示されました。またヒバリの営巣、モズやジョウビタキの縄張り形成、ウグイスの越冬などに工場敷地が寄与していることが示されました。年に3回の活動は、コンサルタントの先生および野鳥の会広島支部の方にご協力を頂き、実施しています。
2022年6月に開催予定の「藤井川の夕べ」はコロナ禍の影響で中止となりましたが、2022年8月に尾道市環境資源リサイクルセンターで開催された子ども環境祭りで、藤井川での保全活動、定点観測、尾道工場の活動等のパネル展示を行いました。また2023年6月には「藤井川の夕べ」が4年ぶりに開催され、保全活動、定点観測の展示や苗の無料配布を行いました。
工場内での野鳥観察
メジロ(工場敷地内で観測)
藤井川親水公園での野鳥観察
藤井川の夕べ(2023年6月開催)

長野工場

長野工場は、海抜805.5m、横浜ゴムの他工場に比べて自然度の高い地域に位置する工場です。雨水以外の排水がほとんどなく、比較的環境影響度の低い工場であると考えています。
長野工場は、天竜川の河岸段丘に位置するため工場敷地内に天竜川の後背湿地生態系を再生することを目的に工場調整池での生物多様性保全活動を2021年から開始しました。モニタリング活動で見つかったセイタカアワダチソウとワルナスビを駆除することにし、毎年6月から9月にかけて各課で担当し実施しています。
また雨水排出先の工場南側用水路での生き物のモニタリングと外来種駆除、清掃活動を行っています。
各課で実施した外来植物の伐根活動
各課で実施した外来植物の伐根活動
また、数年前まで実施していた水生生物調査を天竜川への合流点から工場南側排水路へ調査場所を変えて2023年より再開しました。排水路の調査ではオイカワ、カマツカ、カワムツ、ヌマエビなどの在来種、特定外来種のアメリカザリガニなどが観察されています。4月から10月まで4回の調査を行う事にしています。
在来種が多く観察できた水生生物調査活動
在来種が多く観察できた水生生物調査活動
2010年に下伊那郡高森町にあった高森工場(現、高森倉庫)にYOKOHAMA千年の杜活動で植樹された場所の下枝整備作業と隣接地の竹林整備を実施しました。杜への竹の侵入を防止する取り組みとして、タケノコ掘り(タケノコ祭)を実施し、掘り出したタケノコを従業員へ配布し、各家庭でタケノコを使った料理を楽しんでいただきました。
高森倉庫千年の杜で実施された下枝整備作業
高森倉庫千年の杜で実施された下枝整備作業
千年の杜と共生するタケノコとタケノコ料理
千年の杜と共生するタケノコとタケノコ料理
長野県が進める「森林(もり)の里親促進事業」に基づき豊丘村の村有林の整備で協力する「森林の里親契約」を豊丘村と結び、村民グラウンド付近の里山整備作業を2022年6月に再開しました。里山保全のために下草刈りと下枝整備作業を実施しました。
里山整備を実施したメンバーと整備風景
里山整備を実施したメンバーと整備風景

茨城工場

茨城工場では工場排水の排水先である園部川で2013年から水質、植生、水生生物および鳥類の調査を行っています。園部川は農業用水として利用されていることから排水の水質について十分に注意を払っています。工場排水の放出口から出た水は、園部川の元の水に比べて電気伝導度が低く、透視度が上がっていることから、工場排水は十分な管理ができていると考えています。また工場事務所玄関に水槽を設置し、工場排水を利用して園部川で捕獲した魚を育てています。
2015年からは工場敷地内での鳥類調査を開始し、活動を継続しています。2019年より、茨城で準絶滅危惧種に登録されている「サシバ」という野鳥を環境保全の1つの指標にかかげ、新たに「サシバ生育環境調査」を編成し、工場内の植生・小動物類(両生類・爬虫類)の調査を開始しました。2020年に工場内にサシバの止まり木を設置し、サシバが何度か利用していることを確認しています。また、サシバが工場周辺の上空を飛んでいるところも観察できました。

工場敷地内に設置した止まり木を使っているサシバ

これらの活動は活動当初から日本野鳥の会茨城県さま、小美玉生物の会さまにご指導いただいています。

工場敷地内での野鳥観察

工場敷地内での小動物調査(サシバ生育環境調査)

工場敷地内での植生調査(サシバ生育環境調査)

これらの活動が認められ、2023年4月に「いきもの共生事業所®(ABINC)認証」の「ABINC賞 優秀賞」を受賞することができました。

ABINC賞優秀賞 受賞(賞状)

今後も皆さまのご協力をいただきながら活動を継続していきます。

ヨコハマタイヤリトレッド(株)北海道事業所(YTRH)

YTRHは北海道中南部(道央)の苫小牧市東部にあり、渡り鳥の集団飛来地として国際的にも有名なウトナイ湖に隣接しています。このような貴重な環境下にある工場は横浜ゴムグループでは唯一YTRHだけです。
この貴重な場所を保全するため、まずは「ウトナイ湖を知ろう」から始まりました。日本野鳥の会のレンジャーを講師にウトナイ湖の成り立ち、日本で最初のサンクチュアリができた経緯、保全活動の現状、その先に見据えた保護活動などの勉強を始めました。2017年からはウトナイ湖やネイチャーセンター周辺の清掃活動を続けています。
2022年は、日本野鳥の会が60年前から実施している10年に一度の生態調査があり、YTRHもこの活動に参加しました。このデータを基にしてウトナイ湖の水位を調整し、生態系の維持を図っているそうです。
<苫小牧市のイベント>
♦春の大掃除月間「ゼロごみの日」 2022年4月17日(日)
YTRH全員(12名)でウトナイ湖サンクチュアリ周辺の大掃除を実施しました。雪解け後の大掃除で、毎年大量のゴミを回収しています。残念ですが、今年も廃タイヤなどの大量のゴミを回収しました。まだ寒い時期でしたが、夏に向けてウトナイ湖サンクチュアリ周辺がとてもきれいになりました。 これからも、従業員全員でウトナイ湖の環境活動やサンクチュアリサポート活動に取り組み、また、家族や関連会社の方々や日本野鳥の会と共に有意義な活動を継続していきます。
♦秋の大掃除月間「ゼロごみの日」 2022年10月16日(日)
YTRH全員(12名)でウトナイ湖サンクチュアリ周辺の大掃除を実施しました。澄んだ空気の中、春に続き秋も大量のゴミを回収しました。
♦外来植物オオアワダチソウ抜き取り 2022年7月15日(金)
毎年抜き取りを行っている定点観察場所は、活動開始当初はオオアワダチソウに占領されていましたが5年が経過し、ヨモギやホザキシモツケが増えていました。そのため新たな場所の抜き取りをしました。この場所でも在来種が自生することを目指しています。
♦ウトナイ湖植生調査 2022年8月24日(水)、8月25日(木)
日本野鳥の会と研究者が中心となり、1962年からウトナイ湖での植生調査を行っています。調査は10年に一度行っており、2022年が60年目のため7回目の調査となりました。日本野鳥の会よりサポートの依頼を受け、YTRCから2名が参加しました。得られたデータは乾燥化(湖の縮小)などを示す客観的なデータとなるためウトナイ湖の長期的な保全を考える上で重要なものとなります。このデータを基にウトナイ湖の水位を調整しているそうです。調査では通常は立入禁止区域湿地に腰までつかったりヤブ漕ぎをしたりと、過酷でしたが大変貴重な体験が出来ました。
日本には633種の野鳥が居ますが、その内273種の野鳥がウトナイ湖で観察されています。また、その中には30種の絶滅危惧種も含まれます。シマフクロウ、オオワシ、オジロワシなど希少な野鳥が見られたり、最近では130年ぶりに、タンチョウの繁殖が確認されたりしています。YTRHも微力ながらウトナイ湖の生態系の維持につながるように日本野鳥の会と活動をしていきます。
ウトナイ湖周辺でのオオアワダチソウ抜き取り作業
ウトナイ湖周辺でのオオアワダチソウ抜き取り作業
ウトナイ湖周辺での清掃作業
ウトナイ湖周辺での清掃作業

ヨコハマタイヤリトレッド(株)埼玉事業所(YTRS)

YTRSは「みよしグリーンサポート隊」の活動に2015年11月より参加しています。みよしグリーンサポート隊は「平地林の保全整備を通じて豊かな心のふれあいを目指し、住みよい街づくり」をスローガンに活動をしています。活動日は毎月第3日曜日で、地域住民、企業が毎回20名くらい参加しています。「藤久保の平地林」には江戸時代から続く落ち葉から堆肥を作る循環型農法(歴史的環境)と生物多様性(優れた自然)が今も息づいています。
2015年4月に活動地区の一部がさいたま緑のトラスト運動の緑のトラスト保全地第14号地に認定されました。さいたま緑のトラストとは埼玉県のすぐれた自然や歴史的環境を後世に残すため、住民・企業・団体などの協力で公有地化し保全していく活動です。
2023年7月 国連食糧農業機関(FAO)により、「武蔵野の落ち葉堆肥農法」が世界農業遺産に認定されました。世界農業遺産とは、社会や環境に適応しながら何世代にもわたり継承されてきた伝統的な農林水産業と、それに密接に関わって育まれた文化、ランドスケープおよびシースケープ、農業生物多様性などが相互に関連して一体となった、世界的に重要な伝統的農林水産業を営む地域です。
枯葉の堆肥づくり・・たくさんのカブトムシの幼虫が住んでいます
里山の草取り、ごみ拾い
落ち葉あつめ

ヨコハマタイヤリトレッド(株)名古屋事業所(YTRN)

2022年度の活動はコロナ禍で制限されることが多い中、千年の杜7期植樹、環境保全活動および生物多様性保全活動を継続しました。また、外部活動として地元みよしの市のNPOに唯一の正会員企業として参画し休耕田の再生や、貴重な生態系保全の活動を継続しています。
本NPOにはみよし市環境課と市教育委員会も協賛しており地元小学校の環境教育の場として利用して頂く等、官民一体となった活動を行っています。この事は市の広報紙でも取り上げられており地域の方々が自然の大切さを体感する場として定着することが出来る活動になっていると自負しています。2023年は自然観察、田植え体験以外にもNPO10周年の記念行事も計画しており、名古屋事業所従業員全員が参加し裏方仕事を一手に引き受け環境保全、地域貢献に力を入れ活動を進めています。
休耕田の再生(田植え)

ヨコハマタイヤ・マニュファクチャリング・タイランド(YTMT)

タイのタイヤ工場であるYTMTは、工業団地内に立地しています。日本の工場と異なり、工業団地が取水および排水を一括管理していることから、工場単独での取水・排水域への影響は確認できていません。そこで、敷地内の緑地(千年の杜やビオトープ)を評価するための鳥類、昆虫類のモニタリングを実施しています。工場敷地内で豊かな生息環境を再生するために湿地型および池沼型の2種類のビオトープを作成しています。また水面と地面との生き物のつながりを保つための植栽にも工夫を加えています。地域の生物の生息域を確保するとともにこの活動を通じて、従業員の環境教育も行っています。また、ラーニングセンターとして、環境や生態系を守る意識を高めるため、近隣の学校の児童・生徒および外部の方に生物多様性についての教育も行っています。
2022年は新型コロナウイルス感染のため活動を停止していました。2023年7月25日にYTMTがあるアマタ市工業団地のCSR担当者と協力して、Nikhom第9小学校の5年生31名を対象に出前授業を実施しました。子どもたちは、生物多様性や環境についての知識を深め、私たちの活動をとても喜んでくれました。
ニホム第9小学校での出前授業の様子
ニホム第9小学校での出前授業の様子

Y.T.ラバー(YTRC)

YTRCはタイ南部のスラタニ県に位置する、横浜ゴムグループで唯一の天然ゴム加工工場です。約70km上流から流れるタピー川およびその支流に挟まれた平坦な土地で、周りは天然ゴムやパーム樹の農園に囲まれた自然豊かな地域に位置しています。
天然ゴムの加工工程では洗浄・搬送のために多くの水を使用しますが、当社では設立時から水の100%リサイクルを確立しており、水資源の有効活用を実現しています。工場で使用後の水を沈殿して取れる栄養価の高い土は、植樹用のマウンドや苗木作りにも活用しています。また浄化池の効率的な利用と細やかなチェック・改善により、工場用水は近接河川と同レベルの水質を維持しています。
YTRCには敷地内には自然環境を維持した遊水池があり、2014年11月からは月1回の頻度で、魚類の生息状況と水質のモニタリングを継続しています。雨期の増水時には、近接するタピー川から遊水池へ水が流入することもあり、最近の調査でも20種類以上の大小さまざまな魚の繁殖が確認されています。
また遊水池を囲む森や千年の杜活動で植樹した木々の生育エリアでは、これまで20種類以上の鳥類が観測されており、夕方にもなると木々に集まった鳥たちのにぎやかな声が聴こえてきます。木々の中には設立時から地域の皆さんと共に大切に維持しているパームの樹も多く植えられ、毎月 実を採取し持ち帰っていただいています。
地域への行事への参加や寄付なども積極的に行い、「地域貢献企業」を意識した活動を継続しています。YTRCでは地域の皆さんのご協力も仰ぎながら遊水池や樹木を取り巻く環境維持を継続し、これからも地元に愛される「環境貢献企業」として生物多様性改善活動を続けていきます。
調整池での生物多様性調査活動
投網を使った魚類の捕獲調査活動
鳥類の生息状況調査活動
タイ水産局提供の稚魚3万匹を遊水池へ放流

杭州横浜輪胎有限公司(CHZY)

CHZYは中国杭州市銭塘区の銭塘江近くの工業団地に立地しています。工業団地内は緑地帯が確保されているものの構成樹種が少なく、多様性は豊かではありません。そのためCHZYでは2008年からYOKOHAMA千年の杜活動に取り組んできました。これまでに約5,000㎡の面積に約24,000本の植樹を行ってきました。千年の杜が森林性の生物に対する生息地になるのではとの観点から千年の杜の評価とそこに住む生き物の調査を杭州師範大学の先生と学生の皆さんと従業員とで行っています。より優れた生態環境を作るために現地の政府と環境保護協会とも連携して毎年銭塘区の川沿い湿地で外来種駆除活動を展開し現地の生物多様性を守っています。
また環境保護政策の一環で、CHZY所在エリアの近辺に土地(面積:約2,000m2)を「優科豪馬養護林」として現地政府から管理を任されています。2013年より毎年3月の植樹節に近隣住民や小学生と植樹活動を行っています。2021年度は新型コロナウイルス感染の影響で植樹を実施できませんでしたが、これまでに合計150本の植樹を実施しています。
工場周辺の川沿いでのセイタカアワダチソウの駆除とごみ拾い活動
工場周辺の川沿いでのセイタカアワダチソウの駆除とごみ拾い活動

ヨコハマタイヤ・フィリピン(YTPI)

フィリピン共和国パンパンガ州クラーク特別経済区内に位置するYTPIは従業員や近隣のコミュニティを巻き込んだ一連の活動を通じて、生物多様性と環境の保全を推進しています。これらの活動には千年の杜活動、樹木の継続的な調査、野生生物の調査、苗木の提供や活動の支援等の継続的に行っている活動とグリーンスペースプログラムという新たな取り組みを開始しました。
環境月間を記念して船山社長をはじめ役員と従業員でYTPI内に26本のイランイランノキを植樹しました。
YTPIでの植樹活動
また、2023年6月14日にはパンパンガ州バコロール市の環境自然資源局(MENRO)の活動を支援するため、100本のさまざまな苗木を寄贈しました。この寄付活動は、地域の環境保護活動を支援し、地域内の緑化活動を促進することを目的としています。
バコロール市の環境自然資源局への苗木の提供
2021年にグリーンスペースプログラムを開始しました。この取り組みは、従業員が社内の空きスペースに野菜を植えることを奨励し、食の持続可能性に対する自立心を高め、より栄養価の高い食習慣に向けた公衆衛生意識の向上、植物種の増加による生物多様性の向上、そして最後に環境に優しいライフスタイルの促進によるカーボンニュートラルへの支援を目的としています。その結果、10部門がそれぞれのエリア内でこの活動を開始し、収穫物の配布を行いました。さらに、この活動を拡大するために、YTPI ベジタブル・フォー・ライフ(Gulay ay Buhay sa YTPI)として学校菜園での活動につながっています。これまでに4つの小学校・高等学校と提携しています。地域との連携を強化するため、将来的にはさらに多くの学校に働きかけていきます。
グリーンスペースからの収穫物
グリーンスペースからの収穫物
YTPIではYOKOHAMA千年の杜活動で植樹した杜の維持と生物のモニタリングを行っています。2023年上期に行ったモニタリングでは多様な昆虫、クモ類、爬虫類、鳥類が合計22種類確認され、持続可能で複雑かつ健全な生態系が維持されていると考えています。
観察されたサラドクチョウ(Heliconius sara、左)とアスパラガスクビナガハムシの仲間(Crioceris duodecimpunctata、右)
観察されたサラドクチョウ(Heliconius sara、左)とアスパラガスクビナガハムシの仲間(Crioceris duodecimpunctata、右)
これらの活動により、YTPIは地球温暖化や気候変動の緩和のために二酸化炭素排出量を削減し、近隣の地域社会が抱える問題やニーズに対応することを目指し、YTPIの活動によって影響を受ける生態系の重要性に対する認識を高め、積極的な保全活動を推進していきます。

Yokohama Tire Manufacturing Virginia(YTMV)

YTMVはアメリカ合衆国の東部、バージニア州のアパラチア山脈の麓に位置します。日本にも似た四季を感じられる自然環境が広がっています。工場の敷地に植えた千年の杜の成長に伴い数多くの野生動物や野鳥が生息しています。これらの自然環境の保全と生産活動を両立させていく活動を行っています。
2015年からEastern Bluebird(和名:ルリツグミ)の繁殖保護のための巣箱を設置し全従業員でヒナの生育を見守っています。
ルリツグミのための巣箱
巣箱の中のルリツグミのヒナ
ルリツグミ
YTMVの敷地内にオジロジカ(Odocoileus virginianus)の小さな群れが住んでいます。 オジロジカは植生管理、種子散布、植物の多様性維持などのために重要な役割を果たしています。また、これらの動物を見ることは私たち従業員の楽しみにもなっています。
工場敷地内で草をはむオジロジカ
工場敷地内で草をはむオジロジカ

蘇州優科豪馬輪胎有限公司(CSZY)

CSZYは中国江蘇省蘇州市の長江デルタ地帯に位置しています。太湖をはじめとした湖や川も多く、その面積は蘇州市の36.6%を占め、水資源が豊富な土地です。温暖な気候、豊富な降雨量、多くの日照という特徴もあります。CSZYでは、2012年に千年の杜活動を、2016年から生物多様性活動を開始し、工場敷地内の鳥類、昆虫類、植物などの変化を観察してきました。
2022年5月27日には新入社員23人が参加して工場内の生物多様性調査を実施しました。また、2023年5月27日には第15回目の活動となった新区生態環境局と新区環境保護協会が協賛しての生物多様性調査活動を開催しました。この活動には近隣の幼稚園、小学校、中学校の子どもたちと保護者、教師も参加し、従業員と共同で調査活動を行いました。調査では構内の昆虫、植物、鳥類をカウントし生態を理解することと千年の杜の樹木の生育状況の測定を行いました。調査では、シラサギ類が増加していることがわかりました。また、近隣住民の方に在来生物の保護と地域の環境保護について伝えることができました。生物多様性調査活動は、工場敷地内の生物環境の状況を把握できるほか、工場での事業活動を進めながら地域の生態系を保全し、地域社会との調和にも役立てることができます。
これまでの活動では、スズメ、シラサギ類などの鳥類、ナンキンハゼ、ハナカイドウ、イボタノキ、タンポポ、アサガオ、ヒナギクなどの植物、ミツバチ、蝶などの昆虫、ミミズなどを観察しました。その中で木の種を拾い、千年の杜活動のための苗として育てる活動も行っています。このような生き物の観察だけでなく、千年の杜の成長調査では千年の杜の成長が地域の生態系に良い影響を与えていることの理解を深める良い機会となりました。
生物多様性活動に参加した皆さん
生物多様性活動に参加した皆さん
生き物を観察する阳山中心小学校、金阊新城実験小学校、虎丘实验中心小学の児童のみなさん

Yokohama Tyre Vietnam Inc.(YTVI)

YTVIでは工場敷地内での千年の杜活動のノウハウを活かし、2018年からLo Go - Xa Mat (LGXM) 国立公園においてSouthern Institute of Ecology (SIE)とともに植樹プロジェクトを開始しました。約1ヘクタールの土地に7種類の在来種500本を植えてきました。植えた木により3年間で樹冠が形成され林内に生息する動物の種類が年々増加していることが確認されています(2018年から2021年まで)。この4年間、YTVIの役員から新入社員まで総勢68名が植樹した木の保護や調査に取り組んできました。2022年6月には主要パートナーのSIEとLGXM国立公園理事会の参加を得てLGXM国立公園での生物多様性保全活動の閉会式を開催しました。閉会式ではLGXM国立公園の管理委員会が今後森林の保護と火災予防のために必要な措置を実施し、管理権限を継続するための覚書(MOU)の署名がYTVIとLGXM国立公園管理委員会の間で行われました。
YTVI社長黒川泰弘による閉会挨拶
プロジェクトメンバーの森での集合写真
夜間調査で捕獲した生物(ヤモリ:学名Dixonius siamensis、クモ:学名未確認)
夜間調査で捕獲した生物(ヤモリ:学名Dixonius siamensis、クモ:学名未確認)

今後の課題

現在、生物多様性は気候変動と同様に重大な環境リスクとして認識されています。特に昆明-モントリオール生物多様性枠組や自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の策定過程で明らかにされつつある目標や手法に合致した取り組みと情報開示が重要であると認識しています。
こういった議論の進展や世の中への浸透にあわせた取り組みを行うため横浜ゴムグループの事業活動全体の中の重要課題の整理とそれに対応した活動の推進、従業員やステークホルダーの理解を深めていくための情報共有を積極的に進めていきます。