E :Environment
脱炭素社会への貢献

気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に基づく情報開示

気候変動を巡る課題への対応

近年、異常気象や自然災害の頻発など、気候変動の影響は深刻化し、世界中の人々の安全を脅かしています。2015年のCOP21で採択されたパリ協定以降、気候変動対策への取り組みは加速していますが、2023年のCOP28では、化石燃料の段階的な廃止については具体的な合意に至らず、脱炭素化に向けた取り組みは依然として課題が残されています。企業は、温室効果ガス排出削減や再生可能エネルギー導入など、気候変動対策を積極的に推進していくことが求められています。
当社グループは、「気候変動の緩和と適応」を持続可能な社会への貢献と企業の持続的な成長のための重要な経営課題の一つとして位置づけ、2022年1月にはTCFD提言に賛同を表明しました。
今後もTCFD提言に沿って気候変動への取り組みに関する情報開示を積極的に行ってまいります。

ガバナンス

代表取締役会長兼CEOが議長を務めるCSR会議を年に2回(5月・11月)開催し、当社ゴムグループが取り組むべきサステナビリティ課題について立案・検討する体制を整えています。
気候変動や自然資本に関する課題については、CSR会議の下部組織として「環境推進会議」(議長:CSR本部長)を設置し、カーボンニュートラル戦略をはじめとした気候変動、自然資本に関する戦略の検討とモニタリングを実施しています。さらに「環境推進会議」の下部組織として4つの委員会、2つの部会と2つの会議を設置し、個別テーマを深く検討しています。
また、重要事項や早期の意思決定、報告・審議が必要な場合には経営会議で報告・審議を行い、その重要性に応じて取締役会に上程(報告・審議)しています。
サステナビリティ課題の進捗に関しては、毎月、代表取締役会長兼CEO、代表取締役社長兼COO、CSR本部担当取締役、社内取締役監査等委員に報告を行い、また、年に2回(5月・11月)、海外を含むグループ全役員が集まって事業戦略等を議論する会議においても、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブなどの環境課題を継続的なテーマとして議論しています。

気候変動関連のガバナンス体制

コーポレートガバナンス体制

戦略

当社は、気候関連のリスクについて、低炭素経済への移行に関連するリスク(移行リスク)と気候変動の物理的影響に関連するリスク(物理的リスク)の二つに分類、影響を受ける財務影響の大きさを評価し、当社事業に及ぼすリスクと機会を整理しました。
さらに、気温上昇につきIEA(国際エネルギー機関)およびIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が示すシナリオを用いてシナリオ分析を実施し、1.5℃シナリオ、4℃シナリオそれぞれのリスクと機会を踏まえた適応策・財務影響等について検証しました。
今後も引き続き、リスクと機会の検討やシナリオ分析の精緻化を進めていきます。

気候変動に関する主なリスクと機会

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重要な要因 区分 潜在的な財務的影響 財務影響
リスク 移行
リスク
脱炭素社会への
移行
政策・
法規制
カーボンプライシングの導入・上昇
市場 資源(原料)価格の高騰・供給の不安定化
再生可能エネルギー・燃料価格(原油、天然ガス)の上昇
技術 製造プロセス効率の改善のための設備投資
評判 排出量削減の取組や取組姿勢に対する顧客評価、株価への影響
再生可能エネルギー利用を推進する世界的な動きへの対応(ステークホルダーからの評判)
製品・サービス需要の変化 市場 製造時CO2排出量評価による製品選別(同一製品内の競争)
自動車業界の変革への対応 市場 MaaSによる自動車販売台数の低下
物理的リスク 気温上昇に伴う気象災害の激甚化 急性 サプライチェーンの寸断による原材料調達困難化、調達コストの上昇
異常気象による設備損壊、運転停止
気候変動の激甚化 慢性 気候変動による天然ゴム(天然資源)の枯渇、調達困難化
降雪の減少等による冬用タイヤ需要の低下
製品性能向上に必要な研究開発投資の増加
機会 脱炭素社会への移行 エネルギー源 製造プロセス効率の改善によるエネルギーコスト削減
製品・
サービス
需要の変化(カーボンニュートラル対応・電動車(EV)装着の性能要求)や規制強化への早期対応によるシェアの拡大
製品・サービス需要の変化 製品・
サービス
再生可能/リサイクル原料を使用した環境負荷低減製品や低燃費、低炭素化製品の提供による競争力・収益力の向上
自動車業界の変革への対応 製品・
サービス
次世代モビリティを支える製品・サービスの需要増
(CASE・MaaS化への対応、水素利用による新たなビジネスチャンス)
気候変動 製品・
サービス
防災・復旧・気温変動や食料・自然に資する製品・サービスの需要増
(例:農作物/森林生育に資するタイヤ、オイルフェンダー等)

シナリオ分析の結果概要

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シナリオ条件 1.5℃シナリオ 4℃シナリオ
シナリオの概要 持続可能な発展のため、厳しい気候政策や技術革新により、2100年までの世界の平均気温の上昇を産業革命前に比して1.5℃に抑えるシナリオ 厳しい気候政策や技術革新が進まず、気候変動の物理的影響が急速に強まり、2100年までの平均気温が産業革命前に比して4℃上昇することを想定するシナリオ
参照
シナリオ
移行
リスク
IEA
Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE)
IEA
World Energy Outlook 2021(WEO2021)
物理
リスク
IPCC第6次報告書SSP1-1.9 IPCC第6次報告書SSP5-8.5
分析結果 主に移行リスク・機会が顕在化。

【リスク】
厳格な気候変動規制への対応が求められ、再生可能エネルギーの調達やカーボンプライシング導入などによりエネルギーコスト負担や製造プロセス効率改善のための設備投資が増加。
環境負荷低減製品の増加に伴い、再生可能/リサイクル原料の研究開発費や調達コスト負担が増加。

【機会】
カーボンニュートラル対応、EV装着の性能要求への早期対応、環境負荷低減製品や低燃費、低炭素化製品の提供により、競争力・収益力が向上。
主に物理リスク・機会が顕在化。

【リスク】
拠点やサプライチェーンにおける甚大な自然災害の発生が増加。また、異常気象により天然資源が枯渇し、原料供給が不安定化。
降雪の減少等による冬用タイヤ需要の低下など、慢性的な気候変動により製品需要が変化。

【機会】
防災・復旧・気温変動などに対応する製品・サービスの需要が増加。

リスクと影響の管理

「環境推進会議」の下で、気候変動関連のリスクについては「カーボンニュートラル推進委員会」、自然資本関連のリスクについては「ネイチャーポジティブ推進委員会」をはじめとする委員会、部会、会議がそれぞれ、リスクの特定・評価を実施し、その低減活動を行っています。
委員会、部会、会議にて特定された重要なリスクについては、「環境推進会議」において対策を審議・決定しています。また、自然災害等の物理リスクについては、「中央防災会議」において防災、BCPに取り組み、リスク低減を推進しています。重大かつ緊急性の高い事案については、当社を取り巻くさまざまなリスクからの防衛体制を強固にするために設置された「リスクマネジメント委員会」(議長:リスクマネジメント担当役員)において審議され、適切に評価対応しています。「リスクマネジメント委員会」の活動状況は、取締役会に定期的に報告されています。

指標と目標

当社では、気候変動にかかわるリスクの最小化のため、環境活動に関し、以下の中長期目標を掲げています。

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項目 中長期目標
カーボンニュートラル
  • 2030年に自社活動によるCO2排出量を2019年度比40%削減
  • 2050年に自社活動のCO2排出量ネットゼロ(カーボンニュートラル)を達成
サーキュラーエコノミー
  • 2030年に再生可能/リサイクル原料使用率40%以上
  • 2050年にサステナブル原料100%
自然との共生
  • 千年の杜活動における2030年までの植樹・苗木提供数累計150万本
温室効果ガス排出量(Scope1-2)とScope3の推移は以下の通りです。
温室効果ガス排出量(Scope1・2)は、2024年度よりインドのVisakhapatnam(ヴィシャカパトナム)工場をバウンダリーに追加した影響で、前期比でScope1が0.4%、Scope2が10.4%増加しました。Scope1・2の売上高原単位は前年度比でわずかに改善しました。
  • 2020~2023年度の温室効果ガス排出量(Scope1・2)の実績には、買収前のYokohamaTWSの排出量実績を含みます。
    2020~2023年度の温室効果ガス排出量(Scope1・2)の連結売上高原単位には買収前のYokohama TWSの排出量実績を含みません。
温室効果ガス排出量(Scope3)は、2024年度よりYokohama TWSとインドのVisakhapatnam 工場をバウンダリーに追加した影響で、前期比で57.1%増加となりました。Scope3における 売上原単位は、前年度比で41.4%悪化しました。
  • 2020~2023年度の温室効果ガス排出量(Scope3)の実績、連結売上高原単位には、買収前のYokohama TWSの排出量実績を含みません。また、カテゴリ8、13、14に分類される排出量実績はありません。

Scope3の算定

Scope3の内訳は以下の通りです。

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(排出量の単位:千t-CO2)
Cat Scope3の区分 2022年度 2023年度 2024年度
1 購入物品・サービス 4,022 3,381 4,584
2 資本財 175 199 253
3 燃料・エネルギー 129 139 139
4 輸送・流通(上流) 125 136 349
5 廃棄物 27 29 33
6 出張 5 13 18
7 従業員の通勤 19 24 29
8 上流のリース資産 該当なし 該当なし 該当なし
9 下流の輸送・流通 59 74 115
10 販売した製品の加工 14 10 12
11 製品の使用 21,087 20,735 33,212
12 製品の廃棄 906 913 1,636
13 下流のリース資産 該当なし 該当なし 該当なし
14 フランチャイズ 該当なし 該当なし 該当なし
15 投資 92 67 24
26,661 25,718 40,404
  • Yokohama TWSの温室効果ガス排出量実績(Scope3)は、2024年度より算入しています。なお、カテゴリ8、13、14に分類される排出量実績はありません。
  • 1 スコープ1:企業自身が直接排出したGHG排出量(例:化石燃料・天然ガス等)
  • 2 スコープ2:企業自身が間接的に排出したGHG排出量(電力等)
  • 3 スコープ3:企業が間接的に排出するサプライチェーンでのGHG排出量(製造、輸送、出張、通勤等)
  • 4 算定は、「GHGプロトコル」が発行したスコープ3基準に沿って行いました

温室効果ガス(GHG)排出量の検証

GHG排出量算定データの信頼性確保のため、第三者機関による検証を受けました。
また、当社サステナビリティサイトにて水利用量、廃棄物量、千年の杜・生物多様性保全活動などの各指標を開示しています。
各データは、こちらを参照ください。
横浜ゴムのサステナビリティ(統合報告書P51)