アニュアルレポート2019

社長メッセージ

代表取締役社長 山石昌孝

代表取締役社長 山石昌孝

2020年代の
飛躍に向け、
中期経営計画
「GD2020」を
着実に推進

山石昌孝代表取締役社長

横浜ゴムは2018年度より3カ年の中期経営計画「グランドデザイン2020(GD2020)」をスタートしました。横浜ゴムの強みを再定義し、独自路線を強めた各事業の成長戦略を通じて経営基盤を強化、これによりきたるべき2020年代における更なる飛躍に備えることが「GD2020」の位置づけです。ファーストステップとなった2018年度の主な成果と今後の取り組みをご紹介します。

2018年度は売上収益、事業利益ともに過去最高を達成

2018年度の日本経済は景気の回復基調が続きました。世界経済は米国で景気回復が継続し欧州も順調に回復しましたが、中国は減速傾向となりました。また、国内タイヤ業界では新車用、市販用ともに販売本数は前期を若干下回りました。こうした中、当社グループの売上収益は前期比0.6%増の6,502億円、事業利益は同1.7%増の593億円といずれも過去最高を達成しました。しかしながら、第3四半期に米国のタイヤ生産子会社であるYokohama Tire Manufacturing Mississippi, LLC. で112億円の減損損失を計上したことなどにより、営業利益は前期比1.4%減の535億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同10.9%減の356億円となりました。2019年度以降は「GD2020」の財務目標達成に向けて各々の戦略をさらに加速していきます。

プレミアムカーへの新車装着が拡大。商品ラインアップも拡充

「GD2020」のタイヤ消費財事業では「プレミアムタイヤ市場において存在感の更なる向上」をテーマに4つの戦略を推進しています。1つめの技術と品質でプレミアムカーから指定されるタイヤメーカーを目指す「プレミアムカー戦略」では2018年はグローバル・フラッグシップタイヤ「ADVAN Sport V105」がBMWの「M5」「X4」「X3 Mパフォーマンス」「X5 Mパフォーマンス」の4車種に加え、メルセデスAMGの「Eクラス 53シリーズ」に装着されるなど欧州プレミアムカーへの装着をさらに強化しました。また、「BluEarth-GT AE51」がトヨタ「クラウン」に装着されるなど国内プレミアムカーへの装着も進みました。

2つめの「ウインタータイヤ戦略」では国内においてヨコハマスタッドレス史上最高性能を実現した乗用車用スタッドレスタイヤ「iceGUARD 6」やSUV用スタッドレスタイヤ「iceGUARD SUV G075」のサイズ拡大を実施したほか、「iceGUARD 6」のランフラットモデル「iceGUARD 6 Z・P・S」を発売しました。海外では北米や欧州で需要が高まっているオールシーズンタイヤの販売を強化すべく、2018年9月に当社初となる欧州向けオールシーズンタイヤ「BluEarth-4S AW21」を発売し、販売も好調です。また、技術開発では冬用タイヤの吸水効果を高精度で評価し、氷上性能を飛躍的に高めることが期待できる新技術を確立しました。今後も先進的な技術開発と商品投入を進め、引き続き「ウインタータイヤの性能No.1」を目指します。

3つめの「ホビータイヤ戦略」ではレース、ラリー、オフロード、クラシックカーなど、あらゆる自動車ユーザーの趣味に対応する ラインアップの拡充を図っています。2018年はオフロード走行、ロックトレイルを楽しむユーザー向けにSUV・ピックアップトラック向けマッドテレーンタイヤ「GEOLANDAR X-MT」を北米と日本で発売し、特にSUV、ピックアップトラックの人気が高い北米において優れた悪路走破性が好評を得ています。また、ラリーやジムカーナ、ダートトライアルなどスポーツ走行を楽しむユーザーに人気の「ADVAN A053」「ADVAN A08B」「ADVAN A052」のサイズ拡大を図りました。

ADVAN Sport V105

BluEarth-GT AE51

ice GUARD 6 iG60

GEOLANDAR X-MT

4つめの「お客様とのコミュニケーション活性化」では「クルマのある生活をもっと楽しく!」を体現するタイヤメーカーを目指し、2018年は車好きのためのイベントとのタイアップや高速道路で唯一の体験型自動車イベントへの出展などお客様のカーライフを豊かにする様々な活動を積極的に行いました。また、当社のタイヤテストコース「北海道タイヤテストセンター」が立地する旭川市では試乗会の開催やローカルイベントへ参加し、地元ユーザーとの交流を図りました。また、SNSなどを通じて、日常的なコミュニケーションの形成を図っています。

高速道路で唯一の体験型自動車イベント「ハイウェイ・モーターショー」

高速道路で唯一の体験型自動車イベント「ハイウェイ・モーターショー」

国内外のトップレースで最高レベルの技術を追求

当社はモータースポーツを先行技術開発の場として位置づけ、国内外のトップレースをサポートしています。2018年もアジア最高峰のフォーミュラレース「全日本スーパーフォーミュラ選手権」や「FIAワールドツーリングカーカップ(WTCR)」をワンメイクサポートしたほか、国内の人気レース「SUPER GT」に参戦しました。さらに「全日本カート選手権」では最高峰クラスのOK部門でヨコハマタイヤ初のシリーズチャンピオンを獲得しました。2019年は世界的に過酷なレースとして知られる「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」への参戦や初開催の「TCRジャパンシリーズ」へのタイヤ供給が新たに決定しています。
「全日本カート選手権」OK部門のチャンピオン獲得車両

「全日本カート選手権」OK部門のチャンピオン獲得車両

「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」参戦車両の「NISSAN GT-R NISMO GT3(2018年仕様)」

「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」参戦車両の「NISSAN GT-R NISMO GT3(2018年仕様)」

オフハイウェイタイヤが好調

タイヤ生産財事業では、オフハイウェイタイヤ(OHT)を成長ドライバーとして、事業拡大を図ります。OHTでは2016年に買収したアライアンスタイヤグループ(ATG)、2017年に買収した愛知タイヤ工業ともに業績が好調で、2018年度の売上収益はATGが買収時の25.3%増、愛知タイヤ工業は過去最高を達成するなど着実に収益性を高めています。ATGでは好調な販売を背景にインド・ダヘジ工場の生産能力を2019年末までに従来比1.6倍まで増強する計画です。また、両社の国内販売を強化し、ATGでは2019年2月より国内大手建機メーカーへ建設・産業車両用タイヤの納入を開始したほか、農機用タイヤに日本市場向けサイズを追加しました。愛知タイヤ工業においてもヨコハマタイヤの販売網でフォークリフト用タイヤの取り扱いを開始しました。今後も両社とのシナジーを創出し、横浜ゴムグループにおけるタイヤ生産財事業の構成比率をさらに高め、次の100年の収益の柱に育てていきます。
ATGのダヘジ工場

ATGのダヘジ工場

国内販売を開始したATGの「324FarmPRO」(左)とヨコハマタイヤの販売網で取り扱い開始した「AICHI E-Cushion」

国内販売を開始したATGの「324FarmPRO」(左)とヨコハマタイヤの販売網で取り扱い開始した「AICHI E-Cushion」

北米事業基盤を活かし、トラック・バス用タイヤを拡販

トラック・バス用タイヤでは北米事業の基盤を活用して拡販しています。2017年下期よりボルボ・トラックの承認を獲得し、米国の大手メーカー3社へ納入を進めています。また、2019年3月には自動車産業の国際的な品質マネジメントシステム規格「IATF16949」認証を取得し、Yokohama Tire Manufacturing Mississippi, LLC. からの納入準備が整いました。また、当社の独自技術を活かした超偏平シングルタイヤでは日本と北米で「902L」の新サイズを発売するとともに、旺盛な需要に対応するため三重工場の生産能力倍増を決定し、段階的に実施しています。新商品では2019年4月より北米でロングホール深溝ドライブ軸用タイヤ「712L」を発売したほか、今後も日本、北米、欧州に新商品を続々と投入する予定です。

超偏平シングルタイヤ「902L」

超偏平シングルタイヤ「902L」

MB(マルチプル・ビジネス)事業では自動車部品と海洋事業を強化

MB事業では「得意分野への資源集中」を掲げ、「自動車部品ビジネスの拡大」と「海洋事業を確固たる世界No.1へ」に注力しています。自動車部品ビジネスでは次世代冷媒「HFO-1234yf」に対応したカーエアコンホースとカーエアコンの冷却効率を向上させる内部熱交換機を開発し、フィアットクライスラーの「Jeep® Wrangler」と「Jeep® Compass」に採用されたほか、北米のカーメーカー向けにバッテリー冷却配管の納入を開始しました。また、自動車の軽量化に伴うマルチマテリアル自動車構造用接着剤の需要増加を見据え、高強度・高弾性ウレタン系接着剤の基礎技術を確立ました。今後需要増加が見込まれる自動車構造用接着剤の開発に活用していきます。

海洋事業では当社が世界でトップクラスの技術とシェアを誇る空気式防舷材やマリンホースの開発・生産を強化しました。防舷材では直径6mの世界最大の超大型防舷材を開発したほか、マリンホースの国際型式認証「GMPHOM2009」を取得したPT. Yokohama Industrial Products Manufacturing Indonesiaがフル生産体制に入り、インドネシア国内外のお客様への納入を拡大しています。そのほかにも、国内でのコンベヤベルト販売を強化し、2018年度は過去最高となる国内シェアを獲得しました。また、油圧ホースも国内外の工場をフルに稼働し、建設分野の旺盛な需要に対応しています。

次世代冷媒「HFO-1234yf」に対応したカーエアコンホース

次世代冷媒「HFO-1234yf」に対応したカーエアコンホース

超大型防舷材

超大型防舷材

インドネシアで生産したマリンホース

インドネシアで生産したマリンホース

スポーツマーケティングによりブランド認知度を向上

ブランド戦略ではグローバルでYOKOHAMAブランドを強化します。当社はイングランド・プレミアリーグ「チェルシーFC」や米国メジャーリーグ「ロサンゼルス・エンゼルス」など著名なスポーツチームと契約を結んでいます。「チェルシーFC」とは2015年よりパートナー契約を結んでおり、2018年はFAカップ(イングランドサッカー協会杯)で優勝し、ユニフォームに表示された“YOKOHAMA TYRES”が様々なメディアに露出されました。また、2018年11月には日本でファンイベントを開催し、「チェルシーFC」のレジェンド、ディディエ・ドログバ氏が当社のアンバサダーとして登場し、会場に集まった約1,000人のファンと交流を深めました。さらに、2019年7月には2019-2020年シーズン・プレシーズンマッチが日本で開催されることが決定し、国内外の多くのメディアから注目されています。「ロサンゼルス・エンゼルス」とは2011年よりパートナーシップ契約を結んでおり、エンゼルスタジアムには「YOKOHAMA」の看板が掲出されています。2018年は日本人選手がメジャーリーグ新人王を獲得するなどファンやメディアの関心が高まり、宣伝効果も高まったと考えています。

ファンイベントで写真を撮るディディエ・ドログバ氏<Photo by Taro Irei>

ファンイベントで写真を撮るディディエ・ドログバ氏<Photo by Taro Irei>

「未来への思いやり」をスローガンにCSRを推進

CSRでは「未来への思いやり」をスローガンに掲げ「コーポレートガバナンス」「製品を通して」「地球環境のために」「人とのつながり」「地域社会と共に」の5つのテーマごとに国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けて取り組んでいます。2018年下期には持続可能な天然ゴムの調達方針を策定しました。また、グローバルな植樹活動「YOKOHAMA 千年の杜」プロジェクトや中国・老君山の生態系保護プロジェクトに継続的に取り組んでいます。また、従業員参加型の社会貢献基金「まごころ基金」では環境保護・人権擁護団体への援助を継続しているほか、2018年は国内外で多くの災害に見舞われましたが、各被災地へ義援金を寄付させていただきました。こうした当社のCSR活動は高く評価されており、2018年にはESG投資の株価指数である「FTSE4Good Index」に14年連続、「FTSE Blossom Japan Index」および「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」に2年連続で選定されました。

働き方改革やガバナンスを強化

安定かつ健全な事業運営を行う上で社員が活き活きと働ける職場環境の構築とコーポレートガバナンスの強化は重要なテーマです。当社は経営基盤強化の一環として「仕事と生活の両立支援」「多様な人材活用」を軸に働き方改革に取り組んでいます。2018年は女性活躍推進タスクの活動に加え、在宅勤務制度・時間単位有給制度の導入や70歳までの再雇用を製造現場にも拡大しました。コーポレートガバナンスにおいては社外取締役の増員および社内取締役の減員に加えて、外国人執行役員2名と女性の社外監査役1名を登用するなどダイバーシティ経営を推進しています。また、コンプライアンスを遵守するためのグローバル内部通報制度を中国およびフィリピンで導入しました。

財務体質の改善が進む

財務戦略では「GD2020」の3年間累計で2,000億円の営業キャッシュ・フローの創出、有利子負債の削減などを掲げています。2018年度は営業活動によるキャッシュ・フローが過去最高を達成したほか、有利子負債の削減を進め、D/Eレシオは前年比0.135ポイント減の0.696倍となるなど経営基盤の安定性を高めることができました。今後も財務体質のさらなる改善を実施し、引続き経営基盤の強化に取り組みます。

全社一丸となってさらなる成長を目指す

2019年以降の世界経済は米中貿易摩擦や英国のEU離脱など、先行き不透明な環境の中での舵取りとなります。 こうした中、2019年度は売上収益6,600億円(前期比1.5%増)、事業利益575億円(同3.0%減)、営業利益575億円(同7.5%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益400億円(同12.3%増)の計画を発表。また、2019年5月には固定資産売却益計上に伴い、営業利益を650億円(同21.5%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益を460億円(同29.1%増)に上方修正いたしました。「GD2020」の財務目標は2018年2月に発表した通り、最終年度である2020年度に売上収益7,000億円、営業利益700億円、営業利益率10%、2020年度末のD/Eレシオ0.6倍、ROE10%を目指しており、今後も目標達成に向けて全社一丸となって取り組んでいきます。

当社は「GD2020」の下、次の100年に向けて新たな一歩を踏み出しました。私は横浜ゴムは技術力、商品力、生産力、そして人間力において他社にない強みを持った企業だと考えています。その強みを再定義し、今後も収益を伴った成長を続けることで、世界中のお客様から信頼され、必要とされる企業を目指していきます。

全社一丸となってさらなる成長を目指す

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