アニュアルレポート2017

社長メッセージ

厳しい事業環境においても
常に成長できる企業を目指す

代表取締役社長 山石昌孝

2017年3月30日に代表取締役社長に就任しました山石昌孝です。今年、横浜ゴムは創業100周年を迎えます。そうした節目の年に社長に就任しましたことは責務の重大さを感じるとともに、次の100年に向けて横浜ゴムグループをより一層成長させていきたいと決意を新たにしています。

代表取締役社長 山石昌孝

代表取締役社長山石昌孝

54歳。企画部時代には現在取り組んでいる中期経営計画「グランドデザイン100(GD100)」の策定に携わり、MD推進室長、秘書室長、ヨコハマヨーロッパ取締役社長、経営企画室長、タイヤ企画本部長などを歴任。その後、経営企画本部長・タイヤ事業のトップであるタイヤ管掌を経て、代表取締役社長に就任。

2016年度の通期業績

2016年度の当社グループを取り巻く事業環境は原材料安などプラス要因もありましたが、需要低迷、円高、価格競争激化により厳しい状況が続きました。こうした中、当社は魅力的な新商品の開発や営業・販売強化、コスト削減などの内部改善に努めましたが、2016年度通期の連結売上高は5, 962億円(前年同期比5. 3%減)、営業利益は423億円(同22. 4%減)、経常利益は391億円(同20.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は188億円(同48.3%減)となりました。

中期経営計画「GD100」の仕上げに取り組む

当社グループは現在、2006年度に策定した中期経営計画「GD100」の最終フェーズであるフェーズⅣ(2015年度-2017年度)に取り組んでいます。フェーズⅣではタイヤ事業戦略として「グローバルOE(新車装着)市場への注力」「大需要・得意市場でのプレゼンス向上」「生産財タイヤ事業の拡大」、MB事業戦略として「自動車部品ビジネスのグローバル展開」「得意の海洋商品でNo.1カテゴリーの拡大」「グローバルでの建機・鉱山ビジネス強化」「独自技術を応用した新規事業の拡大」を掲げています。
「GD100」の仕上げの年となる2017年度はこうした戦略をさらに進展し、2017年2月に公表した売上高6, 600億円(前年同期比10. 7%増)、営業利益475億円(同12. 2%増)、経常利益435億円(同11. 2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益300億円(同59.7%増)の確実な達成を目指します。

OE事業は順調に拡大。中国が大きく成長

タイヤ事業戦略の第1の柱である「グローバルOE(新車装着)市場への注力」は2016年度も順調に拡大しました。特に伸びたのは大需要市場の中国です。中国ではカーメーカーに対する燃費規制強化を背景に当社グループの低燃費タイヤへの引き合いが強まりました。さらに、中国のお客様はOEタイヤの性能を信頼する傾向が強く、OE納入が市販用タイヤの拡販にも繋がるなど非常に良いサイクルができてきました。また2016年3月、独・コンチネンタルAGとの日系カーメーカーに対するOEタイヤ販売に関する提携を解消したことで、海外OE事業のさらなる強化が可能となり、北米や欧州を中心に積極的なアプローチを行っています。
OEはカーメーカーの厳しい要求水準をクリアしなければならないため、納入できるタイヤメーカーは限られており、当社はそのうちの一社です。当社の高い技術力は世界上位のカーメーカーからの評価も高く、日系メーカーはもちろん、すでに納入している海外メーカーに加え、その他の海外メーカーからも多くの要望をいただいています。目標として2020年度に海外OE納入本数を2014年度比で約4倍、将来的には世界のOE市場でシェア10%を目指しています。

チェルシーFC選手を起用した広告ビジュアルチェルシーFC選手を起用した広告ビジュアル

チェルシーFC効果が販売数増加に寄与

「大需要・得意市場でのプレゼンス向上」では、2015年からプレミアリーグのチェルシーFCとスポンサー契約を結び世界的な知名度向上を図っています。この知名度を活用し、大需要市場である北米、欧州、中国、当社が得意とする日本、ロシア市場に対し、グローバルに展開した生産ネットワークを通じてタイヤの最適供給を行っています。すでに欧州やアジアなどでは「チェルシー」効果が販売数の増加に寄与し始めています。
こうした中で重要となるのは販路の整備です。我々は世界中で「ヨコハマ・クラブ・ネットワーク」の拡大を進めていますが、お客様にしっかりと供給できる販売網の構築を進めていきます。併せて生産能力の拡大を引き続き行い、全世界のタイヤ生産能力を2018年末までに7,500万本まで引き上げる計画です。

積極的なM&Aで生産財事業を強化。生産財タイヤのスペシャリティーへ。

3つ目の柱である「生産財タイヤ事業の拡大」は今後の成長において非常に重要な戦略と考えています。その理由は生産財タイヤには高い技術力が要求されるため、新興タイヤメーカーの進出が難しく、市場が安定しています。当社はこの生産財分野でのスペシャリティーを目指し、2016年7月にオフハイウェイタイヤの専業メーカーであるアライアンスタイヤグループ(ATG)、2017年3月に産業車両用ノーパンクタイヤ専業メーカーである愛知タイヤ工業を買収しました。これにより、これまで扱っていなかった農業用タイヤや林業用タイヤなどがラインアップに加わったことに加え、タイヤ事業全体に占める生産財タイヤ事業の割合は20%から32%に拡大し商品ポートフォリオが改善しました。さらにATGの高い成長率と収益性を取り込むことでタイヤ事業の安定と強化を図ることができます。愛知タイヤ工業は日系産業車両メーカーと幅広く取引を行っており、同社商品は国内ノーパンクタイヤの業界ではトップブランドとなっています。
買収のもうひとつの狙いは横浜ゴム、ATG、愛知タイヤの強みを活かしたシナジー効果です。その一環として2017年5月よりATGの知名度が高い欧州でATGの保有するブランドである「アライアンス」を冠した乗用車向けの低価格ブランドを発売しました。「アライアンス」は横浜ゴム初のセカンドブランドであり、これによりこれまで当社が苦戦していた他社の廉価ブランドと戦える体制が整いました。
代表取締役社長 山石昌孝

MB事業は自動車部品と海洋商品に注力

現在、MB事業は多角化事業として多くの商品を生産販売していますが、今後は収益性の低い事業を見直し、収益性の高い事業へ投資するなどメリハリのある事業展開を図ります。こうした考えの下、特に注力していく戦略は「自動車部品ビジネスのグローバル展開」と「得意の海洋商品でNo. 1カテゴリーの拡大」です。現在、ホース配管は世界6カ国、海洋商品は3カ国に生産拠点を置き、市場に近い場所での生産販売を強化しています。
2016年度はホース配管ではタイの生産拠点から日系カーメーカーへのディーゼルターボ用オイル供給ホースの納入を強化した一方、2工場に分かれていた長野工場の統合を図るなど事業の効率化を進めています。また、海洋商品ではイタリアの生産拠点が横浜ゴムの「Seaflex(シーフレックス)」ブランドのマリンホースの販売を本格化させたほか、インドネシアの生産拠点でも空気式防舷材の生産をスタートしました。

厳しい環境においても常に成長できる企業を目指す

私は企業に求められるものは、厳しい事業環境においても収益を伴った成長を続け、株主や投資家の皆様との約束を確実に果たしていくことだと考えています。そのため、次の100年に向けて強い横浜ゴムの土台を作ることが私の果たすべき責務だと認識しています。
100年を振り返りますと、横浜ゴムは世の中にない様々な画期的な商品を生み出してきました。また、長い歴史の中で培ってきた高い技術開発力は世界トップレベルです。私はここに横浜ゴムならではの“色”を作り上げていきたいと思います。世界中に200以上のタイヤメーカーがある昨今、生産力や技術力だけでは埋もれてしまいます。人々が当社の名前やブランドを聞いた時、すぐにイメージが浮かぶような存在感と特色を備えた企業を目指します。100年に渡って受け継がれてきた「先進的な商品開発力」と「世界トップレベルの技術力」をさらに磨くとともに、横浜ゴムの“色”をはっきり示すことで、世界中のファンから選ばれ続ける強いメーカーとして成長していきたいと考えています。
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