アニュアルレポート2018

社長メッセージ

代表取締役社長 山石昌孝

新中期経営計画
「GD2020」スタート

収益を伴った成長を図り、
2020年代のさらなる飛躍を目指す

代表取締役社長 山石昌孝

横浜ゴムグループは2017年度に前中期経営計画「グランドデザイン100(GD100)」を終了し、新たに「グランドデザイン2020(GD2020)」をスタートさせました。「GD2020」の課題や戦略、経営基盤の強化についてご紹介します。

山石昌孝代表取締役社長

「GD100」の成果

「GD100」は当社グループが2006年度から2017年度まで12年間に渡って取り組んできたもので、3カ年ごとに4つのフェーズに分けてテーマや具体的な戦略を策定し、2017年度に最終のフェーズⅣ (2015年度―2017年度)が終了しました。「GD100」の成果としては、「グローバル展開の推進」「環境貢献技術の向上」「事業ポートフォリオの強化」の3つが挙げられます。「グローバル展開の推進」では生産、販売、技術の各分野での拠点ネットワークの拡充が進み、新車用タイヤの海外ビジネスを大幅に伸ばすことができました。また、2015年より、英国プレミアリーグ「チェルシーFC」とパートナー契約を結んだ効果も相まって、グローバルでYOKOHAMAブランドの認知度が向上しました。
「環境貢献技術の向上」では昨年、目標どおり全ての発売商品において自社基準を満たす環境貢献商品比率100%を達成しました。また、市販用、新車用の低燃費タイヤをグローバルで拡販しました。
そして、「事業ポートフォリオの強化」では2016年に農業機械用、林業機械用タイヤメーカーであるアライアンスタイヤグループ(ATG)、2017年には、産業車両用タイヤメーカーである愛知タイヤ工業を買収し、当社グループの売上高に占めるタイヤ生産財事業の比率を向上させました。

成長基調で推移するも「GD100」フェーズⅣの目標は未達となる

「GD100」最終年である2017年度の売上高は6,680億円(2005年度比で48%の増加)、営業利益519億円となり、過去最高の売上高を達成しました。また、各項目の海外比率も大幅に増加しており、「GD100」の12年間で着実に成長できたと考えています。
しかしながら、全体的には成長基調で推移したものの、「GD100」フェーズⅣの当初目標であった売上高7,700億円、営業利益800億円には届きませんでした。
フェーズⅣでは市場での価格競争の激化や、当社の大型投資や買収などによる費用の一時的増加により、営業利益が伸び悩み、有利子負債が増加しました。「GD2020」では、高付加価値品への資源集中による商品ミックスの向上、実行済みの大型投資や買収によって生み出される効果の確実な刈り取り、財務体質の強化を課題として掲げそれぞれの改善に取り組んでいきます。

※日本会計基準準拠の数値

「GD100」各フェーズの業績推移

「GD100」各フェーズの業績推移

2005年度と2017年度の業績比較

2005年度 2017年度
売上高 4,519億円 6,680億円 +48%
営業利益 219億円 519億円 +300億円
営業利益率 4.8% 7.8% +3.0ポイント

2005年度と2017年度の海外比率の比較

2005年度 2017年度
売上高 23% 56% +33ポイント
生産能力
(タイヤ)
21% 60% +39ポイント
新車納入
(タイヤ)
0.3% 50% +50ポイント

「GD2020」では経営基盤を強化し、2020年代でのさらなる飛躍に備える

当社グループを取り巻く環境として、2024年までの全世界の自動車生産台数は平均値で年率1.9%と堅調な推移をすると見込んでいます。また、タイヤについてはそれを上回る年平均3.2%の需要伸長を見込んでいます。しかしながら、タイヤ業界ではこの数年で中国を始めとした新興国メーカーが売上げを大きく伸ばしており、タイヤメーカーの金額シェア推移を見ると、上位メーカーのシェアが下落傾向にあることがうかがえます。そのような環境の中、新中期経営計画「GD2020」では、横浜ゴムの強みを再定義し、独自路線を強めた各事業の成長戦略を通じて経営基盤を強化していきます。これによりきたるべき2020年代におけるさらなる飛躍に備えることが「GD2020」の位置づけです。

GD2020

拡大の見込まれるプレミアムタイヤ市場でさらなる存在感の向上を目指す

まず、タイヤ消費財戦略においては、プレミアムタイヤ市場においてさらなる存在感の向上を目指します。自動車業界は電動化、自動運転、シェアリングエコノミーの拡大など、大きな転換期を迎えています。自動車の移動手段としての側面がクローズアップされ、コモディティ化が加速すると見ています。
しかしその一方で、自動車生産台数におけるプレミアムカーの構成比率は、2004年から2016年の間に9%から12%まで拡大※1しています。2030年頃には米国におけるプレミアムカーの年間販売台数は、2015年比で約4割増加※2するという調査結果も出ており、プレミアムカー市場は今後もさらに拡大していくと見ています。こうした状況にビジネスチャンスがあると考えており、拡大の見込まれるプレミアムタイヤ市場をターゲットに、4つの戦略を推進していきます。
1つ目のプレミアムカー戦略では、技術と品質で世界のプレミアムカーから指定されるタイヤメーカーを目指していきます。
2つ目にウィンタータイヤ戦略です。安全面で非常にシビアな性能が求められるウィンタータイヤにおいて、No.1の性能を目指し、国内スタッドレスタイヤ、欧州ウィンタータイヤ、ロシア・北欧向けのスタッドタイヤのレベルアップを図っていきます。
3つ目はホビータイヤ戦略です。将来的に、クルマは自動運転やカーシェアリングなど、便利なものに移行していく一方で、自らクルマを所有し、自らハンドルを握る・クルマを操る、という楽しみ方を求める層も対極的に存在するものと確信しています。私たちこそ、この「クルマを趣味とする」という方々にお応えできるタイヤメーカーでありたいと考えています。そのために、レース、ラリー、オフロード、クラシックカーなど、あらゆる自動車ユーザーの趣味に対応する商品ラインナップの拡充を図っていきます。
そして4つ目には、SNSを駆使しお客様とのコミュニケーションを活性化させ、「クルマのある生活をもっと楽しく!」を体現するタイヤメーカーを目指していきます。

※1:Marklines、横浜ゴム調べ
※2:Roland Berger調べ

タイヤ消費財戦略

プレミアムカー戦略技術と品質で選ばれるタイヤメーカーへ

ホビータイヤ戦略あらゆる自動車趣味に対応する商品ラインナップ

ウィンタータイヤ戦略国内、欧州、ロシア・北欧向けウィンタータイヤで性能No.1

お客様とのコミュニケーション活性化「クルマのある生活をもっと楽しく!」を体現するタイヤメーカーへ

オフハイウェイタイヤを成長ドライバーにタイヤ生産財事業を収益の柱に育てる

タイヤ生産財戦略では、オフハイウェイタイヤを成長ドライバーとして事業拡大を図ります。ATGの農業機械用タイヤ、林業機械用タイヤ、愛知タイヤ工業の産業車両用タイヤ、そして横浜ゴムの建設車両用タイヤを最大限活用して、事業ポートフォリオの拡充を図ります。インドを拠点としたATGの持つ圧倒的なコスト競争力を強みに拡販に努める一方、競争優位な特殊用途タイヤをさらに強化していきます。
こうした取り組みにより、当社グループにおけるタイヤ生産財事業の構成比率をさらに高め、次の100年の収益の柱に育てていきます。
また、トラック・バス用タイヤにおいては、米国ミシシッピ州に建設した最新鋭の設備を持つ工場の高い品質と柔軟な供給体制を強みに、世界最大級である北米市場での拡販を図っていきます。商品面においては、当社の独自技術であるSpiraLoop®(スパイラループ)と呼ばれるベルト構造を採用した超偏平シングルタイヤを積極的に展開していきます。超偏平シングルタイヤは従来のデュアルタイヤを1本のタイヤに置き換えることにより、タイヤの軽量化による燃費向上と小型化による積載量増加に貢献します。

事業別構成比

事業別構成比
オフハイウェイタイヤを成長ドライバーにタイヤ生産財事業を収益の柱に育てる オフハイウェイタイヤを成長ドライバーにタイヤ生産財事業を収益の柱に育てる オフハイウェイタイヤを成長ドライバーにタイヤ生産財事業を収益の柱に育てる
米国ミシシッピ州に新設したトラック・バス用タイヤ工場。最新鋭設備による最高レベルの効率と品質を実現
米国ミシシッピ州に新設したトラック・バス用タイヤ工場。最新鋭設備による最高レベルの効率と品質を実現

米国ミシシッピ州に新設したトラック・バス用タイヤ工場。最新鋭設備による最高レベルの効率と品質を実現

超偏平シングルタイヤ

超偏平シングルタイヤ

MB事業は得意分野へ資源集中

MB(マルチプル・ビジネス)事業戦略については得意分野への資源集中をテーマに掲げ、自動車部品ビジネスの拡大と海洋事業を確固たる世界No.1へ、を戦略の柱として取り組んでいきます。
まず、持続的な成長が期待できる自動車部品ビジネスの拡大です。これまで当社は、パワーステアリング、トランスミッションオイルクーラー、エアコン用など、自動車用のホース配管や接着剤などをグローバルに拡大してきました。今後も世界各国に設置した拠点を活用して事業拡大を図っていきます。また、大変革期を迎えた自動車業界の中で確実に成長していくために、次世代の技術や商品の開発に努めていきます。
次に、海洋事業です。原油輸送用のマリンホースや船舶の緩衝用の空気式防舷材において、当社の高い技術力は世界的に評価されています。さらに、日本とインドネシア、イタリアの3極の生産拠点を最大限に活用し、確固たる世界No.1の地位を確立していきます。また独自技術による商品化を推進し、さらに安全なエネルギー輸送に貢献していきます。

MB事業は得意分野へ資源集中 MB事業は得意分野へ資源集中

独自技術とグローバル開発体制により各事業の戦略を支える

技術戦略における当社の強みは独自の特性コントロール技術とグローバルな開発体制にあります。特性コントロール技術とは「すり合わせ技術」のことであり、当社の持つ材料技術、評価技術、構造設計技術を応用し、長寿命、氷雪性能、低転がり性能、ウェット性能、高速操縦安定性といった、お客様が商品に求める様々なニーズを具現化させる技術です。当社はこの技術により、タイヤをはじめMB、ゴルフまで数多くの高性能・高品質の商品を世に送り出してきました。開発体制においては、2018年に北海道旭川市のタイヤテストセンターに安定した氷上テストが可能となる屋内氷盤試験場を新設し、ウィンタータイヤの開発環境を強化しました。
また、2016年に米国ノースカロライナ州に研究開発センターを設立し、米国内における開発体制の拡充を図りました。
このようなグローバルな開発体制の拡充と独自の特性コントロール技術により、卓越した性能と品質の商品を作り出し、「GD2020」の事業戦略を支えていきます。
また、先行技術開発として重要なモータースポーツ活動にも積極的に取り組み、最高レベルの技術を追求していきます。 2018年は2016年からワンメイクサポートをしている「全日本スーパーフォーミュラ選手権」への2スペックタイヤの供給に加え、新たに「FIA世界ツーリングカー選手権(WTCC)」の後継レースである「FIAワールドツーリングカーカップ(WTCR)」へのタイヤ供給が決定しました。今後もこうしたトップカテゴリーを含め、グローバルで様々なレースをサポートしていきます。

グローバル開発体制

R&D拠点

評価拠点

グローバル開発体制
全日本スーパーフォーミュラへのワンメイク供給と2スペック導入

全日本スーパーフォーミュラへのワンメイク供給と2スペック導入

“チェルシー効果”を最大限に活用

「GD2020」においても、グローバルでYOKOHAMAブランドを強化していきます。当社は2015年より英国プレミアリーグの「チェルシーFC」と5年間のパートナー契約を結んでいます。選手のユニフォームの胸に表示された“YOKOHAMA TYRES”のロゴがメディアを通じて世界中に露出され、欧州、東南アジアを中心にブランド認知度が急上昇しています。欧州の主要リーグにおいて、胸スポンサーを獲得しているタイヤメーカーは極めて限られており、そのメリットを今後も最大限活用し、ブランド力強化に努めていきます。
さらに、SNSを駆使し、アクティブな企業イメージを訴求していきます。

ユニフォームの胸に“YOKOHAMA TYRES”が表示

ユニフォームの胸に“YOKOHAMA TYRES”が表示

経営基盤の強化を図る

経営基盤の強化では「CSR」「人事施策」「コーポレート・ガバナンス」「リスクマネジメント」「財務戦略」に取り組みます。

CSR

当社が取り組む課題を地球環境、地域社会、お客様、株主・投資家の皆様、お取引先様、従業員の6つのステークホルダーごとに整理、分類しました。「未来への思いやり」をコンセプトに、事業活動を通じた価値を創造していきます。
地球環境では「GD100」において最終年度である2017年度までに、全ての商品を環境貢献商品にするという目標を掲げて活動し、昨年計画どおり100%を達成しました。「YOKOHAMA千年の杜」プロジェクトでは国内外拠点における50万本植樹という目標を達成しました。また、東日本大震災の被災地である岩手県大槌町では継続的な復興支援を行っています。

人事施策

人的資源の活用と育成による組織の活性化を目指し、在宅勤務制度の導入や育児、介護支援施策を実施していきます。

コーポレート・ガバナンス

グローバルおよび役員制度におけるガバナンス強化に努めます。海外の地域統括会社の持株会社化と地域統括会社への内部監査人配置を進め各地域内の内部監査体制を強化します。さらに、グローバル内部通報制度の導入により、問題の早期発見と未然防止を図っていきます。
役員制度においてもガバナンス強化を図っていきます。当社は2018年より、取締役を対象とした「譲渡制限付株式報酬制度」を導入することで、株価変動のメリットとリスクを株主の皆様と共有し、株価上昇および企業価値向上への貢献意欲を従来以上に高めていきます。また、社内外取締役の構成比率も変更し、社外取締役の増員と社内取締役の減員を実行しました。

リスクマネジメント

企業が直面する様々なリスクを組織的に管理・最小化するため、CSR会議を筆頭にリスクマネジメント委員会、安全衛生委員会、コンプライアンス委員会などの委員会や会議体を設置しています。

財務戦略

これまでに説明した成長戦略を着実に推進し、収益力を向上させることで、3年間累計で2,000億円の営業キャッシュフローの創出を目指します。また、資金調達については、グループ資金の有効活用を図ります。これらの取り組みにより、有利子負債削減などの財務基盤の強化と適正な株主還元の両立を目指していきます。配当性向は30%を目標とし、設備投資は減価償却費の範囲内で計画しています。2020年の財務目標には売上収益7,000億円、営業利益700億円(営業利益率10%)、D/Eレシオ0.6倍、ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)10%を掲げています

※ IFRS(国際財務報告基準)準拠の数値

財務目標

売上収益 7,000億円
営業利益(率) 700億円(10%)
D/Eレシオ 0.6倍
ROE 10%
営業キャッシュ・フロー 2,000億円(3年間累計)
設備投資 減価償却費範囲内(除く戦略投資)

「GD2020」スタートにあたって

「GD2020」がスタートし、いよいよ次の100年に向けて動き始めました。当社グループを取り巻く環境は、今後も絶えず変化していくことと思います。こうした不確実な時代の中、横浜ゴムの強みを再定義し、戦略を明確にしたうえで、収益を伴った成長をし続けるために策定したのがこの「GD2020」です。人々が当社の名前やブランドを聞いた時、すぐにイメージが浮かぶような存在感と特色を備えた企業を目指し、全社員一丸となって挑戦し続け、世界中のお客様から信頼され、必要とされる企業へと成長していきます。
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