ニュースリリース

「次世代型タイヤモニタリングシステム」開発

横滑りをより早く感知、車の安全技術をさらに進化させる

2005年10月20日

  • タイヤ関連
  • 技術関連

横浜ゴム(株)(社長:南雲忠信)はタイヤの空気圧だけでなく、走行中の路面状況やタイヤの挙動を精密に感知できる「次世代型タイヤモニタリングシステム」を開発している。自動車への搭載が進む横滑り防止システム※と組み合わせると、既存のシステムに比べ0.2秒早く横滑りを感知し、時速100kmの場合で11mの違いとして表れる。また、タイヤの空気圧モニタリングシステムと車の横滑り防止システムをひとつにできる利点もある。

 横滑り防止システムは、車の状態を常時モニタリングしている制御コンピュータが横滑りを感知すると、エンジン出力を制御したり4輪個別にブレーキをコントロールすることで安定した走行姿勢に車両を制御する。通常は制御コンピュータに情報を送る各種センサーが車体に取り付けられているが、横浜ゴムはタイヤがスリップしてからセンサーが検出するまでに時間差が生じることに着目。直接タイヤ(ホイール)にセンサーを装着することで、より早く横滑りを感知できる「次世代型タイヤモニタリングシステム」を開発している。

 「次世代型タイヤモニタリングシステム」の要となる技術が、加速度センサー・モジュール「Gセンサー」。車体より動作環境の厳しいタイヤ内部に装着するため、「Gセンサー」は重さ約0.3gの軽量でありながら、最大時速300km(重力加速度1000G)に耐えられる強度を持つ。また、既存の横滑り防止システムより微小な変化を検出できる高感度を実現しており、車体の挙動やタイヤ性能、濡れた路面と乾いた路面の識別など多くの特性を判別できる。その結果、より早く、より正確に横滑りを感知できるようになった。

横滑り防止システムの装着台数は、この2~3年は年平均成長率20%以上の伸びで拡大している。自動車メーカーなどのデータから事故抑制効果の高さが実証されており、メルセデス・ベンツが全車種に標準装着しているほか、ビッグスリーが2005年モデルから大型SUVを中心に標準装着を進めていく方針を出している。現状の装着率は欧州が35%を超えているものの、日本、米国は10%前後。普及率はまだ低いが、今後大きく市場が拡大すると予測される。

 横浜ゴムはトラック・バス用のタイヤ空気圧モニタリングシステム「HiTES(ハイテス)」を2003年に国内で初めて販売。続いて2004年に乗用車用の「AIR Watch(エアーウォッチ)」を発表し、国内ではいち早く空気圧モニタリングシステムの実用化を進めてきた。今後は「Gセンサー」を活用し、空気圧監視だけでなく、車両制御などにも役立つ「次世代型タイヤモニタリングシステム」の開発を進めていく考え。

※横滑り防止システムはESP(Electronic Stability Program)、ESC(Electronic Stability Control)など自動車メーカーごとにさまざまな名称で呼ばれている

左:装着例、中央:Gセンサー、右:ICプロセッサー

「次世代型タイヤモニタリングシステム」の特長

世界で初めて、3軸加速度センサーをタイヤに内蔵

「次世代型タイヤモニタリングシステム」に搭載する「Gセンサー」は、圧力センサー、温度センサーに加え、3軸加速度センサーを内蔵しているのが特長。3軸加速度センサーはタイヤの回転方向、遠心力方向、横方向の三つの動きを検知する。そのため、タイヤの回転数やハンドルの向きなどタイヤの挙動を精密に感知できるほか、タイヤと道路との間の振動や滑りなどの情報も拾える。タイヤ装着型の3軸加速度センサーを搭載したタイヤモニタリングシステムは世界初。

車体センサー信号とホイールセンサー信号の比較

次世代モニタリングシステムの場合、車体で検知するより0.15~0.2秒早く車両の動きを検知できる

「Gセンサー」を使った次世代型モニタリングシステムの構成図