
GEOLANDARが誘う深淵なる釣りの世界
果たしてより遠く、広く、深く、釣りの世界を広げるべく、ここでフィールドでのタイヤの可能性を再考してみよう。
ここ数年、実に熱を帯びてきているアウトドアの世界。
なかでも釣りを取り巻く環境は、様々なアイテムの進化と共にますます広く深くなり、世界中の人々を熱狂させている。かくいうボクもトラウト&サーモンのルアー&フライフィッシングの世界にドップリのひとりで、毎年漁期(ほぼ3月〜9月末、地域により10月初旬まで)になると仕事の合間を縫って、北海道から陸奥、中部の深山に入り浸り、ロッドを振っている。
北の大地ではハンノキやタケカンバ、ちょっと南下するとブナやナラなどが生い茂る森の中に分け入り、山と木々が育んだ母なる流れに浸かると、特別な世界の門が開かれるのだ……。旅の友、フォルクスワーゲンT4ウェスティのドアステップに腰掛けてウェーダー(釣り用の胸まである長靴)を履き、フィッシングジャケットを羽織ると、いよいよ冒険の始まりだ。
落葉が堆積する森の小路を行くと、まるで小学生の頃に戻ったように心ときめき、少し早歩きになってしまう。足場を選んで急斜面を下る。時には蔦を手がかりにして、息を切らせて谷底に降りると、そこにはボクだけの特別な世界が広がっているのだ。

むせるような甘き香りを運ぶのは季節の草花や木々である。野鳥が恋の歌を囀り、実はちょっとばかりやかましい。緑の天幕のように生い茂った森の木々からは木漏れ日が差し、点在する大石を縫う清らかな流れはキラキラと輝く。特筆すべきは、この極めて禍福な世界は序章に過ぎないということで、これからこの素晴らしき世界のクライマックスがやってくる。少し冷たい端麗なその流れに浸かり、絡まる水の重みを足に感じつつ、じゃぶじゃぶと流れを行く。
ここぞ! と思ったポイントにビュン! と小気味よくミノー(小魚を模したルアー)を投げ入れ、クリン! クリン! とリールのハンドルをリトリーブ(巻き上げること)する。そんなことを幾度となく繰り返し、探りながら遡行(川を遡ること)すると、突然、コン! とロッドを介しアタリが手元に伝わる。

その刹那、クッ! とあわせてフッキング(針掛かり)させるとククク、クンクンクン! とロッドティップ(竿先)が震えると、同時にボクのハートも激しく揺さぶられる。
「うぉっ! やった! 来たよ……」
ポッチ、いわゆるお一人様の世界でも、この時ばかりは嬉しさが溢れて、思わず自然に声が出てしまう。
ラインの先のその先のルアーには、どのような川の申し子が喰らい付いているのだろうか。時に相手が大物であると、流れを跨いで激しく抵抗するので、やりとりは慎重に……。
なだめすかし、いなして寄せ、ランディングネット(タモ網)にネットイン!その須臾(すゆ)この世界はクライマックスを迎える……。ネットに横たわるのは、宝石のような渓魚(渓流の魚)である。鮮やかで大きなパーマーク(斑文)を纏い凛としたヤマメ、白点や朱点が美しく、ちょっと愛嬌があるイワナ、大きな鰭で激しく抵抗するマッチョなニジマス……。

それはいうまでもなく極めて美しく艶やかで、なかでも幽深の流れで静かに世代交代を繰り返してきた天然魚は、エッジが立ちピンと張った鰭、まるで蝶のような特有のパーマークを持ち、養殖魚にはない黄金比で完成された魚体を持ち、眉目好く可憐で実に奥ゆかしい。
「う〜ん、かっちょいい! イイコにしててね……、直ぐ終わるから……」
ボクは夢中でシャッターを押し、極めて繊細な川の子を流れへと戻す……。美しさは儚さと裏表で、それでサヨナラ……。そこがまた切なくも愛おしくあり、この世界を特別なものにしている。切なる孤高のひとときを求めるポッチ君には最高の演出であり、誰もが等しく楽しめる極点なのだ。
嗚呼! この世界を禍福といわず、なんといおう……。あまりにもハートが昂ぶり、すっかり話の腰が折れてしまったが、かような世界を楽しむに当たり、ボクはT4ウェスティで車中泊を楽しんでいる。

できるだけ釣り場に近いフィールドで寝起きして、川と共に時間を過ごせば、それだけ美々しきサカナ達に出会える確率が高まるからだ。
かような素晴らしき山釣りの世界へのアクセスは、残念ながらこれ全てイージーではない。天然在来種を狙うボクの場合、渓魚と出会うための別天地までは、かなりのロングドライブとなる。後述するが、片道700キロ以上……、なんていう地域にも出かけるので、移動に半日から一日をかけることもざらなのだ。
延々と続く高速、もしくはあえて下道の趣在る街道を愉しみながら行く場合もあるのだが、そのようなシーンで実に快適なドライブを提供してくれるのが、ボクがチョイスしている『GEOLANDAR CV G058』である。
※著者のT4ウェスティは合法的な構造変更により、タイヤのロードインデックス(負荷能力)に適合した仕様となっています。

高速のジョイント(つなぎ目)でもバタつかず、歪に波打つ路面でも追従性は極めて高い。不意の雨でも排水性は抜群で、疲れることなく目的地まで快適なロングドライブをサポートしてくれる。さらに優れているのが、入渓点(渓流釣りで川に入る地点)に到達するに至って、避けることが出来ないフラットダートでのスペックである。

なにひとつ不自由なくしっかりと整備された感がある、きょうびの日本全国の道であるが、稀少なる美しき渓流魚が棲まう深山の流れへのアクセスでは、うねうねと連なる林道や、河川へと続くスロープがネックなのだ。舗装されていれば道幅に気を付け、対向車などの確認を慎重に勤めて安全運転で進めば、一般的なコンフォートタイヤなどでもなんとかなるだろう。
しかしながら、でこぼことした狭小な未舗装路ともなると、かなり条件が違ってくるのだ……。

残念なことに林道は平らではない。特に山側の路肩は土砂や砂利、落石にて法面(のりめん/斜面のこと)となっている場合がその殆どである。道幅が狭小な場合は、この法面にタイヤを乗せて進むことになるのだが、車重がかかり、タイヤが変形した歳に、尖った石などでキャップトレッド部分のみならず、ヘタをするとショルダー部やサイドウォール部を損傷してしまうこともあるのだ。事と場合によっては、ビード落ちという最悪の事態にもなりかねない。
タイヤの部分名称は以下のページを参照
タイヤはその素材がゴムである。さらに乗り心地をよろしくするために変形するという特性がある以上、これはどうにも防げない定めである。このジレンマから逃れるには、全体的に剛性が高く極めて分厚い構造のマッドテレーン、オールテレーンとよばれるマッチョなオフロード専用タイヤを履く以外に方法はない。
しかしながら、マッチョなオフロード専用タイヤはゴム厚も相当なもので、そのスパルタンなスペックゆえ、乗り心地は終始ゴツゴツとしたものとなり、またロードノイズも酷く、騒音もとい、爆音! といったレベルである。これって、クロスカントリー(野山や悪路を走行する嗜み)を趣味とした御仁以外には耐えられないものだ。かくいうボクも、山釣りを成就させるためにさんざん無茶をして、過去にとんでもない災難に多々見舞われたクチだ。
林道でパンクして、スペアに交換したらそのスペアも切れた! なんて笑い話にもならない辛酸をなめたこともある。そもそも乗り心地重視のコンフォートタイヤにて林道を介し、山深きフィールドに進むという行為自体が愚行であり、まったくもって馬鹿馬鹿しい限りなのだが、美しい深山の流れで、これまた極めて眉目よき渓流魚をどうにも釣りたいのだから仕方ない……。
そんなわけで、身をもって学習したボクが、散々悩み、あれこれサーチした結果が、ベストバランスの『GEOLANDAR CV G058』のチョイスだった。ショルダー部やサイドウォール部はある程度の肉厚に守られ、それでいて乗り心地も損なわれず、普段使いにもいざというときの林道にもそこそこ融通が効くとってもオリコウサンなタイヤ、それが『GEOLANDAR CV G058』なのである。
「これから島根まで700キロね! 佐賀まで1200キロだわぁ〜!」なんてことがアタリマエで、「豊富中頓別線(ほぼ30キロ近いダート)でオホーツク側から日本海側へ抜けたろ……!」なんてことをしょっちゅうやっているボクにとって『GEOLANDAR CV G058』は正に目からウロコの魔法の靴だった……。
GEOLANDARブランドサイト
重量車のT4ウェスティを快適に支え、途方も無い長距離クルーズを静かに、心地よく、そして釣り場への林道や河川への荒れたスロープも問題なく通過! ボクが良きサカナ達と邂逅し、素晴らしき思い出を得られことはいうまでもない。
この原稿を記している現在『GEOLANDAR CV G058』は、北海道、岐阜県から石川県にかけての中部の深山、いなべ市から長野の深山、伊豆半島行脚……、と約4000キロ近い距離を走破したが、もちろんパンクは皆無で、偏摩耗もなし!
「靴によって私は私になる……」 という格言があるらしいが、ボクにとって『GEOLANDAR CV G058』は、正しくボクがボクであるための魔法の靴なのだ。
ただし、オフロード専用タイヤではないので、前記の法面(のりめん)走行などでは決して無理をしないこと。悪路では路面(地形)をサーチしながら、タイヤの位置、四隅の感覚を意識してクロウリング(地形に沿って這うようにゆっくりと進むこと)に徹し、スローに進むことが、これ無事に繋がるのである……。
さて、今度は何処を旅してどんなサカナ達と遊んでもらおうか? 机に座って作画していても、御不浄に籠もっていても、そして寝る前のひとときでさえ、川を想うとワクワクが止まらない。これも魔法の靴のその効能である……。
良き釣りと良き旅を。ラヴ&ピース。
著者プロフィール:うぬまいちろう

本業のイラスト作画の傍ら、数々のSUV、そして3台のアメリカンモーターホーム、フォルクスワーゲンT4ウェスティを2台乗り継ぎ日本中を放浪。実に100万キロ以上の釣り旅を車中泊にて謳歌する。自動車専門紙での長期連載、有料放送の釣り番組のMCなど多方面での活躍に加え、釣りはもとより他に町歩き、旅、グルメなどの著書多数。ジャパン・フィッシングイラストレーターズ・メンバー、サンヨーナイロン・ラインアンバサダー。