
長距離運転の疲れや肩こり・腰痛 はこれで撃退! スポーツマッサージ師に聞いた正しい姿勢とストレッチ方法
長距離ドライブで感じる疲労や痛みの原因と予防・対策について、スポーツマッサージ師の平野佑樹さんに聞いてみました。
手軽にチャレンジできるストレッチやリラックス方法など、快適に長距離ドライブができるコツをご紹介します。
平野佑樹(ひらの ゆうき)
鍼・スポーツマッサージ師。平野治療院院長。主要な国際大会出場選手のサポートや、箱根駅伝優勝校のサポートトレーナーとして活躍。
ロングドライブによる体への負担の原因とは
長距離運転によってもたらされる疲労や痛みの原因は何なのでしょうか。主に2つの原因が考えられると平野さんは言います。
長時間の座りっぱなし
ひとつめに挙げられるのが「座りっぱなしの姿勢」です。そもそも人間の体は座る形にデザインされていない、と平野さんは指摘します。
座り姿勢を長時間続けることは体にとって負担です。例えば、腰痛の原因となるのは腰椎への圧迫です。立っていれば、上半身の重さも脚の筋肉で支えられるのですが、座ってしまうと腰椎へ負担がかかってしまう。これが長時間続くとクッションとなる椎間板が圧迫されて、坐骨神経を刺激するのです。これが腰やお尻、脚にダルさや痛みをもたらしています。
AT車を長時間運転し右足が疲れる場合には、偏った重心での座り姿勢が原因となっています。
運転中はアクセルやブレーキを踏むために、重心がずっと片側に傾いている状態が続いています。片側にずっとお尻が乗ってしまうと、そこだけ坐骨神経と血管を圧迫してしまい、結果として神経痛や血流障害を引き起こすのです。
悪い姿勢での運転
ふたつ目に挙げられるのが「悪い姿勢」での運転です。
集中して運転を続けていると、肩や背中が丸まり、首が前に出てしまいます。これは上半身に負担のかかる姿勢で、背中や首へ悪影響を及ぼします。
背中や首は連動しており、負担をかけ続けることで、結果として頭痛や目の疲れの原因になることも考えられます。
運転が原因の疲れや痛みの対処法3つ
長時間の座り姿勢、悪い姿勢から引き起こされる体の疲れや痛みには、どのような対処方法がよいのでしょうか?
やはり頻繁に体を動かすことですね。理想は30分に1回は体を動かしてほしいのですが……
しかしドライブ中に、頻繁に体を動かすのは難しいもの。
そこで痛みを改善するために意識すべき3つのポイントを教えてもらいました。
- 正しい姿勢を保つこと
- 適度にストレッチをすること
- 血の巡りを意識すること
これらを意識することで、痛みの改善が期待できるそうです。それぞれ詳しくみていきましょう。
できるだけ正しい姿勢を保ってドライブ
理想の姿勢とは具体的にどのような座り方なのでしょうか。まずは座り方から教えてもらいましょう。
まず座り方としては、『坐骨で座る』のが理想の姿勢です。シートに深くもたれかかったり、腰掛けるのは良くありません。骨盤の後ろで座る姿勢となってしまい、坐骨神経を直接圧迫しちゃうんですね。長時間坐骨で座るような正しい姿勢を保つには、支える筋力も必要です。なので、日頃のトレーニングやスポーツも大切になってきます。

そして上半身は、背骨の上に頭を乗せるイメージが重要だといいます。
頭だけ前へ出てしまうと、重心が引っ張られて背中が丸まってしまいます。これが原因で背中や首、肩への負担になってしまうんですね。これを防ぐためには、頭を背骨の真上にのせることを心がけてみましょう。本来あるべき位置に頭があればどこにも負担はかからず、上半身の悩みも改善されると思います。
またドライブ中にやってしまいがちな悪い姿勢のひとつに、片手運転が挙げられます。

片手運転は良くないですね。あくまでも重心が傾きがちにも関わらず、より一層片方に傾いてしまいます。できるだけ左右均等になるよう両手で運転をするよう心がけてくださいね。
ドライブ前に腹横筋スイッチオン!
「今日は長距離・長時間ドライブをするぞ!」という日に、ウォーミングアップとしてやっておきたいエクササイズも。それが腹横筋(ふくおうきん)を目覚めさせるストレッチです。
平野さん、そもそも腹横筋とはどんな筋肉なんですか?
腹横筋は腹筋群のインナーマッスルとして位置付けられる筋肉で、繊維が横に入っているのが特徴です。ここを引き締めることで腹圧が上がり、コルセットのように腰椎を守ってくれます。

日常ではあまり意識をすることがない腹横筋ですが、良い姿勢を保つのに重要な筋肉です。
腹横筋を目覚めさせるストレッチの方法
- 両手を挙げバンザイをする
- お腹がへこんでいるのを意識しながら、息をゆっくり吐ききる
- これを10回繰り返す

ドライブ前に腹横筋ストレッチをすることで、筋肉が温まり、腰椎への負担を軽減する効果が期待できます。
休憩中のルーティーンに4つのストレッチ
まめな休憩はロングドライブには欠かせない時間です。車から降りたときに、実践したいストレッチを4つ教えてもらいました。どのストレッチもシンプルで覚えやすいので、休憩時の習慣にすることもおすすめです。
1. 腸腰筋(ちょうようきん)伸ばし
腸腰筋とは上半身と下半身を繋ぐ筋肉群のこと。腰から太ももの付け根にかけて縦にのびています。歩く・走る動作に働く筋肉で、陸上選手にとっては重要な筋肉のひとつです。一方、デスクワークや長距離ドライブなど座った状態が長く続くと、収縮した状態で固まってしまい腰痛を引き起こす原因に繋がる可能性も。そのため定期的にストレッチをして、伸ばすことが大切なのです。

- 脚を大きく前後に開く
- 後ろの脚の膝を地面につき、できるだけ後方へ
- 前の脚は立て膝し、ゆっくりと体重をかける
- もしできるのなら、前脚側の手を上へ。このとき背筋を伸ばすのがポイント
- 左右それぞれ20~30秒行う

胸を開くストレッチ
丸まってしまった背中を伸ばすストレッチです。胸を開くことで、上半身の姿勢が正され、背中の痛みや肩こり、首から後頭部にかけてのこわばりによる頭痛を予防できます。
- 壁の一歩横に立つ
- 壁側の手を壁に押しつけ、グッと前へ体重をかける
- 気持ち良く感じる力加減で20~30秒キープ(もう片側も同様に)

お尻のストレッチ
お尻の筋肉をストレッチすることで腰痛を予防します。休憩中のみならず、停車中の車内でも実践できるので、頻繁に取り入れてみてください。
- 椅子に軽く腰掛ける
- 片足の脚を上げ、もう片方の腿に乗せる
- 上げた方の脚を体側に引き寄せる
- お尻が伸びていることを感じながら、気持ち良く感じる力加減で20~30秒キープ(もう片方も同様に)

ふくらはぎを刺激して血行を促進!
血流の滞りも疲れの原因のひとつです。休憩時におすすめしたいのが、カーフレイズと呼ばれるストレッチ。心臓から脚まで降りていった血液を、ふくらはぎのポンプ作用で上へ戻してあげます。小さな段差があればすぐにできるので、どこでも実践できますよ。
- 段差の上に立つ
- つま先立ちをし、かかとを落とす動作をリズミカルに繰り返す

首と腰のリラックスにはバスタオル3枚でOK
長距離ドライブの合間には、停車中の車内で座席を倒し休憩することも。そのときに取り入れたいのが「丸めたバスタオル」です。必要なのは1枚のバスタオルを筒状に丸めたものと2枚のバスタオルを同様に丸めたもの。これらを使うことで、首と腰のストレッチができます。
首の骨も背骨も本来ならばS字にたわんでいるものです。しかし座り姿勢が長くなってしまうと、真っ直ぐに伸びてしまいがちに。1枚のものを首の後ろに、2枚のものをへその裏に置き、ぐーっと体重を委ねます。S字にカーブする箇所を元に戻してあげるイメージです。

伸ばす時間は2〜3分でOK。血行が良くなり、痛みの軽減や気分のリフレッシュ効果も期待できますよ。
アフターケアには有酸素運動、お風呂!
長距離を走りきった後はビールで乾杯!……と、いきたいところですがちょっと待った。平野さん曰く、クールダウンもロングドライブには欠かせません。
血液は全身に新鮮な酸素を届けるのと同時に、老廃物を排出してくれます。そのため運転後は血行をよくすることを意識しましょう。例えばお風呂にゆっくり浸かったり、ウォーキングをしたり。特におすすめなのが軽めのランニング。ランをするときには自然と姿勢も整うため、正しい姿勢で血行をよくすることができるんですよ。

最高なのは有酸素運動+入浴+ストレッチの組み合わせ。効率良く疲れを取ることができ、痛み軽減の効果も見込めます。晩酌はそれらが終わったあとで、ゆっくり楽しんでくださいね。
疲れや痛みの予防は1日にしてならず
今回はロングドライブで感じる疲れや痛みについて注目してきました。正しい姿勢や適度な休憩、ストレッチを意識すれば、より快適なドライブになるはずです。
ロングドライブに強い体を作るには、日々の運動も大切です。正しい姿勢をキープするために必要な筋肉を作ったり、日々の有酸素運動を心がけたりすることで、もっと疲れにくい体になりますよ。
長距離運転をもっと楽しみたい人は、ドライブ前後はもちろん、日々の運動や姿勢を意識するのがベスト。少しの工夫を取り入れて、心も身体も健やかなカーライフをお過ごしください!
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