2020 Champion Interview =Rally (2)=

2020 Champion Interview =Rally (2)=

最高峰のJN-1クラスで、2年続けてシリーズランキングのトップ3をヨコハマタイヤ勢が独占した2020年の全日本ラリー選手権。このほかのクラスでも多くのユーザーが活躍を見せ、ドライバー部門ではJN-6クラス、ナビゲーター(コ・ドライバー)部門ではJN-4クラスとJN-6クラスで、それぞれ栄冠を手中におさめた。


小藤桂一 選手 – 全日本ラリー選手権 ナビゲーター部門 JN-4クラス

JN-4クラスに内藤学武選手とのコンビで参戦した小藤桂一選手は、全日本選手権以前から内藤選手の走りを支えている存在だ。20代のころに会社の先輩から譲り受けた最初の愛車は、ラリーでも活躍を見せていた三菱・ギャランVR-4。ドライバーとしてモータースポーツ参戦への夢を抱いて、実家の近所にあるショップを訪れたことがきっかけとなり、ラリーを始めたという。

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しかし、所属するクラブのメンバーがラリー参戦をするにあたり、コ・ドライバー(ナビゲーター)が足りなかったことから小藤選手に白羽の矢が立つことに。結果的にはご自身が結婚したことなどもあってドライバーとしての競技参戦には至らなかったが、コ・ドライバーとして着実に経験値を重ねてきた。そして2014年の「モントレー in 群馬」で、内藤選手とともに全日本選手権デビュー。3位表彰台を獲得して大いに存在感を見せつけた。

その後は全日本にスポット参戦の2シーズンをはさみ、2017年と2018年はシーズンの半数以上に参戦した。内藤選手がチームに加入した当初からコンビを組んできたが、2018年には待望の全日本選手権優勝も飾り、“速いコンビ”として知名度を高めていく。

そして2020年、結果的に4戦で競われたシーズンでは初戦となった新城で幸先よく優勝。その後も準優勝を2回飾ったが、RALLY HOKKAIDOを欠場したことと、ライバルのナビゲーターの参戦回数の関係から、惜しくも内藤選手とコンビでのチャンピオンには届かず、小藤選手が栄冠を手中におさめる結果となった。

CHAMPION NAVIGATOR

小藤桂一 選手 [2020年 ナビゲーター部門 JN-4クラス シリーズチャンピオン]

2014年に内藤選手と全日本デビューしましたが、あのときは「最も近道で内藤選手の才能を開花させたい」という思いをチームが受け入れてくれての参戦実現でした。内藤選手と知り合ったころから才能ある若手という印象で、全日本デビュー戦では「箸にも棒にもかからないだろう」という予想に対して3位表彰台を獲得出来ました。

2020年シーズンはスケジュールが大きく変動しましたが、大会の無い時期はオンラインでのチームミーティングなども行って、いろいろと気付けたことも多くありました。一方では小さなチームなので情報網が限られる面もある中、誰に何を聞けば“旬の話題”をキャッチ出来るのか、やきもきすることもありましたね。

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最終決戦の唐津は従来と異なるアイテナリーでしたが、早朝からレッキを行った後にそのまま競技というスタイルは地区戦で慣れているので戸惑うことはありませんでした。ただ、競技本番ではいつもならペースノートよりも走りが先に行く感じなのですが、序盤はそうでは無かったんです。リズムを掴めない要因があったりもしましたが、SS1から2に向かう間は「どうアドバイスしたら、リズムを掴めるだろう」ということを考えていました。

二日目はいつもの内藤選手に戻って、マシンをフィニッシュまで運べました。シーズンが終わって自分がチャンピオンになりましたが、まずはドライバーのチャンピオン獲得に重きをおいていたので自分のタイトルは考えてもいませんでした。唐津には、ライバルの結果次第でもありましたが自分たちが揃ってチャンピオンを獲れる可能性が残されていたので、とにかく全力で臨んでいました。

最終的には一心同体である内藤選手と揃ってチャンピオンを獲れなかったのが悔しいですが、20代からラリーをやってきて全日本の頂点に立てたのも事実。これまでに組んできた全てのドライバー、そしてチームのみなさんに感謝しています。

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明治慎太郎 選手 – 全日本ラリー選手権 ドライバー部門 JN-6クラス

明治慎太郎選手は2003年に当時の二輪駆動部門で全日本ラリー選手権にデビューした中堅ドライバーであり、これまでにトヨタ・スターレットやプロトン・サトリアネオといった前輪駆動車のみならず、後輪駆動のトヨタ・86でも参戦してきた。また、実戦経験は少ないが4輪駆動車も乗りこなすマルチプレイヤーだ。

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そんな明治選手は2020年、トヨタ・ヴィッツで参戦した。ただしトランスミッションはCVTを搭載するモデル、JN-6クラスへの参戦となり2ペダル車での全日本戦出場は明治選手にとっても初めての経験となる。多くの女性クルー参戦で華やかさも増したJN-6クラスだが、蓋を開けてみると明治選手の経験値も遺憾なく発揮されて初戦の新城ラリーでは2位に3分ほどの大差をつけて圧勝。

2戦目となったラリー丹後も2分30秒以上の大差で連勝を飾ったが、残る大会開催数が減ったことからRALLY HOKKAIDOへの参戦を急遽決定。例年よりコンパクトな設定とは言え、改造範囲が狭いRPN車両にとっては負担も大きい過酷な一戦だが、ここもしっかり優勝を飾って2016年に当時のJN-2クラスで獲得して以来2回目となるシリーズチャンピオンを確定させた。

CHAMPION DRIVER

明治慎太郎 選手 [2020年 ドライバー部門 JN-6クラス シリーズチャンピオン]

久しぶりに前輪駆動車での全日本参戦となりましたが、練習では4輪駆動車に乗ってもいますから前輪駆動車に戻ってもすぐに感覚は取り戻せました。2ペダルについても、面白いという印象が強くて特に違和感はありませんでした。CVTのマニュアルモードはシフトアップでは使うことがなく、コーナーリングなどで速度が落ちた時に低いギアで固定して加速を得るという使い方で走らせています。

JN-6クラスにおけるヴィッツや自分の“立ち位置”が見えなくて、RPN車両では体重の軽い女性のほうが有利ではないかと思ったり、そもそも他の競技会などで速いタイムを出している選手もいるので、決して侮れないという思いでシーズンインを迎えました。

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新城ラリーではSS1とSS2が他選手のアクシデントなどでタイムを残せず、果たして自分の走らせ方が正しいのかどうかも分からないまま競技が進んでいきました。自分では「トローッ」と走っている感じがあって、「これで大負けしていたら、どうしよう……」という思いがあったんです。でも、SS3でしっかりタイムが出たので、自信を持って走らせられるようになりました。

新城、丹後と連勝して、当初は予定に無かったRALLY HOKKAIDOへの参戦を急遽決めました。ここをスキップしてライバルに勝たれると、中止や順延が相次いだ中で残る大会数から見て逆転は厳しくなるぞ、ということからの参戦判断です。ただ、グラベル(未舗装路)用の足まわりはありましたがセッティングを詰めるには至らず、無理しないで完走してポイントを重ねて、有利な立場で唐津に臨んでチャンピオンを決めようという話でした。

2020年のRALLY HOKKAIDOはフラットでハイスピードなステージが多かったので、マシンへの負担が少なかったのは幸いでしたね。そんな中でも過去の参戦経験も踏まえ、路面を見極めてマシンを労りながら優勝してチャンピオンを決められました。走るチャンスをいただけたことに、チャンピオンという結果でお返し出来て良かったです。自分は2016年にチャンピオンを獲ったときはRALLY HOKKAIDOの結果が大きくプラスになりましたし、翌年にチャンピオンを逃したときはRALLY HOKKAIDOを欠場したことが響くかたちになりました。ですから、「ラリホを制する者が、シリーズを制する」というのが座右の銘みたいになりましたね(笑)

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里中謙太 選手 – 全日本ラリー選手権 ナビゲーター部門 JN-6クラス

明治慎太郎選手のコ・ドライバー(ナビゲーター)としてチャンピオンに輝いた里中謙太選手は、1996年生まれ、平成8年ということでJN-1クラスのチャンピオンとなった新井大輝選手/小坂典嵩選手とともに“平成生まれチャンピオン”となった一人である。

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元々は4ドアスポーツセダンや2ドアのスポーツカーが好きだったという里中選手だが、社会人になって社内のカート大会に参加した際にラリーをやっている先輩に誘われて自分もラリーを始めることに。ラリーの“ラの字”もわからないままにコ・ドライバーとして参戦したが、「単純に、楽しかったんです」とはご本人の弁。

デビューイヤーの2016年は、中部地区戦のチャレンジシリーズ2戦に出場。翌年以降も所属するクラブ内でのコ・ドライバーとして参戦するのみならず、自らもドライバーとして数戦に出場して経験を積んできた。しかし、それでもまだ自分自身が全日本選手権に出場することになるとは、考えてもみなかったと言う。

そして2020年、JN-6クラスへの参戦が決まった明治慎太郎選手からのオファーを受けて自らも出場することに。ラリーを始めた当時から明治選手とは面識があったというが、コ・ドライバーのオファーについては「自分でいいんですか!?」と最初に聞き返したという。こうして全日本選手となった里中選手は、明治選手をはじめ周囲のアドバイスも受けて成長を見せ、その“仕事ぶり”は明治選手も認めるところ。今後、ますますの躍進が期待される若手コ・ドライバーである。

CHAMPION NAVIGATOR

里中謙太 選手 [2020年 ナビゲーター部門 JN-6クラス シリーズチャンピオン]

明治選手からのオファーを受けて、初戦となる3月の新城ラリーまではドキドキの日々でした。最初に明治選手からコ・ドライバーの仕事として、例えばチームのスケジュール表を作って展開するとか、いろいろな事前準備について教わりました。それまでには経験したことが無かったのでドタバタしましたが、準備の大切さもより意識するようになりましたね。

新城ラリーそのものはサービススタッフとして行ったこともあるので、右も左も分からないという状態では無かったです。しかし競技が始まると、SS1から他選手のアクシデントがあったりして波乱含みでした。そんな中でSS3から実質的に始まったような感じですが、ライバルとのタイム差がわからなくて……。JN-6は女性陣が多いですが、自分はあまり積極的に話しかけていくタイプではないですし、全日本選手権の雰囲気にも慣れていなかったので、小さくなっていましたね(苦笑)。

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明治選手からリーディングのタイミングなどいろいろアドバイスしていただいて優勝出来ましたが、「自分がホントに優勝したのかな?」というのが本音で、フワフワしたような感じでした。あくまでも勝ったのは明治選手の実力によるもので、自分も讃えられていいのかな、という心境でもありました。

新城で出来なかったこと、例えば明治選手にライバルとのタイム差を聞かれて即答出来なかったので、そういうことをしっかり対応出来るように準備も整えてラリー丹後に臨みました。ここも勝って次はRALLY HOKKAIDO、大会規模が大きいことに加えてフレキシサービス(※)があったので緊張感が高まりました。

RALLY HOKKAIDOでは陸別のウォータースプラッシュが印象に残っていて、“川渡り”があるからといってコ・ドライバーとして何か特に変わったことは無いのですが、経験したことが無かったので新鮮でした。勝ってフィニッシュしてチャンピオン確定、写真を撮られたりインタビューされたりしましたが、慣れていないから緊張しっぱなしで。チャンピオンの実感もすぐに沸きませんでしたが、SNSなどで祝ってくれるメッセージが寄せられてじわじわと嬉しさが込み上げてきました。そして北海道から帰って出社したら、「いよっ、チャンピオン!!」と社内のみなさんにイジられて(笑)。

2020年の自分を自己採点したら、40点くらいかと思います。規則も完璧に熟知出来ていませんし、まだまだ勉強することは多いです。シーズンを通じて経験したこと、多くのみなさんから学んだことを活かして、これからも日々勉強していきます。

※フレキシサービスとは、複数台で参戦しているチームが車両の整備を行うサービスを受ける時間を、定められた範囲の中で決められる仕組み。ラリーは全ての行程で厳密な時間管理が求められ、その管理はコ・ドライバーも担う立場となる。

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UPDATE : 12.Feb.2021