2020 Champion Interview =Rally (1)=

2020 Champion Interview =Rally (1)=

多くの大会が新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた2020年の全日本ラリー選手権は、最終的に4戦の全戦有効ポイントでシリーズチャンピオンを競い合うこととなった。最高峰のJN-1クラスは2019年にヨコハマタイヤ勢がトップ3を独占したが、2020年も戦いの主役はヨコハマタイヤ勢。結果として2年連続でシリーズランキングのトップ3を独占したが、新井大輝選手/小坂典嵩選手組が初の全日本タイトルを手中におさめて話題を集めた。


新井大輝 選手 – 全日本ラリー選手権 ドライバー部門 JN-1クラス

2019年は最終戦が自然災害により中止となったことで、あと一歩まで父である新井敏弘選手に迫りながらもタイトルには届かなかった新井大輝選手。「今年こそは戴冠を」と多くのファンが思う中で2020年がスタート、初戦の新城ラリーは3位表彰台というシーズンインになった。

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3月の新城を終えて各大会が続々と中止や順延となり、シーズンが再始動したのは7月末日から始まったラリー丹後。前戦に続いてのターマック戦だが、セットアップの決まらないマシンに苦しむ展開となりここでも3位というリザルトに。およそ一ヶ月半のインターバルをはさんで迎えた3戦目はRALLY HOKKAIDO、例年よりはコンパクトな設定となったがシリーズ最大規模のフィールドであることは変わらず、2020年は唯一のグラベルラリーということで与えられるポイントの大きさから“天王山”と位置づけられることに変わりは無かった。

初日から快走を見せた大輝選手は、2回目のサービスで足回りをアジャストすると一気にペースアップ。ステージベストを立て続けに奪うとラリーリーダーに躍進、2日目は敏弘選手と激しい“親子バトル”を展開。僅差で逃げきった大輝選手がシリーズランキングリーダーに立ち、九州での最終決戦を迎えた。

4月の開催を予定していたツール・ド・九州 in 唐津は11月に順延され、これが事実上の最終戦。いくつかのパターンはシミュレーション出来るものの、事実上「勝った者がチャンピオン」という状況だ。オープニングから大輝選手は奴田原文雄選手組とのデッドヒートを展開、4.2秒差の2番手でスタートした2日目。初日をトップであがった奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組と互いに一歩も引かないフルアタックの応酬、これをミス無く制した大輝選手が連勝を飾ってシリーズチャンピオンを確定。全日本ラリー選手権の最高峰クラスにおいて、初めての平成生まれチャンピオンとなった。

CHAMPION DRIVER

新井大輝 選手 [2020年 ドライバー部門 JN-1クラス シリーズチャンピオン]

コロナ禍のなか、正直に言えば2020年の序盤はシーズンの成立さえも不透明だったので、新城の時点では自分のモチベーションが無いような状態でした。選手権の成立は最低3戦という規則ですが、「今年は無理じゃないのかな?」と思ったことがあったのも事実です。

結果的に4戦となったシーズンですが、前半の2戦は辛い記憶しかありません。ともにターマックラリーでしたが、セットアップが決まっていないと死ぬ気で頑張っても危ないだけで速くは走れないのがターマックです。ラリー丹後は日曜日が自分の誕生日でしたが、全くハッピーな気持ちではありませんでした。

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RALLY HOKKAIDOは勝てて、でも最終決戦の唐津はターマックですから全く楽観視は出来なくて。とにかく「やるべきこと」と「やりたいこと」が多くて、事前の準備としては納得できるセットアップに至らず大会を迎えました。対する奴田原選手はターマックが完璧な状態で「やべえなぁ~」と。オープニングから様子見は全く無しで全開の攻め、最後は勝ってチャンピオンになれてホッとしました。これまで国内外を戦ってきて、2020年の全日本選手権がシーズンを最初から追った初めてのシリーズです。そこで結果を残せたことには、とても大きな意味があると思っています。

父であり、ライバルであり、チームオーナーである敏弘選手からは、初めてシーズン途中での大幅なセットアップ変更を許可されました。勝たなければいけない、チャンピオンを獲らねばならない、そのために何が正解で何がダメなのか、そこを自分が自信を持って言えるようになり、“ダメ元”で意見をぶつけたら対応してくれました。

コ・ドライバーの小坂典嵩選手は、一言で表すと“相棒”ですね。友達でも家族でも無く、先生と生徒でも無く、間違っても親子や恋人でもなく(笑)、腐れ縁の“相棒”ですね。純粋で単純、彼が何を考えているのか面白いほど手にとるようにわかるんです。長い時間を共有するので、これはとてもやりやすいですね。ラリーに対する姿勢や心意気も真っ直ぐで良いと思いますが、事前準備をもっとしっかりやって、何か聞いたら即答するくらいになってほしいですね。そんな小坂選手ですが、「誰でもいいけれど、誰と組む?」と聞かれたら、彼と組みますね。

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小坂典嵩 選手 – 全日本ラリー選手権 ナビゲーター部門 JN-1クラス

新井大輝選手のコ・ドライバー(2020年選手権表記はナビゲーター)をつとめた小坂典嵩選手は、2014年のウィンターラリーで初めて大輝選手とコンビを組んだ。翌年もウィンターラリーにコンビを組んで参戦すると、2015年には当時のJN-5クラスに大輝選手と参戦。そして2019年、大輝選手の全日本選手権復帰で再びオファーを受けてその走りを支えることとなった。

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小坂選手自身、ラリーと自動車が好きで、ドライバーとして2008年にラリー参戦を果たした。それ以前からラリーチームの裏方を手伝っていたが、一旦ラリーを離れることに。少しの時間を置いて後輩が参戦するという話になり、そのコ・ドライバーとしてコンビを組んだのが“コドラの小坂選手”誕生の経緯である。

これが2012年のことだが、同年は全日本選手権にも参戦して当時のJN-2クラスでシリーズ2位を獲得。コ・ドライバーとして特定の師匠はおらず、多くのドライバーからコ・ドライバーについて教わってきたとはご本人の弁、積み重ねが実を結んで2020年は大輝選手とともに全日本ラリー選手権の最高峰クラスにおける初の平成生まれチャンピオンとなった。

CHAMPION NAVIGATOR

小坂典嵩 選手 [2020年 ナビゲーター部門 JN-1クラス シリーズチャンピオン]

2019年は最終戦が中止になってチャンピオンに届かず終わり、悔しかったですね。大会の中止を聞いたときは、正直なところ呆然としたことを覚えています。

2020年はシーズンの先行きが不透明になりましたが、コ・ドライバーとしては「準備時間をたくさん取れるんだ」と前向きにとらえました。もちろんライバル勢も時間を有効に活用してくるでしょうから、自分もしっかりやらなければなりません。しかし、自分は会社勤めなので時間を全てラリーに配分することは出来ません。時間がないから仕方ないと思うこともありましたが、そうではなくてやり方を変えたら出来るようになったこともあって、いろいろ気付くことが多かったですね。

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RALLY HOKKAIDOを勝ってランキングトップに立ちましたが、最終決戦の唐津に向けてひとつだけ大きく普段と違うことをしました。サラリーマンとしては仕事をおろそかにしてはいけないという考えでラリーをやっていますが、唐津の前に平日行われたチームテストに参加したのです。ドライバーや本番で使う競技車と過ごす時間はとても大切で、このときばかりは上司に頭を下げて休みをもらいました。そして参加したことで、いろいろな情報を共有して唐津に臨めたのはプラスだったと確信しています。

唐津では初日の競技を終えた夜、大輝選手に「明日はこうやって勝つんだ」と言われて自分が後押しされた感じでした。最終的に勝ってチャンピオンになりましたが、自分が勝ちたいという思いは強くありましたが、それ以上に大輝選手を勝たせたいという思いが強かったんです。大輝選手は見た通り、生意気でずる賢くて、怒りっぽくて、すぐ拗ねて(笑)。“面倒くさいヤツ”ですけれど、なんて言うか“人間くさい”ところが好きですね。

コ・ドライバーの自分もチャンピオンになれましたが、2020年を自己採点したら30点くらい。あらゆる面でまだまだ足りないことが多いのは自覚しています。周囲への気遣い、時間の使い方、先読みする力、コ・ドライバーとしてさらなる高みを目指すために必要なことを整理して、しっかり努力して行きます。ですから、オフシーズン中に彼女やお嫁さんを探している時間は……、無いですね(笑)。

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UPDATE : 5.Feb.2021