2020 Champion Interview =Dirt Trial (1)=

2020 Champion Interview =Dirt Trial (1)=

2020年の全日本ダートトライアル選手権は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、選手権成立要件をギリギリで満たす3戦の開催となった。ただ、残念ながらSC1クラスについては、そのうち1大会でクラス不成立となったことからシリーズ自体も不成立となってしまった。前例の無い少ない大会数でタイトルが競われたが、ヨコハマタイヤ勢は4つのクラスでシリーズチャンピオンを獲得する強さを見せた。


宝田ケンシロー 選手 – 全日本ダートトライアル選手権 PN2クラス

2019年のPN2クラスを制した宝田ケンシロー選手は、引き続きZC33型のスズキ・スイフトを駆って同クラスに3シーズン目のチャレンジとなった2020年。ただ、マシンのカラーリングは大きく変わり、Red in BlackのADVANカラーをまとうこととなった。これで2020年の全日本選手権では、ラリーのランサー、ジムカーナのロードスター、そしてダートトライアルでのBRZに続く4台目のADVANカラーとなり、唯一30代でADVANカラーを駆るドライバーとなった。

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無観客試合で開催された3月の開幕戦、舞台はコスモスパーク。ここで宝田選手は決勝第1ヒートでまさかのミスコースを犯してしまうも、第2ヒートでしっかり逆転して初陣を飾った。ただ、振り返ってみればこのミスコースからの逆転劇は、波乱のシーズンの序章に過ぎなかったとも言える。

次々に大会が延期や中止となり、やっとシーズンが再始動したのは8月の北海道・スナガワから。宝田選手にとっては地元での一戦だが、土曜の公開練習1本目でまさかの転倒。マシンは多くの関係者の協力も受けて突貫で修復されて翌朝にはパドックに帰って来たが、決勝第1ヒートはライバルの1秒落ちというタイム。限られた時間の中で可能な限りのアジャストをして臨んだ第2ヒートで一気にタイムを伸ばし、開幕戦に続いて逆転優勝という結果をおさめた。

そしてシーズンを締めくくる恋の浦、6位以上でタイトル確定という有利な条件だったが、公開練習では駆動系トラブルが。そして決勝第1ヒートで全く同じトラブル、周囲をヒヤリとさせたが惰性でフィニッシュラインを通過してタイムを残すことに成功。修復した第2ヒートで惜しくもトップタイム奪取はならなかったが、準優勝で2年連続のシリーズチャンピオンを獲得した。

CHAMPION DRIVER

宝田ケンシロー 選手 [2020年 PN2クラス シリーズチャンピオン]

2020年からADVANカラーになりましたが、クラスやマシンが変わったわけではないのでシーズンインまでは例年と何も変わったところもありませんでした。コスモスパークの決勝第1ヒートでミスコースをするまでは(笑)。自分ではADVANカラーに対して過剰なプレッシャーを覚えることは無かったつもりですが、シーズンの大会数が減り、初めてのADVANカラーで「勝たなければ、チャンピオンを獲らなければ」という思いが強くなったことも事実です。

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3戦という少ない大会数の中では、スナガワを勝てたことが大きかったです。実はZC33型のスイフトになってから、スナガワで勝てていなかったので。そんなスナガワの公開練習……、何かありましたっけ(笑)?あれは忘れたい悪夢そのものでしたが、地元だったからこそ皆さんの力をお借りして修復できて、そして勝てました。勝ちが決まった瞬間に、嬉しさと安心と感謝と、いろいろな感情が込み上げてきて初めて泣きました。

最終戦も駆動系のトラブルでドタバタになり、たったの3戦なのにとても“濃い”というか、疲れたシーズンでした。ですが、最後にはしっかりシリーズを連覇して4回目のタイトルを獲得して一安心です。ですが自分はまだまだ挑戦者、一戦一戦をこれからも勝ちにいきます。チャンピオンを獲得できた最大の要因は「父のおかげ」……、ではなくて自分自身が精神的に強くなったからではないかと思っています(笑)。

※宝田ケンシロー選手のお父様、芳浩さんは往年の名ダートトライバー、お二人の対談記事を2018年に掲載していますので、ぜひこちらもご覧ください。
>> 2018 宝田ケンシロー×宝田芳浩 親子対談

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葛西キャサリン伸彦 選手 – 全日本ダートトライアル選手権 SA・SAX1クラス

ナンバー付きで改造範囲の広いSA・SAX1部門は、駆動方式によって2つのクラスに分類されている。そのうちの2輪駆動がSA・SAX1クラス、スズキ・スイフト、ホンダ・シビック/インテグラ、アバルト・500、三菱・ミラージュといった前輪駆動勢が多数を占める中、後輪駆動でミッドシップエンジンのトヨタ・MR2を駆るのが葛西キャサリン伸彦選手だ。

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ミドルネームをつけたライセンス名も目を惹く存在だが、MR2を駆って10年を超えるキャリアを有し全日本選手権には2013年の門前でデビューしている。2017年の今庄で3位となり初の表彰台を獲得、そして翌年の今庄で全日本初優勝を飾ったのは記憶にあたらしいところだ。

3大会という短期決戦になった2020年は、3月のコスモスパークで幸先よく全日本2勝目をゲット。8月のスナガワでも3位表彰台を獲得して着実にポイントを積み重ね、最終戦は5位入賞で悲願の全日本チャンピオンを手中におさめることに成功した。

CHAMPION DRIVER

葛西キャサリン伸彦 選手 [2020年 SA・SAX1クラス シリーズチャンピオン]

全日本選手権に出始めた頃は1ポイントでも獲れれば嬉しいというところでしたが、今庄で初優勝してからシリーズチャンピオンも獲れるのではないかと思うようになって、いままで一所懸命にやってきました。2020年は先行き不透明な中でのシーズンインでしたが、周りから「獲れるときにチャンピオンを獲らないと、いつまでたっても獲れないよ」と後押しされ、ダートトライアルを走れる環境である以上は歯を食いしばってやりきろうと頑張った一年でした。

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2戦目のスナガワが終わり、今庄とタカタが中止になり、恋の浦が最終決戦の舞台となりましたが、正直に言うとちょっと追い込まれた気持ちになったんです。シリーズランキングのトップには立っていましたが2番手とは4点の僅差でしたから、自分の中に余裕はありませんでしたね。

MR2はダートトライアルで少数派、同じ車種の人がほとんどいないのでどこに行ってもアドバイスしてくれる人がいないんですよ。ですから、続けてくる中ではトライ&エラーの繰り返しで、優勝やチャンピオンまで時間がかかった面はあると思います。

2020年、全力で臨んできたので今後については少し冷静に考えていこうと思っています。2021年もダートトライアルを出来るのであれば、真っ向勝負でもう一度戦いたいですね。でも、新しい年式の車両を視野に入れる必要もあると思うので、悩んでいるというのも正直なところ。いずれにして、どんな車で戦うにしても自分は自分、名前だけではなく走りで注目を集められるように頑張っていきます。あと、勝ってチャンピオンを決める、という宿題も残っていますしね(笑)。

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UPDATE : 15.Jan.2021