The next generation of street sports tire =ADVAN A052= (2)

2016年1月の東京オートサロンにおける、プロトタイプの展示で話題を集めた「ADVAN A052」。2016年8月に待望の日本国内リリースが開始されたが、発売に至るまでの開発の舞台裏をヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル株式会社のプランナーとエンジニアが振り返る。


環境性能が求められる時代に向けて

どのような新商品でも、まずは一通の企画書からプロジェクトは産声を上げる。自社や業界の現状、そして市場の将来的な動向を見極めつつ、ニーズも読み取って新しい商品を立案するのが企画担当者、プランナーと呼ばれるスタッフの役割である。ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル株式会社企画本部の藤本廣太に、「ADVAN A052」の企画背景から聞いて行こう。

「『ADVAN A052』の企画は私の前任者時代、5年ほど前に出されていました。その時点で既に、優れた環境性能がモータースポーツの世界でも必要になる、ということは謳われていたのです。ただ、初期の段階では特定のスポーツモデルをメインターゲットとしていました。そこから紆余曲折があって、現在の形に落ち着いたという経緯があります」

ADVAN A052

プランナーの提案を、実際の形にしていくのが開発エンジニアだ。ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル株式会社開発本部の山根賢司は、「ADVAN A052」が誕生した経緯を次のように振り返る。

「正直に言うと、開発を始めた当初と現在では情勢などにより変わってきた部分もあります。性能については、当初は『ADVAN A048』と同等という目標があったのですが、私も八重樫もそれでは世の中に受け入れらないと思ったので、さらに上のレベルを目指しました。その結果として狙ったところの性能を満足させる仕上がりに至ったのです」

ここでひとつ、既にお気づきの方も多いかと思うが「ADVAN A052」のトレッドパターンは「ADVAN A08B」とほぼ同じと言える。同じ“ADVAN”を冠するタイヤ同士、両者の関係についてヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル株式会社開発本部の八重樫剛に聞いてみよう。

「『ADVAN A08B』は、『ADVAN A052』に至る過程のスタディモデルと言えるでしょう。『ADVAN A052』というプロジェクトがある上で、そこからウェットグリップ性能や転がり抵抗といった国際基準に関わる部分を一旦置いておき、タイヤとしてのポテンシャルを確認するという意味合いもありました」



環境性能とポテンシャルを、より高い次元へ

「ADVAN A08B」はTOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Raceで連勝を重ね、チャンピオンを獲得するなど優れたパフォーマンスをモータースポーツにおいて結果で実証した。この結果を受けて、「ADVAN A052」の開発はさらに加速したと八重樫が続ける。

「レースなどで基本ポテンシャルが確認できたので、そこに環境性能を高い次元でミックスさせたのが『ADVAN A052』です。トレッドパターンについては完成度が高かったので、『ADVAN A08B』から基本形を踏襲しました。もちろん、何らかの要素に不足があったとしたら改良していましたね」

TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Raceでは、ADVAN A08Bが大活躍を見せた

もちろん「ADVAN A08B」で基本的なポテンシャルの高さは確認出来たが、それを維持しつつ優れた環境性能を与えるのは決して簡単なことではなかったと山根が語る。

「環境性能を高めて国際基準に適合させるには、実際には全部を変えたと言っても過言ではないくらいです。トレッドパターンはOKでしたが、それ以外の要素である構造やコンパウンドまで全域に渡って手を加えていきました」

こうして、世界で認められる環境性能とポテンシャルを高次元で両立させるべく、開発はさらに最終段階へと加速していく。その過程においては山根の存在が大きかったと八重樫は言う。

「山根さんは『ADVAN Neova AD07』や『ADVAN NEOVA AD08』の開発に携わるなど、PC(乗用車用)タイヤの開発経験が豊富なエンジニアです。PCタイヤの設計を知り尽くした山根さんの存在は、お世辞抜きで大きなものでしたね」

PCタイヤの開発を経てモータースポーツタイヤに携わっている山根、その経験と技術は「ADVAN A052」に余すところなく活かされていると本人も認めるところだ。

「基本構想からの時間は長いですが、最終的には1年半ほどで一気に形として仕上げてきたのが『ADVAN A052』です。そこではモータースポーツを通じて蓄えてきた技術と、PCタイヤの開発で培ってきた経験を巧く融合させた部分は確かに大きいですね。その融合によって、環境性能とパフォーマンスを高次元でバランスして、最良の着地点に至りました」



「ADVAN A052」の開発ストーリー、次回は世界に認められる環境性能について、さらに詳しくお伝えしてまいります。