SUPER GT 2015 (5)

激戦区のGT300クラスは、FIA-GT3やJAF-GTなど、多彩な参戦車両のラインナップが特徴だ。そんなGT300クラスをヨコハマタイヤとともに戦うチームの横顔を前回に続いてご紹介するとともに、SUPER GTを担当するヨコハマタイヤの開発エンジニアの思いをお伝えしていこう。



片山右京 監督 [グッドスマイル初音ミクSLS]
-ぶっちぎりはない。でも、車種選択も最終戦までを考えてのこと-

今正直、2年連続でタイトルを獲ったところが何故いないのか、分かるほど大変です。だからこそやりがいはあるし、GT300もどんどんレベルが上がっているでしょう? ドライバーもそうだし、クルマもワークス的に出ているチームも増えているので、プライベーターがFIA-GT3を買ってきて戦うというのは、よっぽどその年のクルマのBoPが当たりじゃないと厳しいというのはありますよね。ドライバーには頑張ってもらわないといけない、エンジニアはセッティングを決めなきゃいけない、我々もしっかり作戦を立てないといけない。いろんなものが噛み合わないと……。

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だから、楽じゃないと思いますが、その中で1年というスパンとして、スーパーGT特有のレギュレーション、ウエイトハンデなどもしっかり考えていかないといけない。あと、やっぱりタイヤの特性も含めて、いろいろな部分でみんなが力を合わせていかないとね。そういう意味で、ヨコハマのバックアップというのは非常に大きいです。

去年のBMWは速かったけど、排気量が小さいからウエイト感度が大きかったんですけど、今年のメルセデスは大排気量なので、そのあたりがかなり小さいし、あと中間加速がいいし、ストレートも速くなっているので、有利な点は多いと思う。それと絶対に最終戦までタイトル争いはもつれ込むから、その最終戦の舞台、もてぎは過去のデータを見ても圧倒的にメルセデスに合っています、車両特性が。そういう、最終戦まで考えての車種選択なんですよ。

だから、毎回勝とうとか、そんなのは無理だから絶えずコツコツとね。毎年、必ず2戦ぐらいノーポイントのレースがあるから、そういうのをなくして確実に。まぁ、ぶっちぎりはないでしょう、あり得ません。


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DRIVER LINEUP

谷口信輝 選手

1971年5月18日生まれ、広島県出身。
誰もが知るドリフト出身のドライバーで、生粋のハコ使い。レースデビューは2001年、30歳からと典型的な遅咲きではあるが、その翌年にはもうSUPER GTへ。3戦目で優勝を飾り、その後も数多くの勝利を挙げただけでなく、’11年と’14年にGT300ドライバーズチャンピオンを獲得する。スーパー耐久では8回のタイトル獲得を誇り、またシビックレースでは’11年、GR 86/BRZ Raceでも’14年に王座を獲得。

片岡龍也 選手

1979年5月1日生まれ、愛知県出身。
1992年に12歳でカートレースデビュー。’99年と’00年に全日本選手権FSAクラスで連覇し、01年にはFTRS(フォーミュラトヨタレーシングスクール)の初代スカラシップ生としてフォーミュラ・トヨタに出場する。以降、F3、フォーミュラ・ニッポンを’08年まで戦い、SUPER GTには’03年から。’04年から’08までGT500を、’09年にはGT300に移って初のタイトルを奪い、’12年に谷口選手とコンビを組み、’14年に王座奪還。



小林敬一 監督 [SYNTIUM LMcorsa RC F GT3]
– RC F GT3をコツコツと煮詰めて、ちゃんと戦えるクルマに育ててみせます-

今年からレクサスRC F GT3を走らせることになって、今の状態としては、ずっと言ってきていることなんですけど、コツコツと煮詰めて、クルマを育てていこうと。そう考えてやってきています。オフのテストでは、ある部分で良かったところもあるんですけれど、結果的には細かいところも含めて、まだ強化していかなければならないことがたくさんあります。

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とにかくひとつずつ片付けていって、ちゃんと戦えるクルマに育て上げる。そういう思いで、スタッフ全員が集中してやっている最中です。LMcorsaというチームは、SUPER GTでは結成2年目。初年度から優勝を飾れましたが、その頃よりもチームの実力、意識っていうのは今の方が圧倒的に優れています。経験を重ねたことでメカニックのスキルは非常に高まっているので、その点では何も心配ありません。

今年はまた2台体制として、BMWも引き続き走らせるんですけど、そっちはシェイクダウンが遅れたりして、最初のうちは準備不足もあってドライバーには申し訳ないことをしたんですが、ドライバーのスキル、クルマのポテンシャルに問題ないのは実証済。脇阪薫一選手と新田守男選手のコミュニケーションがしっかり取れていて、コンビネーションも良さそうだし、実力的なバランスも悪くないのでね。いずれトップまで上がってくるでしょう。

先に行ってもらえば、RC Fの飯田章と吉本大樹の両選手ともに刺激になるでしょうし、チーム全体の雰囲気も良くなってくると思うんですよ。仕上がってくれば、BMWのふたりにも、同じようにいい刺激になるでしょうし。


DRIVER LINEUP

飯田 章 選手

1969年12月18日生まれ、神奈川県出身。
1989年に富士フレッシュマンでレースデビューし、’91年にはN1耐久(現在のスーパー耐久)へ。その後、JTCCを経て、’94年には全日本GT選手権に出場する。その年から’96年まで高橋国光選手、土屋圭市選手とともにホンダ・NSXでル・マン24時間にも参戦、’95年にはGT2クラス優勝を飾る。’09年からチーム監督を務めた後、’14年にSUPER GTにドライバーとして復帰。ブランクを感じさせぬ走りで、鈴鹿1000kmでは優勝を果たす。

吉本大樹 選手

1980年9月2日生まれ、大阪府出身。
1999年にFJ1600でレースデビュー。フォーミュラ・トヨタ、韓国F1800を経て、’02年から2年間、全日本F3選手権を戦った後、’05年と’06年にGP2に参戦。少年期をオーストラリアで過ごしたこともあり、積極的に海外への道を切り拓いていったドライバーでもある。’07年にはフォーミュラ・ニッポンにフル参戦。SUPER GTデビューは’04年で、フル参戦は’09年から。シリーズ最高位はアストン・マーティンをドライブした’12年の3位。



藤代秀一 [ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル第一開発部 SUPER GT開発統括]
– GT500は表彰台の中央に立ってもらって、できれば複数回! GT300はWタイトルを-

昨年、GT500はレギュレーションが変わって、クルマだけじゃなくてタイヤもサイズが変わったことで、開発としてはやらなければならない事が山積みになった訳ですが、弊社とダンロップさんは開発チームに該当していないので、タイヤ開発に大きなハンデがあったと思うんです、特に前半戦は。シーズンオフに走りこんでいる量が違ったという部分で、どうしてもスタートラインが違ってしまったのですが、後半に向けては我々もタイヤをまとめてくることができたと思います。

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またシーズンオフになると、どうしても走行距離自体は変わってしまうんですが、そんな中で効率的と言いますか、テストを重ねてきたことによって、自分たちが考えている十分なレベル、開発のプロセスで今の段階でここにいたいというレベルまで到達できていないことはあるのですが、昨年以上に戦えるタイヤはできていると考えています。

ドライだけでなくウェットも、どちらかと言うと、うちは雨量の多い方にシフトしていまして、ただ近年のGTは強く降るとすぐ赤旗になってしまうので(笑)。全然パフォーマンスを見せることなく終わってしまったのですが、今年はパターンを一新して、いわゆるウェットコンディションできちんとパフォーマンスを発揮できるようにしてきました。

当然、今年の意気込みというところでは、昨年は表彰台が2位で1回しかないので、これを中央に立ってもらって、できれば複数回(笑)。GT300に関しては昨年以上の接戦が予想されるのですが、うちは有力なユーザーさんが多いので、確実にドライバー、チームともにシリーズチャンピオンを獲りに行きたいと思います。

GT300には今年からマザーシャシーが入ってきたのですが、FIA-GT3ともJAF-GTとも車両の特性が違って……。自ずとタイヤに求められる特性も違うのです。しかも、86とエヴォーラでも、ちょっと異なるので苦労はしていますが、シーズンを通して改善していけるとは思っています。後半戦に向けて、しっかりパフォーマンスを発揮できるようにしたいですね。

今年は弊社のユーザーさんから、JAF-GTはいなくなってしまいましたが、FIA-GT3については昨年から引き続き今年のシーズンオフテストでも好結果が得られていますし、マザーシャシーについても、着実に開発が進んでいますので、それぞれの活躍を多いに期待して頂きたいですね。