SUPER GT 2015 (2)

SUPER GTの基礎知識として前回紹介した中で、このシリーズはふたつのクラスで競われていることに触れた。そこで今回はGT500とGT300、これらのクラスについてそれぞれのマシンや特徴などを、より掘り下げて解説していこう。



GT500クラス – メーカー同士の威信をかけた戦いの舞台

ニッサン、レクサス、ホンダの3メーカーがしのぎを削り合うGT500は、昨年より新たな車両規定を導入。ドイツツーリングカー選手権(DTM)とモノコックを始め、約60のパーツを共通とし、近い将来の交流をはかるためだ。その背景には、開発コストの低減も含まれている。合わせてエンジンも排気量2000ccの4気筒直噴ターボに統一されたが、これはSUPER GT独自の規定。いわゆる世界的なダウンサイジングの波に乗った格好ながら、出力の向上のみならず、コンパクトなエンジンを搭載することでシャシーバランスにも優れるようになり、またシャシーもダウンフォースの増加によって、昨年更新されたばかりのレコードタイムは、今年すでに行われた2戦で再び更新されている。

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そのことが示すのは、信頼性の向上だ。特にエンジンの開発が進んだことにより、ストレートスピードの向上が目立っている。第2戦・富士スピードウェイの予選において、3メーカーの車両すべて最高速は300km/hを超えたという。その3車種とは、ニッサンGT-R、レクサスRC F、ホンダNSXコンセプトGTで、それぞれ4台、6台、5台が出場。このうち、GT-RとRC Fは駆動方式をFR(フロントエンジン・リヤドライブ)とするが、NSXコンセプトGTはミッドシップとし、さらにレーシングハイブリッドを追加している。当然、重量面にはハンデを背負うものの、特に今年は補って余りあるようでもある。

タイヤがワンメイクでないことも、SUPER GTの特徴でもあり、昨今のトップカテゴリーとしては、むしろ希少なケースだ。自動車だけでなくタイヤメーカー同士の戦いも、見どころのひとつとなっているのは言うまでもない。

ヨコハマタイヤは、今年もKONDO RACINGの「D’station ADVAN GT-R」、そしてLEXUS TEAM WedsSports BANDOHの「WedsSports ADVAN RC F」の2台を引き続きサポートする。KONDO RACINGは佐々木大樹選手のパートナーに第3戦までルーカス・オルドネス選手を、そして第4戦からはミハエル・クルム選手を起用。LEXUS TEAM WedsSports BANDOHは脇阪寿一選手、関口雄飛選手を起用する。実力派ドライバーたちが、タイヤ開発にも貢献してくれることが期待される。


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GT300クラス – 多彩な車種が熱いバトルを繰り広げる

スーパーカーから身近な市販車まで、さまざまな車両が走るGT300は大きくふたつの規定に分けられている。今年も大半を占めるFIA-GT3は自動車メーカーによって、あらかじめレーシングカーとして設計、製作された車両だ。販売された状態から改造は許されないが、一般的に高いストレートパフォーマンスを誇り、かつ比較的リーズナブルに入手することができる。

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もうひとつのJAF-GTは自由な改造が絶えず許される一方で、レーシングカーとして一から設計、製作しなくてはならないため、開発コストが高くなってしまうのが難点。だが、そのあたりをカバーするため、今年からマザーシャシーが本格的に使用可能とされた。これは共通のモノコックとエンジンを使用すれば、あとはどんなパーツを使おうと、どうレイアウトしようと自由というもの。さっそく4台が投じられ、うち3台がトヨタ86ベースであるのは、意匠の関係でベース車両を自由に選べないため。唯一の例外がロータス・エヴォーラで、このクルマに関してはロータス社の認可が得られている。

共通モノコックは、もちろんカーボンで製作され、エンジンは4500ccのV8。一般的なJAF-GTはエンジン搭載位置の変更が許されているが、マザーシャシーの場合は変更できないため、86ベース車はFR、エヴォーラベース車はミッドシップとなる。当然、バランス的に後者の方が有利であるため、同じエンジンを積んでいても若干リストリクター径が絞られている。

そういったリストリクター径や重量による性能調整は、JAF-GTにも、もちろんFIA-GT3でも実施されており、排気量や駆動方式の違いなどで生じる性能差を縮め、いわゆるイコールコンディションを保つよう配慮。特にFIA-GT3にはBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)として、欧ブランパン耐久レースを主催するSROが定めた、車種ごとの数値が採用されている。

GT300もタイヤはワンメイクではなく、複数のメーカーによって覇が競われている。ヨコハマタイヤは、その中で最大のシェアを誇り、昨年はGOODSMILE RACING with Team UKYOの谷口信輝選手と片岡龍也選手がドライバーチャンピオンを獲得。ちなみに開幕戦には38台が出場し、23台がヨコハマタイヤのユーザーだった。それぞれ排気量も違えば、エンジンも自然吸気あり、ターボつきあり、さらに駆動方式の違いもある、個性に満ちた車両すべてに、安定かつ高性能のタイヤをヨコハマタイヤは供給する。


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タイヤにとっても、世界的にみてもハイレベルな戦いの舞台であるSUPER GT。次回からは2015年のSUPER GTをヨコハマタイヤとともに戦う主なドライバー/チームをご紹介します。