2023年8月26日
ショップブログ
ローテーションってした方が良いの?⑤
お久しぶりの続きです。

■タイヤの摩耗寿命はどこで測るのか

今回のBRZの初回ローテで測定した残溝の計測値をみると、いくつかの現象を確認できます。
下記の画像は、僕が独自に記録をとっている表計算ソフトの画面で、レイアウトは試行錯誤しながらやっているので、僕以外の人が見てもちょっとわかりませんw
あくまでも僕自身の研究のためのデータであって、第三者が見て分かるように作ってませんので、まぁまぁ雰囲気だけ感じてください(笑)

まず、今回のミシュランPS4ですが計測する縦溝が4本あります。イン・イン寄りセンター・アウト寄りセンター・アウトの4つです。
これらの4つの溝にスリップサインが設けられているので、この溝のどこか一つでもスリップサインのある残溝1.6mmまでいくと車検が通らないタイヤとなります。
つまり、この4つの溝のうち《もっとも早く減る事になるどれかの溝》が、このタイヤの摩耗寿命なわけです。

■セオリー通りの綺麗な減り方をしているように見える右側 フロントタイヤ
計測した摩耗データを俯瞰してみてみると
右側はFR(フロントエンジン・リアドライブ【後輪駆動】)のセオリー通りな減り方をしています。
その中でも、右前タイヤはセンターの溝が6.2mm残っているのに対して、インとアウトは6mmと5.9mmという風にセンターよりも両ショルダー側の溝の方が少ない数字になっています。
これは前タイヤはハンドル操舵によって常にトー方向に動く事になるので、センターよりもショルダー側の方が減り易い環境にあるためです。
タイヤのセンターよりも両肩(ショルダー)が減っている状態の摩耗を両肩摩耗と呼称します。そのまんまですね(笑) ショルダー摩耗ともいいます。
注意が必要なのは、ショルダーは内側と外側の2つがあり、どちらか一方だけが減っている場合は両肩摩耗とは別の摩耗になります。(内側だけ減っていれば内べり、外側だけが減っていれば外減りという事が多いです)
この前輪の操舵によってフロントタイヤの両肩摩耗が起きる現象は、普段の生活環境の中に山間部がある松阪市のユーザーではよく見られる現象で、普段からカーブの走行が多いほど顕著になります。
(また、背の高いミニバンは外側のショルダーが減り易い(外減り)事も昔からよく知られており、その為に外減りを抑制したミニバン専用タイヤという商品が市場に登場して久しいです)
よくタイヤ屋さんに入社したての新人が、お客様のタイヤの両肩摩耗を見て「空気圧不足です!」なんてドヤ顔で語ってしまう(新人研修で必ず習います)んですが、その後にお客様の目の前で空気圧を測ったらドア表示以上には入ってたりして、説明に窮してしまうまでが新人あるあるです。
空気圧不足も両肩摩耗の原因の一つですが、前輪は操舵されるという自動車の大原則を忘れてはいけません。
また、時々この両肩摩耗が極端に起きている車をして「アライメント不良なんでしょうか?」というご相談を受ける時があるんですが、その場合もお客様が普段から往復している道が何処なのかを必ず聞きます。だいたい原因は道です。
(そもそも、アライメントが原因でフロント左右両輪に両肩摩耗が起きる事はまずないです。両肩が減る理屈を考えるとキャスター角が多いことが想像できますが、その場合はアライメントがずれてるんじゃなく、その車がそういう仕様なのです。片輪にだけ両肩摩耗ならアライメントである可能性もありますが、もしそうなら、それはたぶんフレーム修正が必要なレベルの厄介なパターンです)
タイヤの摩耗は空気圧だけで語れるほど簡単なものではありません。お客様にタイヤ摩耗の相談をされたときは、四輪全ての摩耗を見てよく考えてみましょう。
もし、その車の両肩摩耗の原因が空気圧だけなのであれば、同じ空気圧であった後輪も多かれ少なかれ両肩摩耗傾向になっていなければ理屈が合いません。
ちなみに、実は縦溝が4本あるタイヤの新品時の溝はセンター側の2本よりショルダー側の2本の方が、若干(0.2~0.5mmくらい)浅くなっている事が多いです。
つまり、ショルダー側の縦溝というのは、もともとセンターより若干浅いので、今回みたいにセンターが0.2mm深いからといってショルダーの方がよく減っているとはいえないということです。
その事を考えると、今回この車の右前輪のタイヤは4本の溝がほぼ等しく綺麗に減っているということになります。
■セオリー通りの綺麗な減り方をしているように見える右側 リアタイヤ
次に右後輪を見てみましょう。
こちらは右前輪とは明らかに違う減り方をしています。
センターの溝の方がショルダーより減っているのです。
前述したように、ショルダーの溝はセンターより若干少ない傾向になるので、それをでさえもセンターの方が少なくなっているのですから、完全にセンター摩耗です。
これこそがFR(フロントエンジン・リアドライブ【後輪駆動】)の典型的な減り方です。特にスポーツカーはこの傾向になりやすいです。
後輪は前輪のような操舵をされないので、基本的に真っ直ぐ転がり続けます。これがFF(前輪駆動)だと転がっているだけ(厳密にはジオメトリやコンプライアンスで動いてますが前輪の操舵に比べれば微々たる量です)ですが、FRだと駆動が加わります。
この駆動が加わっている時、特にスピード域が高めになってくると遠心力によってタイヤが変形しセンター部分が強く押し付けられるようになるので、FRの後輪はセンターが減ると言われています。
空気圧が高くなると同様にタイヤはセンター部分が凸状になります。それゆえにセンター摩耗の原因に空気圧過多が上げらるのですが、基本前後の空気圧がほぼ同じで前輪はショルダー摩耗で後輪がセンター摩耗なのですから、やはりこの場合の空気圧はあまりタイヤ摩耗に関係ないという事になります。








