全8戦で競われた2014年の全日本ジムカーナ選手権。サーキットからフルパイロンまで多彩なコースが戦いの舞台となったが、開幕戦の岡山と第7戦の恋の浦は初開催ということで各選手の攻略ぶりにも注目が集まった。
改造範囲やエンジン排気量などにより、11のクラスに分類される全日本ジムカーナ選手権。ヨコハマタイヤ勢はそのうちの半数以上にあたる6つのクラスでチャンピオンを獲得。クラスや車種を選ばない、タイヤが持つポテンシャルの高さをアピールする結果を見せた。
2014年のチャンピオンをご紹介する特集企画、第3回と第4回は全日本ジムカーナ選手権。まずはPN3/PN4/N1という3つのクラスのチャンピオンたちをご紹介していこう。
事実上、トヨタ・86とスバル・BRZの2車種が競い合う場となっているPN3クラス。改造範囲の狭いPN部門は2009年の発足なので既に5年目を迎えているが、2013年のクラス再編でPN部門がそれまでの3クラスから4クラス化されるにあたり、新生PN3が誕生した。このクラスはエンジン排気量が1,600ccを超える2輪駆動車両で、FIA(国際自動車連盟)/JAF(日本自動車連盟)の公認発行またはJAF登録が2012年1月1日以降という、新型現行車種を対象としている。
この激戦区で2013年に続いて王座争いを演じたのが、トヨタ・86の森嶋昭時選手。これまでにロータス・エキシージやマツダ・RX-7で全日本ジムカーナ選手権を戦い、2008年、’09年、’11年にSA2クラスでチャンピオンを獲得している。そんな“後輪駆動遣い”の森嶋選手が、2013年の新生PN3発足と同時に戦いの場を移してチャンピオン争いを演じたが、同年は惜しくもあと一歩届かずにシリーズ2位という結果に終わった。
リベンジが期待された森嶋選手、開幕の岡山と続く仙台は優勝に届かず厳しい序盤の出だしとなった。しかし第3戦の名阪で1本目でクラス唯一の1分19秒台を刻んで逃げきり優勝を飾ると、第5戦のイオックスも1本目のパイロンペナルティから2本目でしっかり逆転優勝。第7戦の恋の浦で3勝目を飾ってチャンピオンに王手をかけると、最終戦の本庄もしっかり準優勝で締めくくり、自身4回目となる全日本チャンピオンの座を手中におさめた。
「今シーズンは86で2年目なので、昨年以上のパフォーマンスを出すことを目標にスタートを切りましたが、いろいろな要因があって序盤の2戦でつまずいて厳しい状況に追い込まれてしまいました。ですが、第3戦の名阪で勝つことが出来て、そこからリズムを取り戻して攻めの姿勢に転じられました。本当なら第6戦のもてぎで勝ってチャンピオンに王手をかけたかったのですが、そこでダブルペナルティでノーポイントになって逆王手をかけられてしまいました。しかし第7戦の恋の浦で勝って、チャンピオン争いは最終戦の本庄へ。2年ぶりの本庄でしたが、自分としてはあまり得意ではないコースでもあるのですが、タイヤにも助けられて最後は納得できる走りで2位を得られてチャンピオンを決められました。
PN部門の中で三菱・ランサーエボリューションとスバル・WRXがしのぎを削り合うのがPN4クラス。このクラスで圧倒的な強さを見せているのが、“パイロン・キング”の異名を持つ、岡野博史選手である。2011年に当時のPN3クラスへと戦いの場を移した岡野選手は、同年のシリーズで5勝を挙げてチャンピオンを獲得。2012年は惜しくもシリーズ2位に留まったが、2013年は参戦した6大会すべてで優勝を飾って有効得点で満点を獲得してチャンピオンを奪還して強さを見せた。
そして2014年シリーズ、岡野選手は初開催となった岡山国際サーキットでの開幕戦を優勝で幸先よいシーズンインを切る。この大会は初コースということに加えて、想定よりも気温/路面温度が低く、さらにハイスピードなコース設定という難しい一戦になったが、タイヤのポテンシャルもフルに活かしての優勝で波に乗った。その勢いは留まることなく第2戦の仙台、第3戦の名阪と3連勝。欠場した第4戦をはさみ、第5戦のフルパイロンコースで競われたイオックスアローザ、そして第6戦のもてぎと連勝を重ねてシリーズリーダーとして主導権を握り続けた。
第7戦の恋の浦は欠場、チャンピオンをかけて臨んだ最終戦の本庄。チームメイトでもある角岡隆志選手に対して有利な条件で臨んだ一戦だったが、ここもしっかりと第1ヒートでトップタイムを刻むと、惜しくも第2ヒートでは逆転を喫したものの準優勝のリザルトを残してチャンピオンを決定。PN4クラスで3回目のシリーズチャンピオンを連覇で決め、自身として通算5回目の全日本チャンピオンを獲得することに成功した。
「2014年は開幕の岡山がハイスピード設定ながら気温が低く、路面も冷えていて厳しい戦いが予想されるところからのスタートでした。しかし、走ってみると思いの外に良い感じで走れて、幸先よいスタートを切ることが出来ました。車はオフシーズンの間に仕様変更しており、その手応えもありましたね。具体的には足回りを中心に、さらなるポテンシャルアップを図ったのです。第2戦以降はコースによってセッティングが合ったり合わなかったりで多少の善し悪しはありましたが、シーズン全体としては順調に過ごすことが出来ました。
クラス再編に伴い、2013年までのN2クラスは新生N1クラスへとその名を変えた。このクラスでチャンピオンを獲得したのが、ホンダ・インテグラで戦う箕輪雄介選手である。箕輪選手は2004年に全日本初参戦、2007年からレギュラードライバーの一人として全日本カレンダーをフルに追うこととなったが、2008年からヨコハマタイヤで現在まで戦い続けている。そしてマシンは一貫してインテグラを使っており、赤いボディのマシンはジムカーナ会場でお馴染みの存在になっている。
2014年は開幕戦の岡山で3位表彰台を獲得すると、第2戦の仙台で第2ヒートでの逆転を決めてシーズン初優勝。勢いに乗って第3戦の名阪は第1ヒートのベストタイムで逃げきって連勝を飾る。しかし中盤に入ってスナガワ、イオックスと足踏みが続いてしまったが、第6戦のもてぎで準優勝を飾って復調。第7戦の恋の浦で3勝目を飾るとチャンピオンに王手をかけた。
チャンピオンをかけた最終決戦として臨んだ最終戦の本庄。ランキングで箕輪選手はトップのライバルに対して、僅かに1点差の2位。チャンピオン獲得の条件は、2位以上のリザルトを残すことであった。そんな中、第1ヒートで見事にトップタイムを叩き出した箕輪選手。惜しくも第2ヒートで0.02秒かわされて2番手となったが、しっかりチャンピオン獲得の条件を満たして自身初の全日本タイトルを手中におさめた。
「2013年もチャンピオン争いをして最終戦勝負になったのですが、結果としては走り負けてしまってシリーズ2位に終わりました。ですから2014年は、前半戦から取りこぼしを少なくしてしっかり戦っていこう、という思いでシーズンに臨みました。開幕の岡山は難しいコンディションでしたが3位になれて、その次からは2連勝できたので、順調な滑り出しの前半戦だったと自分の中では思っています。しかし、そのあとに取りこぼしが2つあったので、そこで『あれれっ!?』という感じになって(笑) イオックスでダブルフリーターンがったのですが、そこまでは良かったのにターンになると車の側で上手くいかない部分がありました。これをリセットして挑んだ第6戦のもてぎで2位になれたので、このアジャストは大きかったですね。
UPDATE : 19.Dec.2014