2014年のモータースポーツシーン、ラリーとスピード行事でヨコハマタイヤを装着して全日本チャンピオンに輝いた選手を紹介する特集企画の最終回。
PN2、SA2、Dと、3つのクラスで栄冠を掴んだ全日本ダートトライアル選手権のシリーズチャンピオンたちをご紹介していこう。
2014年はラリーとダートトライアル、ふたつの全日本選手権をスバル・BRZで戦った鎌田卓麻選手。ラリーに続いてダートトライアルでもシリーズ最終戦でチャンピオンを獲得し、全日本のダブルタイトルに輝いた。なお、ともにヨコハマタイヤを装着するBRZでの戦いであったが、チームや車両は異なりダートトライアルは栗原オート企画の手によるマシンで戦ってきた。
第2戦、全日本初開催となった恋の浦に登場した鎌田選手が駆るBRZ。鎌田選手にとっては18年ぶりのダートトライアル参戦となったが、不安定な天候で難しいコンディションとなった中、タイヤ選択も的中させて堂々の優勝を飾る。意外にも鎌田選手にとっては、これが全日本ダートトライアル選手権での初優勝となった。
ここから鎌田選手は、スナガワ、門前、切谷内と4連勝。欠場した野沢をはさみ、チャンピオンを賭けて臨んだ第7戦の今庄。ところがここで路面コンディションに対してタイヤ選択を外してしまい、チャンピオン争いは最終戦のタカタに持ち越しとなった。そのタカタは1本目からベストタイムを刻むと、2本目ではさらに更新して2番手に3秒以上の大差をつける圧勝。前週の全日本ラリーに続いて、ダートトライアルでもチャンピオンの栄冠を手中におさめた。
PN2という新しいクラスの初年度なので、みんな試行錯誤するだろうなという中に入っていきました。正直、僕も車造りから何からラリーとの違いに戸惑ったりした部分もありました。けれども、BRZという車種には2013年からラリーに参戦していることもあり、皆さんよりも乗っている時間が長いので正解の方向がわかっているので、その分だけメリットがあったこともチャンピオンを獲れた要因ではないかと思います。
ダートトライアル界を代表する「ランエボ遣い」として知られるのが、ベテランの荒井信介選手。群馬県の三菱ディーラーマンであり、競技車両のみならず市販車についてもランサーエボリューションに精通するエキスパートである。常にチャンピオン争いの一角を占める存在であるが、ここ数年は惜しくもあと一歩栄冠に届かないことが多かった。しかし2014年、2009年以来5年ぶりとなる自身7回目の全日本チャンピオンに輝いた。
荒井選手のマシンは、熟成の域に達しつつある三菱・ランサーエボリュションⅩ。開幕戦の丸和はやや奮わない結果となってしまったが、第2戦の恋の浦で準優勝。続くスナガワ、そして門前と3大会連続の準優勝、そして第4戦の切谷内では3位と、着実に表彰台を獲得してシリーズポイントを積み重ねて行った。
後半戦、チャンピオン争いの行方も話題になり始めた第5戦の野沢。荒井選手はADVAN A036の優れたポテシャルをフルに活かした走りで滑りやすい路面を攻略、最後は2位に0.9秒差をつけて待望のシーズン初優勝。逆転チャンピオンへの可能性を高めて、終盤の2戦に臨む流れを作り上げた。そんな期待に応えて第7戦・今庄では超硬質路面を的確に捕らえた上、2本目での路面変化もしっかり見極めて連勝を飾り、遂にランキングのトップへと浮上。そして最終戦のタカタ、ここではADVAN A053で1本目にベストタイムを叩き出し、そのまま逃げきりで優勝を飾ってチャンピオン獲得に成功した。
2014年シーズンを迎えるにあたっては、きっちり最後まで順序立てて戦っていこうと思っていました。2013年、前半に3つ勝てたのに後半であまり良いパターンが無くて本当に悔しい思いをしたので、その反省という意味合いです。ところが開幕の丸和でちょっとつまづいてしまって、これは弱ったな、となりました。そこから足回りなどを煮詰め直したのですが、そうしたら良い方向に変わったことが大きかったですね。
2005年からのSCクラス6連覇など、ダートトライアル界を代表するトップドライバーの一人が谷田川敏幸選手。2010年から十数年ぶりにヨコハマタイヤ勢に復活、Dクラスを戦うスバル・インプレッサはダートトライアル場に無くてはならない存在である。そんな谷田川選手は、2014年の開幕戦からニューマシンを投入。注目を集めたが、技術面の解釈の相違もあって最終結果は失格となり、まさかの厳しいシーズンインとなってしまった。
第2戦・恋の浦。ニューマシンをしっかり手直しして臨んだ谷田川選手は、2本目でベストタイムを2秒以上更新する圧巻の走りを見せて初優勝を飾る。しかし第3戦のスナガワでは1本目でミッショントラブルに襲われてしまい、ニューマシンにつきまとう“産みの苦しみ”を味わうことも。だが、これもしっかりと克服して第4戦は準優勝、そして第5戦の切谷内ではシーズン2勝目を挙げた。
シーズン終盤、谷田川選手はチャンピオンに向けて一気にチャージ。シリーズ3番手というポジションで臨んだ第7戦の今庄、1本目でベストタイムを奪うと2本目も豪快さと繊細さが高次元でバランスされた谷田川選手らしい走りでタイムを更新して、オーバーオールベストで3勝目を飾って、ランキング争いでトップへと浮上。この勢いをそのままに最終戦のタカタへと臨み、1本目にADVAN A053で2位に2秒以上の大差をつけるベストタイムを叩き出す。このまま逃げきってチャンピオン獲得の絶対条件である優勝を手中におさめ、2年連続の栄冠に輝いた。
2013年のタカタでGVB型インプレッサを投入すると発表して、ニューマシンで臨んだ2014年でした。メカニックが休み無しの徹夜続きで仕上げてくれて、多くの皆さんのご協力もいただいてデビューさせることが出来ました。しかし、デビューとなった開幕戦でああいうことになって、それはもうショックで悔しくて。ただ、それも自分に課せられた試練だと受け止めて、有効ポイント制における捨てポイントを落としてしまったけれど、次から頑張ろうねとみんなで気持ちを切り替えました。もっとも、切り替えなければならないという気持ちと、悔しさを引きずる気持ちの両方があって、何日間かは正直なところ引きずりましたね。
UPDATE : 9.Jan.2015