Japanese Championship Champion Interview (2)

Japanese Championship Champion Interview (2)

クラス再編により全6クラスとなった2014年の全日本ラリー選手権。ヨコハマタイヤ勢は最大排気量を誇るJN6クラスを筆頭に、5つのクラスでドライバー/ナビゲーターの両部門でチャンピオンを獲得する強さを見せた。
6クラス化の中で特に話題を集めたのが、改造範囲を厳しく制限したRPN車両によるJN4とJN2クラス。このふたつのクラスは、ターマック(舗装路)ラリーで使用できるタイヤが縦溝を有するものに制限されているが、ADVAN A050を使う他クラス同様にヨコハマタイヤの高いポテンシャルが遺憾なく発揮されることとなった。さらに最小排気量のJN1クラスでもチャンピオンを獲得し、車種やクラスを選ばないヨコハマタイヤの優位性が実証されたのである。


竹内源樹 選手 / 加勢直毅 選手 – 全日本ラリー選手権 JN4クラス

車種的にはJN5クラスと共通する、スバルBRZとトヨタ86が主役となるJN4クラス。改造範囲を制限されたRPN車両で構成され、2006年以降のJAF登録車両でエンジン排気量1,600ccから2,000ccの車両が属することとなる。

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新生JN4クラスが佐賀で行われた開幕戦で注目を集める中、優勝争いを演じたのは全日本選手権のターマックラリーに初参戦を果たした竹内源樹選手。ドライコンディションのDay1をベテランのライバルに対して8.6秒差の2位であがると、ウェットに転じたDay2ではADVAN NEOVA AD08Rのポテンシャルを活かして一気に逆転。そのまま逃げきって全日本選手権初優勝を飾る幸先の良いシーズンインとなった。

その後、JN4クラスはターマックラリーでの競い合いとなるが、嬬恋村に舞台を今年から移した第5戦の群馬を準優勝で終えると、続く第6戦の京都はポイント係数も大きい一戦だったが、ここでデイポイントを含める満点優勝で勢いに乗った。そして第8戦の岐阜、惜しくも優勝には一歩届かず2位になったもののライバルの離脱もあって最終戦を待たずしてチャンピオンを獲得。最終戦の愛知も満点優勝を飾り、第5戦からコンビを組んだナビゲーター(コドライバー)の加勢直毅選手ともども、初代チャンピオンの称号を手中におさめた。

CHAMPION DRIVER

竹内源樹 選手 [JN4クラス ドライバー部門 シリーズチャンピオン]

「RPN車両という部門が始まるということで、キャロッセさんで1台走らせるという話が雑誌に載ったりしたシーズンイン前。それに乗ってみたいという思いが、キャロッセさんでお世話になったきっかけでした。願いが叶って、開幕戦で勝つことも出来て、結果としてシリーズを追わさせていただくことになって。僕としては2013年のシーズンが終わったころには、2014年がこんな展開になるとは全く考えてもいなかったので、とても充実した一年になりました。

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チャンピオン争いをするようになって、平塚(忠博)選手が自分にとっての大きなベンチマークでした。やはり、乗る人が乗るとタイムが拮抗してくるのがRPN車両の面白さだと思います。他のクラスで走っていたら前後差がつきそうなところを、常に接戦で勝負の仕方を学べた一年になったのではないかと思っています。

BRZはとてもバランスの良い車です。タイトコーナーが続く場面では多少気を使うこともありますが、モントレー(群馬)や丹後半島(京都)などのハイスピードなところは得意中の得意。ドライバーを育ててくれる車でもあり、車がまだまだ行けると言ってくれるところを、ドライバーがどれだけ行けるか、そんなポテンシャルを持っています。

2014年、最も記憶に残る一戦は、開幕戦の唐津(佐賀)ですね。本当に緊張していたし、何もかもが初めてづくしでした。そんな中で競り合うことが出来て、そして勝てて、あの勝った瞬間は今年のハイライトだったと思います」

CHAMPION NAVIGATOR

加勢直毅 選手 [JN5クラス ナビゲーター部門 シリーズチャンピオン]

「シーズン2回目の参戦となる第5戦の群馬から、竹内選手とコンビを組んで戦いました。新設されたRPN車両は、これまで経験してきたラリーマシンと比べてほぼノーマルという状態。ロールケージと足まわり、デファレンシャルギアくらいしか変わっていないので、これからラリーを始めてみようという方でもやりやすいと思います。私自身はAPRC(FIAアジア・パシフィック・ラリー選手権)なども含めて4WDターボの経験も多いのですが、RPN車両だからといってナビゲーターの仕事が大きく変わるわけではありません。基本はどんな車に乗っても同じですね。ただ、BRZはステージによっては想像以上のハイスピードにもなるので、おさえるところはしっかり見極めていく必要がありますね。

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竹内選手は基本的に自分でラリーを組み立てるドライバー。だから何か助言を求められたらすぐに答えられるように常に用意していた感じで、こちらが主導権を握ってああだこうだと言うことは無かったですね。

私にとってのチャンピオンは2000年以来、全日本選手権のフル参戦も今シーズンが初めてでした。だから2014年はフル参戦が出来て、チャンピオンを獲れて、プライベートでは子供も出来て、本当にいい一年になりました(笑)」



田中伸幸 選手 / 藤田めぐみ 選手 – 全日本ラリー選手権 JN2クラス

JN4クラスと同様に、2014年から新たに加わったRPN車両で競われるJN2クラス。こちらはエンジン排気量が1600cc以下のコンパクトカーが主役となる。具体的にはスズキ・スイフト、トヨタ・ヴィッツ、マツダ・デミオといった顔ぶれ。さらに第5戦・群馬にはプロトン・サトリアネオも久しぶりに全日本ラリーの舞台に姿を見せて、注目を集める存在となった。

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そんな中で緒戦から強さを見せたのが、ベテランの田中伸幸選手と藤田めぐみ選手のコンビ。北海道在住の田中選手と九州の藤田選手は初のコンビとなるが、準備時間があまり取れなかったとは思えない息のあった戦いぶりで開幕戦を制することに成功。グラベル(非舗装路)ラリーの第3戦・福島で連勝を飾ると(第2戦・愛媛はクラス不成立)、第4戦の北海道洞爺も快調にトップを走ったが、Day2で駆動系トラブルに襲われてしまう。しかしクルー自らが手押しでサービスまでマシンを運んで修復、惜しくも2位となったものの執念でポイントを獲得。

後半戦に入っても勢いは留まることなく、第5戦・群馬、第6戦・京都を連勝。不成立となった第7戦をはさみ、3位以上でチャンピオン獲得という条件で臨んだ第8戦・岐阜では準優勝。ターマック&グラベルともに安定した強さを見せて、最終戦を残した時点でチャンピオンを手中におさめることに成功した。

CHAMPION DRIVER

田中伸幸 選手 [JN2クラス ドライバー部門 シリーズチャンピオン]

「新たに作ったJN2のスイフト、この車がどういうものなのか良く分からないうちにシーズンが始まってしまったので、まずは壊さないで道の上にいること、そしてしっかりゴールすること、それしか考えていませんでした。速さについては二の次、全く開幕前にテストを出来ませんでしたし、エンジンが壊れてしまったりもして。さらにナビゲーターも初めてのコンビで、事前の打ち合わせも十分に出来なくて。それでもなんとかなるだろう、と思ってシーズンインしてみたら、本当になんとかなりました(笑)

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三菱・ミラージュからのマシンチェンジですが、スイフトはとても乗りやすくて、ずっと以前から乗っていたかのようなんです。ピーキーなところが無いということが、大きな特徴ですね。開幕戦のSS、三方線で『なんだ、普通に走れるじゃん』というのが第一印象。絶対スピードはターボエンジンのミラージュよりも低いですが、一所懸命にエンジンが仕事をして車を引っ張ってくれている。こういうものなのだと思うと、スピード領域の違いにストレスを感じることはありませんでした。

2014年の記憶に残る一戦、それはやはり開幕戦の佐賀ですね。とにかくドタバタの中で現地入りして、不安だらけの中で走り出したら意外と楽だった。最初で波に乗れたのは大きかったですね。藤田選手も初めて組んだと思わせない仕事ぶりでした。SSの最初から最後まで、僕が何も話さなくてもいいんです。きちんと走りに集中できる環境を作ってくれるのですが、これは藤田選手の師匠である井手上(達也)選手が良く育ててくれたおかげですね」

CHAMPION NAVIGATOR

藤田めぐみ 選手 [JN2クラス ナビゲーター部門 シリーズチャンピオン]

2014年はベテランの田中選手と組むということで、自分の仕事をきちんとミスなくこなせるように気をつけることと、田中選手に迷惑をかけないこと、このふたつが必要だと思って臨みました。だからシーズンインするにあたっては、ワクワク感と不安が入り交じったような心境だったのが正直なところですね。

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開幕戦のオープニングステージで田中選手に、『なんだ、お前のペースノートは!!』と言われてドキッとしたんです。でも続けて、『ピッタリ合うじゃないか!!』って(笑) 本当にピッタリと合って、田中選手にも喜んでもらえました。私としても、『田中選手と組むのは本当に初めてだったかな?』という感じで始まって、全く違和感は無かったですね。ただ、SS以外の部分でのタイム管理だったりとか、細かいところを不安になる前に田中選手にはお知らせするように心がけました。ベテランの方はそういうところの把握を気にされると思ったので、特に気をつけましたね。

2014年の記憶に残る一戦は……、初優勝した開幕戦と言ってはダメですよね(笑) やはり第4戦の北海道洞爺。駆動系が壊れたマシンを押してサービスインさせたのですが、とにかく田中選手と二人でどうにかするしかなくて。ちょっと諦めたところもあったのですが、TC(タイムコントロール)までが下り坂だったから、なんとか転がして行けるかな、と。ところが間違って、曲がるべきところをまっすぐ行ってしまって。今度は逆に上り坂を押し上げることになったのですが、この時は日頃からスポーツクラブなどで身体を鍛えておいて良かったなと思いました(笑)」



中西昌人 選手 / 美野友紀 選手 – 全日本ラリー選手権 JN1クラス

2013年までとクラス名称も区分規定も変更されていないのが、最小排気量車が属するJN1クラスだ。エンジン排気量が1,400ccより小さく、生産終了から10年以内の車両で、駆動方式は問わないというのが基本である。こう記すと街中でお馴染みのコンパクトカーが競い合っている、そう思われる方がほとんどだろう。だが、それは半分正しく、半分間違いとなる。ストーリアやスイフトなどがいる一方で、実はこのクラスにはロータリーエンジンを搭載するマツダRX-8も参戦している。ただ、圧倒的にパワーやタイヤサイズで有利なRX-8だが、パーツの問題などで出場はターマック戦に限られるのが実情である。

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そのため、グラベル戦にも参戦するコンパクトカー勢がシリーズ争いの主役となるが、残念ながらJN1クラスは参加台数が少なくクラス成立もギリギリという大会が続いた。少数精鋭による接戦とも言えるが、これはワンミスでリタイアを喫してノーポイントになるとタイトル争いに生き残るのは難しくなってしまうというシビアさを持つ。

そんな中、中西昌人選手はマシンをスイフトからストーリアにスイッチ。地元九州での開幕戦は3位、第2戦の愛媛はリタイアと、やや厳しい展開でのシーズンインとなった。しかし第3戦・福島で優勝を飾ると、中盤戦はグラベル&ターマックのいずれも安定した戦いぶりで上位入賞を重ねた。そして着実にポイントを積み重ねて迎えたシリーズの天王山、第7戦の北海道十勝。この過酷な長丁場を2013年に続いて連勝、一気にポイントを稼いで中西選手がチャンピオンを獲得。さらに続く第8戦・岐阜では準優勝を飾り、第2戦からコンビを組むナビゲーターの美野友紀選手もタイトルを手中におさめた。

CHAMPION DRIVER

中西昌人 選手 [JN1クラス ドライバー部門 シリーズチャンピオン]

「2013年の北海道洞爺まで旧JN2クラスにスイフトで参戦していましたが、マシンをコースアウトさせて壊してしまいました。そこで急遽JN1仕様を作ったのですが、ちょっとパワーが足りなくてストーリア×4とのタイム差が大きくて厳しかった。さらにRX-8もいるので、やはりトータル性能でストーリアだろうということになって、出物があったので購入しました。ターマックはRX-8が全然速くて厳しい展開を予想していましたが、ライバルより上位になれたり優勝も出来たりと、粘り強く戦った甲斐がありましたね。

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ただ、JN1は台数が少ないのでリタイア出来ないという気持ちが先行していて、速さ的には不満もあるんです。そんな中で今年はナビゲーターが変わりましたが、美野選手は大学院生なので就職活動があったのですが、うまく早めに就職が決まったので第2戦から最終戦まで組むことが出来ました。親子以上の年の差コンビですが、現役の国立女子大学院生らしく頭のキレがいいんですよ。全日本初挑戦だったので長いSS(スペシャルステージ)の経験値が少なく、グラベルラリーもほとんど出ていなかったので最初は大変だったようですが、ひとつアドバイスをするとすぐにアジャストしてくれるんです。親父のように小言を言ったりもしましたが、しっかり予習してくるので一度したミスを二度することは無かったですね。

2014年で最も記憶に残っているのは第7戦の北海道十勝。過酷な一戦で生き残ったのはチームメイトとの2台だけという中で、最後まで走りきれるかもわからない状態でしたがスローダウンするのではなく、ある程度のペースをキープしてタイムもJN3クラスを全部食ってしまえたステージがあったくらいでした。そうしてゴールして表彰台に上がったときの感激が、一番の思い出ですね」

CHAMPION NAVIGATOR

美野友紀 選手 [JN1クラス ナビゲーター部門 シリーズチャンピオン]

「これまでは九州のジュニア戦でシリーズを追いつつ、選手権戦にはスポットで出場したりと、九州の中で活動していました。大分大学の自動車部に在籍しているのですが、自分で運転するのはジムカーナの学生大会に数回出場したくらいです。第2戦の愛媛から全日本選手権に参戦しましたが、その前に1回だけ愛媛のラリーには他のドライバーさんと組んで出たことがあるので、雰囲気はわかっていました。ただ、やはりシリーズを追うということで緊張していましたし、グラベルラリーの経験も少ないのでペースノートの読み方もわからないままでした。

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愛媛は早い段階でエンジントラブルに襲われてしまったので、本当の意味では第3戦の福島からという感じです。最初はグラベルで車内がガタつく中で、ペースノートを書くのが大変で(笑)。ロストしないように目印を見つけるのも、グラベルではこれという目標物が少ないので、ロストしたらどうやってリカバリーしようかと考えながら戦っていたりもしましたね。でも、今年一年でいろいろ経験出来ました。中西選手からもシチェーションに応じたペースノートの読み方を、丁寧にアドバイスしていただけました。

来春からは社会人なので、時間的に全日本選手権を追うのは難しくなってしまいます。でも、地区戦などに舞台を移して、ラリーは続けていきたいと思っています。私自身は運転が決して上手くないのですが、そんな自分でもラリーは一緒に走っている感覚があるし、車に乗っているだけでも楽しいんですよ。2014年の記憶に残る一戦は……、第7戦・北海道十勝のYAM WAKKAにあるストレートですね。あんなに長いストレートを今までに経験したことが無くて、あまりの感覚の違いに呆然として、ついペースノートを読む声が止まってしまったんです(笑)」



UPDATE : 12.Dec.2014