2014年、全日本選手権のタイトルがかけられたラリー/ジムカーナ/ダートトライアルでは、ヨコハマタイヤ勢が大活躍を見せて多くのチャンピオンが誕生した。そんなチャンピオンの横顔とシリーズの展開をご紹介する特集企画を、今回から5回連続でお送りする。
第1回は全日本ラリー選手権。2014年は、新たに改造範囲を厳しく制限したRPN車両部門が加わり、全6クラスに再編された。ヨコハマタイヤ勢は、そのうちの5つのクラスでシリーズチャンピオンを獲得。グラベル(非舗装路)ではADVAN A053、ターマック(舗装路)ではADVAN A050が強さを遺憾なく発揮し、各クルーの戦いをしっかりと足元から支えた。
全9戦のシリーズでは、特に注目度の高いRALLY HOKKAIDOで奴田原文雄選手組の優勝を筆頭に、トップ7を独占。最終戦の新城ラリーでもワン・ツー・フィニッシュを飾って、高いパフォーマンスを実証した。
今回はJN6とJN5、ふたつのクラスでチャンピオンを獲得したドライバーとナビゲーター(コドライバー)をご紹介しよう。
全9戦中、ベスト7戦の有効ポイントで競われる全日本ラリー選手権。今シーズンから6つのクラスに再編されたが、その最高峰クラスに位置づけられるのが三菱ランサー・エボリューションとスバルWRXがしのぎを削り合うJN6クラスだ。ヨコハマタイヤ勢ではADVANカラーをまとうランサーの奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組に加えて、久しぶりの全日本フル参戦を果たした新井敏弘選手/竹下紀子選手組が注目を集めるチャンピオン争いとなった。
奴田原選手/佐藤選手組は開幕戦の唐津で準優勝を飾ると、第2戦の愛媛、第3戦の福島と前半のグラベル(非舗装路)ラリーを連勝。シリーズリーダーとして迎えた折り返しの第5戦・群馬は豪雨の影響もあってリタイアを喫してしまったものの、続く第6戦・京都はSS(スペシャルステージ)合計が100kmを超えるためポイント係数が1.2と重要な一戦。このターマック(舗装路)の一戦でデイポイントを含めた満点優勝を決めると、シリーズの天王山とも言える第7戦・北海道十勝も圧勝で制してチャンピオンに王手をかけた。
第8戦の岐阜、あと5点を加えればチャンピオン決定という有利な条件であったが、ターボトラブルに苦しめられてしまう。しかしチーム一丸となった総力戦でDay2もフィニッシュまでしっかりマシンを運んで5点を加算、最終戦を待たずして2009年以来5年ぶり、奴田原選手は自身10回目となる全日本チャンピオンを獲得した。さらに横浜ゴムの工場城下町である愛知県新城市を舞台とした最終戦も優勝を飾り、年間5勝を挙げる強さを見せた。
「2014年を振り返ると、雨の多いシーズンという印象があります。ゆえに難しいコンディションのラリーが多かったのですが、そんな中で良く走りきれたな、とも思っています。第2戦の愛媛はトラブルを抱えながらも逃げきれましたし、第3戦の福島は出だしが良かったですからね。
「2014年は、結構ツキがあったシーズンだったように思います。去年までは不運が続くこともありましたが、今年はツキがこちら側にまわってきたような感じですね。去年は悔しい思いをしましたが、その上で今年のシーズンに臨むにあたって、いつも全開で攻めるという点については変わっていません。ただ、今年は天候という要素も大きかった。ウェットになるなど難しいコンディションの多い一年でしたが、その方が我々には有利でした。車の造りにしても、ドライバーの技術にしても、我々は守備範囲が広いのです。そういう部分が活きてきたからこそのチャンピオン獲得だったのではないでしょうか。
昨年まではJN3クラスとされていた、エンジン排気量1,500ccから3,000ccまでの車両は、JN5クラスに分類される。このクラスで今や主役となっているのがスバルBRZとトヨタ86で、中でも昨シーズンの中盤からBRZで参戦する鎌田卓麻選手は、2008年のFIAアフリカ・ラリー選手権チャンピオンナビゲーター(コドライバー)でもある市野諮選手とのコンビで強さを見せた。
鎌田選手組は開幕から2戦連続で表彰台を獲得すると、第4戦の北海道洞爺では待望の初優勝を飾る。さらに続く第5戦の群馬、第6戦の京都とターマックも制して主導権を握ると、第7戦のRALLY HOKKAIDOで総合4番手のポジションでクラス優勝を飾り、2戦を残して早々にシリーズチャンピオンを獲得した。また、鎌田選手は全日本ダートトライアル選手権にもBRZで参戦。同じBRZでもラリーとダートトライアルではそれぞれ別の車両を駆ったが、ともに装着するのはヨコハマタイヤ。そしてダートトライアルもPN2クラスでチャンピオンを手中におさめ、2014年はダブルタイトルを獲得することに成功した。
「BRZで昨年から参戦して、車はスピードを出して行けるし、自分でどのくらいまで行けるのかということは解っていたので、あとは壊れないようにして、全日本選手権ならではの各大会ごとの特有な状況にしっかり対応していけば、チャンピオンに手が届くだろうと思っていました。チャンピオンを決めたRALLY HOKKAIDOは、ここならではのサスペンションやギアの設定がありますし、昨年の参戦で壊れやすい箇所も分かったので、しっかり対策を施して臨みました。その結果としてフルポイントで勝てたことは大きかったですね。
「去年はRALLY HOKKAIDOと新城で鎌田選手とBRZに乗りましたが、成績は散々なものでした。2014年はフル参戦になりましたが、鎌田選手は4WDターボでスピードを究めてきたドライバーなので、車を労るという要素が少し足りなかったんですね。昔、グループAとグループNが海外で走っていたころも、『グループNで、そこまで踏めるわけがないだろう』と言われるような走り方が見られたのです。BRZは4WDターボに比べてパワーが小さいので、一度乗せたスピードをあまり殺さずに、ウサギのように軽やかに走らせたいのもわかるのですが、やはりそれではダメで前半のトラブル率は高かったですね。開幕戦と第2戦は3位、しかし第3戦ではリタイアして、この先どうなるかと思いました。その第3戦、DAY1でリタイアしてDAY2は走らないと言っていたのですが、そこは絶対に走らなければダメだと言って、順位は関係なくDAY2を走りきりました。あれが結果的にはひとつのキッカケになって次の第4戦からの4連勝につながったので良かったですね。
UPDATE : 5.Dec.2014