タイヤ事業

横浜ゴムグループは2021年度から2023年度までの新中期経営計画「Yokohama Transformation 2023(YX2023)」をスタートしました。

タイヤ事業に与えるCASE・MaaSの影響

現在のタイヤ市場は乗用車用タイヤなどの「消費財」とトラック・バス用、農業機械用タイヤなどの「生産財」の2つに分かれており、現在のその市場規模はおおよそ半々となっています。しかし、今後「CASE」「MaaS」「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」が浸透するにつれ、個人所有の車が減少し、人や物の移動を支えるインフラ車両の増加が予想されます。つまり、お客様が個人から法人へと変化することでタイヤ市場における消費財タイヤの生産財化が進むと考えています。

このようなタイヤ市場の変化に対し、当社は「深化」と「探索」の2つのアプローチによる戦略を推進します。

タイヤ事業に与えるCASE・MaaSの影響

タイヤ消費財:高付加価値商品比率の最大化

「高付加価値商品比率最大化」を掲げ、ウルトラハイパフォーマンスタイヤ、SUV・ピックアップトラック用タイヤ、ウィンタータイヤの3つのカテゴリに注力し、当社の「ADVAN」「GEOLANDAR」「ウィンタータイヤ」の販売を「深化」させます。これにより、「ADVAN」「GEOLANDAR」「ウィンタータイヤ」の構成比率を現在の40%から50%以上に引き上げます。そのため、以下3つの施策に取り組みます。

  1. 「ADVAN」「GEOLANDAR」の新車装着の拡大
  2. 補修市場でのリターン販売強化とウィンタータイヤを含む商品のサイズラインアップ拡充
  3. 各地域の市場動向に沿った商品の販売を強化する「商品・地域事業戦略」
タイヤ消費財:高付加価値商品比率の最大化

独自技術と品質を強みに商品・ブランドを強化

上記の3施策を進めるにあたり、高付加価値商品の商品開発およびブランド力の更なる強化に取り組みます。

プレミアムカーへの新車装着

プレミアムカーへの新車装着は技術力の高さの証明でもあり、引き続き注力します。

Porsche Cayenne
Porsche Cayenne
Mercedes-AMG E-class
Mercedes-AMG
Ram 1500
Ram 1500
Jeep Compass
Jeep Compass

ウィンタータイヤの開発強化

ウィンタータイヤの氷雪性能向上にも積極的に取り組んでおり、北海道とスウェーデンに冬用タイヤのテストセンターを所有しています。北海道タイヤテストセンターでは屋内に試験設備を構えており、2020年11月には様々な温度域での開発を可能とする新たな冷媒装置を設置するなど開発体制を強化しています。

北海道タイヤテストセンター
北海道タイヤテストセンター
屋内氷盤試験場の新冷媒装置
屋内氷盤試験場の新冷媒装置
YOKOHAMA TEST CENTER of SWEDEN
YOKOHAMA TEST CENTER of SWEDEN

モータースポーツ活動

2020年、ニュルブルクリンク耐久シリーズSP9Proクラスでシリーズ・チャンピオンになったBMWカスタマーチームのワーケンホルスト・モータースポーツと最高峰クラスSP9Proクラスでのシリーズ・チャンピオン連覇とニュルブルクリンク24時間レースでの総合優勝を目指します。

SUPER GT GT500では日産とトヨタの2台体制で臨み、表彰台および優勝を目指し「ADVAN」ブランドを強化します。オフロードレースでは北米やアジアのシリーズ戦に参戦し「GEOLANDAR」ブランドの強化を図ります。

ニュルブルクリンク24時間レース ニュルブルクリンク耐久シリーズ(NLS)
ニュルブルクリンク24時間レース
ニュルブルクリンク耐久シリーズ(NLS)
SUPER GT GT500
SUPER GT GT500
SUPER GT GT300
SUPER GT GT300
北米 BlueWater Desert Challenge
北米 BlueWater Desert Challenge

「商品・地域事業戦略」

「商品・地域事業戦略」を推進し、各地域の市場動向に沿った商品を拡販します。北米ではSUV・ピックアップトラック向けに「GEOLANDAR」、日本ではスタッドレス、欧州ではウルトラハイパフォーマンスタイヤ「ADVAN」やウィンタータイヤの拡販に取り組みます。

それらの実現に向け、各地域の開発、供給、販売体制を最適化し、2023年度の販売本数は2019年比で「ADVAN」で150%、「GEOLANDAR」で115%、ウィンタータイヤで120%、18インチ以上のタイヤで155%の販売伸長を計画しています。

商品・地域事業戦略

タイヤ生産財:市場変化を取り込み、事業をさらに強化

タイヤ生産財では「CASE」「MaaS」「DX」などの大きな市場変化の取り込みとして、当社の提供価値を「探索」し、4つのテーマに取り組みます。またOHT(オフハイウェイタイヤ)事業、TBR事業の強化を図ります。

コスト

市場変化に伴うコスト低減要求の高まりを予測し、インドの乗用車用タイヤ工場であるYokohama India Pvt. Ltd.を「横浜ゴムグループで、最もコスト競争力に優れる乗用車用タイヤ工場」と位置づけ、これまでの生産体制を見直し、将来の市場を睨んだ低コストモデルの確立を目指します。また、タイのトラック・バス用タイヤ工場も同様に低コストモデルによる増産を検討します。

インドの乗用車用タイヤ工場
インドの乗用車用タイヤ工場
タイのトラック・バス用タイヤ工場
タイのトラック・バス用タイヤ工場

サービス

「CASE」「MaaS」の進行に伴う車両保有の法人化が進むにつれ、タイヤメーカーに求められる提供価値はタイヤ単体ではなく「タイヤ+交換」、メンテナンスなどのサービスになると考えます。当社は国内47の都道府県を広くカバーする販売、物流のネットワークを活かし、サービス体制の強化に取り組んでいます。

具体的にはカーディーラーやカーシェア運営会社など法人客先でのタイヤ交換、点検、管理を行うサービスカーの導入を今後も継続的に拡大し、より機動的なサービスの提供を目指します。

サービス
■サービスカー導入台数の推移
サービスカー導入台数の推移

DX

今後はタイヤのデジタル化による情報サービスの強化が重要になります。当社は先進センサータイヤの開発を進めていますが、その機能追加により段階的にサービスと顧客を拡大していく計画です。まず空気圧に加え、摩耗計測によるフリート企業向け車両管理サービスを実現し、さらには路面状況の検知による情報サービス企業などに向けた新たな付加価値サービスを創出します。

この実現に向け、異業種とのアライアンス体制の構築を進めており、アルプスアルパイン株式会社と株式会社ゼンリンと実証実験を開始しています。路面検知システムを搭載したセンサータイヤで得たデータを地図情報と紐づける実証実験を行うことで、新たなタイヤビジネスの検討を進めます。

DX
DX

商品ラインアップ

現在はトラック・小型トラック・VANによる輸送が運転手によって行われています。しかし、将来的に車両の電動化・自動運転化が進むと長距離から近距離、人の手に荷物が渡るラストワンマイルまで無人化による輸送となることが予想されます。これら物流を構成する車両の多様化が進むと、タイヤにおいても様々な品種が必要になることが見込まれます。

例えばラストワンマイルでの車両にはノーパンク、ソリッドタイヤが採用される可能性があります。このような物流の変革に対し、トラック・バス用タイヤからエアレスのソリッドタイヤまで多品種のタイヤをワンストップで提供できるメーカーは多くなく、当社の強みです。今後も更なる品種の拡充を進め、市場での優位性を確保します。

■物流のステージに応じた車両の現在と将来の変化予測
物流のステージに応じた車両の現在と将来の変化予測

OHT事業:更なる成長ドライバー

OHT(オフハイウェイタイヤ)事業はタイヤ生産財事業の成長ドライバーです。2016年よりATG、愛知タイヤを買収し、成長に向けたOHT事業の強化を進めてきました。

OHT事業:更なる成長ドライバー

横浜ゴム、ATG、愛知タイヤの事業統合

2021年より開始した横浜ゴム、ATG、愛知タイヤの事業統合により、本中期経営計画において更に成長を加速させます。

横浜ゴム、ATG、愛知タイヤの事業統合

マルチブランド戦略

YOKOHAMA、ALLIANCE、GALAXY、PRIMEX、AICHIのマルチブランドによる市場展開、顧客要望への対応力を強みに事業拡大を進めます。

YOKOHAMA
ALLIANCE
GALAXY
PRIMEX
AICHI

増産投資:インド ヴィシャカパトナム 新工場

OHT市場は今後も旺盛な需要が見込まれており、インド・ヴィシャカパトナム新工場の建設など積極的に増産投資を行います。2025年には売上収益1,400億円、全社利益の3割をOHT事業で稼ぐことを目指します。

■OHT事業の生産能力(ゴム量)の見通し
OHT事業の生産能力(ゴム量)の見通し
■OHT事業の売上収益の計画
OHT事業の売上収益の計画

TBR(トラック・バス用タイヤ)事業:成長に向けた事業基盤の強化

TBR事業ではすでに販売が生産能力を上回りつつあり、以下の2つを推進します。

米国TBR工場の供給改善

引き続き米国ミシシッピ工場の安定供給の確保に努め、需要にしっかり応える体制を構築します。

米国ミシシッピ工場
米国ミシシッピ工場

増産投資による売上拡大

TBR市場も旺盛な需要の継続が見込まれています。TBR工場の更なる増産投資を計画し、2025年には1,000億円までの売上拡大を目指します。

■TBR事業の生産能力(ゴム量)の見通し
TBR事業の生産能力(ゴム量)の見通し
■TBR事業の売上収益計画
TBR事業の売上収益計画