2018 宝田ケンシロー×宝田芳浩 親子対談 (3)

4年間の地元スポット参戦を経て、いよいよ本格的に全日本選手権への挑戦をスタートさせた宝田ケンシロー選手。父・芳浩さんもその走りをサポート、親子二人三脚でのチャンピオン獲得に向けた戦いは大いに注目を集めるものとなった。


父と同じ九州で掴んだ全日本初勝利

2014年はシリーズ6戦とJAFカップに参戦した宝田ケンシロー選手、第3戦の地元・スナガワでは表彰台も獲得して翌年のシード権を手中におさめた。芳浩さんも時間の許す限り参戦に帯同、ケンシロー選手の走りをサポートした。そして2015年、8戦のカレンダーに対して初のフル参戦となったシーズン。しかし、当初はその予定ではなかったと芳浩さんが舞台裏を明かす。

「本当は九州は遠いからスキップして、それ以外の7戦を追っかけようという話でした。開幕は丸和、第2戦が九州というカレンダーでしたが、オフシーズン中に丸和でテストをしたらそれなりに走れているから、丸和は星勘定出来るだろうと。ところが蓋を開けたら、丸和は7位で入賞圏外に終わって。『おいおい!!』ってなって、急に九州も参戦することにして行ったら勝ったんですよ」

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公開練習はドライだったが、決勝が行われた日曜は朝から雨模様。難しいコンディションを制して全日本初優勝を飾った模様はレポートページを参照していただきたいが、このケンシロー選手の全日本初優勝に芳浩さんは別の意味でも驚いたという。

「自分も一緒に現地に行っていたのですが、ケンシローが勝って最初に言ったのが『俺の全日本初優勝も九州だったけれど、お前も九州で初優勝なのかよ』ってね(笑)」

1992年4月5日、三井三池オートスポーツランドで開催された開幕戦「RALLY SPRINT IN 九州 92 トライアル・ザ・九州」。この戦いでギャランVR-4を駆って全日本初優勝を飾ったのが、宝田芳浩選手だった。それから23年が経った2015年4月19日、スピードパーク恋の浦で宝田ケンシロー選手が全日本初優勝を飾ったのである。



父からの、厳しく的確な指摘

2015年は全日本初優勝を含む3勝を飾ったが、シリーズは惜しくも2位に留まったケンシロー選手。この悔しさもバネにして2016年は粘り強い戦いぶりを見せて、最終戦で見事に悲願の全日本チャンピオンを獲得した。さらに2017年も快走は続き、シーズン4勝を挙げて2年連続のチャンピオンに輝き、名実ともにトップドライバーの仲間入りを果たした。2連覇を果たした昨シーズンについて、ケンシロー選手に振り返ってもらおう。

「2017年は、得意だと思っているコースと、自分が好きなウェットコンディションで確実に勝ってきたことが連覇に結びついたのだと思っています」

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一方で、芳浩さんからは厳しい指摘も。

「終わってみると、8戦中3戦が悪い結果でした。結果的には5戦のポイントと、最終戦の結果が活きての2年連続チャンピオン。4つ勝てたことは大きかったけれど、全戦で3位以内を狙えるようなドライバーになって欲しいですね」

この指摘を真摯に受け止めていたケンシロー選手は、苦手な野沢と切谷内を克服したいと語っていた。そして2018年、PN2クラスに移籍したケンシロー選手は、公約通りに第3戦の切谷内でシーズン初優勝を飾ったのである。そんなケンシロー選手の成長について、芳浩さんはひとつの具体例を挙げた。

「2017年の門前、ここを攻略するために事前に親子で綿密なシミュレーションをやったんです。ギアの使い方などを研究したのですが、実戦でその通りに走れて勝てたので『こいつ(ケンシロー選手)も成長したのかな』と思っていますよ(笑)」



息子が目指す、父の持つ“数字”

そろそろ“宝田親子対談”も締めくくり。ここからは、親子のホンネについて迫ってみよう。そもそも、ケンシロー選手は芳浩さんの運転に同乗したことはあるのだろうか?

「競技レベルのドライビングをする父の隣は、未だに乗ったことがないんです。逆に自分の隣に父が乗ったことも、氷上で何回かあった程度です」

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氷上での同乗も、息子の運転が気になったからという訳ではないと芳浩さんは打ち明ける。

「だってね、氷上だから真冬なんですよ。そんな寒い中、外で待っているのは嫌じゃないですか。だから暖かい車の中がいいから『ちょっと横に乗せろ』って(笑)」

ケンシロー選手の隣はあまり経験していないものの、車載映像を見て芳浩さんは気づいたことがあるという。

「ケンシローの車載映像を見るたびに、『ハンドル、回しすぎじゃないのか?』って思っていたんですよ。でも、ちゃんとハンドルの動きが追いついていて、変な動きをすることなく切った分を戻せているんですね。実は、俺もそういうドライビングスタイルなんだよね(笑)」

この事実こそ、ケンシロー選手は芳浩さんのDNAを受け継いでることの証と言えるのではないだろうか。ところでケンシロー選手は、ある目標を2018年中に達成したいと思っているそうだ。

「2017年はお預けになってしまったのですが、全日本選手権とJAFカップでの父の勝ち星(優勝回数)を超えることが今年の目標です!!」

この宣言を聞いて、芳浩さんは笑みを浮かべてこう答えた。

「そこで勝負するのかい(笑)。勝つんだったら、俺の勝ち星の何倍も勝ってくれって。ちょっと多く勝ったくらいで喜ぶんじゃなくてさ」

気になる勝ち星、ケンシロー選手は2018年の第4戦・スナガワを終えて全日本10勝とJAFカップ1勝。対する芳浩さんは全日本10勝とJAFカップ2勝。合計勝ち星で言えばケンシロー選手は芳浩さんにあと1勝で並ぶことになる。もう一歩で偉大な父を超えるケンシロー選手。

最近、氷上でトヨタ・スターレットに乗った芳浩さんの運転を「意外と走れるんだな、って思った(笑)」と茶目っ気も含めて評したが、そんなケンシロー選手に芳浩さんは「どのクラスでもチャンピオン争いをして欲しい」とエールを送った。



2018年はPN2クラスに戦いの舞台を移して、二人三脚でのチャンピオン獲得を目指す宝田親子。これからの親子の戦いぶりに、ぜひご注目ください!!