2015 JDC Round 2 Report

【全日本ダートトライアル選手権 第2戦/恋の浦】

雨の恋の浦でADVAN A031が4クラスを制覇、
PN1クラスは宝田ケンシロー選手が全日本初優勝!!

JDC Round 2

開催日 2015年4月18日-19日
開催場所 スピードパーク恋の浦
(福岡県)
天候
路面 ウェット
参加台数 107台
(ヨコハマタイヤ装着車 32台)
2015 全日本ダートトライアル選手権 第2戦

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全日本ダートトライアル選手権は舞台を九州に移し、4月19日(日)に福岡県福津市のスピードパーク恋の浦で第2戦が開催された。3年前の2013年にオープンし、昨年から全日本イベントが開催されるようになったこのコースは、高低差が大きい急勾配の外周セクションと島回りを中心としたテクニカルセクションで構成された、全国で最も新しいダートコースだ。外周の最も高い場所に位置するオーシャンビューコーナーは、眼下に玄界灘と真っ白な砂に覆われた白石浜が広がる絶景ポイントであるとともに、急勾配のバンピーな斜面を一気に下るチャレンジングなコーナーとして選手からも人気が高い。

コース全体が粘土質の赤土で覆われ、ドライであれば硬く引き締まった硬質路面となるが、ウェットの場合は粘性の高い土がたっぷりと水分を含んで軟質な路面となるために、かなり滑りやすくなるという二面性を持っている。

決勝日の前日に行われた公開練習は好天に恵まれドライコンディションだったが、決勝日は朝からあいにくの雨。午前中の降り方は弱かったものの、午後からは雨が強くなるという予報もあり、クラスによってはコンディションが悪くなる第2ヒートのタイムアップが望めず、第1ヒートが勝負となることも予想された。コースレイアウトは、外周区間とテクニカル区間をふんだんに組み合わせた設定。ウェットコンディションも重なり、第1ヒートの前半ゼッケンは2分30秒以上、Dクラスでも2分を超える異例のロングコースとなった。

このコンディションを見事に読み切ったのが、SA1クラスの岡田晋吾選手だ。2013年に全日本チャンピオンを獲得した岡田選手は、九州が地元ということもあり、スピードパーク恋の浦の特徴を良く知るドライバーのひとりだ。第1ヒートは雨が降ったり止んだりという状態だったが、SA1クラスが走行する時間帯は一時的に雨が止んだ。このタイミングを見逃さなかった岡田選手は、軟質路面に強いADVAN A031を装着して果敢にアタック。路面の泥が掃けた区間はしっかりと攻め、滑りやすい区間はしっかりと抑えるというメリハリの効いた走りでベストタイムをマーク。結局このタイムは第2ヒートに入っても誰にも破られることがなく、今季1勝目を獲得した。

SA2クラスも、SA1クラスと同様に第1ヒートのタイムがそのまま決勝タイムとなった。第1ヒートのSA2クラスが走行している途中から雨がふたたび降り始めたが、走行抵抗となる路面を覆う水分を含んだ重い土は蹴散らされ、若干滑りやすいもののレコードラインが出来上がっている状況だ。この路面を的確に捉え、「ADVAN A031の高いトラクション性能を生かした」という大西康弘選手が第1ヒートのベストタイムをマーク。雨脚が強くなった第2ヒートは全車ともタイムは望めず、大西選手が逃げ切り優勝を果たした。

Dクラスは、第1ヒートで谷田川敏幸選手が外周区間はダイナミックな走りで攻め、テクニカル区間は繊細なブレーキコントロールとアクセルワークでベストラインを外さないメリハリの効いた走りを披露。路面が悪化した第2ヒートはタイムを落としたものの、第2ヒートのなかではベストタイムという両ヒートとも完璧な走りで、開幕戦に続き2連勝を飾った。

第1ヒートのタイムがそのまま決勝タイムとなるクラスが多かった今回の大会だが、第2ヒートはPN1クラスにドラマが待ち受けていた。水分を含んだ泥が走行抵抗となった第1ヒートは2番手に終わった宝田ケンシロー選手が、雨が強くなったものの路面を覆う泥が掃けた第2ヒートにベストタイムを更新。よほどの手応えがあったのだろう。ゴール後にガッツポーズを見せたそのタイムはその後もライバルに逆転されることなく、悲願の全日本初優勝を獲得した。

DRIVER VOICE

宝田ケンシロー 選手 [ADVANKYBオクヤマSWT]

【今回の成績 : PN1クラス 優勝】
今まで第2ヒートのタイムが伸びずに優勝を逃してしまったことが多かったので、ゴール後に『ベストタイム更新!』のアナウンスを聞いた時に思わずガッツポーズが出てしまいました。もともとADVAN A031は好きなタイヤで、地元の北海道では雨の大会の時にブーン×4で総合優勝したこともあるんです。今回はドライ路面だった前日の公開練習の時に、ADVAN A053でベストタイムをマークしていたことも自信に繋がりました。実は、僕の父が全日本で初優勝した場所も九州なんです。ここで初優勝できて、本当にうれしいです。

岡田晋吾 選手 [J&S・KYB・WMシビック]

【今回の成績 :SA1クラス 優勝】
ここは地元でもあるので、絶対負けられないと思い挑みました。スピードパーク恋の浦は、上段の外周区間と下段の島回り区間で路面の質が違っていて、ウェット路面でも上段はかなり攻めることができるのですが、下段はしっかり抑えなければタイムが伸びないんです。ADVAN A031は縦方向のトラクションが強いだけではなくブレーキも安定しているので、上段と下段のリズムを作りやすく、特に下段は気持ちをセーブして冷静に走ることができます。そういったタイヤの特性を、うまく走りに合わせることができたのが勝因だと思います。

大西康弘 選手 [TEIN・FORUM1ランサー]

【今回の成績 :SA2クラス 優勝】
いつもなら第1ヒートは様子を見るのですが、今回は第1ヒートが勝負になるかもしれないので、しっかりと走ろうと思いました。実は、2速から3速に入れるところを5速に入れてしまうミスもあったのですが、なんとか挽回できて良かったです。僕自身、滑る路面は得意な方で、ADVAN A031も好きなタイヤのひとつです。スリッパリーな路面に強く、昔マレーシアのラリーでプロトンに乗っていた時も、このタイヤにずいぶん助けられました。

谷田川敏幸 選手 [ADVAN トラスト クスコ WRX]

【今回の成績 :Dクラス 優勝】
前日から雨の予報が出ていたので、今日は第1ヒートから気合いを入れていきました。高速セクションは路面のうねりが大きく、スピードを乗せていくためにはちょっとした冒険が必要なんだけれど、そこを気合いでカバーして、逆に低速セクションはちょっとしたミスが秒単位の差になることもあるので、オーバースピードにならないように、かつ抑えすぎないように気合いを入れて走りました。全日本で両ヒートをADVAN A031で走るというシチュエーションは今までなかったのですが、路面に対するキャパが大きいタイヤなので、基本的にタイヤに合わせて走り方を大きく変えるということはないですね。それだけ、扱いやすいタイヤだと思います。

FEATURED DRIVER

■N1クラス : 大久保勇作 選手

全日本ダートトライアル第2戦恋の浦ラウンドは、全国の主要なダートコースとは異なる独特の路面を持つというコースの性格から、コースの特性を熟知する地元スペシャリストが多い。N1クラスの大久保勇作選手もそのひとりだ。

2013年と2014年は、九州ダートトライアル選手権で2年連続シリーズ2位、今年はすでに2勝を挙げ、シリーズランキングトップに立っている。「スピードパーク恋の浦は、雨が降るとものすごく滑りやすくなってしまうので、とにかく優しくファジーに、確実にタイヤが前に転がるようなドライビングを心掛けなければなりません。ミスした人から消えていくので、そういった面ではメンタルの強さも必要だと思います」と、雨の恋の浦攻略法を語ってくれた。

その大久保選手、第1ヒートはその言葉とは裏腹に誰よりもアグレッシブな攻めの走りでウェット路面を走破。結果は、ギャラリーコーナーでスタックしかけてしまい、トップから約7秒差の8番手となった。

「ちょうど僕がスタートする頃から雨が止んだんです。このコースは、雨が止むとどんどん路面コンディションが良くなるので、スタートする直前に『攻めよう』と走り方を切り替えました。後半ゼッケンになればなるほど、タイムが良くなるはずなので。ここは自分も勝負だろうと思って攻めたのですが、結果は大失敗でした。雨の恋の浦は、やっぱり優しく攻めるのが鉄則ですね」と、敗因を語る。

ちなみに第2ヒートはコースオフしてしまい、そこから脱出できずにリタイアとなった。「全日本は魔物だらけです(笑)」という大久保選手。持ち前の豪快な走りを封印することなく、攻めの走りに徹して玉砕してしまった今回の全日本だが、悲願の地元優勝を目標として、来年もまたその勇姿を全日本恋の浦ラウンドで見せてくれることだろう。

TECHNICAL INFORMATION

粘質路面の恋の浦は、その土質の特性からウェット路面の場合はADVAN A031が最も適しているタイヤとなる。このタイヤは縦方向のトラクション性能が高いタイヤで、縦方向に加速することはもちろん、減速もしっかりと縦方向に使い、抑えるべきところをしっかりと抑えた選手が上位に進出する結果となった。特に路面がかなり滑りやすい状況だったため、ブレーキが遅れてしまったことによるタイムロスが大きい選手も少なくなかった。前に進むことだけではなく、減速することもタイムアップするためには必要という典型的な戦いとなった。