2016 Japanese Formula3 Championship (4)

2016年の全日本F3選手権を戦う注目ドライバー紹介の2回目も、前回に続いてルーキードライバーにスポットを当てて行きましょう。F3-Nクラスでチャンピオンを争い合う、片山義章選手と廣田築選手のお二人を取り上げます。ともにレースキャリアは短く一般的には無名の存在にも等しいですが、現在の活躍を考えればぜひ名前を知っておきたい両選手です。


石の上にも三年、やっと分かってきた感じです – 片山義章選手

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Petit LM Racingから出場の片山義章(かたやま よしあき)選手は、1993年11月13日生まれの23歳。2013年の途中でSuper-FJ岡山シリーズにデビューし、翌’14年にはランキング2位に。スポット参戦したオートポリスの第2戦で、初優勝を飾っている。昨年はシーズン前半にFIA-F4を戦い、またスーパー耐久にはフル参戦。平手晃平選手/柴田優作選手とともに、最終戦・鈴鹿でST-3クラスの優勝を飾っている。

この世代としては珍しくカートレースの経験もなく、いわば遅咲きではあるものの、短い中でも重ねてきたキャリアが濃厚であることは決して無駄にはなっていなかった。その証拠がデビューウィンを達成したこと。そればかりか、ここまでの10戦中5戦で優勝を飾り、ランキングのトップを快走中だ。まずは最初にF3をドライブした時、そして初優勝の印象を聞いてみることとした。

「今まで乗っていた他のフォーミュラとはダウンフォースのレベルが全然違っていて、ハンドルが重く、Gのレベルも違うので、シーズンオフにすごくトレーニングを重ねました。その効果はすごくありましたね。いきなり勝てるほど甘いレースではないと思っていましたが、スタートを失敗してしまって……。苦戦はしましたが、何とか全員抜くことができました。ただ、みんな、まだ慣れていないかもしれないので、気を抜くことだけはやめようと。もっとも、すぐには勝てないかもしれないけど、いつかは優勝するつもりで練習してきたので、かなりうまくいったな、とは思いましたね」と片山選手。

ちなみに、最近ついたニックネームは「マッチョ片山」。短期間のうちに、これだけ鍛え上げるには、相当ストイックでなければならなかったはず。実際、自慢とするのは「体力面」と語り、さらに「これだけ厳しいことをしたんだから、勝てるだろうという自信がつきました」とも。精神力の向上も、大躍進の秘訣となったようだ。そしてまた、「レースを初めて、もうすぐ3年になるのですが、石の上にも三年というか、今までは経験値が低かったので、やっと分かってきたという感じではありますね」とも語っていた。

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そんな片山選手の目標とは……。「将来的には、SUPER FORMULAやSUPER GTに乗ることです。遅く始めたので、F1というのは正直……。とにかく行けるところまで行って、ワークスのドライバーになれたらいいですね。今シーズンの目標は、もちろんシリーズチャンピオン。それもできるだけ早いうちに決めて、次のシーズンに向けて準備したいと思います」と強く語ってくれた。

今でもスタートは苦手で、最大の課題とは言うものの、いずれ強い精神力で克服してくれるに違いない。ある意味、型破りなドライバーではあるが、どういった進化を遂げてくれるのか、今後も見守っていきたいものだ。



見返してやれたという思いもありますね – 廣田築選手

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ALBIREX RACING TEAMから出場の廣田築(ひろた きずく)選手は、1991年1月10日生まれの25歳。申し訳ないが、彼の名を知るレースファンは、まずいないだろう。いくらリザルトを調べても、日本でのレースキャリアはSuper-FJだけで、それも1年間スポット参戦したに過ぎないからだ。実際には、その前にフィリピンやインドでのレース経験はあるというが……。

「小さい頃からF1が好きで、フォーミュラをやるからにはF3を、とずっと思っていました」と廣田選手。そうは言えども、段階を経ていくのが、この世界の常。「まわりからはいろんなことを言われました。でも、年齢的にも、資金的にも、もうワンステップ踏むと厳しいと感じていたので」と、挑戦を決めたのだという。だが、いきなり通用するものか。

「僕の場合、運が良かったのは、最初のテストが雨の鈴鹿だったんです。いきなりドライでしたら、からだがきつかったでしょうし、コーナリングスピードの高さに対応できなかったかもしれません。雨だったのでクルマの限界がつかみやすかったし、徐々に慣れていくことができたので……。もともとウェットコンディションは得意だったんです」と廣田選手。それでも自身が先に語ったとおり、「いろんなことを言われ」ても、自分の意志を貫けたのは「みんな言うんですよ、僕の性格を、頑固だとか大雑把だと(笑)」という、折れないハートの持ち主だったからなのだろう。

きっと廣田選手の決断は、正解だったはず。いきなり2位でゴールし、5戦連続で表彰台をゲット。そして、鈴鹿での第7戦、第8戦は優勝すら飾ってしまったのだから。目下ランキング2位。改めて、ステップアップの道のりにセオリーなど存在しないのだと、考えさせられた次第だ。だからこそ、「キャリアも短いし、カートどころかストリートも走っていない僕が、少ない走行時間でF3まで来られて、まともに走れていますよ、と言いたいんです。それは僕の誇りでもあるし、もちろんほとんどの人が親切で言ってくれたのでしょうが、中には……。ちょっとだけですが、見返してやれたって思いもありますね」と廣田選手は語る。口には出さなかったが、きっとそれだけの努力も人知れずやってきたのだろう。

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そんな廣田選手の目標は、「もちろんF3-Nクラスのチャンピオン。ちょっと片山選手に差をつけられてはいますが、このままレースで流れを何とか引き寄せて、逆転したい。ただ、その後の目標は……。正直なところ、今年がレースキャリア最後かもしれないって、覚悟を決めています。それは資金的な問題で。だからこそ、今年しっかり頑張って、来年につなげられれば、と。チャンスがあれば、続けていきたいと思っています」と、まさに背水の陣で挑んでいることが明らかに。何としてでも折れないハートを最大の武器に、突き進めるところまで突き進んで欲しいものだ。



さらなる飛躍が期待される若手たちの走りにも注目が集まる全日本F3選手権。ヨコハマタイヤはその走りを、足元でしっかりと支え続けています。