2016 Slalom & Rally New Generation (5) =Dirt-Trial 2=

全日本ダートトライアル選手権でも、ますますの盛り上がりを見せているPN車両部門。ダートトライアルの後編では、チャンピオン獲得を目指すPN1クラスの宝田ケンシロー選手と、今シーズンから参戦を開始して注目を集めるPN2クラスの熊久保信重選手をご紹介いたします。


新しい車で戦えるのが最大の魅力 – 宝田ケンシロー 選手 (PN1 Class)

2013年からPN1クラスを戦っている若武者が、宝田ケンシロー選手。往年の名選手・宝田芳浩氏を父に持つサラブレッドで、芳浩氏も所属していた名門チーム・OKUYAMAの一員である。2013年にN1クラスからPN1クラスへ移籍、同年はマツダ・デミオ、翌2014年からはスズキ・スイフトのステアリングを握っている。昨年はチャンピオン争いを演じた宝田選手に、まずはPN部門の魅力をお聞きしよう。

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「PN部門は、現行型を中心とした新しい車で戦えるのが最大の魅力ですね。『現行車だったらスポンサーになるよ』とおっしゃってくれるスポンサーさんもいますし、改造範囲が限られているので参戦費用を低くおさえられることからチャンスも広がりますね」

PN部門に移る前、宝田選手はN1クラスでダイハツ・ブーンを駆っていた。N1クラスも決して改造範囲は広いと言えないが、PN部門はさらにそれよりも厳しく制限されている。この車両の違いについて、宝田選手はクラス移籍当時を振り返る。

「改造範囲が狭いクラスになることに、違和感はありませんでした。ただ、正直なところ最初は『PN部門かよ~』みたいな思いもあって。それまで乗っていた車よりも絶対的なスピードが遅くなる車に乗り換える、ということに抵抗があったのも事実ですね。でもやってみたら、PN部門は奥が深いんです。ドライバーの腕がシビアにタイムとなって出てきますし。だから、そんなPNを戦ってきて、ドライビングの“引き出し”は増えたと思っています」

最初にも書いたようにケンシロー選手の父は、ヨコハマタイヤとダートトライアルを戦って、幾多の栄冠を掴んできた名選手・芳浩氏。最後にせっかくの機会なので、偉大な父と同じ道を歩むことにした思いをお聞きして、インタビューを締めくくろう。

「親父と同じダートトライアルを始めるにあたっては、最初は『芳浩のセガレ』という目で見られることを覚悟していました。それで僕がやってみて潰れてしまったとしたら、自分はそれまでのものだということですし。逆に結果を出していけば、親父の存在をメリットとして使えるだろうとも思っていました。それに加えて実は、『親父が出来るんだったら、僕にも出来るだろう』くらいの気持ちも少しありましたね(笑)」

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ダートトライアルの楽しさを広めていきたい – 熊久保信重 選手 (PN2 Class)

D1グランプリで活躍し、そのダイナミックな走りで世界中にファンをもつ熊久保信重選手。経営するエビスサーキットにはダートコースも用意しているが、熊久保選手自身も今年から全日本ダートトライアル選手権にPN2クラスから参戦する運びとなった。その背景について、まずは教えていただこう。

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「ドリフトという運転技術をD1グランプリ以外でも活かしていきたい、ドリフトをもっと運転技術として広めたい、という思いがありました。うちのサーキットにダートコースを作ったということもありますが、自分自身がもともとやりたかったということもあって、ダートトライアルにも挑戦することにしました。そんな中でPN2のトヨタ・86を選んだのは、参戦するならFR(後輪駆動)しか乗るつもりがなかったからです。いずれは改造範囲の広いクラスを目指したいという思いもありますが、まずはダートトライアルというものを知るためにPN部門で出場することにしました」

D1グランプリなどで、豪快なドリフトを見せる熊久保選手。その運転技術は、もちろんダートトライアルでも遺憾なく発揮されている。そして第2戦の恋の浦では、参戦2大会目にして堂々の表彰台獲得もなし遂げた。

「テールを流して走ることは、路面がダートでも全く怖くありません。ただ、それをタイムにつなげるのは難しいところですが、自分たちが昔から培ってきたワインディングやスノー路面を走る技術を活かしています。小学生から20年ほどモトクロスをやってきたので、路面の変化にも慣れていますし。ダートトライアルならではのタイヤ選択という要素も、第2戦では第2ヒート前の慣熟歩行で状況を確認して、フロントにADVAN 053、リアにはADVAN A031という変則的なチョイスをしました。新参者らしからぬ選択かもしれませんが、それがドンピシャに当たって表彰台につながりましたね」

今年のダートトライアル参戦は、ドリフト界でも大いに注目を集めている。熊久保選手は今年の自身初参戦を皮切りに、将来的なビジョンを描いていると語ってくれた。

「今年はダートトライアルを知る、ドリフトの技術をどこまで使えるのかを見極める一年です。そしてその先には、自分のチームとして参戦する人数を増やしていきたいですね。ドリフト選手はダートトライアルのことが良くわからなかったり、壁があるように感じている人もいるようです。だから、その壁を取っ払いたい。自分自身が一年参戦して、いろいろなことをドリフト選手に教えて行こうと思うんです。また、エビスサーキットには練習車もあるので、ダートトライアルをどんどん経験してもらって、楽しさを広めていきたいですね」

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次回は2016年の全日本ラリー選手権でRPN車両を駆る選手をご紹介いたします。