2016 Slalom & Rally New Generation (1) =PN/RPN Division=

JAF(日本自動車連盟)が公認するモータースポーツ競技の中で、スピード行事に分類されるジムカーナとダートトライアル。それぞれの最高峰に位置する全日本選手権において、近年盛り上がりを見せているのがPN車両部門である。現在ではラリーにおいても全日本選手権にRPN車両部門が設けられており、各シリーズを支える一大勢力へと成長を遂げた。PN/RPN部門の特徴、そして魅力について、注目選手の声とともにご紹介していこう。


PN/RPN車両部門が誕生した背景とは?

ジムカーナとダートトライアルの全日本選手権に、PN車両部門が導入されたのは2009年のこと。ただし、ジムカーナは8月2日の第6戦・浅間台、ダートトライアルは7月5日の第5戦・丸和と、異例とも言えるシーズン途中からの部門追加であった。

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導入の背景としては、まず自動車を取り巻く環境の変化が挙げられる。一般消費者の嗜好が変化していることもあり、いわゆるスポーツモデルは各メーカーともに減少傾向を見せていた。環境性能への要求が高まったこともあり、ハイパワーなエンジンを搭載するモデルの生産中止も相次ぎ、モータースポーツのベースとなり得る車種が限られてきた。

また、安全性能の向上に伴い、車は“大きく・重く”なる傾向も強まった。このために年式の古いモデルがパワーや軽さで勝ることから、競技会の会場は旧型車のオンパレードという様相を色濃くし始めたのである。

一方で“若者の車離れ”という言葉も聞かれるようになり、モータースポーツ人口の底上げも喫緊の課題となった。そうした中で、まずは参戦費用の低減を図ることが必要という認識は広く持たれるようになり、改造範囲を狭くすることで車両本体の購入に加えて必要となる競技車両製作にかかる費用を抑えて、それまでよりも敷居を下げたPN車両部門が誕生する流れが実現した。そしてこの流れはラリーにも波及し、2014年からRPN車両部門が全日本ラリー選手権に加わったのである。



PN/RPN車両の特徴と改造範囲

PN/RPN車両の特徴は、大きくわけてふたつが代表的な事項として挙げられる。ひとつは年次規制の採用であり、高年式の車両のみに参加が認められている点である。これによってPN/RPN部門は現行型、もしくは一世代前の型といった、街中でも見かける機会の多いモデルで構成されている。もうひとつの特徴は改造範囲の狭さであり、これは前述の通り参戦費用の低減効果を生んでいる。

ひとつめの特徴となる年次規制については、PN/RPNともに2006年1月1日以降に公認もしくは登録が発効された型式の車両のみが参戦できる。さらにジムカーナのPN3クラスとダートトライアルのPN2クラスは、ともにエンジン排気量1,600cc超の2輪駆動のPN車両であり、さらに公認もしくは登録発効が2012年1月1日以降の車両に限られている。

改造範囲についてはPN車両はエンジンについてはプラグやコード、当初と同一方式のフィルターに交換出来る程度で、実質的にノーマルと表現しても良いだろう。足回りではダンパーとスプリング、ブレーキパッドは変更が可能。また駆動系ではクラッチとクラッチカバー、LSDは交換・装着が可能だが、高価なカーボン製の使用は認められていない。さらに純正装着されているエアコンは取り外すことが許されておらず、助手席についてもノーマルをそのまま装着することが義務づけられている。一方でラリーのRPN車両についてはロールケージの装着が義務化されているなどの細かな違いこそあるものの、PN車両とほぼ同じレベルで改造範囲は厳しく制限されている。

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さらに大きな違いと言えるのが、ジムカーナにおけるPN車両に使用が義務づけられているタイヤだ。N車両などと異なり競技用のスポーツラジアルタイヤ、ヨコハマタイヤのラインアップで言えばADVAN A050は使用することが規則的に出来なくなっている。PN車両は日本自動車タイヤ協会(JATMA)の定めるJATMAラベリング規格における転がり抵抗C以上、ウェットグリップd以上、またはヨーロッパのグレーディング規格における転がり抵抗F以上、ウェットグリップE以上のタイヤであり、さらに接地面に1周する連続した複数の縦溝を有したタイヤのみが使用を許されているからである。ラリーのRPN車両についても、ターマック(舗装路)ラリーにおいて、2016年からジムカーナと同じ内容が規定化された。

このように、競技車両としては改造範囲が制限されているPN/RPN車両部門。当初は入門クラス的な意味合いも強かったが、いまでは改造範囲の広いクラスを戦っていた有力ベテラン選手も多く移籍しており、若手からベテランまで幅広い選手層の厚さが見られるようになった。改造範囲の狭さはドライバーのテクニックがタイムに直結することにもなるため、上位争いは白熱しておりシビアな戦いが繰り広げられている。また、若手にとっては同じ土俵でベテラン勢と腕の勝負を行えるため、スキルアップにも効果的なクラスであると言えるだろう。


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