2016 Slalom & Rally New Generation (4) =Dirt-Trial 1=

全日本ダートトライアル選手権においても発足から8年目のシーズン迎えて、ますます盛り上がりを見せているPN車両部門。2つのクラスで競われているが、2016年もヨコハマタイヤ勢の多くが表彰台を飾る活躍を見せている。PN/RPN車両部門にスポットをあてる特集企画、このページからは全日本ダートトライアル選手権の模様をご紹介していこう。


2016年の全日本ダートトライアル選手権・PN車両部門

ジムカーナと同じく、全日本ダートトライアル選手権でPN部門が発足したのは2009年のシーズン途中からであった。まずはエンジン排気量1,600cc以下の2輪駆動のみが対象とされ、部門内でのクラス区分はされずに「PN Class」として発足したのである。記念すべき初戦となったシリーズ第5戦の丸和ラウンドには3台が参戦。第6戦の切谷内は6台、第7戦のコスモスパークでは5台と減少したが、最終戦の門前には再び6台のエントリーを集めた。

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全日本ダートトライアル選手権のPN部門、残念ながら初年度はヨコハマタイヤ勢の出場は無かったのだが、2年目となる2010年の第2戦からヨコハマタイヤを装着する選手もチャレンジを開始。そして2011年の第3戦・門前で、コルトを駆る太田延昭選手がヨコハマタイヤ勢としてPN部門の初優勝を飾った。その後、2013年にスイフトを駆る佐藤秀昭選手がヨコハマタイヤでPN部門の初チャンピオンを獲得。さらに排気量によってPN1とPN2に分けられた2014年は、スバル・BRZの鎌田卓麻選手がPN2クラスのチャンピオンを獲得した。

2014年から2クラスで競われている全日本ダートトライアル選手権のPN部門、その区分について改めておさらいしておこう。

[PN1クラス] エンジン排気量1,600cc以下の2輪駆動のPN車両
[PN2クラス] エンジン排気量1,600ccを超える2輪駆動のPN車両のうち、FIA/JAF公認発行年またはJAF登録年が2012年1月1日以降の車両

2016年、開幕戦の丸和では全149台のうち、PN1とPN2クラスに31台が参戦。現状で全日本ダートトライアル選手権はPN部門の2クラスを含めて9クラスが設定されているが、PNは着々と参加台数を増やしておりこれからも勢力は拡大することが確実視されている。



思いがけない展開でPN部門にスイッチしました – 向井冬樹 選手 (PN1 Class)

2016年の開幕戦・丸和では、PN1クラスで向井冬樹選手が全日本初優勝を飾った。ダートトライアル歴は16年ほどになるという向井選手は関東の地区戦を中心に戦ってきた選手で、今年からスイフトを駆ってPNに移籍し全日本戦への挑戦もスタートさせたが、その初戦で表彰台の真ん中を獲得した。そんな向井選手、PNへの移籍は思いがけない展開で決まった話だという。

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「スイフトにした理由を話すと長くなるのですが……(笑)。去年まではシビックの改造車で戦っていたのですが、お世話になっているフクダオートサービスのお嬢さんが運転免許をとり、ダートトライアルを始めてみようという話になって作ったのが、このスイフトなのです。カラーリングを施して格好よく仕上がったら、『この車が速く走っているところを見たいから、お前が走れ』という話になって乗ることになりました」

それまで地区戦のS1クラスを戦っていた向井選手は、他の選手を教える機会が多くいろいろな人の車に乗る機会が多いという。そのため駆動方式や車種もいろいろなものを走らせた経験が多いことから、スイフトに対してもスンナリ溶け込めたそうだが、改造範囲も非常に限られるPN部門への移籍で変化もあったという。

「正直なところPNに対しては、『遅い車で走っているクラス』という先入観がありました。それまで、エギゾーストノートも大きい車でブンブン振り回して走っていたので、PNでも同じようにやってそこそこのタイムは出るだろうと思っていたんです。ところが地区戦の開幕で全く奮わなくて、ノーミスで走りきったのに4秒もちぎられて6番手に終わり、考え方をガラッと変えました」

セッティングも見直し、全日本開幕戦の第1ヒートを走り終えてから改善点をアジャストして臨んだ第2ヒート。インターバル中の散水状況も的確に見極めて臨んだ第2ヒートで見事な走りを披露して、初優勝へとつながったのである。向井選手は、PN車両を速く走らせるためのポイントをひとつ挙げてくれた。

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「PNではリアタイヤに追い抜かされないことが、速く走るためのポイントになりますね。振って走る、アクセルをガンガン踏んで引っ張って走るのが改造車のシビックを走らせていたときのスタイルですが、PNでこれをやるとエンジン回転が落ちてしまう。だからそうならないように、タイヤも走行ラインも選んでいきますね。あと、リアブレーキが強すぎるとダメなので、ブレーキングはストレートのうちにしっかり終わらせることも必要ですね」

車両の差が小さいだけに、ドライバーのスキル勝負という側面も強いPN部門。向井選手はその魅力を、次のように語ってインタビューを締めくくってくれた。

「PN部門は参加台数も多くなっていますし、だからこそ勝負も面白いことが魅力だと思います。改造範囲が非常に限られているので車両の差が小さいですから、ドライバーの腕の差が出やすいことも、戦い甲斐のあるクラスですよね」



次回は2016年の全日本ダートトライアル選手権でPN車両を駆る選手のご紹介、後編をお送りいたします。