2016 SUPER FORMULA (2) =Tire Engineer Interview=

開幕まで三週間を残すところとなった、2016年の全日本スーパーフォーミュラ選手権。ヨコハマタイヤのトップフォーミュラ復活という話題性の高いシーズンであるが、開幕するその日に向けてヨコハマタイヤではタイヤ開発を進めてきた。今週と来週の二週にわたって、開発の最前線に立つタイヤエンジニアへのインタビューをお届けしよう。


活かされた“過去の財産”

1997年以来、およそ20年ぶりとなるヨコハマタイヤのトップフォーミュラへの復帰。このプロジェクトで開発を担当しているのが、ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル株式会社の渡辺晋と金子武士。渡辺はWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)のタイヤ供給開始にあたっての立ち上げにも携わり、本ページでもおなじみのエンジニアだ。金子もWTCCのほか、全日本F3選手権などフォーミュラも経験しており、二人は二人三脚で開発のまとめ役としてスーパーフォーミュラの開幕を迎えようとしている。まずは二人に、開発がスタートしたころの状況を聞いてみよう。

[Photo]

金子「スーパーフォーミュラのタイヤ開発は、2015年の春ごろにスタートしました。私はフォーミュラのタイヤ開発に携わってきたこともあるので、そういう経緯も踏まえてスーパーフォーミュラの担当に指名されたのかもしれませんね。私自身、これまでの経験も活かして良い勉強をさせてもらいながら、スーパーフォーミュラの開発にも関わっています」

渡辺「WTCCの立上げ経験を活かして、スーパーフォーミュラのタイヤ開発では時間はありませんでしたが、ドタバタする感じは無かったですね。金子についてはフォーミュラの開発に携わってF3などをやって来ていますから、スーパーフォーミュラを担当することも自然な流れという感じですね」

ヨコハマタイヤにとっては、フォーミュラ・ニッポンの初年度以来となるトップフォーミュラへの復帰。そして今回の開発にあたっては、過去の財産が大きな存在となったことを金子が明かす。

金子「これは“奇跡的”ともいえるのですが、全日本F3000選手権時代のタイヤ金型が残っていたんです。まずは、これを活用していくことにしました。仮の構造を決めて、コンパウンドを選択して。ある程度の仕様が見えてきたら耐久性と操縦安定性の両立を図るために構造をアレンジしていって、仕様を決めていきました。その過程ではスーパーフォーミュラはタイヤワンメイクなので、性能はもちろんですが安全性と耐久性も一層重視して開発を進めました」

一方で渡辺は、タイヤエンジニアに必要な“感覚”について語った。

渡辺「過去のF3000やフォーミュラ・ニッポンのデータも残っていました。もちろんこれらは貴重な財産ですが、それだけに頼るのではなくタイヤエンジニアには『時代の背景や雰囲気』を感じることも必要です。そういうことを感じられる人と、紙のデータだけを見ている人では、出来上がるものがまるで違ってくることもあります。昔のデータも金型もあって活用出来ましたが、一方でスーパーフォーミュラについては分からないことだらけだったのも偽りのない事実ですね」

金子「そうですね、分からないことが多いなかでの開発スタートでしたが、期間も限られた中で過去にコンペティションを戦ってきたもののデータなどがあったのは、かなり参考になりました。こうした財産も活かして、今現在の現場の空気も感じながら開発を進めてきています」



20年という“時間の流れ”

蓄積された財産も活かしながらスタートした、スーパーフォーミュラのタイヤ開発。その流れについて金子が説明する。

金子「最初の試作品は“20年前のものをアレンジした”という感じの仕上がりでした。これを実際に走らせてみて次への進化へとステップを踏むのですが、最初の試作品に対する評価が『全然ダメ』というわけではありませんでした。ある程度は走れることを確認出来たので、そこからはこの20年での車の進化に対応する方向でいきました。具体的には性能が向上してスピードレンジが高くなっていますし、空力性能の向上などで負荷荷重も増えています。これらに対する安全性をきちんと担保してマージンを作る、という味付けを構造とコンパウンドで展開していきました」

[Photo]

現代のトップフォーミュラ、そのポテンシャルを受け止めて余裕あるタイヤを形にするために。金子は自らの経験値もフルに活用して開発を進めて行った。

金子「20年という時間でマシンが進化したことに対して、タイヤとしてどう応えていくかがスーパーフォーミュラのタイヤ開発では基礎となる部分でしょう。そこにはヨコハマタイヤがFIA F2選手権やマカオグランプリをはじめとした各国のF3など、他のフォーミュラ・カテゴリーで得た経験が活きてきました。特に私はF3とSuper-FJを担当しており、特にF3は2014年に開発を進めてきた経緯もありますので、ノウハウをフィードバックさせていきました」

金子は自ら担当してきたF3とスーパーフォーミュラ、両者の違いをタイヤエンジニアの視点から語る。

金子「スーパーフォーミュラとF3の違いですが、やはり速さと負荷荷重のかかり方がスーパーフォーミュラはより厳しい方向にありますね。ただ、設計思想的なものとしては、ともにタイヤワンメイクのフォーミュラ・カテゴリーということで、同じベクトル上に存在しています。高速耐久性を確保した上で、性能の味付けをしていく、というところですね」

さらに渡辺がスーパーフォーミュラとF3の違いについて補足する。

渡辺「タイヤのたわみが、スーパーフォーミュラのほうがF3よりも大きいですね。ダウンフォースにしても横Gにしてもスーパーフォーミュラのほうが大きいですから、そこはタイヤ開発においても留意すべきポイントになります」

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]



YOKOHAMA TIRE Motorsports WebsiteではSUPER FORMULAのワンメイク供給を記念して、特製のウォールペーパー用画像をご用意いたしました。パソコン用に続いてスマートフォン用サイズの画像データをご提供いたしますので、ぜひあなたのデスクトップを精悍なADVANカラーのSF14で飾ってください!!