2020 SUPER FORMULA Round 7 Report

【SUPER FORMULA 第7戦 / 富士】

直接対決のタイトル争いは山本尚貴選手に軍配、
自身3度目の国内トップフォーミュラチャンピオンに輝く!!

SUPER FORMULA Round 7

開催日 2020年12月20日
開催場所 富士スピードウェイ
(静岡県)
天候 晴れ
路面 ドライ
決勝周回数 40周
(1周=4,563m)
参加台数 20台
SUPER FORMULA 第7戦

2020年シーズンのSUPER FORMULA(全日本スーパーフォーミュラ選手権)は、最終戦となる富士大会が12月20日(日)に開催。決勝レースは坪井翔選手(JMS P.MU/CERUMO・INGING)が優勝し、大湯都史樹選手(TCS NAKAJIMA RACING)が2位、松下信治選手(Buzz Racing with B-Max)が3位と、フレッシュな顔ぶれの表彰台に。注目のタイトル争いはコース上での直接対決を制した山本尚貴選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が自身3度目の戴冠を果たした。

8月開幕というイレギュラーなシーズンとなった2020年の最終戦は、これも異例の12月下旬開催となった。週末を通して真っ青な空が広がる快晴に恵まれ、降雪で走行不可能といった心配はまったくなし。ただ冬晴れの分だけ気温と路面温度は低く、特に路面温度は日陰になると一気に下がり、場所によっては氷点下を示すところも。鈴鹿大会に続きタイヤウォーマーの使用は許可されていたが、タイヤのウォームアップとその熱のキープが非常に難しい1戦となった。

タイトル争いの権利を持って、最終戦に臨んだのは4人。ポイントリーダーの平川亮選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、2位の山本選手、3位の野尻智紀選手(TEAM MUGEN)、そして4位のニック・キャシディ選手(VANTELIN TEAM TOM’S)だ。3位以下の2名は他のドライバーの成績もタイトル獲得条件に入るが、平川選手と山本選手は前でゴールした方が勝ちという自力チャンピオンの可能性を持って挑んだ。

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公式予選は今回も、低い気温と好コンディションによりコースレコードを更新。Q1から全員が現行レコードタイムのブレイクに成功する超ハイスピードの戦いとなった。最終的にQ3では1分19秒972を記録して野尻選手が今季2度目のポールポジションを獲得。2番手には坪井選手が同じく1分19秒台に入り、3位に山本選手が入った。山本選手はこれで選手権ポイントを1点加算。対する平川選手はQ3まで進んだものの終盤にタイムを削ることができず、8位グリッドからのスタートとなった。また、キャシディ選手はQ1で走路外走行の判定が下り、なんと最後尾からのスタートになってしまった。

運命が決まる決勝レースは、スタート前にいくつかのアクシデントが発生した。まず、8分間で行われるウォームアップ走行中に関口雄飛選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)のマシンから突如炎が上がる。幸い関口選手に怪我はなかったが、セッションは一時中断。マシンは修復不可能な状態で、関口選手は最終戦を走ることなく今シーズンを終えることになってしまった。

また、フォーメーションラップに向かうところではタチアナ・カルデロン選手(ThreeBond Drago CORSE)がエンジンストールしてしまいピットスタートに。シャルル・ミレッシ選手(Buzz Racing with B-Max)もスピンを喫してマシンをストップさせてしまい、ここで戦列を離れることに。スターティンググリッドには17台のマシンが整列し、40周の決勝レースがスタートした。

ホールショットを奪ったのは坪井選手。野尻選手は出遅れてしまい、4番手スタートの松下選手にもかわされ3番手に後退した。山本選手は4番手に続いたが、その背後には平川選手の姿が。スタートダッシュを決めてオープニングラップで6番手に浮上すると、4周目には前を走る笹原右京選手(TEAM MUGEN)をかわして5番手までポジションを上げてきた。

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2台の直接争いはここで第1ラウンドを迎えるが、背後まで近づくとダウンフォースが抜けてオーバーテイクが難しくなり、平川選手にはなかなかチャンスが巡ってこない。8周目のホームストレートでオーバーテイクシステム(OTS)を作動させ、いったんは山本選手の背後まで迫るが、山本選手も要所を巧みにブロックして平川選手をけん制。勝負は決定打が見られないまま数周が続いた。

平川選手はここでアンダーカット作戦に出るため、14周を終えるところで山本選手より先にピットイン。既に作業を済ませていた野尻選手と大湯選手の間でコース復帰した。ウォームアップができている大湯選手の先行は許すものの、暫定10番手、実質の3番手にとどまった。この動きを見て山本選手も翌周にピットイン。作業時間は平川選手とほぼ同じで、こちらも野尻選手と大湯選手の間でコース復帰すると、大湯選手にかわされ、ふたたび山本選手と平川選手による戦いは第2ラウンドを迎えることになった。

相手のアウトラップは最大のチャンスと見て、平川選手は1コーナーで山本選手に並びかける。サイド・バイ・サイドで100Rも通過すると、そのまま一歩も引かずADVANコーナーへ。ここでイン側のポジションを獲っていた平川選手が山本選手の前に出ることに成功した。

しかし、山本選手も一歩も引かない。続くコーナーではラインをずらしてアウト側から仕掛ける気配を見せると、そのままテール・トゥ・ノーズでテクニカルセクションの第3セクターを回ってホームストレートへ。OTSでパワーアップすると1コーナーのブレーキング勝負で平川選手をとらえ逆転した。平川選手のOTSはすでに使い切られており、これで勝負あり。その後は1秒を切る差が続くも、再逆転のチャンスはめぐってくることはなかった。

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これでタイトルを手中にしたかと思えた山本選手だったが、今度はキャシディ選手の影がちらつくようになる。最後尾スタートとなってしまったキャシディ選手はスタートで大幅ポジションアップを成功させると、ピットインを遅らせて作業時間分のマージンを稼ぐべく、自己ベストタイムを連発するプッシュを続けていた。ただし、キャシディ選手が逆転タイトルを獲得するためには山本選手の前にいるだけでなく優勝も必須条件で、そのためには実質トップを走っている坪井選手にも勝たなければならない。山本選手は冷静に状況を見極めると、落ち着いてマシンをチェッカーまで進めていった。

レースのトップ争いに目を転じると、スタートで後退してしまった野尻選手はアンダーカットを狙って早めにピットインするも、作業中に右フロントタイヤのナットが飛んでしまいタイムロス。さらに29周目にはホイールがトラブルに見舞われホイールをカットしてしまい、パンクチャーを起こしてストップ。ポールポジションから逆転タイトルも見えていたが、レース中盤でリタイアとなってしまった。

最後までピットインを遅らせていたキャシディ選手がピットロードへと向かい、名実ともにトップに立ったのは坪井選手。終盤は松下選手、大湯選手が肉薄し、残り2ラップではキャシディ選手も含めた4台が1つの集団になったが、坪井選手は逃げ切って今季2勝目を挙げることとなった。

ここまで毎戦ウィナーが異なってきたSUPER FORMULAだが、坪井選手は唯一2勝目を挙げてポイントランキングも一気に3位に浮上した。大湯選手は第6戦鈴鹿の優勝に続いて2戦連続の表彰台でルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得。松下選手は今季初表彰台で、次世代を担う若手ドライバーたちが並ぶポディウムセレモニーとなった。

タイトル争いは、5位でチェッカーを受けた山本選手が国内トップフォーミュラ3度目の戴冠。また、2018年以来2度目となるSUPER GTとのダブルタイトルも達成した。

DRIVER VOICE

坪井 翔 選手 [JMS P.MU/CERUMO・INGING]

【今回の成績 : 優勝】
予選では、まさか2位になれると思っていませんでした。でもそこで流れを変えることができたのが今日の勝因だったと思います。スタートでトップに上がれてからはレースの主導権を握れましたが、松下選手はずっと背後にいましたし、最後の10周は大湯選手も一気に迫ってきたので最後まで厳しいレースでしたね。納得できるレースができて、またチームも完ぺきにクルマを仕上げてくれて本当に感謝しています。

山本尚貴 選手 [DOCOMO TEAM DANDELION RACING]

【今回の成績 : 5位 (シリーズチャンピオン確定)】
今回のレース結果だけを見れば5位で、それはそれで悔しいですが、今日はチャンピオンを獲るための走りと戦い方に徹することができました。昨年はタイトルを取り逃がし、僕だけでなくエンジニアもチームもとても悔しい思いをしたので、今年は何としてもチャンピオンを獲って、僕と一緒に戦ってきてよかったとみんなに思ってもらいたくて頑張りました。チームのみんなで獲れた、チームのみんなに獲らせてもらったチャンピオンだと思うと、とても感謝しているし、非常にうれしく思っています。

ENGINEER VOICE

高口紀貴 [横浜ゴム MST開発部 技術開発2グループ]

シーズンを締めくくる最終戦も、素晴らしいレースが展開されました。低気温での大会で、今回も鈴鹿大会に続いてタイヤウォーマーが使用されましたが、2大会目ということもあって大きなトラブル、アクシデントにつながるようなことはありませんでしたね。予選では1分19秒台に入りましたが、もともと今年3月のテストで出ていた1分20秒台のタイムを目標にしていたので、19秒台というのは予測の範囲内ではありました。

決勝は全体的にレースペースが速く、皆さん去年までのレコードタイムに匹敵するペースで走っていたのでタイヤの消耗具合は気になりましたが、30周までピットストップを引っ張ったキャシディ選手は非常にきれいにタイヤを使えていましたし、国内トップフォーミュラを戦うドライバー達や、クルマを仕上げてくる各チームのレベルの高さを感じました。

慌ただしいシーズンとなりましたが、無事に終えることができてほっとしています。来年に向けてもテストの少ない状況は続くと思いますが、今年のような素晴らしい戦いをドライバーたちがまた見せてくれるよう、サポートしていきたいと思っています。