2020 SUPER FORMULA Round 6 Report

【SUPER FORMULA 第6戦 / 鈴鹿】

連日のレコード更新でスーパーフォーミュラは異次元の世界へ、
決勝レースは大湯都史樹選手が涙の国内トップフォーミュラ初優勝!!

SUPER FORMULA Round 6

開催日 2020年12月6日
開催場所 鈴鹿サーキット
(三重県)
天候 晴れ
路面 ドライ
決勝周回数 30周
(1周=5,807m)
参加台数 20台
SUPER FORMULA 第6戦

SUPER FORMULA(全日本スーパーフォーミュラ選手権)の鈴鹿大会。後半戦となる第6戦は、12月6日(日)に予選と決勝が行われ、大湯都史樹選手(TCS NAKAJIMA RACING)が2番グリッドから涙の逆転勝利を飾った。

これまでのスーパーフォーミュラでは、1つの週末に2回レースが行われることはあったが、1つのラウンドで2ヒートが設定されるというようなものが多く、予選と決勝で完結する1レースを2日連続で行うことはなかった。イレギュラーなカレンダーとなった今シーズンは、どのレースも1デー開催で予選と決勝を行うスタイル。この鈴鹿大会ではそれを2日連続でこなすことになり、どのチームも普段以上に忙しい週末となった。

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天気は週末を通して恵まれ、6日も朝から冬晴れの空が広がった。こうなると期待されるのが連日のレコード更新。前日の第5戦でも驚異的なタイムが記録されたが、それぞれがこの週末のコンディションにさらに合わせこみ、山本尚貴選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が打ち立てたレコードタイムは1日で破られることとなった。

第5戦で山本選手とポールポジション争いを繰り広げた野尻智紀選手(TEAM MUGEN)がQ1で敗退したり、今シーズン2度ポールポジションを獲得している平川亮選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)がQ3進出を逃すなどの波乱があったなかで、コースレコードをブレイクしてポールポジションを獲得したのはディフェンディングチャンピオンのニック・キャシディ選手(VANTELIN TEAM TOM’S)。

Q2では1度目のアタックでタイムを出したものの、これでは通過できないと読んだか急遽2セット目の新品タイヤも使ってアタック。見事にこれが功を奏してポールポジション争いに残り、Q3で1分34秒442という新たなコースレコードを記録した。2番手には大湯選手、3番手には笹原右京選手(TEAM MUGEN)となったが、笹原選手はエンジン交換によるグリッド降格のペナルティを受けたため、3番グリッドには山本選手がつくことになった。

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迎えた決勝は、キャシディ選手と大湯選手が好スタートを切ったのに対し、山本選手はチームメイトの福住仁嶺選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)にかわされ4番手に後退。後方でもいくつか順位変動があり、30周のスプリントレースはオープニングラップから激しいバトルが見られた。

中でも、珍しくスタートで順位を下げてしまった小林可夢偉選手(carrozzeria Team KCMG)と、11番グリッドからスタートしたサッシャ・フェネストラズ選手(KONDO RACING)とのバトルが白熱。2周目のシケインで2台は並んだが、ここで接触。小林選手はなんとかピットへ戻ってきたものの、フェネストラズ選手はシケイン先で車両を止めてしまい、このレースでもセーフティカー(SC)が導入されることになった。

このSC中、4番手を走る山本選手が突如スローダウン。ギヤにトラブルを抱えてしまい、ゆっくりとピットへ戻ってくるとそのままガレージインとなり、前日にポイントリーダーに立った勝者がレース序盤で姿を消してしまうことに。

それぞれ前後のギャップが縮まった状態で7周目にリ・スタートが切られると、各所でオーバーテイクシステム(OTS)を使った激しいバトルが展開される。14番手スタートの平川選手は、前の選手がOTSを使い切ったところを見計らって加速し8番手に浮上。国本雄資選手(carrozzeria Team KCMG)と中嶋一貴選手(VANTELIN TEAM TOM’S)による6番手争いも、OTSでパワーアップした国本選手が1コーナーで豪快なオーバーテイクを披露した。

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後方ではそのような戦いが繰り広げられていたが、トップ3は等間隔で周回が進んでいた。キャシディ選手は8周目にファステストラップを更新し、さらに大湯選手との差を広げにかかったが、なんと9周目に入るホームストレートでマシンの後方から白煙が上がる。そのまま一気にスピードが下がると、1コーナーの先でコースを離れ、マシンを止めてしまった。さらにチームメイトの中嶋選手も、8周目のシケインでコース上の異物を踏んでしまったためにタイヤパンクチャーに見舞われスローダウン。VANTELIN TEAM TOM’Sは同じタイミングで2台のマシンが勝負権を失うことになってしまった。

これでトップに立ったのは大湯選手。と同時に、ここで2度目のSCが導入された。ピットウィンドウも開いたことで、10周目に各車が一斉にピットイン。ステイアウトを選択したのは松下信治選手(Buzz Racing with B-Max)と笹原選手の2台で、その後ろに大湯選手、福住選手、そして9番手スタートからオープニングラップで大幅ポジションアップに成功していた関口雄飛選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)と続いた。13周目にレースが再開され、しばらく順位変動なく周回数が進んでいった。

レースの折り返し地点を過ぎた19周目、序盤に華麗なオーバーテイクを見せてくれた国本選手がホームストレートで異物を踏んでしまい右リヤタイヤを痛めてしまった。このため、内圧が落ちてしまいS字のコーナーリング中にリム落ちへ至り、スピンからコースアウトを喫してグラベルにマシンを止めてしまい、3度目のSC導入となる。このタイミングで松下選手と笹原選手はタイヤ交換を行い、大湯選手が名実ともにトップに躍り出た。

最後のリ・スタートは23周目。残り8周は、若手ドライバー2人が優勝をかけて意地の闘いを展開する。24周目に大湯選手がファステストラップを更新し福住選手との差を広げると、翌周には福住選手が最速タイムを塗り替えて差を縮めにかかる。その後方でも関口選手と4番手を走る坪井翔選手(JMS P.MU/CERUMO・INGING)の3番手争いもヒートアップしていた。

最後の最後までわずかなミスも許されない接近戦となったが、大湯選手は集中力を保ち続けトップチェッカー。ルーキーイヤーにして見事スーパーフォーミュラ初優勝を達成した。2位の福住選手は今季初表彰台。3位には坪井選手とのバトルを制した関口選手が、こちらも今季初表彰台となった。

DRIVER VOICE

大湯都史樹 選手 [TCS NAKAJIMA RACING]

【今回の成績 : 優勝】
何と言ったらいいのか、今の気持ちは言葉にできません。ここまでずっと監督にも応援してくれる皆さんにも期待されてきたのに、結果を出せないレースが続いていました。ようやく優勝という形で結果を出すことができて、嬉しいのと同時にホッとしています。福住選手がどのようにOTSを使ってくるのかを意識しながら、できるだけタイヤを持たせるように走りました。終盤は絶対にミスが許されない中で、自分の最高のパフォーマンスを出せるよう頑張りました。

ENGINEER VOICE

高口紀貴 [横浜ゴム MST開発部 技術開発2グループ]

今回は、タイヤウォーマーが導入されたことがトピックの一つかと思います。走行初日には、タイヤを温めるその温め方の問題で、タイヤのトラブルが起きてしまいました。今回使用するのは、ジェットヒーター、あるいはそれに準ずるようなもので、部屋のように閉ざされた空間の中を温めるという形のウォーマーです。我々としては、ジェットヒーターの熱が直接当たらないようにということを各チームには伝えていました。ジェットヒーターだと、熱風の温度は200℃ぐらいになりますし、そのような高温が直接当たらないように、ということです。急激な温め方はせず、じっくりと熱を入れるようにということを再度伝え、その結果、土曜日以降は同じようなことは再発しませんでした。

もう一つのトピックは、やはりコースレコード更新ですね。いつもレコード更新については触れていましたが、なかなか鈴鹿では上回ることができないレースが続いていたのでホッとしました。しかし、SF19が出た時の目標タイムは1分33秒台なので、あと少しですね。以前、SF14が登場したときの目標は1分35秒台で、それを達成できたのはあのマシンが出てから4年目でした。今回は、SF19になって2年目に、目標まであと0.5秒ほどというところに到達しました。なかなかこの時期にレースを開催することはないので難しいかもしれませんが、マシンが熟成されていくことでまた目標を達成できることを期待しています。