【SUPER FORMULA 第4戦 / オートポリス】
SUPER FORMULA Round 4
開催日 | 2020年11月14日-15日 |
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開催場所 | オートポリス (大分県) |
天候 | 晴れ |
路面 | ドライ |
決勝周回数 | 41周 (1周=4,674m) |
参加台数 | 20台 |
第3戦から約1か月のインターバルを挟み、SUPER FORMULA(全日本スーパーフォーミュラ選手権)の第4戦が開催された。舞台は第3戦のスポーツランドSUGOから一気に南下した、大分県にあるオートポリス。阿蘇外輪山の中腹に位置しているため標高が高く、この時期の気温は1ケタ台を記録することもあるサーキットだ。気温の低い時期はタイムも出やすい。14日(土)の専有走行、フリー走行から雲一つない晴天に恵まれ、予選でのコースレコード更新はもちろんのこと、どれほどのタイムが出るのかにも注目が集まった。
なお、新型コロナウイルスの影響で、例年よりもシーズンカレンダーが遅くなっているため、気温低下に伴う安全面への対策として、予選の各セッション時間を延長できることに。今大会ではQ2、Q3がそれまでの各7分間が各10分に延長されることになった。また決勝レースではフォーメーションラップも通常の1周から2周に増え、決勝周回数は41周となることも事前に公式通知で発表されていた。
迎えた15日は、前日に勝るとも劣らぬ晴天。これまで見たこともないハイスピードな走りを間近で楽しもうと、エリアは限定されていたもののSUPER FORMULAファンが集まる中で、まずは予選Q1がスタートした。2組に分けられて行ったQ1は、いずれのセッションも各車がアタックをしているまさにそのタイミングで赤旗中断。どのドライバーにとっても集中力を保つのが難しい戦いとなる。
その過酷なQ1をクリアした14名の中には、レースウィークの火曜日に急遽代役参戦が決まった松下信治選手(Buzz Racing with B-Max)や、世界耐久選手権とのバッティングで欠場する中嶋一貴選手の代役となった全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権とのダブルエントリーになった宮田莉朋選手(VANTELIN TEAM TOM’S)など注目ドライバーの姿も。
そのQ1から現行のコースレコードを上回るタイムが記録されていき、Q2では上位7台がレコードブレイクする。そしてQ3では、1分24秒140の驚異的なタイムをたたき出した野尻智紀選手(TEAM MUGEN)が今シーズン初のポールポジションを獲得。フロントローには福住仁嶺選手、3番手には山本尚貴選手とDOCOMO TEAM DANDELION RACINGの2台が並ぶことになった。
予選が赤旗で一時中断してしまったことで、タイムスケジュールの遅れも予想されたものの、決勝レースはオンタイムで進行され、午後2時40分にフォーメーションラップが開始。前述のとおり2周を回ったのちスタートが切られた。ホールショットを奪ったのはポールシッターの野尻選手。福住選手がそれに続くが、山本選手は加速が鈍り後続の坪井翔選手(JMS P.MU/CERUMO・INGING)、松下選手の先行を許してしまう。
そのあと数周は大きな順位変動はなく静かにレースが進んでいったが、10位を走行していたサッシャ・フェネストラズ選手(KONDO RACING)が5周目に突如スローダウン。左のリヤタイヤがホイールごと外れてしまうアクシデントに見舞われてしまい、コースサイドにマシンを止めることに。その速さに注目と期待が寄せられているルーキードライバーが、3戦連続でアクシデントから戦列を離れることになった。
フェネストラズ選手の車両を回収するため、セーフティカー(SC)が導入されたのが7周目。SCは隊列を3周先導してからコースを離れ、10周目にレースが再開される。リスタートの周が終わったところで義務付けされているタイヤ交換を行えることになるが、いち早くピットに向かったのは12番手スタートの牧野任祐選手(TCS NAKAJIMA RACING)。その翌周には坪井選手がタイヤ交換を行い、牧野選手の前でコース復帰を果たしたが、マシンの挙動が乱れ、牧野選手が一気に接近。ピット作業で左リヤタイヤにトラブルが出てしまったことが原因で、坪井選手は第1ヘアピンでマシンを止めることになった。
ちょうど時を同じくして、トップを走る野尻選手がピットイン。坪井選手のアクシデントの情報を得てSCが入ると読んだチームが抜群のタイミングでピットインを指示したのだ。チームの素早い作業のおかげもあって、野尻選手は牧野選手の前でコース復帰。しかし、すでにタイヤに熱が入っている牧野選手は野尻選手に一気に詰め寄ってくる。テールトゥノーズにまで迫った牧野選手がいざ勝負をしかけようとした瞬間、坪井選手の車両回収のためにSCが出ることに。これで牧野選手は逆転トップに立つ絶好のチャンスを失うことになってしまった。
SCボードが掲示された13周目、各マシンが一気にピットへとなだれ込んでくる。ステイアウトを選択したのは山本選手、ニック・キャシディ選手(VANTELIN TEAM TOM’S)、笹原右京選手(TEAM MUGEN)の3台。その後ろに野尻選手、牧野選手、そして絶妙のタイミングと素早いピット作業で順位を上げた国本雄資選手(carrozzeria Team KCMG)が続き、16周目にレースが再開した。
ここから先は、タイヤ交換を済ませていない上位3台と、すでにタイヤ交換を済ませた野尻選手との戦いになった。特に先頭でクリーンエアを当てながらハイペースを保てる山本選手は、野尻選手よりも1秒以上速いラップタイムを並べて独走。ピットへ入るためのロスタイム分を稼ぎにかかっていた。リスタート直後は5秒ほどだった両者の差は見る見るうちに大きくなり、20周目には10.4秒に、さらに29周目には20秒まで広がっていった。
ただし、野尻選手もここから踏ん張りを見せ、1周ごとのギャップの広がりは少しずつ小さくなってくる。山本選手にとって、稼がなくてはいけないロスタイム分は約30秒だが、20秒を築いて以降はなかなか差を広げられず、結局は25秒ほどの差になった39周目にピットイン。チームは非常に速い作業時間で山本選手をコースへと送り出したが、野尻選手をとらえることはかなわず2番手に。山本選手は残り僅かなチャンスにかけて、フレッシュタイヤで猛烈にプッシュ。最終ラップに入るところで野尻選手との差は3.7秒だったが、セクター2の区間だけで1秒以上野尻選手に迫り、最終コーナーではテールトゥノーズまで近づいた。
しかしあと一歩及ばず、野尻選手がトップチェッカー。自身3勝目となるシーズン初勝利を飾った野尻選手はシリーズランキングで3位に浮上した。惜しくも2位となった山本選手はランキング4位に。3位の牧野選手は、意外にもこれがSUPER FORMULAでの初表彰台となり、予選に続いて決勝レースでもHONDAエンジンユーザーがトップ3を占める結果となった。
【今回の成績 : 優勝】
TEAM MUGENに移籍して初めてポールポジションを獲得し、その流れを維持して優勝することができました。非常にいい形で今大会を終えることができてほっとしています。予選ではいろいろと波乱があって集中力を保つのも大変でしたが、クルマにも手ごたえがあったので動じることなく走れました。シリーズランキングも3位に上がったので、残り2大会、3レースもさらに頑張っていきたいと思います。
予選では、天候も良かったのでコースレコードが更新されました。ある程度のタイム予測もしていましたが、野尻選手の1分24秒1というタイムには驚きましたね。それに続く福住選手、山本選手も速かったです。基本的には計測1周目でもタイムが出るだろうと考えていましたが、そのあたりはチームによって多少戦略が分かれたようです。
決勝についても多少の波乱はあるだろうと考えていました。実際にセーフティカーが2回出ましたが、結果としては順当に野尻選手がポールトゥウィンを飾りましたね。決勝のペースは時期はずれの暖かさもあって、思うほど伸びませんでしたが、走行距離違いのタイヤ性能差が大きく出ることとなり、面白いバトルになったと思います。
今大会から、タイヤにかかわるレギュレーションの変更がありました。一つはフォーメーションラップの1周加算、また、鈴鹿大会以降はタイヤウォーマーの使用も認められました。いずれの変更も、安全にレースをしていくという考え方に基づいての変更です。レース中、タイヤ交換直後のマシンはまだタイヤが冷えた状態で非常に乗りにくそうに見えていましたから、そういう場面がなくなると思います。安全面での対策をすることで、より面白いバトルが生まれることを期待しています。