2015 SUPER GT Round 6 Report

【SUPER GT 第6戦/SUGO】

GT500ではD’station ADVAN GT-Rが3位表彰台を獲得、
GT300クラスではVivaC 86 MCが嬉しい初優勝を飾る!!

SUPER GT Round 6

開催日 2015年9月19日-20日
開催場所 スポーツランドSUGO
(宮城県)
天候 晴れ
路面 ドライ
決勝周回数 81周 (1周=3,704m)
参加台数 42台
(ヨコハマタイヤ装着車 24台)
2015 SUPER GT 第6戦

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夏の暑さが残る鈴鹿から、秋風漂うみちのく、宮城県のスポーツランドSUGOへと舞台を移したSUPER GTシリーズの第6戦。SUGOは高低差約70mのきついアップダウンに加え、テクニカルなコーナーが連続する、マシンはもちろんタイヤにもドライバーにも大きな負担を強いるコースでもある。

GT300の予選では前回に引き続き、マザーシャシー勢が上位に並ぶことになった。松井孝允選手がQ1で2番手につけた「VivaC 86 MC」は、Q2で土屋武士選手も2番手につけることに。さらに中山友貴選手から5番手で、「UPGARAGE BANDOH 86」を託されたのは佐々木孝太選手。急きょ出場が決定し、フリー走行を走っただけにも関わらず、GT300の最多PPドライバーは4番手につけることとなった。これに「マネパ ランボルギーニGT3」の平峰一貴選手、「ケーズフロンティアDirection 458」の峰尾恭輔選手が続いていた。惜しまれるのはQ1で加藤寛規選手が4番手につけていた「シンティアム・アップル・ロータス」は、高橋一穂選手がアウトラップにコースアウトし、赤旗中断の原因となったこと。そのため、13番手からのスタートとなってしまう。

一方、GT500は前回の鈴鹿では「WedsSport ADVAN RC F」、「D’station ADVAN GT-R」ともに満足な走りができず予選Q1で敗退してしまったが、今回は本来の力を発揮。朝の公式練習から好調だった「D‛station ADVAN GT-R」は佐々木大樹選手が予選Q1でトップタイムを叩き出して、ミハエル・クルム選手にバトンを渡した。ポール・ポジションを狙ってQ2に臨んだクルム選手だったが、今年は第4戦からの参戦となったため、ニュータイヤでのアタックをほとんど経験していなかったことから、PPの気持ちが先行してしまい、結果は5番手。それでも「マシンの調子はいい。5位スタートも富士の時と似ているし(優勝の)チャンスはある」と、予選6番手から今季初優勝を飾った第4戦を再現するつもりだ。

「WedsSport ADVAN RC F」はQ1で関口雄飛選手が4番手に食い込みQ2に進出。脇阪寿一選手はポジションを下げて7番手となったが、これは織り込み済み「今年は決勝のパフォーマンスがいいので、今回も決勝を重視してセッティングを進めてきた。それでこの予選結果なら十分いけると思う」。脇阪もまた決勝に向けて自信をのぞかせる。ここまで全戦でポイントを獲得し、前回は今季最高の4位を記録しているだけに、一気の優勝も狙えそうな勢いだ。

晴れ上がった空、さわやかな風が吹き抜ける絶好のコンディションとなった決勝レース。今回は3.704kmのコースを81周する300㎞レースだ。テクニカルコースゆえに毎年アクシデントが多発するが、今年も例外ではなった。クラッシュした車両を排除するため28周目からセーフティカーがコースイン。4周に渡って続き、ピットインが可能になるとGT500クラスのほぼ全車が同時に入ってきたため大混乱を来すことに……。

これをうまく潜り抜けたのが「D‛station ADVAN GT-R」だった。クルム選手がスタートドライバーを務め、一時は7番手までポジションを下げたものの、素早いピット作業で交替した佐々木選手をコースに送り出すと5番手に浮上。そしてここから快走が始まった。68周目に4番手に浮上すると、「ENEOS SUSTINA RC F」を追い詰め、残り4周となってついに3番手に。そのまま走り切って、嬉しい表彰台となった。

逆に不運だったのが「WedsSport ADVAN RC F」だ。関口選手が20周目に6番手、23周目に5番手と順調に周回を重ねた後にピットイン。脇阪選手にバトンを渡し、さらなる追い上げが期待されたが、ピットの混乱でマシンを斜めに止めることになり、押し戻してのピットアウトとなってしまいタイムロス。さらにピットロード出口で斜めになって、身動きができない車両が行く手を塞ぐことに。これで長時間ピットレーンに留まることになり、万事休す。コースに復帰した時には8番手に後退していた。それでも脇阪選手は諦めずに猛追を開始し、1台、また1台とかわして、残り14周となったところで5番手に浮上。最後は4位のマシンとテール・トゥ・ノーズ状態、3位とは4秒差でチェッカー。表彰台も見えていただけに悔やまれる結果となったが、GT500クラスではただ1台だけ全戦でポイントを獲得。残り2戦に期待を持たせる走りを見せてくれた。

GT300では「VivaC 86 MC」の松井選手が、7周目の1コーナーでトップに立つと、「TOYOTA PRIUS apr GT」の猛攻を受けるも、少しも動じることなくポジションをキープし続ける。そして、その後方では「UPGARAGE BANDOH 86」の中山選手が3番手を狙って激しいバトルを繰り広げていた。5番手、6番手を走るのは「マネパ ランボルギーニGT3」の織戸学選手、「ケーズフロンティアDirection 458」の峰尾選手で、さらに順位を上げることを虎視眈々と狙っていた。

そんな矢先にGT300では24周目からセーフティカーが。こちらでもピットレーンオープンの27周目には、ほとんどの車両が滑り込んでくる。ステイアウトしたのは、「グリーンテックSLS AMG GT3」の和田久選手と「DIJON Racing GT-R」の高森博士選手のみ。高森選手はセーフティカーがピットに戻った後にスピンし、順位を落とすこととなるが、和田選手は48周目までドライバー交代を遅らせ、その間トップを走ることに。しかも、城内政樹選手が8番手で復帰できたのだから、この判断はあながち間違いではなかったことになる。

改めてトップに立ったのは、「VivaC 86 MC」の土屋選手で、2番手は「マネパ ランボルギーニGT3」の平峰選手だった。その間に30秒近い差が広がり、しかも序盤に「マネパ ランボルギーニGT3」の前後にいた車両が、ことごとく後方に下がったのはピットで大渋滞が起こっていたため。また、平峰選手はタイヤ無交換作戦でピットストップ時間を短縮、粘りの力走で奮闘したが惜しくも終盤でポジションを下げる結果に。それでも「マネパ ランボルギーニGT3」は2戦連続で4位フィニッシュを果たした。

そして、後続で激しく繰り広げられたバトルを尻目に、まったく危なげない走りで逃げ切った「VivaC 86 MC」が初優勝を飾ることとなった。この勝利はまた、マザーシャシーにとっても初めてとなっていた。7位を黒澤治樹選手と蒲生尚弥選手の駆る「LEON SLS」が獲得し、5戦連続入賞に成功。そして星野一樹選手と高星明誠選手の「B-MAX NDDP GT-R」が8位に、さらに新田守男選手と脇阪薫一選手の「JMS LMcorsa Z4」が、「グリーンテックSLS AMG GT3」が入賞を果たしていた。

DRIVER VOICE

佐々木大樹 選手 [D’station ADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 3位】
このコースはGT300クラスを抜くのも大変で、前のクルマもなかなか抜けなくて。その上、途中までタイヤのピックアップも気になっていたのですが、実際には大丈夫でした。後半のペースも結構良かったし、やりすぎかな、と思うほど大幅に曲がるようなセッティングにしたんですが、徐々にバランスがうまく合ってきました。そういう意味ではいいクルマ、いいタイヤでしたね。難しいレースになったけど、表彰台に乗れて本当に良かったです。次のオートポリス、最後のもてぎも行けると思います。GT-Rの中でトップを獲れば、きっと優勝できる。今は上り調子なので、このまま行きたいですね!!

ミハエル・クルム 選手 [D’station ADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 3位】
同じGT-Rなので46号車を抜いて2位になりたかった。ピットインした時、トップに迫るチャンスがあったけど、僕たちは少し運がなかった。(佐々木)大樹がすごく頑張ってくれたし、クルマの速さは問題ない。次のオートポリスがすごく楽しみだよ!!

関口雄飛 選手 [WedsSport ADVAN RC F]

【今回の成績 : GT500クラス 5位】
決勝は晴れて予想以上に路面温度がすごく上がり、タイヤが厳しくなってしまいました。僕が走っていた時点でトップ3に届くのは難しかったのですが、ピットでの混乱さえなければ、もっと上を狙えたんじゃないでしょうか。クルマのペースは前回に続いてすごく良かったので、この結果は残念ですが、次回こそ表彰台を狙えると思うので頑張ります。

土屋武士 選手 [VivaC 86 MC]

【今回の成績 : GT300クラス 優勝】
これまで味わったことがないぐらいの喜びだったし、あまりにも嬉しくて、ドライバーはこれでやめようかと思ったぐらい。もちろん冗談ですけどね。今まで10年ぐらいタカミツ(松井孝允選手)の面倒を見てきて、こういう日が来るのを夢見ていて、ようやく実現できました。セーフティカーが入ったら、タイヤは左2本だけの交換というのは最初から決めていて、それで早くピットを出られたのが良かったし、最後までタイヤもばっちり保ってくれました。マザーシャシーは正直、手に負えない代物でもあって、今回もトラブルと戦いながら……。まぁ、絵に描いたような展開で勝てて、本当に幸せです。

松井孝允 選手 [VivaC 86 MC]

【今回の成績 : GT300クラス 優勝】
今年からGTに出させていただいて、初めての優勝は非常に嬉しく思います。このSUGOのコースは僕らのマザーシャシーに、ヨコハマのタイヤも含めて合っていて、それが最大の勝因ではないでしょうか。実は僕が走っている時は無線が使えず、セーフティカーが入ってからはホワイトボードに「もしオープン」って書いてあるのが見えたんです。これは入って来いという意味だろうと解釈しました。(土屋)武士さんは経験を積んだドライバーなので、安心して見ていられた一方で、シフトにトラブルも抱えていたので、それだけは心配でした。今まででいちばん嬉しい優勝です。

織戸 学 選手 [マネパ ランボルギーニGT3]

【今回の成績 : GT300クラス 4位】
決勝では思ったよりもスタートから路面温度が高くて、かなりタイヤ的には厳しかったんですけど、それはまわりも一緒だと思います。いいタイミングというか、悪いタイミングというかセーフティカーが入った時に勝負をかけてタイヤ無交換で行って。それがうまくいって、ピットのゴタゴタから抜け出したんですが、ちょっと後半はきつかったようですね。それでも僕ら的にはいいレースができたと思うし、極論を言えば3位は獲りたかったけど。まぁ、でも同じヨコハマタイヤを履く25番(VivaC 86 MC)が優勝したし、僕らも一所懸命やりました。

黒澤治樹 選手 [LEON SLS]

【今回の成績 : GT300クラス 7位】
うちはタイヤを左側交換だけでいったのですが、最初からその作戦でいくため、右側を摩耗しないようにと、あと後半の蒲生尚弥選手にタイヤを残さなければいけないから、大変ではありました。でも、しっかりマネージメントしていたから、タイヤも最後まで保ってくれましたし、非常に良かったと思います。非常にウエイトが重たい中、ポイント獲れたのは非常に良かったですし、チームの作戦と判断がすべて良かったのではないでしょうか。

CLOSE UP

■久々の優勝を大いに喜んでいた土屋春雄監督!!

「そうね、10年ぶりぐらいじゃないの、優勝したのは。自分が仕事やめて6年とか7年になるんでね、やっぱりそのぐらい。いいもんですね(笑)。みんなにも祝福してもらえたし」そう語ってくれたのは、つちやエンジニアリングの土屋春雄監督だ。今年からチームを復活させたのはご存知のとおり。マザーシャシーの「VivaC 86 MC」をコツコツと仕上げ、ついに初勝利を挙げるまでとした。

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「マザーシャシーというのは、いろんなものが壊れるから。今回もシフトが勝手に上がっちゃうトラブルがあって、前回の鈴鹿ではレースを捨てて、半分は直す方向で進めていたんだけど、直りきらず、今回もね。まぁ、壊れることは勉強になるんだけどね、ある意味で若い人には。いろんな知識や技術を学べるんで、壊れた時がいちばん経験できるんだ。そうやって自分の腕もマシンも鍛えていける」

第3戦・タイではポールポジションも獲得したが、ここまでは土屋監督が語るとおりトラブル続き。今回も、と語るが致命傷にならなかったのは、それだけ対策が施されていたからだ。

「この勝利はね、早かったんじゃない? ただまわりがウエイトを積んできていたしね。でも、勝てた理由のひとつはタイヤがすごく良くなっていたこと。新しいのがすごく合っていた。タカミツ(松井孝允選手)があれだけ競っていて勝てたんだから、タイヤのおかげも大きいと思いますよ。いろんな部分でうまくいったのもあるけどね。ありがとうございます」

ラストの2戦、オートポリス、ツインリンクもてぎは今回のSUGO同様、テクニカルコース。ウエイトの軽減もあり、まだまだコーナリング自慢のマザーシャシーにもチャンスはありそうだ。

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル SUPER GT開発統括]

GT500は、いろいろありましたが、特にSCの時のピットの混乱は、我々にとっては残念な結果をもたらせました。今回は「D’station ADVAN GT-R」だけではなく、「WedsSport ADVAN RC F」も表彰台を狙えると思っていたんです。でも最初、路面温度が想定よりも上がり過ぎたという部分で、はペースが上がらなかったというのが惜しまれます。ただ、漸く結果に繋がりつつありますが、「パフォーマンスが不足している」といった部分から確実にステップアップできていて「もう少しで行ける」といったところまで来ていると感じています。

GT300はVivaC 86 MCが優勝しました。我々として、またマザーシャシーとしてようやく勝てて、良かったと思います。けれども、うちのランキング上位陣の多くが、ピット渋滞に引っかかってしまい、レースが台無しになって、これでトップとのポイント差がかなり離れてしまいました。B-MAX NDDP GT-Rが特に痛かったですね。

GT300に関しては、あの混乱がうちのユーザーにとっては、かなり痛い結果になってしまいました。ただ、そうは言っても、タイヤ的にパフォーマンスは負けていたとは思いませんし、レース自体は残念でしたけど、パフォーマンスとしては前向きな評価ができると思います。あと2戦、全力で戦って結果出していくしかないですね。届かないかもしれないけれど、少しでも点差を縮めるために、全力で戦っていきます。