トップメッセージ
取締役専務執行役員 兼 Co-COO
Nitin Mantri
Co-COO就任にあたり
経営者として収益性の高い事業を構築していくのは当然のことです。ただ私は、年齢を重ねるにつれ、財務面の成功だけでなく、人々の生活に良い影響を与えることに対しても満足感を得るようになりました。これまでさまざまな仕事を通じて達成感を得てきましたが、私がリーダーシップの目的を明確に感じたのは、Yokohama India Pvt. Ltd(. YIN)の経営を担うことになってからです。当初YINの業績は低迷していましたが、3年間
で市場シェアを2倍以上にし、利益は5倍以上に改善させました。この成功により、従業員は自信を持ち、チームの士気はみるみる上がっていきました。また、数百人の雇用を生み出し、さらにその従業員の家庭が中間層に押し上げられ、コミュニティにまで影響を与えたことに感銘を受けました。このことは、私が「人々の生活に良い影響を与えるビジネスを構築する」ことをリーダーシップの目的としたきっかけとなりました。
私がキャリアを積む中で、横浜ゴムのCo-COOのポジションにつくとは夢にも思っていませんでした。周囲の優秀なメンターやチームのメンバーがリスクを取り、支援してくれたおかげで、挑戦し、成長することができたと思います。私は常に、周りの人に助けてもらった時と同じように、ほかの人が成功できるよう支援することを心掛けています。私の経営スタイルは、権限移譲と自立性の強化をベースとしています。事業を細分化してリーダーを任命し、それぞれが意思決定を行い、結果にすべての責任を負ってもらうことでリーダーは成長し、潜在的な能力が最大限発揮されると考えています。
OHT事業の強みと展望
横浜ゴムは2016年にAlliance Tire Group B.V(. ATG)、2017年に愛知タイヤ工業、2023年にTrelleborg Wheel Systems HoldingAB(TWS)を買収し、OHTの世界市場で第3位のシェアを獲得しています。OHTの分野において、プレミアムとベーシックの両方のカテゴリーで強力なブランドと市場シェアを持つのは、当社が唯一でしょう。買収したそれぞれの企業には、強力な経営陣がおり、お客さまにとっては以前と変わらない取引ができる一方、当社グループの企業として、原材料調達や製造などの面でシナジーを得ることができています。
また、持続的に成長するために、新しい製品セグメントや市場に参入しています。Yokohama TWS(Y-TWS)は、独自に開発して成長余力の高い農業機械用トラック分野に参入しました。主要なOEMにも、同ラバートラックの優れた性能に満足していただいています。Yokohama ATG(Y-ATG)は、高性能かつ割安な価格の「市場に適した」製品の開発に成功し、これまで供給能力の制約で対応できなかった巨大なインド市場に再参入しました。Yokohama OTR (Y-OTR)は、エンドユーザーに最適なコストパフォーマンスを提供する3スター製品を開発中です。
OHT事業は、市場の伸びを追い風として年6%の成長を見込んでいます。人口増加と生活水準の向上により、食料、穀物の生産や、道路・インフラ建設が増加することで、農業用や建設用機械の需要が高まると予想しています。ただし魅力的な市場であるがゆえ、バリューセグメントにおいてはアジアの新興企業との競争が激しくなりつつあります。また、このビジネスから過去に撤退したプレミアムブランドの一部が市場に再参入していることにも注視する必要があります。そうした中、強力なブランドと「目的に適した」ビジネスモデルを持つ当社グループは、市場を上回るペースで成長し続けることができると確信しています。
中期経営計画「YX2026」におけるOHT事業とタイヤ海外事業の成長戦略
中期経営計画「YX2026」では、「プログラマティックM&A」と称し、大小合わせたM&Aを継続的に行うことを重要な成長戦略の一つと位置付けています。インドのヴィシャカパトナムやメキシコのサルティヨでの新工場を建設などによる、オーガニックな成長を続けつつ、買収を通じて新しい製品セグメントや市場に参入する機会を模索しています。過去の買収では、大きな財務価値の創出に加えて、優秀なグローバル経営人材の獲得ができました。例えばY-TWSは、優れた技術と強力なブランドで市場においてプレミアムプレーヤーとしてのポジションを築いており、また「ローカル・フォー・ローカル」の考え方を持つ真のグローバル組織です。横浜ゴムは、同社から学んだ知見や技術でブランド価値を高めており、これまで買収により獲得した資産とインフラを今後の買収戦略に活用していきます。
また、OHTのすべてのカテゴリーにブランドを持つマルチブランド戦略では、各ブランドを個別に管理することでブランド力を維持していきます。加えて、エンドユーザーのニーズを把握し、適切なサービスを提供するOHT専用のタイヤメンテナンスサービス網「Interfit」を成長させ、プレミアム製品に付加価値を提供していきます。
こうした成長戦略を進める上での大きな課題は、新たに買収した企業を、いかに横浜ゴムグループに統合していくかという点です。買収の成功には、ブランドの一貫性を維持し、新しく迎えた経営陣に権限を委譲し、効果的に運営できる環境を整えることが不可欠です。その一方で横浜ゴムグループの規模や海外拠点において買収のシナジーを追及することも重要です。当社は、シナジー実現に関して多くのノウハウを蓄積しており、現在は今後の買収に備えて、買収企業をどのようにグループに統合していくべきか詳細な計画を作成し、関係者全員と共有しています。
今後横浜ゴムグループは、OHT事業において成長し続け、確固たる世界3位のOHTプレーヤーになることを目指します。まだ手つかずのセグメントや市場が多くあり、これらの分野で大きなシェアを獲得したいと考えています。タイヤ海外事業に関しては、多くの国で市場へのアプローチを根本的に変える必要性を感じています。現在は日本からの輸出ビジネスが中心であることから、各地域でのポテンシャルを充分に享受できていない状況です。そこで当社は、いくつかの地域で試験的な取り組みを行うことにし、特にヨーロッパとインドで現地に精通したローカル人材を中心とした経営体制を作り、ビジネスを成長させることに成功しました。この「グローバルブランドとローカルマネジメント」のモデルをほかの地域でも再現し、PCRやTBRの成長にも寄与していきます。
ステークホルダーの皆様へ
100年に一度の大変革期において、2017年以降、山石会長が掲げてきたビジョンに沿い、横浜ゴムグループはタイヤを通じて社会を変革し、価値を創造する取り組みを進めています。100年以上にわたる伝統を尊重し、それを基盤としつつも、「YX2026」の最終年度には、横浜ゴムは全く違う会社になっていることでしょう。持続可能な経営を事業戦略の一環として重視し、環境、社会、ガバナンスの観点からさまざまな活動を通じて企業価値の向上を図っていきます。引き続き、皆さまのご支援とご協力をお願い申し上げます。