トップメッセージ
社長就任にあたり
2024年3月、代表取締役社長兼COOに就任しました、清宮眞二でございます。私は入社以来、一貫してタイヤの設計・開発に携わってきました。タイヤという製品を通じて、当社を見続けてきたわけですが、最も大切にしたいのは、横浜ゴムならではの良い品質と性能です。
自動車業界においては、大変革期の真っただ中であり、環境対応や電動化対応をはじめ、さまざまな技術要求に対応していくことが必要不可欠です。またタイヤ業界全体を見ても、グローバル市場でのお客さま要求の多様化、中国、インドをはじめとした新興国の企業との競争の激化、サプライチェーンの複雑化など、これまでの日本における製造業、ものづくりの常識にとらわれず、スピード感を持って企業経営にあたらなければ、厳しい競争環境の中を生き残っていくことはできません。
こうした環境の中、私が会社全体を見る立場となって感じたのは、これまで山石会長が陣頭指揮をとって改革してきた企業体質をより強いものとするには、やはり生産・技術の部門を強化する必要があるということです。メーカーである以上、生産・技術の部門が主体となり、そこに販売、物流など各部門が連携し、協力していく体制を構築しながら、これからの競争を勝ち抜くための構造改革を断行してまいります。
横浜ゴムが培ってきた技術的優位性
横浜ゴムの強みは、ウルトラハイパフォーマンスタイヤ「ADVAN」、SUV・ピックアップトラック用タイヤ「GEOLANDAR」、そして「ウィンタータイヤ」といった、高付加価値品製品に採用されるようなゴムの配合・混合の高い技術です。
2022年には、当社のAI利活用構想「HAICoLab(ハイコラボ)」を推進するため、AIによる配合生成技術を活用したゴムの配合設計システムを独自に開発し、実用を開始しました。人が考えつかなかった配合など、新たな知見を得ることができ、開発のスピードアップやより高性能な製品開発に活用しながら、さらなるレベルアップに取り組んでいます。
一方、お客さまであるカーメーカ各社のニーズに合わせてチューニングする技術も高いことから、国内メーカーはもちろん、ポルシェやメルセデス-AMG、BMW-Mなど名だたるメーカーのプレミアムカーにも当社のタイヤが新車装着されています。
さらに、企業買収によるシナジーで、世界市場で高い競争力も発揮できています。当社は2016年にAlliance Tire Group B.V(. ATG)を、2017年には愛知タイヤ工業を、2023年にはTrelleborg WheelSystems Holding AB(TWS)の買収を完了させました。当社やTWSはどちらかと言えば品質や性能を、ATGは生産性やコスト競争力に強みをもっています。これらが一つになり、互いに学び合い、生産性、品質向上においてシナジーを発現することで、横浜ゴムグループ全体としてのさらなる強みを創出していきます。
「よいものを、安く、スピーディーに」の実現に向けて
新中期経営計画「Yokohama Transformation 2026(YX2026)」では、「よいものを、安く、スピーディに」をモットーとし、横浜ゴムグループ全体の基盤強化を行います。「よいもの」は、高付加価値品を伸ばしていく際には最も重要です。次世代プレミアムカーの新車装着など、こだわる所にはしっかりとこだわり、性能など妥協を許さない開発を行っていきます。雨に強い、ウェットグリップ性能のグレードaのサイズ保有数は業界ナンバー1ですが、こうした追求も続けていくとともに、車両のEVシフトが世界的に本格化する中で、環境を含めたさまざまな規制対応にもしっかりと対応していきます。
一方で、昨今の市場環境の変化はますます早くなっており、スピードがとても大事な時代に入っています。
今の横浜ゴムに必要なものは、他社に負けないスピード感です。例えば、当社はもの作りの会社なので、どうしても100点を狙う開発をしがちです。
かつて、日本のメーカーは、中国など新興メーカーがつくる安い商品を気に留めておらず、あらゆるものに何度も試作を繰り返し、時間をかけて100%の良いものをつくってきました。しかし彼らが経験を積み、ものすごい勢いで技術力を上げ、世界中でシェアを拡大してくると、いやでも彼らと戦わなければなりません。そのためには、あるゾーンでコスト競争力を高め、スピードを重視した新商品の投入などが必要です。
当社はYX2026で、低コスト・高効率化を目指し、タイヤ消費財の「Hockey Stick Growth」の目玉として、工場の立ち上げを短期間で行う「一夜城」ならぬ「1年工場」に挑戦することをうたっています。このほか、「よいものを、安く、スピーディに」を実現するため、AI・シミュレーション技術活用によるタイヤ開発のスピードアップ、次世代プレミアムカーの新車装着タイヤの開発強化、ATGの低コスト生産モデルを応用した抜本的製造コストダウンに取り組みます。これらの課題は、私が責任者として陣頭指揮をとり、改革してまいります。
ステークホルダーの皆さまへ
当社が企業として成長し、いかなる環境下でも増収増益を目指すのは当然の責務です。そのためにも、さらに強い横浜ゴムの基盤をつくらねばなりません。当社の製品をお客さまに使っていただき、サステナビリティな社会に貢献していくことが不可欠で、それは私たちの使命、存在意義とも言えます。
中国などの新興メーカーとコスト競争で戦って、決して安いタイヤをつくりたいわけではありません。横浜ゴムとしての品質を維持しつつ、生産コストを下げ、収益性の基盤を強化していき、多くのステークホルダーの皆さまに喜んでもらえる、高付加価値な製品の開発や生産をし続けていく思いを置き去りにしてはならないと考えています。
キーとなるのは横浜ゴムらしさです。YOKOHAMAのブランドなら安心、他社と違う、と思っていただくことが大切です。ステークホルダーの皆さまへの目線を忘れず、企業価値を上げるよう努力していきますので、今後ともご指導のほどよろしくお願いいたします。