2021 JDTC – Challenge with “Red in Black” (1)

2021 JDTC – Challenge with “Red in Black” (1)

舗装されていないコースで1台ずつが各2回のタイムアタックを行い、その速さを競い合うダートトライアル。最高峰に位置する全日本ダートトライアル選手権、2021年は北海道から九州までを転戦する全8戦のカレンダーが組まれており、3月13日~14日に京都府で開幕を迎える。シリーズには昨年に引き続きADVANカラーのマシンが2台参戦、伝統の“Red in Black”とともに戦う二人のドライバーにお話しをお聞きした。


JD6 Class – 宝田ケンシロー 選手

昨シーズン初めてADVANカラーをドライブして、堂々のシリーズチャンピオンを獲得した宝田ケンシロー選手。2021年はクラス名称が改められる全日本ダートトライアル選手権だが、宝田選手は昨年までのスズキ・スイフトからトヨタ・GRヤリスにマシンをスイッチしてJD6クラスに参戦する。マシンのシェイクダウンを終えた宝田選手、走り終えての第一声は……。

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「最初は、めちゃめちゃ苦労しました。自分は過去にダイハツのブーンやストーリアの4WDで参戦していたこともありますが、GRヤリスは全くの別物でした。同じ4WDですからどこかには共通する部分もあるでしょうが、だからと言って『むかし4WDに乗っていたから、あの時の動かし方をヤリスでも』というイメージでは無いですね。ただ、走り始めは苦労しましたが、足のセットアップも方向性が見えてきて、自分が思っていたタイムも出せましたから、開幕戦に向けて良い結果になりました」

大いに収穫のあったシェイクダウンとテストになったと語る宝田選手だが、やはりマシンを変えることで意識を変化させなければならないことも多いと続ける。

「最初のうちは足周りの方向性が合っていなかったので、自分のドライビングでは破綻してしまいそうな場面もありました。経験値の豊富なドライバーさんにアドバイスもいただきましたが、『FF(前輪駆動)走り』であると指摘を受けて。余計な動きを多く作ってしまう悪癖があって、そこは大きく変える必要がありました。最初はどこを目指せば良いのか分からない状態でもありましたが、周りのみなさんのおかげで限られた時間の中で自分自身とても勉強になりましたし、車もかなり進化させられました」

PROFILE

宝田ケンシロー 選手

父は往年の名ダートドライバーで、ヨコハマタイヤとともに多くの勝利を掴んだ宝田芳浩さん。そんな父の背中を見て育ったケンシロー選手も中学生の頃から自分でもモータースポーツをやりたいと意識したが、当初はサーキットレースやドリフトへの興味が強かった。しかし高校生の時に父と同じダートトライアルを志し、卒業後に地元北海道で参戦を実現させた。

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北海道の地区戦でチャンピオンを獲得後、2009年に全日本選手権にデビュー。同年はダイハツ・ストーリア、2011年にはブーンと、それぞれ4WDのマシンで地元北海道での全日本戦にスポット参戦を重ねる。2013年には新たに発足したPN部門にマツダ・デミオを投入、道外への遠征も開始して本格参戦を果たす。

全日本初優勝は2015年のスピードパーク恋の浦で同年は3勝、そして翌2016年に4勝を飾ってZC32型のスズキ・スイフトで初のチャンピオンを獲得。さらに2017年も同じくPN1クラスで連覇を飾る。そしてZC33型のスイフトにマシンをスイッチした後の2019年、さらに初めてのADVANカラーとなった2020年にもPN2クラスでチャンピオンに輝いた。



収穫が多かったというシェイクダウンだが、GRヤリスのパフォーマンスについても自信を深めたという宝田選手。二日間にわたって行われたシェイクダウンとテスト走行、その前後では心境にも変化が生じたと語ってくれた。

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「実はGRヤリスのパフォーマンスでは、同じクラスの他車種と勝負にならないのではないかという不安も当初はあったんです。場合によっては、2021年は移行期間として、2022年からクラス移籍することまで考えていました。しかし、シェイクダウンを終えてその考えは変わりました。まだライバル車に対して有利な状況ではないですが、熟成を進めていけば十分に戦えるポテンシャルがあることを実感出来たからです。周りのみなさんから、『走りが安定してきた』と言われたことも収穫です。ハイパワーなのでスピードレンジもこれまでのマシンより高くなった中で、ドライ路面をしっかり走らせられたこと、超硬質路面でグリップが高い方が走りやすかったことは自分でも驚きでした」

好天に恵まれた二日間では、特に終盤でタイムも伸びた宝田選手。ADVAN A053とA031を装着して走行したが、タイヤへのフィーリングも上々だと言う。

「ADVAN A053と僕はこれまで培ってきた信頼関係があるのですが、それがさらに高まりました。ドライ路面でADVAN A053を装着して、あらためて『いいタイヤだな』と思いました。逆に、以前はあれほど大好きだったADVAN A031、もちろんフィーリングは悪くないですがA053が良すぎて、A031は“しばらくぶりの元カノ”みたいな状態で(笑)」

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GRヤリスとADVANグラベルタイヤのマッチングも良好と語る宝田選手、およそ二週間後となる開幕戦に向けた意気込みを最後にお聞きしてインタビューを締めくくろう。

「現状はスズキ・スイフトでZC32型からZC33型に乗り換えた直後よりも、マシンの開発は進んでいるという印象です。この二日間で大きな手応えを掴みましたが、正直に言えば不安もいっぱい。特に自分のドライビングは、パッと乗ったときに『FF乗り』の悪癖を出さないようにしなければいけません。頭ではわかっているけれど、競技本番の緊張感や頑張ろうという思いの中で『これはスイフトじゃない、GRヤリスなんだ』と、しっかり頭を切り替えられるかが肝になります。そこを忘れずに今回のように走らせられれば、十分に戦えると思っています」

次のページでは、シリーズの最高峰となるJD1クラスでチャンピオン奪還を目指す、谷田川敏幸選手のインタビューをお届けします。