2017 VITA-01の世界 (3)

敷居も低く、ローコストで趣味のスポーツとしてもモータースポーツを楽しめるVITA-01。もちろんステップアップを目指すも良し、あくまでも週末の楽しみとしてエンジョイするも良し、楽しみ方は人それぞれだが、VITA-01ならではの“懐の広さ”は多くのドライバーを虜にしている。このページではVITAの魅力を、3人のドライバーに語っていただこう。


“呑み会GP”も楽しいですよ(笑) – 中里紀夫 選手

最初に紹介する中里紀夫選手は、2014年と’16年に鈴鹿クラブマンレースの「クラブマンスポーツ」でチャンピオンに輝いた、いわば西のMr.VITAたる存在である。VITAに乗り始めたのは2013年からだが、’80年代後半にFJ1600を、’90年代になってフォーミュラトヨタやF4を戦っていた。十数年のブランクを感じさせないアグレッシブな走りを身上とするドライバーでもある。

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「50歳になって何か自分にご褒美をと、ロータス・エヴォーラを買ったのですが、ある程度すると飽きてきて……。というか、やっぱり競争がしたくなってね。ちょうど、このVITAのレースが始まっていたので、試乗してみたら、乗りやすいし、面白いのではないかと思って始めたのがきっかけです。

そんなに通用するとは自分でも思っていなくて、楽しみ半分でやろうと思っていたのですが、思っていた以上に行けてしまったので(笑)。しんどいですけれど、勝てるように頑張っているのが現状です。VITAに乗っているみんなと呑みに行けるのも楽しみで、いつも“呑み会GP”をやっているので、楽しいクラスだと思います、鈴鹿は特に!!

VITAは、レース初心者の方でもやりやすいカテゴリーだと思います。乗りやすいし、スピンすることもあまりないですし、低いコストでレースができるというのが魅力ですからね。

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僕は自分で整備もしているのでメンテナンス費を含めない話で言うと、一戦あたり13万円ぐらい。タイヤが4万と少し、あとは走行料ですね。鈴鹿は1回走ると6200円、ガソリン代がだいたい3000円ぐらい。1回走行すると1万円ぐらい必要な感じなので、それが金曜日、土曜日走ると4万円。加えてエントリーフィーが6万5000円、タイヤ代と宿泊代で、だいたいそれぐらいの金額になっています。

若い時分はプロを目指していましたが、事情もあって一旦レースをやめました。それでもミッションカートをやったり、軽自動車の耐久レースもやっていたりしたので、まったく途切れたわけではなかったんです。その流れで、やっぱり鈴鹿を走りたいと。やっぱり鈴鹿は楽しかった。VITAも楽しんでいますよ!!」



練習をたくさん出来るのがVITAの魅力 – いむらせいじ 選手

中里選手が西のMr.VITAならば、東のMr.VITAは間違いなく、いむらせいじ(居村征嗣)選手。2016年のもてぎシリーズチャンピオンであるだけでなく、筑波、袖ヶ浦、富士と東日本で開催されるレースの全戦に出場し、さらに近年は鈴鹿にも遠征しているドライバーであるからだ。そのいむら選手のレースキャリアは’13年から始まり、VITA一筋なのである。

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「2013年の4月にAライセンスを取って、しばらくは富士でサーキットトライアルをやっていましたが、あるメカニックの方にVITAを勧められまして、筑波でレンタル車両に乗りまして。その日に発注して9月だったか10月には、もうレースに出ていました(笑)。

スピードは出ないですが、VITAにそれは求めていませんでしたし、むしろ安心してトライできたり、スピンしてもコース内にいられて壁まで行くことはなかったりするので、練習もしやすい。乗ればガソリン代はかかっても、部品代とか消耗品のコストパフォーマンスは高いので、回数を乗れますし、壊れないというのが大きいですね。何か要素を入れてひとつでも上の順位にと、そういうレースがしたいという人もいるでしょうが、僕のやり方としてはそうじゃなくて。負けちゃったのは、自分の練習が足りなかったから、そういう考え方なのです。だから、練習がいっぱいできるクルマっていうのが、いちばんハマった理由であって、たぶん関東では自分がいちばん練習しているのではないでしょうか。

当然、ラフプレイとか相手を威圧する行為は、僕のやり方じゃない。きれいに走って、お互い尊重しあって、『楽しかったね』と言えるようなレースが僕の理想です。みんな楽しく、データとか動画を、ライバルではあるけど互いに見せ合って、『ここのコーナーは、ああだよね?』というのをやったりして4年目です。本当は1年ぐらいでやめようと思っていたのですが、鈴鹿とかいろんなところに行ったら、またハマっちゃって(笑)。

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いろんなところで走っているのは、慣れちゃうだけになるのが嫌だから。コースそれぞれに特性の違いがあって、例えば高速コーナーひとつ取っても、富士の100RはVITAだと130km/hぐらいだけれど、鈴鹿の130Rは185km/hとかで、ほぼ全開。そういう違いがあるし、どこ行っても人並み以上の技術を身につけたいという思いがあるので、あえていろんなところに行っています。すると、仲間も自然と増えてくるというのも、魅力のひとつです。

まだ十勝と岡山は走ったことがないのですが、基本的にはどこでも出たいですし、オートポリスで練習走行もやってみたい。自分の知らない景色の中で乗ってみて、基準タイムはこれぐらいだよ、となった時にどれだけ早く出せるか、それが自分の成長と、そういうのが楽しくてやっています。今の目標は鈴鹿で1位になること、せめて表彰台には立ちたいです、来年ぐらいには(笑)。台数も鈴鹿は多いですからね」



みんなにお勧めのカテゴリーですね – 中島佑弥 選手

3人目に紹介するのは、去る5月14日に競争女子選手権(KYOJO-CUP)初戦と併せて行われた富士チャンピオンレースのFCR-VITA第2戦で、初出場だったにもかかわらず、いきなりポールポジションを獲得した中島佑弥選手。決勝は悪天候のためセーフティカースタートとなり、予選順位に基づいた隊列走行のままチェッカーとなってしまったが、FJ1600とF4、そしてスーパー耐久の経験を持ち、フォーミュラもツーリングカーも多くを知るドライバーに、VITAの印象をお聞きした。

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「VITA-01はすごく素直なクルマで、セットアップにも敏感に反応するし、ドライバーの運転にもちゃんと反応する、どちらかというとフォーミュラ寄りという感じですね。スピードは決して速くなくてマイルドなのですが、だからこそVITAは本当に基本通りに動かせば、その通りに動いてくれるクルマなので、入門にも適しているクルマだと思います。

お金に余裕のある方は最初からパワフルなクルマに行ってしまいがちですが、それだと物理的に考えて走らせるという前に、パワーで引っ張ってしまいがちですね。これが比較的パワーの小さいVITAですと、ちょっとロスすると一気にタイムが落ちてしまいます。そういうクルマで経験を積んだ方がリスクは少ないし、お金もかからないので、みんなに勧めています。その点では、すごくいいカテゴリーができたと思います。

また、VITA-01にはLSD(リミテッド・スリップ・デフ)が入っていないこともポイントのひとつ。先日の富士のレースでは、金曜日の練習を2本走ったのですが、1本目は全然タイムが出ませんでした。その原因は、デフが入っているクルマの走らせ方をしたことでした。そこで2本目には切り替えて、フォーミュラっぽく放り込んで、車速を落とさない、ロスをしない方向できれいに走ったら、タイムが出ました。ちゃんと走らせ方にも反応してくれるので、そういう勉強もできますし、1周に時間がかかる分だけ考える時間を多くとれる点もいいと思いましたね。

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カートレースなどともそんなにコストは変わらないと思うので、VITAは誰にでもオススメですね。また、Hパターンでクラッチ操作をするのは、間違いなく色々なことに活きてくると思います。時代はパドルシフトだと言っても、なんでも扱えた方がいいと思いませんか?

5月のレースは、本来出る予定だった方が怪我をされたので、急きょ出場したんですが、ガレージさんからは『また出場してよ』と言われていますし、中途半端に終わってもいるので……。この前の感じでは、クルマをもっと速くできそうな感触があったので、クルマ造りを極めるために今後も続けられれば、と思っています」



次のページでは、女性ドライバーたちがVITA-01で戦う注目の「競争女子選手権」をご紹介いたします。