Women in Motorsport with YOKOHAMA TIRE (2)

参加するチームの一員として、モータースポーツに携わっている女性は数多くいらっしゃいます。大会に華を添えるレースクィーンや、チームにとって縁の下の力持ちとなって働くチームマネージャーなどは、まさに女性たちが活躍の主役。しかし、チーム全体をまとめ上げ、戦いの最前線で指揮をとるチーム監督となると、まだまだそこは男社会という色合いが濃い世界。そんな中でチームの総合力が特に重要視される耐久レースにおいて、チーム監督の重責を担っている女性をご紹介いたします。


モータースポーツの刺激にどっぷりとはまりました – 小林香苗 さん

愛知県名古屋市に本拠を構え、近年はスーパー耐久シリーズのST-4クラスにホンダ・インテグラで参戦している小林自動車レーシングプロジェクト。ホンダ・S2000やトヨタ・86、スバル・BRZなど多彩な車種がしのぎを削りあうこの激戦区において、シリーズ争いを演じ優勝を何度も飾ってきている有力チームのひとつだ。そんなチームをまとめ、戦いの指揮をとっているのが小林香苗さん。2015年のスーパー耐久シリーズには40を超えるチームが参戦したが、そのうちで女性が監督をつとめているチームは僅かに2チームである。

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「そもそもレースに全く興味は無かったんです。レースをやっている主人とお付き合いするようになって見に行くようになりましたが、最初は“走り屋”のイメージが強くて、それがどうにも苦手で(笑)。しかし間近にしてみると、スポーツとして競技を一所懸命にやっていることを知って驚きましたね。そして、見ているうちに面白くなってきて、どっぷりはまってしまった感じなんです」

小林香苗さんのご主人、康一さんは自らが営む小林自動車で車検や修理などの日常業務とあわせて、モータースポーツに長く参戦している。自らマシンを造り、ドライバーとしてステアリングも握っているが、そんな康一さんと出会い、結ばれたことが香苗さんの人生を大きく変えることとなった。

「主人と結婚して、常にステップアップしたいという想いを持っていることに共感しました。インテグラのワンメイクレース、インターシリーズと地方戦を10年やり続けましたが、私も主人と一緒にいろいろと突き詰めていくのが好きなんですよね。練習して、レースに臨んで、車をばらして進化させて、ということを繰り返しているうちに、自分で気づかない間に私自身がモータースポーツを良く知っているね、という感じになってきたんです」

チームは、スーパー耐久シリーズへとステップアップを果たした。最初は監督不在で、康一さんを長としてみんなのチームという感じで運営されていたが、やはりチームのことを全てわかっている人間が舵を取る必要を覚え、香苗さんが監督というポジションを任される流れになったのは、ある意味で自然なことと言えるかもしれない。



生きている中で、ほかで味わえない刺激がある

「耐久レースのことはあまりわかっていなかったところもあるので、また新たに勉強してスーパー耐久シリーズに参戦しました。各パートを受け持つスタッフが情報を私に投げてくれて、それをまとめて現状のベストを決める、という役割を担っています。うちのチームは本当にチームの一人一人が一丸となっていて、そんな中で監督というポジションを私が任されています」

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時にモータースポーツでは、プロモーション的な要素によって女性が監督という立場につくこともある。しかし小林自動車レーシングプロジェクトでは香苗さんが実際に監督として実務をこなし、チームをまとめ上げている。無線のヘッドセットをつけ、先頭に立ってピット作業にあたったりドライバーやメカニックとコミュニケーションをとっている姿を、サーキットで見ることが出来る。

「女性の監督ということで、やはり男性の中で仕切るというのは気をつかうところもあります。例えば自分のほうがチームやマシンについて知っていることがあっても、場合によっては男性スタッフのプライドを傷つけてしまうことになることもあり得るので、そういった部分などですね。どうしても女性だからマシンのこともレースのことも知らないのだろうと思われがちなのですが、うちの場合はわかってくれる人が背中を押して助けてくれています」

女性の社会進出はモータースポーツに限らず注目を集め、さまざま世界で活躍する女性たちが増えている。しかし、やはり旧来的な男社会の土壌が強い世界では、苦労することもあるようだ。もちろん、その一方では女性だからこそ上手く出来る面もあるという。

「私がやっているからバランスが取れているんだろう、という部分もありますね。監督も男性だったら、男性同士で競い合って衝突してしまうなどの難しい場面もあるかと思います。その点、私は女性ですし、みんなのサポートで背中を押してくれたことからスタートしているので、みんなの中に“私が決めたことなら助けてやろう”という気持ちがあることが、とても私自身に伝わってくるんです。決して私たち夫婦が凄いというわけではなくて、チームのみんなが助けてくれているからこそ結果が残っているんだ、という気持ちが強いですね」

小林自動車レーシングプロジェクトは、スタッフの構成を見ても女性比率の高さが目立つ。そしてチームの一人一人が性別は関係なく、ただひとつレースに勝つことという大きな目標を見据えて、真剣勝負を繰り広げている。

「みんな人間ですから、好きな気持ちがあって一所懸命にモータースポーツに携わりたいという気持ちが必要ですし、私たちのチームはみんながその気持ちを共有しています。チームにはどんどん女性が増えていて、何か自分にも出来ることが無いかと考えながらチームを支えてくれています。それは決して、女性監督の私がいるからというわけではなくて、一人一人それぞれのレースに対する思いが強いからだと思っています」

最後に小林さんに、モータースポーツの魅力をお聞きしてこのインタビューを締めくくろう。

「やっていて、特に耐久レースは楽しいですね。チーム力がどんどんついて、ピット作業なども決まるようになってきて、みんなとツーカーで繋がっている感じがとてもあるんです。ひとつのことを言えば全てが伝わっているような感じで、それがバッチリ決まったときには言葉に出来ないような喜びを覚えますね。その感覚や刺激は、生きている中でほかにこんなことは無いな、と思えるほどです。チーム力に尽きる小林自動車レーシングプロジェクトですが、目標はもちろんシリーズチャンピオン。何年も悔しい思いをしているので、必ず獲りたいと思っています!!」

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