Franz Engstler Interview (1)

2015年、ヨコハマタイヤがオフィシャルタイヤサプライヤーとして10年目のシーズンを迎えるWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)。世界最高峰のツーリングカーによるスプリントレースは今年も激戦が予想されるが、このシリーズには世界選手権のほかに、YOKOHAMA Trophyというタイトルも賭けられている。
このトロフィーを2014年に制している、フランツ・エングストラー選手のインタビューをお届けしよう。


WTCC参戦7年目で掴んだYOKOHAMA Trophy

フランツ・エングストラー選手。1961年7月、ドイツのバイエルン州ケンプテン生まれの53歳(2015年2月時点)、自らチームオーナーとしてエングストラー・モータースポーツを率いつつ、ドライバーとしてもステアリングを握る現役のベテランである。
WTCCには2008年から参戦を開始。長くエングストラー選手をサポートしているリキモリのカラーをまとうBMWは、非マニュファクチャラーチームを対象としたYOKOHAMAトロフィー争いの主役であり続け、2014年に初のシリーズトロフィー獲得を果たしたのである。

このシリーズ獲得について、エングストラー選手はその喜びを次のように語った。

「2008年にWTCCへの参戦をはじめた時から、YOKOHAMA Trophyを獲得することが目標でした。これまでに何度かそのチャンスはあったのですが(2011年と2009年は3位、2010年と2008年は2位)、いまこうして勝利することが出来たのは大きな成果です」

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新しいTC1車両規定が導入された2014年のWTCC、YOKOHAMA TrophyはTC2規定車両が対象となった。少数精鋭による争いとなる中でエングストラー選手は圧倒的な強さを見せ、実に23戦中20勝を飾って他を寄せつけなかった。この結果について、エングストラー選手はシーズンイン前に予想することが出来たのだろうか。

「勝利を現実のものとするためには、上手く行く必要がある要素がたくさんあります。
すべてのチームは2014年、素晴らしい戦いをしました。その中で私たちは技術的な問題が皆無だったのです。ゆえに、私は自分自身のドライバーとしての経験値と、マシンのポテンシャルを余すところなく使えて、YOKOHAMA Trophyを勝ち得ることが出来ました」



ベテランをモータースポーツに駆り立てるもの

エングストラー選手のレースキャリアは1980年代前半にスタートし、1989年のドイツF3選手権Bクラスチャンピオンが初のタイトル。ツーリングカーでは母国ドイツのBMWを長く駆っており、WTCC参戦前にはアジアン・ツーリングカー選手権で2005年と2006年のタイトルも獲得している。

レース歴30年を超える大ベテランだが、今も体力作りは怠っていないという。

「会社で仕事をするのとサーキットでレースをする間の短い時間を使って、ジムでフィットネスをしています」

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年齢を感じさせない熱い走りを見せるエングストラー選手。2014年のWTCCにおいても最もベテランの一人であったが、果たしてこの経験豊かな選手を何がレースへと駆り立てているのだろうか。

「私は、情熱と熱意を持ってレーシングドライバーとしての活動をしています。年齢を重ねた今では、これまでのレースから得た経験値を活用することも出来ます。
私にとって自分のチームでレースを戦うことは常に大きな挑戦であり、そこに私を圧倒する若いドライバーが存在しないのであれば、私がレースを止める理由は無いでしょう。
そう、私の息子がモータースポーツの第一歩を踏み出しているのですが、もしかしたらこの事は私自身がモータースポーツ活動を止めるかについて考える一つの理由になったかもしれません。なぜなら息子には、公平にモータースポーツのチャンスを与えたいと思っていますし、私が持つ全ての経験を活かして彼をサポートしたいと思っているからです」


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