2014 FIA WTCC Race of JAPAN (1)

2005年に発足、2006年から今日まで一貫してヨコハマタイヤがコントロールタイヤを供給している、世界最高峰のツーリングカーによるスプリントレースがWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)。
“サーキットの格闘技”という異名もとるシリーズは、随所で見られる超接近戦が最大の見どころとなる。そんな格闘技レースは2008年に日本へと初上陸、多くのレースファンの度肝を抜いた。3年間を岡山国際サーキットで開催、2011年からは舞台を鈴鹿サーキットに移す。ただしコースは東コースが使われてきたが、いよいよ今年はSUPER GTなどでもお馴染みのフルコースが戦いの舞台となる。
7回目の開催となるWTCC・日本ラウンド。その見どころと新しい車両規定が導入された2014年シリーズの全容についてお届けしていこう。


新車両規定の導入により、ハイスピードバトルへ進化したWTCC

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WTCCを戦うマシンは、4枚のドアを持つ2輪駆動車をベースとして仕立てられ、排気量1,600ccのターボエンジンに6速シーケンシャルトランスミッションを組み合わせる。2014年の顔ぶれは、シトロエン、シボレーRML、ホンダ、ラーダが新規定のTC1、BMWとセアトが従来規定のTC2に参戦している。

中でも、新しい車両規定として導入されたTC1は主役として台数でも多数派となる。TC1車両は、従来よりも“レーシングカー度”がアップしており、外観も空力特性が大幅に向上、ワイドフェンダーによる低く・幅広いルックスは迫力あるものとなっている。
タイヤはそれまでの17インチから18インチへとサイズアップ、パフォーマンスも高まり、超接近戦の醍醐味はそのままに、よりハイスピードなバトルへと進化した。

ちなみに、最高出力はTC1車両が約380hp、TC2車両は約320hp(タイヤは17インチ)というパフォーマンスの差異がある。そして選手権争いは総合順位に応じて両車両クラスともに対象となる一方、TC2車両はクラス順位によるYOKOHAMAトロフィーも競い合っている。



予選方式が変更されたレースフォーマット

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WTCCのレースフォーマットについては、1大会で2つの決勝レースを行うことは、発足当初から変わっていない。今年の日本ラウンドは、シリーズの第21戦と第22戦が行われる。レースは2戦ともに60kmで、スタート方式も昨年までと異なりスタンディング方式に統一された。

昨年までとの変更が大きいのは予選について。今年は全車が出走するQ1、その上位12台が出走するQ2、さらに上位5台が絞られて1台ずつのクリアアタックとなるQ3という、三段階方式が採用されている。

予選結果は第1レースではQ3、Q2、Q1の結果がスターティンググリッドに順列で反映される。ポールポジションから5番グリッドまではQ3結果、6番グリッドから12番グリッドはQ2の6位から12位、13番グリッド以下はQ3の13位以下の選手に割り当てられる。

一方で第2レースはトップ10がリバースグリッド配置とされる。Q2の10位が第2レースのポールポジションとなり、Q3の5位は6番グリッド、Q2の11位は11番グリッドで12位が12番グリッド、そしてQ1の13位以下は13番以下のグリッドとなる。これでわかるように、予選はトップ争いも白熱する一方で、Q2の10位と11位では雲泥の差があるため、Q2の10位争いも密かに白熱するポジション争いだ。

なお、選手権争いにおいては予選結果に与えられるポイントの存在も大きい。Q3に進出した5台が対象で、1位に5点、以下5位に1点までが配分される。



日本ラウンドは、初開催となる鈴鹿・フルコース!!

2014年は12のコースを転戦するWTCC。その舞台はヨーロッパを中心に、北アフリカ(モロッコ)、南米(アルゼンチン)、そしてアジアでは日本を含め4大会とワールドワイドなカレンダーで構成されている。また、常設のサーキットコースのみならず、開幕戦のモロッコと最終戦のマカオはチャレンジングなストリート(市街地)コースであることも、大きな特徴と言えるだろう。

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そんな中、日本ラウンドは4年連続の開催となる鈴鹿サーキットが舞台。ただし、昨年までの3年間は東コース(2,263m)で開催されてきたが、いよいよ今年はフルコース(5,807m)が戦いの舞台として用意されることとなった。

昨年までの東コースは、WTCC開催コースの中でももっとも距離が短い部類にあった。ゆえに周回数は多く、現地で観戦していると目の前を何回も通過するという醍醐味があった反面、パッシングポイントが限られることは選手の口からも語られ、特に第1レースでは3年ともに予選トップを奪った選手が優勝を飾るポール・トゥ・ウィンで勝負が決している。

これがフルコースに舞台を転じることで、周回数こそ減るものの1周のうちに随所で激しいバトルが演じられるレースへと変貌するであろうことは想像に難くない。

特に130Rからシケインへの飛び込みは注目のポイントとなることが必至で、WTCCならではのスリーワイドや場合によってはフォーワイドで、コースオフも覚悟のアグレッシブなバトルが演じられることになるだろう。第1レース、第2レースともに、オープニングから序盤の130R、そこでの激しい攻防戦に注目だ。