2021 JRC Round 6 Report

【全日本ラリー選手権 第6戦 / 群馬県高崎市】

高崎市へホストタウンを移して開催されたMONTRE、
LEG2は昼を境にコンディションが変わる展開に

JRC Round 6

開催日 2021年6月11日-13日
開催場所 群馬県高崎市 近郊
天候 Leg1) 晴れ
Leg2) 曇り 一時 雨
路面 Leg1) ドライ
Leg2) ドライ~ウェット
ターマック(舗装路面)
総走行距離 290.25km
SS合計距離 61.22km (3SS)
得点係数 1.0 (舗装路50km~100km)
参加台数 61台(オープンクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 19台)
2020 全日本ラリー選手権 第6戦

愛知、佐賀、京都と転戦してきた全日本ラリー選手権は戦いの舞台を関東に移し、群馬県を舞台として「MONTRE 2021」が開催された。全10戦のカレンダーとなっている2021年は第1戦のスノーラリーも群馬県での開催を予定していたが、これが中止となったため今年初めての関東での開催となる。

また、第4戦の四国・愛媛ラウンドはゴールデンウィークから開催が延期されて10月末へ日程を変更したことから、本大会は第6戦ではあるが今シーズン4回目の戦い。カレンダーはこの「MONTRE 2021」がターマック(舗装路)ラリーを一旦締めくくる一戦となり、この後はグラベル(未舗装路)ラリーが3戦続き、終盤の2戦を再びターマックで競い合うという流れになっている。

今年の「MONTRE」は2019年までの嬬恋村から、県内で最も人口の多い高崎市へとホストタウンを移した。サービスパークは街の中心となる高崎駅の東口に昨年4月オープンしたGメッセ群馬(群馬コンベンションセンター)に設けられ、都市部の真ん中が拠点と大きくロケーションは様変わりしている。

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アイテナリーは感染症拡大防止のためコンパクトなものとされたが、土日の2日間で設けられるSS(スペシャルステージ)は合計で僅か3本という異例の設定に。さらにそのSSは初日が21.92kmの1回、2日目は19.65kmを2回というともにロングステージのみの設定という、こちらも異例の内容とされた。金曜日は参加受付が行われたが、その前に選手やチームスタッフはもちろん、関係者全員を対象とした抗原検査が行われて感染症拡大防止を徹底しての開催となった。

土曜日は早朝からレッキを行い、夕方に競技がスタート。今回のSSは藤岡市、神流町、南牧村、上野村に設けられ、スーパー林道などを使用する。地区戦での使用実績はあるが近年の全日本戦では初めて使われるもので、地元の群馬県勢にとっても初めて走るという選手が大半となっている。

初めての道、少ないSS数、ロングステージという条件での大会ゆえ、序盤で様子見するような余裕は無い戦い。ゆえにレッキで作るペースノートの精度もいつも以上に高いものが求められ、土曜の早朝から行われたレッキを各選手は念入りに行っていった。そして、レッキを終えた選手からは「ハイスピードで難しく、チャレンジングな道」という感想が多く聞かれた。

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土曜日の16時48分にオープニングとなるSS1「Grandma.Kimura (21.92km)」がスタート、ラリー開催に理解が深い地元住民の名前に由来するというユニークな名称のSSだが、中高速でアベレージスピードが高く、三次元的な箇所もある攻略の難しいステージだ。

このSS1でベストタイムを刻んだのが柳澤宏至選手/保井隆宏選手組(ファビアR5)、3.5秒遅れのセカンドベストは奴田原文雄選手/東駿吾選手組(GRヤリス)と、大会はヨコハマタイヤ勢のワン・ツーで幕を開けた。柳澤選手組のタイムは14分30秒7、平均スピードは90km/hを超えていることからもこのSSがハイスピードなものであることは明確だ。

同じJN-1クラスでは事実上の開幕戦となった新城を制している新井敏弘選手/田中直哉選手組(WRX STI)も、柳澤選手と同じ地元群馬ということで優勝候補の一人として期待が高まっていたが、スタートして7kmほどの地点で路面の穴を通過した際にタイヤを傷つけてしまい交換を余儀なくされて無念の後退。

さらに同じ群馬勢で地区戦の参戦を通じて今回のSSにも精通している竹内源樹選手/木村悟士選手組(BRZ)も優勝候補の筆頭と目されていたが、こちらはクラッシュを喫してしまった。クルーに怪我が無かったのは不幸中の幸いだったが、道幅の狭い区間でのアクシデントだったために競技は赤旗が提示されてしまう。このため大半の車両はスルー扱いとなり同一タイムが与えられ、対象となった車両は仕切り直しでLEG2の2本により勝負を決することになった。

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日曜日のLEG2は19.65kmのステージを2回走行するが、中間サービスは設けられない。さらに天気予報では昼ごろから雨となっており、ウェットへの変化も見越した戦略も求められる展開となった。そして実際に9時18分スタートのSS2はドライコンディションだったが、全車がフィニッシュした頃から雨が降り始めた。SS3が始まる12時16分には雨足の勢いは弱まったものの、路面はウェットへと転じてしまっていた。

そんな中、SS2はサードベストとなった柳澤選手組が、3.1秒差でトップを堅守して最終のSS3に臨む。柳澤選手組は逃げきりを期して渾身のアタック、手元の計測では後半の13km過ぎの地点でライバルより5秒ほど早い好走を見せていたが、終盤のテクニカルな区間で痛恨のスピン。惜しくもポジションを2番手に下げてのフィニッシュとなったが、準優勝で表彰台を獲得するリザルトを残した。

奴田原選手組はLEG2でのタイムが伸び悩んでしまいポジションを下げたものの、5位でフィニッシュしてポイントを蓄積。新井選手組はSS2をスタートして間もなくパワーステアリングのホースが抜けるトラブルで無念のリタイアとなり、こちらは次戦からのグラベル連戦で巻き返しを誓う結果となった。

JN-3クラスでは、山口清司選手/里中謙太選手組(86)がSS2でサードベストを刻んで16.5秒差の3番手。ウェットとなったSS3ではセカンドベストを刻んでポジションを2番手にアップしてフィニッシュ、2019年の第9戦以来となる準優勝を獲得して表彰台を飾った。その2019年の第9戦以来となるラリー参戦の織戸学選手は、同年のチャンピオンを獲得した山本磨美選手がコ・ドライバーをつとめての参戦。大いに話題を集める久しぶりのラリー参戦だが、SS2でABSのトラブルからコースオフを喫して、惜しくもリタイアとなった。

DRIVER VOICE

柳澤宏至 選手 [シュコダ・ファビアR5]

【今回の成績 : JN-1クラス 準優勝】
地元の群馬県ではありますが、今回のSSはあまり走る機会の無い道でした。タイヤと路面のマッチングが良くて初日をトップであがれましたが、二日目のSS3でスピンをしてしまいました……。精一杯頑張りましたが、スピンしてしまったので優勝を逃してしまい結果は良くなかったですね。今シーズン、初めての車に慣れるところから始めて、今回のロングステージをこれだけ集中して走らせて、かなり車の動かし方などがわかってきた感じがあります。タイムを出せるセッティングもわかってきたので、この先につながる収穫は得られたと思っています。

山口清司 選手 [トヨタ・86]

【今回の成績 : JN-3クラス 準優勝】
「ADVAN A052」も持っていましたが、LEG2も「ADVAN A08B」のみで走りました。雨の予報が出ていましたが、前戦の丹後もずっと「ADVAN A08B」で走ったので逃げきれるだろう、と。LEG1がスルーになって、途中までは走りましたがタイムが早かったのかどうなのか分からないままに初日が終わってしまって。LEG2は中間サービスが無いのでタイヤをスペアとして搭載したものを使うしかなく、途中での調整が出来ない上にロングステージで勝負をかけるというのはストレスがありました。とにかく今出来ることをやるしか無い、という状況の戦いでしたがSS3でライバルとのタイム差をSS2より縮められたのでウェットに転じた中では悪くなかったと思います。

TECHNICAL INFORMATION

同じ群馬県でも渋川市、嬬恋村と開催拠点を変えてきた「MONTRE」だが、高崎市となってSSの設けられるエリアも変更された今年も“モントレー・ウェザー”は健在だった。好天の猛暑から時にゲリラ豪雨を含めた雨へと天候やコンディションが大きく変わることの多い「MONTRE」は、その変化を見越した戦略やドライビングやセッティングの柔軟な対応を求められる。

地元でのR5初優勝が期待された柳澤選手組のスピンは残念だったが、手元計測のスプリットタイムにもその速さが現れているように戦闘力が磨き上げられてきていることは確かな存在。次戦からはグラベルでの3連戦となるが、与えられるシリースポイントも大きいだけにグラベルを得意とする柳澤選手の走りには期待が高まるところだ。