2021 JRC Round 4 Report

【全日本ラリー選手権 第4戦 / 愛媛県久万高原町】

三つ巴のタイトル争いとなったJN-3クラスの最終決戦、
21歳の大竹直生選手が藤田めぐみ選手とともにチャンピオンを確定!!

JRC Round 4

開催日 2021年10月29日-31日
開催場所 愛媛県久万高原町 近郊
天候 Leg1) 晴れ
Leg2) 雨 のち 曇り
路面 Leg1) ドライ
Leg2) ウェット
ターマック(舗装路面)
総走行距離 341.60km
SS合計距離 110.10km (8SS)
得点係数 1.2 (舗装路100km以上)
参加台数 44台(オープンクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 9台)
2021 全日本ラリー選手権 第4戦

2021年の全日本ラリー選手権は当初10戦のカレンダーを予定していたが、第1戦の嬬恋と第8戦の横手が中止となり、8戦で選手権を競うこととなった。その中で5月に予定されていた第4戦「久万高原ラリー」は、感染症拡大の影響で日程が延期され、事実上の最終戦として10月29日(金)から31日(日)にかけて開催された。

ホストタウンは愛媛県久万高原町、昨年の大会は開催が見送られているので四国の地に全日本ラリー選手権が上陸するのは2年ぶりとなる。大会の拠点は例年通り、標高およそ1,000mのハイランドパークみかわに設定。しかし、ここからさらに1,500mの大川嶺へと駆け上がる県道328号が落石により通行止めとなっていることから、今回は国道440号の山側を走る町道御山線、農道ミヤマ線、基幹林道西谷・日野浦線がSS(スペシャルステージ)として使われる。

アイテナリーは30日(土)のLEG1がハイランドパークみかわから南方向に、「美川リバース (6.97km)」と「柳井川 (14.21km)」を設定して、それぞれ3回ずつ走行。31日(日)のLEG2では走行方向を逆にして、これらのSSと中間のリエゾン区間を全て通しで使う「美川 (23.28km)」を2回走行する。道そのものは同じだが、二日間で走行方向を変えることと、20kmを超えるロングステージが特徴となり、SS合計距離が100km超えることから成立すればポイント係数は1.2が適用される。

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29日(金)にSSを下見するレッキがが行われ、選手からは「チャレンジングで砂利が多く路面に載っていたが、思っていたよりも道は綺麗」という声も聞かれた。「久万高原ラリー」は2006年に4輪駆動部門と2輪駆動部門が統合されて全日本ラリー選手権が今日のスタイルとなった時から開催が続けられているが、その時期は2回を除いてゴールデンウィーク中が定番となっている。10月末の開催は初めてであり、時期的には落ち葉も懸念されたが、確かに思っていたよりも道の落ち葉は少なかった。ただ、日頃は交通量が少ないためか路面には苔が生えている箇所も散見される。さらに舗装の劣化が以前より進んでいるようで、タイヤへの攻撃性が高くタフなステージだ。

土曜日のLEG1は好天の下でスタート、JN-1クラスでは新井大輝選手/小坂典嵩選手組(WRX STI)がオープニングのSS1「美川リバース 1」でトップと2.7秒差のセカンドベストをマーク。SS4「柳井川 2」では新井敏弘選手/田中直哉選手組(WRX STI)がセカンドベスト、新井(大)選手組は0.5秒差とほぼ同タイムのサードベストを刻み、さらにSS5「美川リバース 3」でも新井(大)選手組はセカンドベストをマークするが、トップ2台との差はじわじわ開いていく厳しい展開に。

そして土曜の夜遅くから久万高原地方は雨が降り始め、日曜日のLEG2はシトシト雨が降り続くウェットコンディションでのスタートとなった。このためウェット宣言が出され、規定のタイヤ使用本数上限8本に対して2本の追加使用が認められた。そんな中でヨコハマタイヤ勢は我慢の走りが続き、ウェットで速さを見せた奴田原文雄選手/東駿吾選手組(GRヤリス)が、新井親子をかわして4位でフィニッシュ。5位が新井(大)選手組、6位が新井(敏)選手組というリザルトになった。

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チャンピオン争いが三つ巴で持ち越されているJN-3クラス、その一角を占める大竹直生選手/藤田めぐみ選手組(86)はシリーズランキングリーダーとして最終決戦に臨んだ。有効得点制が採用されている全日本ラリー選手権、勝てば無条件で、準優勝ならばLEG2でトップを奪い3点のレグポイント獲得がチャンピオン確定の条件となる。

SS3までを終えて大竹選手組は2番手と8.6秒、トップと13.9秒差の3番手。巻き返しを期したSS4「美川リバース 2」、大竹選手組はトップのライバルを上回るハイペースでプッシュしていく。ところが残り2kmの手前で先行車が踏んだはずみで立ち上がったと思われるグレーチングにヒットして、右リアタイヤを壊してしまった。万事休すかと思われたが、そこまでと同じペースとは行かなかったもののフィニッシュまでマシンを運んでサードベストをマーク。2番手とは僅かに1.2秒差、アンラッキーではあったが勝負権はしっかり手中に残す形となった。

残る2本のSSもしっかり走りきった大竹選手組、初日は2番手と30.2秒、トップと39.1秒差で終了。やや大きく差が開いたようにも見えるが、LEG2は20kmを超えるロングステージが舞台となるだけに、逆転の可能性も大いに残されている。さらに前述の通り、夜に降り始めた雨によるウェットコンディションはワンミスが命取りとなるだけに、勝負の行方はまだまだわからない状況であった。

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ADVAN A052を装着して、ウェットコンディションのロングステージに臨んだ大竹選手組。SS7「美川 1」をノーミスで走りきって待望の本大会初となるステージベストを刻み、2番手にドロップしたランキング2位のライバルとの差を17.4秒とした。

泣いても笑っても一年の集大成となる最終ステージのSS8「美川 2」、ところがスタート前にアクセルをあおるとエンジンの反応が悪化、トラブルを抱えてパワーが出ない状況に陥ってしまった。前日の悪夢再びと思わせる絶体絶命のピンチだったが、大竹選手組は諦めることなくステージを走りきった。一方、クラストップに立っていたランキング3位のライバルは、SS7での大竹選手組のステージベストでプレッシャーを感じたか、コースオフからのリタイアに。

このように最後の最後まで波乱含みとなったJN-3のチャンピオン争いは、大竹選手組が準優勝でフィニッシュ。LEG2はトップで満点のレグポイントを獲得して条件を満たし、21歳の大竹選手がドライバー部門、コンビを組む藤田めぐみ選手はコ・ドライバー部門で2014年以来となるシリーズチャンピオンを獲得した。

また、愛媛県出身の山口清司選手は丸山晃助選手とのコンビでトヨタ・86を駆って出場、SS7で電気系トラブルに見舞われたものの粘りの戦いを展開。トラブルが解消した最終のSS8ではステージベストを刻んでフィニッシュまでマシンを運び、山口選手は思い入れも強い故郷での一戦において3位表彰台を獲得することに成功した。

DRIVER VOICE

大竹直生 選手 [ADVAN KTMS ヌタハラRS 86]

【今回の成績 : JN-3クラス 準優勝 (シリーズチャンピオン確定)】
チャンピオンを賭けた一戦でしたが、リラックスして臨むことが出来ました。「ここでやるしかない」という思いでスタートしたんです。SS4でグレーチングにヒットして、大丈夫かとおもったら徐々にきちんと走れなくなって。「せっかく上手く走れていたのに……」と、正直落ち込みました。LEG2はウェットでしたが、開き直ってSS7はいままでで一番ウェットのターマック路面を攻めることが出来ました。ところが最終SSスタート前にエンジントラブルになってしまって、「あ~、これで終わった……」と、また落ち込んで。フィニッシュしてライバルの一人がリタイア、もう一人はスピンしたと知ってチャンピオン確定となったのですが、ライバルも含めていろいろありすぎでしたね(笑)。勝ち取った、という感じではないのでチャンピオンの実感がなかなか沸いてきませんね。初の全日本フル参戦でしたが、今回だけでもかなり経験値を積むことが出来たと思います。

山口清司 選手 [jms エナペタル ADVAN 久與 86]

【今回の成績 : JN-3クラス 3位】
LEG1は直前に車高などを変えたのが完全に裏目に出てしまって、最初のサービスでアジャストしました。これでペースアップしたのですが、なかなか思ったようにいかなくて“迷路”に入ってしまったような感じでした。ウェットのLEG2でリセットして気持ちも切り換えて臨みましたがSS7で電気系トラブルに見舞われてしまい、そのまま15km近くを走ったんです。SS8では解消してそれなりのタイムを出せたので、良かったなという感じです。今日の最終SSでの結果が無かったら「来年のラリー参戦はどうしよう」と落ち込んで終わるところでしたが、来シーズンはチャンピオン争いの一角に加わろうという思いを持って一年を終えることが出来ました(笑)。

TECHNICAL INFORMATION

前戦に続いて、二日間でコンディションが大きく変化した一戦となった。チャンピオンを確定した大竹選手組はLEG1をADVAN A08B装着でスタート、スペアにはLEG2がウェットへ転じることを見越してADVAN A052を搭載していた。SS4でタイヤ交換を強いられたが、その後のサービスでは壊れなかった側のリアにADVAN A052を投入。規則での使用本数上限は8本だったので、これで6本を使ったことになる。

そして夜からの雨で使用可能本数が2本追加されたが、LEG2は4輪ともに、新品のADVAN A052を装着。2本の追加はLEG2スタート前に公示されたが、前日の段階で天気予報などのこまめな情報収集により、ラリー全体を通じた戦略の構築が求められる展開となった。