2021 JRC Round 3 Report

【全日本ラリー選手権 第3戦 / 佐賀県唐津市】

JN-1の奴田原文雄選手組がデビュー戦でGRヤリスの全日本初表彰台を獲得、
JN-3では弱冠20歳の大竹直生選手が全日本初優勝を飾った!!

JRC Round 3

開催日 2021年4月9日-11日
開催場所 佐賀県唐津市 近郊
天候 Leg1) 晴れ
Leg2) 晴れ
路面 Leg1) ドライ
Leg2) ドライ
ターマック(舗装路面)
総走行距離 283.13km
SS合計距離 66.94km (10SS)
得点係数 1.0 (舗装路50km~100km)
参加台数 49台(オープン/オールドクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 13台)
2020 全日本ラリー選手権 第3戦

3月に愛知県で開幕した2021年の全日本ラリー選手権は、戦いの舞台を西へ移して九州に上陸。昨年は時期を11月に移して事実上の最終戦となった佐賀県唐津市をホストタウンとする「ツール・ド・九州 in 唐津」が今年の第3戦、およそ4ヶ月ぶりに九州へ帰って来た。

4月10日(土)と11日(日)の2日間で10本のSS(スペシャルステージ)を設定、昨年と同じ道を使うが名物ステージの「SANPOU (11.41km)」は逆方向に走行するリバースの設定。この大会最長のステージをはじめ、5つの道を各2回ずつ走行するというアイテナリーだ。

走る道は変わらないものの、競技の開始は土曜日の昼過ぎに設定。金曜日はステージの下見を行うレッキ、そして土曜日の午前中に公式車両検査を行うスケジュールとしたことでメカニックやチームスタッフの移動を1日遅くできるかたちとなり、参戦コストの抑制につながる配慮がなされた。

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全日本ラリー選手権では大会ごとに主催者がゼッケンを割り振るが、シーズン序盤は前年のシリーズランキングを基にナンバリングされる。今回は昨年最高峰のJN-1クラスでチャンピオンに輝いた新井大輝選手が海外ラリー参戦のために欠場、ゼッケン1をつけるのはランキング2位の奴田原文雄選手だ。

奴田原選手は前戦の新城を欠場したが、今回から新たに自身が立ち上げた「NUTAHARA Rally team」での参戦、コ・ドライバーは若手の東駿吾選手を起用し、マシンはトヨタ・GRヤリスにスイッチ。シェイクダウンを済ませたばかりのニューマシン、もちろんADVANカラーをまとい、大いに注目を集める存在となった。

JN-1クラスは新井敏弘選手/田中直哉選手組が排気量2000ccのターボエンジンを積むスバル・WRX STI、競技専用に作られた国際規格のR5マシンであるシュコダ・ファビアR5を駆る柳澤宏至選手/保井隆宏選手組、そして奴田原選手組と山本悠太選手/立久井和子選手組も駆る1600ccターボエンジンのヤリスGR4による三つ巴の構図である。

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シェイクダウンから間もない奴田原選手組のマシン、そのパフォーマンスに注目が集る中で競技がスタート。SS1「UCHIURA 1 (4.37km)」は熟成のマシンを駆る新井選手組がベストを刻み、柳澤選手組、そして奴田原選手組と続いてヨコハマタイヤ勢がトップ3を独占、戦いの主役としてラリーをリードした。

SS2「SANPOU REVERSE 1」はGRヤリス勢のワン・ツーとなり、奴田原選手組はセカンドベストでポジションを2番手にアップ。一方で新井選手はフィニッシュ手前で痛恨のスピンからマシンのリアを土手にヒット、マフラーが潰れアライメントが狂ってしまい後退を余儀なくされてしまった。

リピートとなるセクション2、SS3「UCHIURA 2」もセカンドベストを刻んだ奴田原選手組、これで待望のラリーリーダーへ躍進。そして初日を締めくくるSS4「SANPOU REVERSE 2」ではGRヤリスで初となる待望のステージベストを叩き出し、R5車両に1.4秒差をつけるトップでLEG1を走りきった。

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前日に続いて青空の下で迎えたLEG2、そのオープニングはSS5「SHIRAKIKOBA 1 (7.82km)」。タイトコーナーが連続しストップ・アンド・ゴーの様相が色濃いステージは排気量やパワーに勝るR5勢やWRXが速く、柳澤選手組がセカンドベスト、新井選手組がサードベストで先行して奴田原選手組は2番手にドロップ。しかし続くSS6「HACHIMAN 1 (6.05km)」では本大会2回目となるステージベストを刻んで、先行するR5車両との差を1.7秒に詰めていく。

終盤のステージでも速さを見せた奴田原選手組は、2位と0.1秒差の3位でフィニッシュ。全日本ラリー選手権でのGRヤリス初表彰台を獲得して今後の更なる上位進出を期待させることとなった。そして準優勝に輝いたのは柳澤選手組、SS9と10では連続ステージベストを叩き出して、こちらも次戦以降での優勝に向けて大きな手応えを掴む結果となった。

JN-3クラスでは、奴田原選手が主宰するラリースクールの卒業生である大竹直生選手が圧巻の走りを披露。藤田めぐみ選手とのコンビで駆るトヨタ・86は、LEG1の4ステージすべてでベストを刻み、初日で大量リードを構築することに成功。LEG2もオープニングステージでベストを刻んで後続を寄せつけることなく、そのまま安定した走りでフィニッシュ。総合でもシングルポジションとなる9番手で、弱冠20歳という若き勇者が自身初の全日本選手権優勝を獲得、シリーズ争いの主役として脚光を浴びる存在になった。

また、JN-6クラスでは昨年のチャンピオンである明治慎太郎選手が、立久井大輝(ひろき)選手とのコンビで参戦。マシンは昨年のチャンピオンカーであるトヨタ・ヴィッツのCVTミッション、こちらは準優勝でしっかり表彰台の一角を飾った。

DRIVER VOICE

柳澤宏至 選手 [ADVAN CUSCO FABIA R5]

【今回の成績 : JN-1クラス 準優勝】
林道を走ったのは前戦の新城が初めてだったこともあり、2日目が雨だったこともあってR5の走らせ方が分からない部分もありました。その後にテストもして臨んだ唐津ですが、最初は感覚的に走りとタイムがリンクしていないところがあって。そこはSSをこなしながら「ここは、こうすればタイムが出るんだ」というのが少しずつ解ってきました。最終セクションでは車とタイヤへの理解が深まったことで上手くいって、2連続ステージベストにつながりました。車の限界も高いしセットアップもいろいろ詰めて行けるので、次は優勝を目指していきます。

奴田原文雄 選手 [ADVAN KTMS GRヤリス]

【今回の成績 : JN-1クラス 3位】
まだマシンが出来たばかりでパーツもそれほど無い状態ですから、まずはしっかり完走したいというのが最大の目標でした。そんな中でステージベストも刻んでGRヤリスの初表彰台を獲得できたことは、GRヤリスという車の素性が良いことを確認出来た収穫となりましたね。「SHIRAKIKOBA」はR5やWRXに対して排気量やパワーの差が出ましたが、デビュー戦で表彰台に立てるマシンを仕立ててくれた山田淳一チーフエンジニアに感謝しています。まだまだこれから熟成を進めていきますので、さらなる上を目指して頑張ります!!

大竹直生 選手 [ADVAN KTMS ヌタハラRS 86]

【今回の成績 : JN-3クラス 優勝】
20歳のうちに初優勝できて良かったです(笑)。LEG1は全てのステージベストを奪ってトップに立ったので、LEG2は“やらかすことなく”帰ってくることを心がけてスタートしました。LEG1で稼いだおよそ20秒というマージンが、実際にどのくらいのものなのか経験不足でわからず、駆け引きは考えずに無理せず攻められるところは攻めていく、というスタイルでした。SS5は上手く行ったのですが、最終ステージは思ったよりもタイムが落として勉強が必要だと痛感しました。ターマック(舗装路)でタイムを出せたのが嬉しいです!!

明治慎太郎 選手 [G-EYES YH cvtLSD ヴィッツ]

【今回の成績 : JN-6クラス 準優勝】
今回はヴィッツでの参戦となりましたが、マシンの状態は良かったのですが優勝には届かなくて悔しいですね。ドライビングも大きくミスするようなこともなく、去年からの“こじらない”走りを実践していますがタイムは伸び悩んでしまいました。今後の参戦は未定の部分なのですが、次の機会には借りを返したいと思います。

TECHNICAL INFORMATION

デビュー戦でGRヤリスの初表彰台獲得となった奴田原選手組だが、武器であるマシンの軽さはタイヤの摩耗にも有効であることが確認された。「ADVAN A08B」を装着、規則で最大6本まで使えるが、フィニッシュ後の摩耗状態も良く安定した速さを足元でしっかり支えたポテンシャルがGRヤリス勢最上位という結果につながった。

また、R5車両は規定によりFIA公認タイヤのみ使用が許されることから、柳澤選手組は「ADVAN A051T」を装着しての参戦。こちらも終盤で2回のステージベストを奪ったことからわかるように、競技のスタートからフィニッシュまでタイヤも安定したパフォーマンスを見せる結果となった。