2020 JRC Round 9 Report

【全日本ラリー選手権 第9戦 / 北海道帯広市】

JN-1は新井大輝選手と敏弘選手の親子ワン・ツー・フィニッシュ、
JN-6では明治選手組が優勝でシリーズチャンピオンを確定!!

JRC Round 9

開催日 2020年9月11日-9月13日
開催場所 北海道帯広市 近郊
天候 Leg1) 曇り
Leg2) 曇り ところにより 雨
路面 Leg1) ドライ
Leg2) ドライ&ウェット
グラベル(未舗装路面)
総走行距離 753.81km
SS合計距離 107.70km (12SS)
得点係数 1.5 (未舗装路100km以上)
参加台数 42台(オープンクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 12台)
2020 全日本ラリー選手権 第9戦

2020年の全日本ラリー選手権は、久万高原とハイランドマスターズの中止が発表されたことにより、4戦のカレンダーで競われることとなった。そんな中、シーズン唯一のグラベル(未舗装路)ラリーとして開催されるのが、北海道十勝地方を舞台とする「RALLY HOKKAIDO」。こちらも新型コロナウイルス感染拡大防止のため、例年よりも大幅にコンパクトな設定で無観客での開催となるが、ポイント係数は1.5と高いので例年以上にシリーズ争いで重要な一戦と位置づけられる。

今年も十勝地方の中心都市である帯広市をホストタウンに、十勝北部が戦いのフィールド。ただし20kmを超えるロングステージは設定されない一方で、「YAYOI (9.27km)」というステージが設けられた。また、初日はこの「YAYOI」と「NUPRIPAKE」を3回リピートするため、回を重ねる毎に路面コンディションがタフになっていくこも予想され、タイヤの耐久性も試されることとなる。

昨年よりも早いタイミングでの開催ということで、ラリーウィークの前半は暑さも感じられる陽気となった十勝地方。しかし競技が行われた週末は“十勝晴れ”は姿を消して、土曜のLEG1は終日曇り、日曜のLEG2は早朝から帯広は雨模様、「NUPRIPAKE」が設定された足寄町は雨の影響はほぼ無かったが肌寒い一日となった。

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競技は「NUPRIPAKE 1 (12.53km)」から幕開け、惜しくもステージベストには届かなかったものの昨年の勝者である新井大輝選手/小坂典嵩選手組がトップと僅か1.7秒差のセカンドベスト、新井敏弘選手/田中直哉選手組がさらに1.8秒差のサードベストで、スバル・WRX STI勢が速さを見せた。一方でシリーズリーダーの奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組(ランサー)は5番手タイムとなる。

続くSS2は注目の「YAYOI 1」、前半はハイスピードだが後半はテクニカル、かつ部分的に古い舗装が割れた箇所もあり、攻略が難しくタイヤにも様々な性能が求められる。今回の勝負の鍵にもなり得るこのステージの1回目、ベストを刻んだのは新井(敏)選手組、2番手が新井(大)選手組、そして奴田原選手組が3番手でヨコハマタイヤ勢がトップ3を独占。「ADVAN A053」の優れたパフォーマンスを遺憾なく見せつけた。このあと「RIKUBETSU (4.63km)」を走って各車は1回目のサービスインを迎えた。

そしてセクション2でも「YAYOI 2」でヨコハマタイヤ勢が速さを見せ、新井(敏)選手組が連続でのステージベストを獲得、新井(大)選手組がセカンドベストでトップのライバルとの差を詰める。また、SS6の「RIKUBETSU 2」では奴田原選手組がセカンドベストを刻み、こちらもWRX STI勢に食らいついていく。

2回目のサービスを終えてLEG1は残り2本、このサービスで足回りを変更した新井(大)選手組が一気にペースアップしてSS7「NUPRIPAKE 3」で本大会待望のステージベストを奪取。そのままこの日最終のSS8「Yayoi 3」も連続ベスト、ここでは新井(敏)選手組がセカンドベストを刻んだ一方で、ライバルはマシントラブルもあって後退。初日を終えてトップは新井(大)選手組、2.1秒差の2番手に新井(敏)選手組という、ヨコハマタイヤで戦う“親子ワン・ツー・フォーメーション”が構築された。

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9月13日(日)、帯広地方は夜明け前から雨が降り始めた。隣接する音更町の「OTOFUKE REVERSE (6.12km)」は雨の影響を受けたが、直線距離で50km以上離れている足寄町の「PAWSE KAMUY (10.40km)」に雨はなく、土埃が巻き上がるコンディションとなった。

そんな中、SS9「OTOFUKE REVERSE 1」は新井(敏)選手組が制して、新井(大)選手組との差を僅か0.6秒へと詰めることに成功。しかし続くSS10「PAWSE KAMUY 1」は新井(大)選手組が0.4秒速く、その差は1.0秒へ。まさに手に汗に繰る親子のデッドヒートとなったが、このあとの2本も新井(大)選手組がタイムで上回りフィニッシュ。

新井(大)選手組は昨年に続いて「RALLY HOKKAIDO」の優勝を飾り、2015年の洞爺以来となる親子ワン・ツー・フィニッシュが実現。5年前は敏弘選手が優勝で大輝選手が準優勝だったが、今回は立場を入れ替えてのワン・ツーというかたちになった。これにより手元の計算では新井大輝選手/小坂典嵩選手が奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手をかわして、シリーズポイントランキングのリーダーに浮上。もっとも、上位陣は僅かな差で最終戦へ臨む流れとなり、唐津でのタイトルをかけた最終決戦はますますヒートアップすることになりそうだ。

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JN-6クラスでは、急遽「RALLY HOKKAIDO」への参戦を決めた明治慎太郎選手/里中謙太選手組(ヴィッツ)が、事前テストもままならない状態だったが力走を披露。グラベルラリーに対してマシンは完全に合わせこめていない難しい状況だったが、そこは経験値も活かしてマシンをコントロールしてフィニッシュまで無事に運び優勝を飾ることに成功。この結果により明治選手は2016年以来2回目、里中選手は初めての全日本チャンピオンを確定させた。

JN-3クラスで目を惹いたのは、SS1で総合7番手相当のステージベストを叩き出した大竹直生選手/藤田めぐみ選手組(86)。奴田原選手が主宰するラリースクールの卒業生である弱冠20歳の大竹選手は、学んだことを活かして期待に応える速さを見せつけた。これに対してディフェンディングチャンピオンの山本悠太選手/山本磨美選手組(86)が、SS2を皮切りにSS4/5/7もベストをマーク、大竹選手を上回るタイムを連発してSS7を終えてクラストップを奪取した。

そしてSS8、LEG1最終ステージで大竹選手組がコースオフ、こちらは速さを見せつつも洗礼を浴びる結果に。対して山本選手組はLEG2も安定した走りでフィニッシュまでマシンを運び優勝、2年連続チャンピオン獲得に向けて大きな一勝を掴み取った。

DRIVER VOICE

新井大輝 選手 [ADVAN KYB AMS WRX]

【今回の成績 : JN-1クラス 優勝】
5年ぶりの親父(敏弘選手)とのワン・ツーですが、今回は僕が上で借りを返してやりました(笑)。LEG1を終えて2.1秒差、僅かですが主導権は握っている状態でLEG2は一騎討ちとなりました。ペース配分はほぼ全開、とにかく疲れましたね。後ろにいるのは新井敏弘選手ですから、もちろん諦めるわけが無いですし。勝負どころは「OTOFUKE REVERSE」と踏んでいたので、1回目で負けて2ループ目の「OTOFUKE REVERSE」はフルリスクな走りで攻めていきました。先頭スタートなので前走車のブレーキラインなども無く、自分の視覚情報などだけが頼りですからね。勝ったことに対して嬉しいのはフィニッシュしてから5分くらいだけで、その後は冷静になって「今日は帯広名物のカレーライスに、カツも載せちゃおうかな」なんて考えていました(笑)

新井敏弘 選手 [富士スバル AMS WRX STI]

【今回の成績 : JN-1クラス 準優勝】
初日を終えて大輝と2.1秒差でしたが、互いに車の仕様も得意不得意も分かっているので、あとは気合いだけの勝負でした。2.1秒差はそこそこに大きくて、「OTOFUKE REVERSE」は1回目は気合いで勝てますが、2回目はそうも行かないんですよね。2回目は危なくてあまりリスクをとらない走りをしましたが、そこは若さと責任感の違いですかね。自分のチームの車とか、まだ残っているシーズンのことや、息子とやり合って親父が車を壊すということは絶対に避けなければならないので、ちょっと抑えすぎたかなというところはありますが、大人の戦いをした結果でもあるんです(苦笑)。全ては最終戦の唐津で決まるので、それまでにセッティングをしっかり煮詰めて万全の準備を整えていきます。2回目の親子ワン・ツーで今回は大輝が上、親父としては嬉しいですがライバルとしては負けたくなかったですね!!

山本悠太 選手 [Sammy☆K-one☆ルブロス YH 86]

【今回の成績 : JN-3クラス 優勝】
SS1で大竹選手がベストを出しましたが、意識しなかったといえば嘘になりますがSS2のタイム差を見て「これなら、自分がひっくり返せるな」と思って自分のラリーを崩すことなく走りました。大竹選手がいなくなってからが、むしろペースを守ることが難しく、LEG2のほうがドキドキしましたね。自分自身は波の無いドライバーだと思っているので、淡々と自分のペースノートでしっかり走ることに意識を集中して戦いました。本州には無いタイプのグラベルステージなのでペースノートの精度もまだまだ高める余地はありますが、補助語の使い方などは上手く行ったと思います。唐津は抑える必要もないので、SS1からしっかり勝てるように準備を整えていきます。

明治慎太郎 選手 [G-EYES YH cvt LSD ヴィッツ]

【今回の成績 : JN-6クラス 優勝 (シリーズチャンピオン確定)】
マージンを初日に構築したことで、LEG2では車をいたわってしっかりフィニッシュまで運ぶことを心がけました。急遽参戦が決まってグラベルラリーへの準備も慌ただしく行いましたが、完走が最大目標だったので掘れたワダチの処理などを慎重にやってコンディションの良いところで稼ぐ、というスタイルでしたね。良いデータも録れましたし、なんだかんだ言ってもグラベルラリーは楽しいですね。2016年以来のチャンピオンですが、これでチャンピオンを決められたので個人的には最終戦の唐津にはJN-5クラスで出場してみたいという思いがあります。実際はチームとの相談ですが、来シーズンのことも考えたらJN-5へのチャレンジというのも意味があると考えています。

TECHNICAL INFORMATION

例年よりコンパクトな設定となった「RALLY HOKKAIDO」だが、これによりスプリント色の濃い展開となった。JN-1クラスでは新井大輝選手組と新井敏弘選手組がワン・ツー・フィニッシュを飾ったが、最後まで続いた息詰まるような接戦において「ADVAN A053」は両クルーの走りをしっかり支え、タフなコンディションとなったリピートステージや、LEG2の雨の影響も受けることなくタイヤもノートラブルで好成績を残すこととなった。

また、タイヤのマネージメントをはじめ、マシン全体の管理もタフな「RALLY HOKKAIDO」では他の大会以上に重要なポイントで、その点ではヨコハマタイヤ勢の上位陣は豊富な経験値もベースに万全のコンディションで天王山の一戦を戦い抜いた。