2020 Japanese Rally Championship Overview

全日本ラリー選手権とは

一般公道を封鎖して設けたSS(スペシャルステージ)で1台ずつタイムアタックを行い、複数のSSを走行した合計タイムで速さを競う競技がラリー(スペシャルステージラリー)。各所に点在するSSまでは一般車両とともに公道を、法規を遵守しながら走って移動する。広いエリアが競技フィールドとなることから、近年では地域活性化イベントとしても全国的に注目を集めている。そんなラリーにおいて、国内の頂点に位置するのが全日本ラリー選手権。北海道から九州までの各地で近年は年間10戦のカレンダーが組まれ、地域性豊かで地元密着型の大会が人気を集めている。

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ラリーが他のモータースポーツに対して大きく異なる点と言えば、1台の競技車両に2人の選手が乗車して戦っているということ。運転を司るドライバーと、一緒に乗車するコ・ドライバー(ナビゲーター)が二人三脚でマシンをフィニッシュまで運んでいる。ラリーは本番前にレッキという下見走行があり、各選手はひとつのSSにつき2回走行出来る。ここで道の線型や状況を確認し、コーナーの向きやきつさ等の情報を記したペースノートを作成する。本番ではコ・ドライバーが読み上げ、ドライバーはその情報を基に視界の先にある道をイメージしながら走っていく。なお、選手権はドライバー部門とナビゲーター部門が設定されており、それぞれ個別の選手が成績に応じて表彰される。

もうひとつの特徴的な点として、シリーズが複数の路面で競われることにある。大会によりSSの路面が舗装路主体のターマック・ラリーと、舗装されていない道が主体のグラベル・ラリーにわかれており、これらをひとつにしてシリーズは構成されている。シリーズポイントはSSの合計距離と、主たる路面によって係数がかけられており、距離は長いほど、路面は舗装されていないと大きなポイントが与えられる。

また、時間管理が厳密に行われるのもラリーならではで、SSスタート前をはじめ各所に設けられたTC(タイムコントロール)への定められた到着時刻に対して、早すぎても遅すぎてもペナルティが科される。各選手はタイムカードという用紙を支給され、各TCでオフィシャルに到着時刻を確認記入してもらいながらフィニッシュを目指す。

全日本選手権の基本的なフォーマットでは、金曜日に受付やレッキ、車検が行われる。競技は土曜日と日曜日の二日間で行われ、SSでタイムを競い合う。近年ではSSが林道などに加えて公園や広場にショートステージとして設けられることも多く、以前にも増して観戦しやすい環境が整えられている。

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■全日本ラリー選手権のクラス区分

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全日本ラリー選手権は、全6クラスで編成されている。2019年からは最もハイパワーな車両が属するクラスをJN-1として、以下JN-6までとされた。2018年まではJN-6を筆頭に車両がコンパクトになるに従って数字が小さくされていたので、逆転したかたちになる。

全日本選手権に参戦出来るラリー車両は、その改造範囲などにより大きく4つに分類される。RJが最も基本的な車両であり、これよりも改造範囲を厳しく制限しているのがRPN車両。電気自動車やハイブリッドカーはAE車両、そしてFIA(国際自動車連盟)によってグループA/R/Nとして公認されたものがR車両となる。これら全てについて、前述の通り保安基準に適合してナンバープレートを有していることが大前提となる。

この車両区分に加えて、エンジン気筒容積や駆動方式に基づき、6つのクラスに分類されている。詳細は、以下の表にまとめた通りだ。近年はハイブリッドカーや、オートマチックやCVTミッションの2ペダル車も参戦が増えており、ハイパワーモデルからコンパクトカーまで多彩な車種が揃っている。


クラス 車両 エンジン気筒容積 駆動方式等 主な車種
JN-1 RJ、R 2,500cc超 4WD スバル・WRX、三菱・ランサーエボリューション
JN-2 RJ、R 2,500cc超 2WD フォルクスワーゲン・ポロ、
レクサス・RC F、トヨタ・ヴィッツGRMN
JN-3 RJ、RPN 1,500cc超~2,500cc以下 後輪駆動 トヨタ・86、スバル・BRZ
JN-4 RJ、RPN 1,500cc超~2,500cc以下 前輪駆動、4WD スズキ・スイフト
JN-5 RJ、RPN 1,500cc以下 区分無し トヨタ・ヴィッツ、マツダ・デミオ、マツダ・RX-8
JN-6 RPN 1,500cc以下 AT/CVTのみ トヨタ・ヴィッツ
トヨタ・アクア、日産・ノートe-POWER
AE 区分無し 区分無し


全日本ラリー選手権とヨコハマタイヤ

1979年に全日本ラリー選手権が発足すると、ADVAN Rally Teamが結成されて現在までヨコハマタイヤは絶え間なく参戦を続けている。各クラスで多くのユーザーが活躍してきているが、中でもRed in BlackのADVANカラーをまとう存在は、日本のラリーシーンを象徴する欠かせない一台として世界的にも広く知られる存在だ。

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舗装路面で戦うターマック・ラリーでは、「ADVAN A08B」と「ADVAN A052」がユーザーの走りを支えている。舗装されていない路面で戦うグラベル・ラリーでは、幅広い路面状態への対応が強さを見せる「ADVAN A053」が主戦力。これに大雨などでは、軟質路面用の「ADVAN A031」を適宜使用する。

競技で使用できるタイヤは本数の上限が大会毎に規則で定められており、2020年は前年までよりも上限本数を少なくされている。なお、競技中にはタイヤを含めた車両のトラブルについて、メカニックなどによる修復作業は原則的にチームの拠点となるサービスパークでのみ行える。スタートした後はドライバーとコ・ドライバーが車両に搭載してある道具を使ってのみ作業をすることが許されており、他者の手や道具を借りることは出来ない。例えばSS走行中にタイヤを壊した場合は乗車している2人でタイヤ交換を行うが、タイムロスを最小限に留める為に予め手順を決めて練習していることがほとんどだ。