2020 JRC Round 3 Report

【全日本ラリー選手権 第3戦 / 佐賀県唐津市】

新井大輝選手/小坂典嵩選手組が初の全日本タイトルを獲得、
2年連続で最高峰クラスのシリーズトップ3をヨコハマタイヤ勢が独占!!

JRC Round 3

開催日 2020年11月27日-11月28日
開催場所 佐賀県唐津市 近郊
天候 Leg1) 晴れ
Leg2) 晴れ
路面 Leg1) ドライ
Leg2) ドライ
ターマック(舗装路面)
総走行距離 308.58km
SS合計距離 72.25km (11SS)
得点係数 1.0 (舗装路50km~100km未満)
参加台数 53台(オープンクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 12台)
2020 全日本ラリー選手権 第3戦

新型コロナウイルスの感染拡大などに伴い、当初予定の半分以下となる4戦で覇を競われた2020年の全日本ラリー選手権。4月に開催を予定していた第3戦の「ツール・ド・九州 2020 in 唐津」は日程を半年以上順延、11月最後の週末に事実上の最終戦として、佐賀県唐津市を舞台に開催された。

開催にあたっては11月27日(土)の早朝からレッキを行い午後にはLEG1の競技を開始、翌27日(土)にLEG2を行うという金曜日と土曜日での2Dayという変則的なアイテナリーを採用。LEG1ではお馴染みのSS(スペシャルステージ)である「SANPOU (10.28km)」を2回走行、LEG2では新たにお隣の伊万里市に設けられた「BIZAN (6.89km)」、昨年から使われている「UCHIURA (4.28km)」、そして昨年使った「HAKOBA」のステージに合流するかたちとなる「HACHIMAN (6.06km)」を各3回走行する。

季節が例年の春から秋に移ったことで、ステージには枯れ葉が多くみられる箇所もあった。競技前日にはオフィシャルによって路面清掃が行われたが、一夜で落ちる枯れ葉もあり走行ラインを外すと足をすくわれかねない。また、LEG1のSS2「SANPOU 2」は1号車スタートが日の入り時刻の1分前、ナイトステージとなることからRPN車両以外の各車は多くがランプポッド(補助灯)を装着しての走行となった。

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前戦のRALLY HOKKAIDOで明治慎太郎選手/里中謙太選手がチャンピオンを確定しているJN-6クラス以外、5つのクラスでチャンピオン争いが持ち越された唐津。中でもトップ4組が5.9点差の中にひしめきあい、うち3組がヨコハマタイヤ勢という最高峰のJN-1クラスは大いに注目を集める中での最終決戦となる。

ランキングトップの証、ゼッケン1をつけて臨む新井大輝選手/小坂典嵩選手組(WRX STI)、これを2.4点差で追う奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組(ランサー)、そしてディフェンディングチャンピオンの新井敏弘選手/田中直哉選手組(WRX STI)、ヨコハマタイヤで戦う日本を代表するクルーたちはオープニングステージから掛け値無しのフルアタックの応酬を繰り広げていく。

注目のオープニング、SS1「SANPOU 1」を制したのは奴田原選手組、新井(大)選手組を3.4秒おさえて堂々のステージベストを獲得。3月の新城で優勝を飾り、ここ唐津は2年連続で優勝と、特にターマック(舗装路)ラリーにおいて強さを見せている奴田原選手組が、マシンの高い完成度も見せつけてラリーリーダーに立った。

リピートとなるSS2「SANPOU 2」はナイトステージ、若いゼッケンの車両についてはまだ真っ暗というコンディションでは無いものの、それはステージをフルアタックする選手にとっては別の話。ナイトステージということで若い新井(大)選手組が有利という下馬評もあったが、終わってみればベテランが強さを見せて奴田原選手組がトップから僅か0.3秒差の3番手であがり、ここでも新井(大)選手組を0.8秒おさえてマージンを4.2秒に拡大した。

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初日で大会最長のSSを消化したものの、LEG2で残るSSは9本、その合計距離は51.69km。チャンピオン争いは最終順位に応じて与えられるポイントに加え、LEG2の順位に応じて各クラス上位3台に配されるポイントも関係してくることから、奴田原選手組と新井(大)選手組のどちらにとっても4.2秒差を大きく意識すること無く2日目の競技が28日(土)の7時30分にスタートした。

まぶしい朝日が戦いを見守るが、朝の気温は一桁で路面温度もそれほど上がってこない中でSS3「BIZAN 1」がスタート。新設のSSだが土曜日はレッキから競技開始までがタイトなスケジュールだったがゆえ、ペースノートを細かく精査する時間的余裕が少なく、レッキでどこまで完成度の高いペースノートを作れるかも重要なポイントとなった。

そんな中、SS3も奴田原選手組がステージベストを奪い、新井(大)選手組との差を0.4秒拡大。じわじわとマージンを広げていくが、大きく差がつくまでは至らず。そして続くSS4「UCHIURA 1」では新井(大)選手組が大会初のステージベストを刻み、セカンドベストとなった奴田原選手組との差を0.6秒詰めた。さらにSS5「HACHIMAN 1」も新井(大)選手組が制して、トップの奴田原選手組との差は僅か2.0秒に。既に戦況はこの2クルーに優勝争いが絞られつつあり、事実上「勝った方がチャンピオン」という熾烈な流れで2回目のリピートとなるセクションへ臨んでいく。

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SS6「HACHIMAN 2」、さきほどの1走目では奴田原選手組がベストを刻んだステージ。LEG1の結果により先頭スタートは奴田原選手組、再び新井(大)選手組に対するマージンを拡大するべくアタックに臨む。しかしスタートから1分半ほどの前半でオーバースピードから痛恨のスピン、道幅が狭い箇所だったためリカバリーに時間を要して万事休す。対する新井(大)選手組がステージベストを刻んでトップに浮上、奴田原選手組は13.0秒のビハインドを背負って3番手にドロップした。

奴田原選手組は逆転に向けて仕切り直し、SS8/10/11とベストを刻んだが新井(大)選手組が安定した走りでフィニッシュまでマシンを運んでRALLY HOKKAIDOに続いて今シーズン2勝目を獲得。これによりシリーズチャンピオンを確定、全日本ラリー選手権の最高峰クラスでは史上初の“平成生まれコンビ”がタイトルを獲得した。奴田原選手組は2位でフィニッシュ、シリーズランキング2位を確定。そして新井(敏)選手組は4位でフィニッシュしてランキング3位となり、昨年に続いてヨコハマタイヤ勢が最高峰のJN-1クラスでシリーズランキングのトップ3を独占した。

JN-4クラスでは初日を5番手で終えていた内藤学武選手/小藤桂一選手組(スイフト)が、怒濤の巻き返しで準優勝を獲得。こちらはナビゲーター(コ・ドライバー)部門で小藤選手がシリーズチャンピオンを確定、来シーズンは内藤選手と二人揃ってのタイトル獲得を誓って笑顔を見せてくれた。

DRIVER VOICE

新井大輝 選手 [ADVAN KYB AMS WRX]

【今回の成績 : JN-1クラス 優勝 (シリーズチャンピオン確定)】
前日に戦いのシミュレーションをしていく中で、どこでプレッシャーをかけていくかを考えました。自分が追われる立場だったとしたら「これは嫌だな」というのはどういうパターンなのか、RALLY HOKKAIDOの時にチームメイト(新井敏弘選手)からやられているので、そのときの経験もフィードバックして戦略を立てました。自分はLEG2の2番手スタートになったので、フィニッシュして奴田原選手組のタイムをすぐに見ることが出来ますが、相手は自分のタイムをすぐ確認出来ません。その点はメンタル的に有利に働く部分もあったかと思います。LEG2は1ループ目で5秒以上離されたら逃げきられると思ったので、1ループ目でしっかり追っていくことを考えました。シビアな戦いで、結果オーライですがたまたま自分が先にミスしなかっただけとも言えます。これまでシリーズランキングとしては結果を残せていなかったので、今回の全日本タイトルをステップにして更に上を目指していきます。

TOPICS

地元のサポートも大会の成功を支える「ツール・ド・九州 in 唐津」

開催時期を半年以上順延しての開催となった「ツール・ド・九州 2020 in 唐津」だが、当地での全日本ラリー選手権開催も地元に定着し、今回も大いに歓迎を受ける中での開催となった。大会を主催したグラベル・モータースポーツクラブの七田定明会長(大会組織委員長)に、地元からのサポートなどについてお聞きした。

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「4月の予定を大きく変更しての開催となりましたが、新型コロナウイルスの感染防止に最大限の配慮をして臨みました。唐津市でも注目の高いイベントとなりつつあり、特に今年は大きなイベントが相次いで中止となっているので、市民のみなさんの期待も大きかったと思います。

唐津市には唐津ラリーサポート実行委員会があり、市議会の議員さんや市役所のみなさん、地元有志の方々が協力してくれています。今回はその中のメンバーに花火業者さんがいらっしゃったこともあって、主催者としてコロナの早期終息も祈って花火の打ち上げも行いました。

市民のみなさんからは『観戦できないんですか』という問い合わせも多くいただいたので、無観客試合としたのは主催者としても苦渋の決断でした。しかし今年は伊万里市にも初めてのステージを設けられましたし、来年以降は多くのみなさんに生でラリーの迫力を楽しんでいただけるよう準備を進めていきます」

TECHNICAL INFORMATION

11月末の開催ということで、終始ドライコンディションではあったが路面温度も低めに推移した「ツール・ド・九州 2020 in 唐津」。そんな中、最高峰のJN-1クラスでチャンピオンを競ったヨコハマタイヤ勢は「ADVAN A08B」の特徴である対応温度領域の広さや高いグリップ力を武器にライバルを圧倒する走りを見せてくれた。

世界のラリーも戦ってきた面々が繰り広げた戦い、足元をヨコハマタイヤが支える新井(大)選手組が待望の全日本初チャンピオンを獲得。シリーズランキング2位に奴田原選手組、3位は新井(敏)選手組という結果になり、2年連続で最高峰クラスのシリーズランキングトップ3をヨコハマタイヤ勢が独占したことで、ターマック(舗装路)/グラベル(未舗装路)の両方を通じたタイヤの優れたパフォーマンスが実証されたシーズンとなった。