2020 JRC Round 2 Report

【全日本ラリー選手権 第2戦 / 愛知県新城市】

最高峰のJN-1はヨコハマタイヤ勢が全ステージベストを奪取、
奴田原文雄選手組を筆頭にトップ3を独占する強さを見せた!!

JRC Round 2

開催日 2020年3月13日-15日
開催場所 愛知県新城市 近郊
天候 Leg1) 雨 のち 曇り
Leg2) 晴れ
路面 Leg1) ウェット
Leg2) ハーフウェット~ドライ
ターマック(舗装路面)
総走行距離
SS合計距離 81.27km (9SS)
得点係数 1.0 (舗装路50km~100km)
参加台数 55台(オープンクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 19台)
2020 全日本ラリー選手権 第2戦

全10戦のカレンダーが組まれた2020年の全日本ラリー選手権は、2月に予定されていた第1戦が昨年の台風災害による被害の影響で中止されて9戦で競われることとなった。しかし新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大によって、第2戦の新城ラリーも開催が危ぶまれたが、感染拡大防止のために無観客試合として競技のみ行われることとなった。

昨年までと同様に横浜ゴムが工場を構える愛知県新城市が舞台、新城総合公園が拠点となる。例年であれば万単位の市民やラリーファンで賑わいを見せるが、今年は無観客試合ということでいつもとは異なる静寂の中にマシンのエギゾーストノートが響くこととなった。

大会は無観客試合となったことで公園内のステージが設けられず、2日間で10本のSS(スペシャルステージ)で競われた。LEG1では新設された「舟着 (5.97km)」にはじまり、テクニカルな「ほうらいせん一念不動 (7.47km)」とハイスピードな「鬼久保 (6.96km)」を、昼のサービスをはさんで2回ずつ走行。LEG2は新城の名物ステージで大会最長となる「雁峰西 (16.26km)」と、前日に続いて「鬼久保」を、やはり2回ずつ走行する。このうち新設の「舟着」は距離的にはそれほど長くないがアップダウンが大きく、特に後半の下りは勾配率も大きめ。線型はテクニカルで、「傾斜の大きな雁峰というイメージ」と評する選手の声も聞かれた。

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3月13日(金)のレッキは好天でドライコンディションだったが、LEG1が行われる14日(土)は明け方から雨の天気予報が出されていた。果たして予報の通り、14日は6時ごろから雨が降り始め、1号車の新井敏弘選手/田中直哉選手組(WRX STI)が総合公園からスタートするころには各ステージの路面は黒く光るウェットコンディションとなって選手たちを待ち構えていた。

注目のオープニングステージとなる「舟着 1」、この道は他のステージと比べて舗装が新しく、ところによっては油分が残っている状態。さらにウェットということで非常にスリパリーだったが、そんな中で速さを見せたのは「ADVAN A052」を装着するヨコハマタイヤ勢。ステージベストを奪ったのは奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組(ランサー)で、セカンドベストの新井(敏)選手組を6.2秒上回る速さを見せた。そしてサードベストは柳澤宏至選手/保井隆宏選手組(WRX STI)、4番手が新井大輝選手/小坂典嵩選手組となり、ヨコハマタイヤ勢がベスト4を独占。このあとも快走は続き、奴田原選手組はSS2「ほうらいせん一念不動 1」とSS3「鬼久保 1」もステージベストを奪ってセクション1を完全制覇。

サービスをはさんでのセクション2。SS1のリピートとなるSS4「舟着 2」はSS1で発生したアクシデントによりキャンセルとなったため、SS5「ほうらいせん一念不動 2」とSS6「鬼久保 2」の2本を走行する。この2本ではSS5を新井(敏)選手組、SS6を新井(大)選手組がステージベストを刻んで反撃の狼煙をあげた。特にSS6はステージの大半を濃い霧が覆い視界の効かないコンディションとなったが、“平成生まれの若手コンビ”が2番手の新井(敏)選手組を3秒上回るタイムを刻んだ。

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一夜明けた15日(日)は朝から青空が広がったが、「雁峰西」はステージの大半が日陰となっているのでドライに転じている可能性は低いと見込まれた。一方で「鬼久保」は開けたロケーションのため、ドライに転じる可能性が高い。そこで奴田原選手組と新井(大)選手組は「ADVAN A052」を全輪に装着、「ADVAN A08B」をスペアで2本搭載し、「雁峰西」を走り終えたら前輪を「ADVAN A08B」に交換する作戦を実践した。一方の新井(敏)選手組は、前日のセクション2で鋭利な石が左リアタイヤに刺さり交換を余儀なくされるアンラッキーがあった。今シーズンは使用出来るタイヤ本数が少なくされており、本大会での上限は6本。このため初日に5本を使った新井(敏)選手組は「ADVAN A08B」を1本スペアとして搭載してスタートした。

大会最長の勝負どころと目された「雁峰西」の1回目、ここでも速さを見せたのは奴田原選手組だった。タイムは16分03秒9でステージベスト、ここからLEG2全てのステージでベストを奪って後続を寄せつけず、2014年以来となる新城ラリーの優勝を飾ることに成功した。

2位は新井(敏)選手組、そして3位はLEG2でメカニカルトラブルを抱えながらも力走を重ねた新井(大)選手組となり、ヨコハマタイヤ勢が最高峰のJN-1クラスでトップ3を独占。ウェットとドライ、さらに気温と路面温度の低い早朝から日が高くなってともに上昇した日中まで、コンディションやシチュエーションを選ばないヨコハマタイヤの高いパフォーマンスを成績でも実証した。

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JN-3クラスはLEG1を9.2秒差のトップであがった竹内源樹選手/木村悟士選手組(BRZ)に対して、LEG2でライバルが猛追。SS9「雁峰西 2」で逆転を喫して竹内選手組は2位へドロップするも、1.5秒のビハインドで迎えた最終SS「鬼久保 4」を制して逆転に成功。「ADVAN A08B SPEG G」をリアに装着するなどトライを見せた竹内選手は、6年ぶりの全日本選手権優勝を手中におさめた。また、山口清司選手/大倉瞳選手組(86)もタフなコンディションの中、フィニッシュまでしっかりマシンを運んで3位を獲得した。

JN-4クラスでは、内藤学武選手/小藤桂一選手組(スイフト)が激しいデッドヒートを展開。LEG1を9.3秒差のトップであがるも、LEG2オープニングの「雁峰西 2」でライバルの猛追を受けて7.4秒のビハインドを背負うかたちに。しかし最終セクションで驚きの速さを見せた内藤選手組、SS9「雁峰西 2」では1回目の借りを返す速さでJN-1勢に続く総合6番手相当のタイムをマーク。そして最終ステージも連続ベストを奪取、終わってみれば15.6秒の差をつけてクラス優勝、総合でも5番手相当という好成績をおさめた。

JN-6クラスで速さを見せたのは明治慎太郎選手/里中謙太選手組(ヴィッツ)。CVTトランスミッションの2ペダル車を駆っての参戦だが、ライバル勢に対して経験値の差を見せつける貫祿のラリー運びを実践。2本を除くステージでベストタイムを刻み、2位に3分あまりの大差をつけて圧勝を飾った。

DRIVER VOICE

奴田原文雄 選手 [ADVAN-PIAA ランサー]

【今回の成績 : JN-1クラス 優勝】
横浜ゴムにとってはホームタウンとも言える新城市でのラリー、勝てて良かったです。ステージそのものや天候の変化もさることながら、今回は使えるタイヤの本数が最大6本と定められていたので、とても難しいラリーでしたね。山田淳一チーフメカニックの努力が形になって、ランサーエボリューションⅩの最終完成形とも言える状態にマシンが仕上がっており、ドライもウェットも非常にバランスが良いことは大きな勝因ですね。同じ一勝でも、やはりシーズン初戦を勝つというのは気持ちよいですね。次の唐津は2連勝している大会なので、今年も勝ちたいですね。

新井敏弘 選手 [富士スバル AMS WRX STI]

【今回の成績 : JN-1クラス 準優勝】
二等賞……(泣)。全体的に奴田原選手組に負けてしまっているので、ターマック(舗装路)についてはこのまま同じようにやっていても厳しい状況が続くと思います。対策としてはマシンの進化が求められるのですが、ちょっとやそっとではあんな速さにはならないような。大がかりな最適化が必要ですが、限られた時間の中で次に向けて出来ることは全てやっていかなければと痛感しています。

竹内源樹 選手 [YH CUSCO 大阪冷研 BRZ]

【今回の成績 : JN-3クラス 優勝】
LEG2の「雁峰西」では「ADVAN A08B SPEC G」をリアに装着しましたが、路面に泥が乗っているような場所を除けば好い感じで走ることが出来て摩耗の面も問題はありませんでした。使用本数の上限が6本という規則なので、前後の組み合わせも発生すると思いました。組み合わせのパターンを色々と試したのですが、その中で気温などの要素によっては使えるな、という自信を持っていました。僕のラリー参戦は経費の面などで“自転車操業”なのですが、今回勝って自転車を漕ぎ続けらます(笑)。次の唐津も行きますので、帰ったらすぐにタイヤを注文して本番に備えていきます。

内藤学武 選手 [BRIG Moty’s YH G4 スイフト]

【今回の成績 : JN-4クラス 優勝】
初日はトップで終えられましたが、ライバルがこのまま黙っている筈も無く「雁峰西」は2回とも勝つのは厳しいかなと思っていました。ただ、1回目で予想以上の大差をつけられて「これは、マズイ」となって。一方で「鬼久保」は予想以上の差をつけて勝てたので、2回目の「雁峰西」をもっと頑張ろうと奮起しました。LEG2のスタート時点ではLEG1を走った「ADVAN A052」4本を前後ローテーションしていたので、昼のサービスでフロントに新品2本を投入して勝負に行きました。2回目の「雁峰西」は1回目より道は乾きましたが、泥の乗っている区間が増えていて。リスクもある中、道の上にしっかり留まり続けられました。あそこで勝てたことで、「テクニカルなウェットでも内藤は速い」という印象を与えられたと思います。総合で5番手相当という結果には自分でもビックリですが、今年はシリーズタイトル獲得が目標なので幸先よいスタートを切れました。新設された「舟着」のSS1でベストを獲れたことで、自分が走ったことの無い道への適用力もついてきたのかな、と自信につながりました。

明治慎太郎 選手 [G-EYES ADVAN cvt LSD ヴィッツ]

【今回の成績 : JN-6クラス 優勝】
ステアリングをいっぱい切ると失速してしまうので、スムーズなドライビングを心がけていました。2ペダルのラリーマシンは0カーなどを運転したことはありますが、競技に参戦するのは初めてです。走らせ方が独特なので難しい部分もありますが、事前に何回か乗ってコツを掴んできました。自分の走らせ方で速いのかがわからなかったのでSS1を走り終えて他との比較で見えてくると思ったら、アクシデントの発生でスルーになってしまって。SS2で仕切り直しと思ったら、こんどは終盤に横転している車がいて。自分のポジションがわからないまま競技が進んでいったので、序盤は不安だらけでしたね。ですが最終的には勝つことが出来て一安心、2ペダルでのラリーがこれからはメインになってくるような予感がしています。

TECHNICAL INFORMATION

全日本ラリー選手権は今シーズン、使用出来るタイヤの上限本数が昨年より少なく制限されることとなった。新城ラリーは特別規則書で6本と定められており、タイヤには幅広い路面コンディションで優れた性能がより求められることとなった。

そんな中、LEG1のウェットからLEG2のハーフウェット~ドライまで「ADVAN A052」が持ち前のパフォーマンスを遺憾なく発揮してトップラリーストの走りを支えた。4WDターボ車両のJN-1クラスでは全てのステージベストを独占したほか、JN-3クラスではFR(後輪駆動)のスバル・BRZ、JN-4とJN-6の両クラスではFF(前輪駆動)のスイフトとヴィッツが優勝を飾り、車種や駆動方式を問わない強さを見せた。