2020 SUPER GT Round 8 Report

【SUPER GT 第8戦 / 富士】

GT300で「リアライズ日産自動車大学校GT-R」が準優勝、
藤波清斗選手とJ.P.デ・オリベイラ選手がシリーズチャンピオンを獲得!!

SUPER GT Round 8

開催日 2020年11月28日-29日
開催場所 富士スピードウェイ
(静岡県)
天候 曇り
路面 ドライ
決勝周回数 65周
(1周=4,563m)
※66周から周回数を1周減算 (SpR.32-17)
参加台数 45台
(ヨコハマタイヤ装着車 23台)
SUPER GT 第8戦

ついに迎えたクライマックス。例年とはあらゆることが異なる2020年のSUPER GTは、最終戦が全車ノーハンデということだけ共通するが、舞台を富士スピードウェイに、日程を11 月下旬に、そして250kmの争いを通常どおり300kmに、それぞれ改めての開催となった。

さすがに朝晩こそ冷えるも、日中はまだまだ本格的な冬を感じさせず。穏やかな陽気の中、11月28日(土)に公式予選が行われ、GT300のQ1ではA組、B組からそれぞれ5台ずつ、ヨコハマタイヤユーザー10台が突破に成功。

A組ではここまで2勝を挙げて、ランキングのトップにつける「リアライズ日産自動車大学校GT-R」の藤波清斗選手が、B組では「シンティアム・アップル・ロータス」の柳田真孝選手がともに4番手で最上位となっていた。しかし、その一方で、ヨコハマタイヤユーザーでもう1台のチャンピオン候補だった、「グッドスマイル初音ミクAMG」の片岡龍也選手は、A組12番手に終わって、王座奪還の権利は失われた。

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続くQ2でも2台が好調。「リアライズ日産自動車大学校GT-R」のJ.P.デ・オリベイラ選手が7番手、「シンティアム・アップル・ロータス」の加藤寛規選手が8番手。「この位置でも十分。不安がないぐらい準備してきましたから、むしろ自信があります」と藤波選手は、王座獲得への意欲を口にしていた。

一方、GT500では「WedsSport ADVAN GR Supra」は国本雄資選手が、「Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT」は笹原右京選手が、そして「リアライズコーポレーションADVAN GT-R」は高星明誠選手がQ1に挑むも、それぞれ10番手、14番手、15番手でQ2進出ならず。

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日曜日の富士スピードウェイは上空に雲が浮かぶようになって、日差しが遮られると気温が一気に下がって、ようやく冬らしさが感じられた。スタート時の気温は9度と、ついに10度を切るまでとなり、路面温度は予選とほぼ変わらない17度、もう少し高くあってくれ、と思った向きも少なくなかったはず。

そんな中、大いに気を吐いていたのが、GT300の「リアライズ日産自動車大学校GT-R」だった。藤波選手がスタートで1台、2周目にも1台を抜いて、早々と5番手に浮上。ランキング2位で最もマークすべきライバルを背後において、周回を重ねていく。その相手がミニマムの19周目にドライバー交代を行い、しかもタイヤ無交換としたことで結果的に再逆転を許すも、24周目のオリベイラ選手への交代時には、しっかりタイヤを4本とも交換。4番手につけて、あとは機が熟すのを待つことに。

現実的には、このままのポジションではチャンピオン獲得とはならず、少なくともあとひとつポジションを上げなくてはならなかったが、オリベイラ選手に少しも焦りの色は見えず。約20秒にも及んだ3番手の車両との差を徐々に詰めていく。ちなみに前を行く3台は、いずれもタイヤ無交換とあって、追いついてからは、もう抗う術すら与えなかった。52周目にはついに3番手に上がり、その勢いで55周目には2番手に浮上。

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トップこそ逃したものの、2位でゴールを果たし、「リアライズ日産自動車大学校GT-R」の藤波選手とオリベイラ選手がチャンピオンを獲得!! ヨコハマタイヤは、2017年以来となるGT300の王座獲得に貢献した。

6位は「TANAX ITOCHU ENEX with IMPUL GT-R」の星野一樹選手と石川京侍選手が獲得。予選12番手から着実に順位を上げて、今季5回目の入賞を果たすこととなった。また、「グッドスマイル初音ミクAMG」の片岡選手と谷口信輝選手は、序盤に食らった接触の影響が最後まで響いて入賞ならず。ランキングでは8位に留まった。

GT500は3台とも最後まで精彩を欠く内容に。いずれも2ピットを強いられては、勝負権もなく……。それでも「WedsSport ADVAN GR Supra」の国本選手と宮田莉朋選手が「意地の」10位に入って、1ポイントを獲得。「Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT」の武藤選手と笹原右京選手は12位、「リアライズコーポレーションADVAN GT-R」の高星選手とヤン・マーデンボロー選手は13位に終わっている。

DRIVER VOICE

国本雄資 選手 [WedsSport ADVAN GR Supra]

【今回の成績 : GT500クラス 10位】
昨日の予選では惜しくもQ2に進むことができなかったんですが、決勝では少しでも前に行けるようにと思い、スタートしました。序盤からあまりいい展開ではなく、タイヤにグレーニングの症状が出てきて、なかなかペースを上げられず順位を落としてしまいました。宮田選手の後半スティントも同じような症状で、エキストラでピットも多くなったし、ペースも良くなかったです。寒い時期に富士でスーパーGTやった経験があまりなくて、それを見越していろいろやってきたつもりではあったんですが、すべていい方向には向かずに非常に苦しいレースになりました。

武藤英紀 選手 [Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT]

【今回の成績 : GT500クラス 12位】
週末通して、想像以上に路面温度が低かったので、タイヤをうまく機能させることができませんでした。特に決勝に関しては、まともに走れる状態ではなかったですね。ピット回数も増えちゃったし、最後に来て今年一番悔しくて、つらいレースになっちゃいました。

高星明誠 選手 [リアライズコーポレーションADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 13位】
予選からあんまりパフォーマンスを発揮できず、決勝を追い上げたいなと思っていたんですけど、レースペースを上げることができず、タイヤがこの路面温度に合わなくて苦労してしまいました。ポイントをもうちょっとで獲れたんですけど、獲れなかったのがすごく悔しいです。

藤波清斗 選手 [リアライズ日産自動車大学校GT-R]

【今回の成績 : GT300クラス 準優勝 (シリーズチャンピオン確定)】
本当にシリーズチャンピオンなんて夢みたいで、スーパーGTフル参戦2年目でチャンピオンが獲れるなんて! つい数年前の辛い状況を思えば、信じられません。たくさんの方に支えられてやってきたので、少しは恩返しができたかなと、今はホッとしています。今年、序盤は今ひとつだったんですけど、中盤からチームが詰めてきてくれて、ヨコハマタイヤさんも力入れてくれたので、今回のレースにランキングトップで挑めるまでとなって。予選は決して良くなかったですが、レースのペースには自信があったので、ポジションは上げられるだろうな、と。でも2位まで上げられるとは思ってもみませんでした。JP選手の追い上げはすごかったし、今年組ませてもらって、本当に勉強になりました。

J.P.デ・オリベイラ 選手 [リアライズ日産自動車大学校GT-R]

【今回の成績 : GT300クラス 準優勝 (シリーズチャンピオン確定)】
ありがとう、みんなありがとう! このレースウィークはひとりひとりがベストを尽くそうと、とにかく集中していきました。とにかく、みんなでベストを尽くしさえすれば、きっと形になるだろうと。近頃、成績も良かったし、ずっとセットの方向性も良かったので、自信はあったけれど、レースは何が起こるか分からないからね……。低い温度や新しい環境など、未知の要素が多かったけど、いいチャレンジになりました。僕がコースに戻った時、前とは20秒も差があったけど、諦めるつもりはまったくなかった。一台一台かわしていって、このポジションでゴールできてチャンピオンになれたことには、本当にみんなに感謝したいです

星野一樹 選手 [TANAX ITOCU ENEX with IMPUL GT-R]

【今回の成績 : GT300クラス 6位】
途中まで僕も良かったんですけど、ピックアップが始まっちゃって、それが厳しくなったので早めに入ることにしました。後半は京侍のロングスティントになりましたけど、積極策が良かったようで、最後までいいペースで走ってくれました。同じタイヤなんですけどね。バランスは良かったんですけど、僕の時だけなぜかピックアップが激しくて。今年は表彰台に上がれなかったので、つらいシーズンではありました。

ENGINEER VOICE

白石貴之 [横浜ゴム MST開発部 技術開発1グループリーダー]

最終戦はコンディション的にも厳しかったんですが、「リアライズ日産自動車大学校GT-R」には構造もゴムも、前から決められていたものがあったので、この温度下でもマッチングしていたのは非常に良かったですし、この結果が来年以降にもつなげられると思います。

シーズンを通じたGT300の印象としては、今年は特に短いシーズンの中で、序盤は耐久性ですとか苦労したところもありましたが、そこは対策ができて終盤は戦闘力も出せたと思っていまして、GT300に関しては短い期間の中でも充実していましたし、結果も出すことができました。

GT500に関して今回、懸念していた低温時の作動ですとか、ロングランでのレベルとか、苦戦しているところがあって、最終戦に向けて違うゴム、構造のものを持ってきたんですが、結果には結びつけられなくて、非常に残念に思っています。これに関しては引き続きの課題です。

特にGT500は例年テストに頼っている部分があって、今年に関してはコロナの影響があって、後半はまったくできませんでしたから、リカバリーのチャンスがなくて。そういう意味ではレベルの差を、最後まで埋めきれなかったのは残念なところだと思っています。もう来シーズンに向けての取り組みは始まっていますので、特にシーズンオフの期間をどうやって有効に使っていくか。今のうちの課題を洗い出して整理して、対策をするためにどうしたらいいか、考えていきたいと思っています。