2020 SUPER GT Overview

SUPER GTとは

日本のサーキットレースにおいて、一般市販車をベースに生み出された車両で競い合う「ツーリングカー・レース」の頂点に位置しているのがSUPER GT。ツーリングカーの中でも改造範囲の広い「GT(グランドツーリングカー)」によって競われ、国内主要サーキットに加えて海外でも公式戦を開催。FIA(国際自動車連盟)が、インターナショナルシリーズとして公認している。

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SUPER GTの特徴としてまず挙げられるのが、高い人気を誇っていることだろう。主催者発表で2019年は1大会平均で4万8千人あまりの動員を記録しており、他のプロスポーツよりも多くのファンが会場へ足を運んでいる。さらに地上波テレビや衛星放送で専門番組が放送されており、露出が多いことも高い人気を裏付けている。

SUPER GTとなって、海外でのレース開催も定着。2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けてしまったが6月4日に改訂版スケジュールを発表、年内に8戦が開催される予定となっている。

レースはGT500とGT300、ふたつのクラスが同時に走行して競い合う。GT500は自動車メーカーが主体のトッププロ・ドライバー、GT300はプロドライバーのみならずアマチュアのジェントルマンドライバーも活躍。マシンも内外のバラエティ豊かな車種が参戦しており、こうした要素が高い人気の理由となっている。また、成績に応じたウェイトハンデ制も採用されており、勝者を予想することが難しいのも面白さを増しているポイントだ。

決勝はおおむね300kmの距離を、2人のドライバーで走らせる。さらに距離の長い決勝を設定する大会は3人までドライバーの登録が認められるが、いずれにしても決勝中にはドライバー交代を伴うピット作業が必須。ここでは燃料補給やタイヤ交換なども行われ、0.1秒でも早くマシンをコースへ送り出すべくメカニックも熱い戦いを繰り広げている。

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CLASSIFICATION =クラス区分=

■GT500 Class

トヨタ、日産、ホンダと国内3メーカーがしのぎを削りあう、SUPER GTの上位クラス。2020年からはDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)との統一規格である「クラス1」に合致させることとなり、各社は2019年の秋にニューモデルをお披露目している。トヨタはGRスープラを新たに投入、日産とホンダはGT-RとNSXを継続使用するが、ともに統一規格仕様とした。中でもNSXは、それまで運転席後部にエンジンを置く「ミッドシップ・レイアウト」を採用してきたが、2020年モデルは規定にあわせてフロント・レイアウトへと変更している。

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クラス名称はおよそ500馬力を発生していることに由来するが、現在ではそれを大きく上回るパワーを発揮しているとされる。エンジンは水冷直列4気筒DOHCターボで、排気量は2,000ccのレース専用に製作されたものを搭載する。これは1台につきシーズンを通じて2基までの使用が認められ、トラブルなどで交換を余儀なくされるとペナルティが基本的に科されることとなる。近年はシーズン中盤のどのタイミングでエンジンを新しいものに入れ替えるのかも、戦略面の見どころとされている。

車両のサイズについては細部まで厳密に規則で定められているが、前後ホイールの中心間距離であるホイールベースについては2,750mmプラスマイナス10mmとされており、実は3車種でほぼ同じ数値となっている。しかし各車それぞれのルックスは大きく異なっており、市販されている一般車のデザインを巧みに採り入れてレース専用車両として生み出されている。

このGT500クラス車両を外観で見分けるポイントが、ヘッドライトとゼッケンだ。GT500ではヘッドライトのレンズが透明なので、ライトオンでは白い光を放っている。一方でドアなどに表示されているゼッケンのベースも白とされているので、どの角度から見てもGT500であることが一目でわかるようになっている。

■GT300 Class

参戦車種の豊富さが、人気の理由であり見どころとなっているGT300クラス。国内規格のJAF-GTと、世界規格のFIA GT3に大別され、国内外の多彩な顔ぶれが揃って覇を競い合っている。

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JAF-GT車両はさらに、JAF-GT300とMC(マザーシャシー)に分類される。前者は市販車に大幅な改造を施した車両で、市販車でもお馴染みのハイブリッドシステムを搭載した車両も参戦。後者はシリーズを統括するGTAが販売する基本パーツを用いて仕立てられ、スポーツモデルに加えて昨年までは4ドアセダンのマシンも存在感を見せていた。

FIA GT3は自動車メーカーが販売する、国際規格に準拠したレース専用車両。各メーカーを代表するスポーツモデルが顔を揃える。これらGT300クラスについては2020年からウェイトハンデの計算方法が改められ、獲得ポイントに対するウェイト量が多くなった。また、GT300クラスのみにBoPという性能調整が適用され、車両の最低重量、エアリストリクター径、最大過給圧、最低地上高が大会毎に定められる。

こうした調整などにより、GT500よりも勝者を予想するのが難しいと言えるGT300。各チームがマシンの持つ個性を活かして実践する、戦略のぶつかりあいも大いに見応えのあるところ。GT300の車両はヘッドライトのレンズとゼッケンのベースがともに黄色とされており、GT500の車両とは一目で判別出来るようにされている。



SUPER GTとヨコハマタイヤ

SUPER GTは、世界的にも数少ないタイヤコンペティションで競われるトップカテゴリーという特徴がある。ヨコハマタイヤは前身の全日本GT選手権時代から今日まで参戦を続けており、SUPER GTが発足した初戦では織戸学選手/ドミニク・シュワガー選手組が優勝を飾って歴史の1ページを刻んでいる。

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各大会には決勝距離が300kmまでの場合、1台につき持ち込めるドライタイヤが7セット(28本)、ウェットタイヤが9セット(36本)までと定められており、300kmを超える場合は大会毎に別途定められる。このうちドライタイヤは6セット(24本)にマーキングが施され、公式練習から決勝までではこのマーキングタイヤのみ使用が許される。

さらに予選ではQ1、そこから勝ち残った車両が進出するQ2ともに、予選用の識別マーキングが1セット(4本)に施される。予選中はこのマーキングタイヤのみ使用が認められ、さらに決勝のスタートで装着していることが義務づけられる。

GT500クラスでは3台、GT300ではおよそ3分の2がヨコハマタイヤを装着して参戦する。これまでにGT500では決勝を通じて同じタイヤで走りきるタイヤ無交換作戦を実践して優勝するなど、総合的なパフォーマンスを活かした戦術も話題を集めたことは記憶に新しいところだ。