2020 SUPER GT Round 5 Report

【SUPER GT 第5戦 / 富士】

後半戦に突入した2020年のSUPER GT、
KONDO RacingがGT300での初優勝を飾った!!

SUPER GT Round 5

開催日 2020年10月3日-4日
開催場所 富士スピードウェイ
(静岡県)
天候 曇り
路面 ドライ
決勝周回数 66周
(1周=4,563m)
参加台数 44台
(ヨコハマタイヤ装着車 22台)
SUPER GT 第5戦

激戦続くSUPER GTは早くも後半戦に突入、今季3回目の舞台となる静岡県の富士スピードウェイでシリーズ第5戦が行われた。シリーズ上位陣はハンデウェイトを最大値、もしくは迫る状態としているため、もはや苦戦は必至。今回はハンデに苦しんでいないチームにとっては、大逆襲のチャンスとなる一戦であった。

GT300の公式予選Q1は2組に分けられて行われ、開始時点の気温は21度、路面温度は30度。上空には雲がかかって、やや低めの状態となっていた。ヨコハマタイヤユーザーはA組、B組ともに上位8台の中に4台ずつが残り、合わせて8台がQ1突破に成功した。特に藤波清斗選手がA組2番手だった「リアライズ日産自動車大学校GT-R」は、Q2でもJ.P.デ・オリベイラ選手が好調。ヨコハマタイヤユーザー最上位となる、6番手を獲得する。

GT500では、ヨコハマタイヤユーザー3台が揃ってQ2進出を果たしている。一時は「WedsSport ADVAN GR Supra」の宮田莉朋選手がトップで、これに「リアライズコーポレーションADVAN GT-R」の高星明誠選手が続くも、終了間際に2台の逆転を許す。それでも3番手と4番手につけることとなった。そして「Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT」の笹原右京選手が6番手。

Q2でもほぼ同じような状況となり、「WedsSport ADVAN GR Supra」の国本雄資選手が、「リアライズコーポレーションADVAN GT-R」のヤン・マーデンボロー選手を従え、トップにつけていたが、終了間際にまたも2台の逆転を許す。とはいえ、揃って2列目のスターティンググリッド並び、トップを十分狙える位置から決勝レースに臨むこととなった。そして、武藤英紀選手がQ2に挑んだ、「Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT」は8番手という結果になった。

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

決勝当日の早朝には雨が降り、関係者の肝を冷やしたものの、小雨ですぐにやんだため、午後からのスタートとなるSUPER GTには、少しも影響を及ぼさなかったのは何よりだった。その決勝の直前に行われた、20分間のウォームアップでは「Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT」がトップ。あらためて激しい追い上げに期待がかかることとなった。

予選同様、泣き出しそうな気配こそないものの、上空には雲がかかって気温は21度、路面温度は29度。まずまず狙いどおりのコンディションとなっていた。しかしながら、スタート直後の1コーナーでは思いがけぬ光景が。「Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT」の武藤選手が、ブレーキロックでコントロールを失った車両に追突されてスピン。最後尾に後退してしまう。

その一方で「リアライズコーポレーションADVAN GT-R」の高星選手がオープニングラップのうちに、一気にポジションを上げてトップに浮上! 直後にセーフティカー(SC)が入ったのは「Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT」に追突した車両のデブリが2コーナーに散乱したのと、やがてコース脇にストップしたためだ。逆に「WedsSport ADVAN GR Supra」はスタート直後にひとつポジションを落としていた。

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

「リアライズコーポレーションADVAN GT-R」は12周目にトップを奪われるも、2番手をキープし続けた25周目にピットイン。代わったマーデンボロー選手は2コーナーでのオーバーテイクで3番手に浮上するも、マシントラブルに見舞われてスロー走行の後、35周目にピットに戻ることに。修復されて戦列には復帰したものの、14位完走という結果に終わっている。

一方、「Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT」は最初の接触でバンパーを損傷したものの、足回りなどにはダメージは及ばず、武藤選手が着実に順位を上げていく。31周目まで笹原選手の交代を遅らせたこともあり、一時はトップも走行した。8番手でレースを折り返し、47周目には1台をパスする勢いも見せただけに、1周目の後退が惜しまれる。ラスト3周で、もう1台を抜き去って6番手に浮上。

その直後に「WedsSport ADVAN GR Supra」の宮田選手が、笹原選手に急接近。最後はコンマ3秒を切るまでに迫るも、そこは意地で「Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT」が逃げ切りに成功。まるでランデブーのような形で、それぞれ6位、7位でのゴールを果たすこととなった。

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

GT300では、SCラン中にタイヤをしっかり温めていた、「リアライズ日産自動車大学校GT-R」の藤波選手がリスタート後の勢いもよく、5周目に4番手に浮上。その後も勢いに衰えはなく、15周目にはついにトップにまで躍り出る。さらに後続との差を広げ続けるも、29周目の交代と合わせ、タイヤは4本とも交換。前後を走るライバルの多くが、タイヤ無交換や2本のみの交換としたことで、2番手には踏み留まったものの、トップとは約15秒の差となっていた。

しかし、明らかにペースが上回っていた「リアライズ日産自動車大学校GT-R」のオリベイラ選手は、みるみるうちにトップとの差を詰め、47周目には待望のトップに返り咲く。そのまま後続を少しも寄せつけることなく逃げていき、最後は23秒差の圧勝!! KONDO RACINGとオリベイラ選手にとっては、GT300初勝利となり、藤波選手にとっては昨年の第5戦・富士以来の2勝目に。ただし、その時は1周のみの走行だっただけに、ずっと走り続けての勝利は、これが初めてとなる。

ヨコハマタイヤユーザーでは、小暮卓史選手と元嶋佑弥選手の「JLOCランボルギーニGT3」が6位。予選12番手から追い上げて、58周目には小暮選手が、ポールポジション獲得車両をも抜き去っていた。谷口信輝選手と片岡龍也選手の「グッドスマイル初音ミクAMG」が8位、そして荒聖治選手と山口智英選手の「Studie BMW M6」が9位でゴールし、今季初入賞を果たしていた。

DRIVER VOICE

武藤英紀 選手 [Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT]

【今回の成績 : GT500クラス 6位】
8番手スタートで、1コーナーまでに7番手に上がっていたのですが、止まりきれずブレーキロックしたクルマが僕の右リヤにヒットしてきて。ちゃんと車幅も開けていたんですけれどね。それでスピンしちゃって、幸いだったのは後続車に接触されなかったのと、バンパーにはダメージを負ったけど致命的ではなかったこと。クルマとタイヤの合わせ込みがうまくできていたので、安定したペースで周回を重ねて何台も抜いていけただけに、最初の遅れが残念です。

国本雄資 選手 [WedsSport ADVAN GR Supra]

【今回の成績 : GT500クラス 7位】
3番手からのスタートだったので、前のクルマに付いていって、チャンスがあったら抜こうと思っていたのですが、レースでは自分がイメージしていたところとは、かけ離れていたレベルとスピードで。常に守りのレースになってしまいました。それで早めにピット入って違うタイヤを選択して、莉朋選手がなんとか順位を上げてきてくれて。ポイントは獲ることができましたが、自分的には今シーズン最悪のレース展開で、すごく残念でした。2週間後の鈴鹿までに今回の問題点をしっかり見極めて、予選からいいパフォーマンスを、レースではいいペースを作れるように。上位でゴールできるように頑張りたいと思います。

高星明誠 選手 [リアライズコーポレーションADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 14位】
今回は予選も良くて「レースを戦えるな!!」という感じで、スタート後のペースも良かったのでトップにも立つことができました。抜かれた後も着いていけたのですが、メカニカルトラブルに見舞われてしまって……。うまく噛み合わなかったというのが現状です。チャンスを活かせるように、チーム全体としてやっていかないといけないと思うので、ペースが良くなってきたのは良いこととして、結果を残すためにもチームと話していかなければいけないと感じました。

藤波清斗 選手 [リアライズ日産自動車大学校GT-R]

【今回の成績 : GT300クラス 優勝】
ここまで前半戦は上位には食い込めていましたが、なかなか優勝とか表彰台には届かなくて。すごく悔しい思いをしてきたので、後半戦にさしかかるということで、チームと入念にミーティングして仕切り直してきました。チームのメカニックが頑張ってくれて、ヨコハマタイヤさんが非常にいいタイヤを用意してきてくれたので、本当にいい環境で乗せてもらっているという感じです。クルマのフィーリングはすごく良くて、落ち着いてタイヤいたわりながら走っていて、最後の方はプッシュできるような状況になったので、残り10周はプッシュして,そのままJPさんにバトンタッチできたので、本当に良かったです。

J.P.デ・オリベイラ 選手 [リアライズ日産自動車大学校GT-R]

【今回の成績 : GT300クラス 優勝】
とても嬉しい。スタートから藤波選手は素晴らしい走りを見せて、前のクルマにどんどん追い付いていって、とてもいいペースで頑張ってくれました。ピットストップもうまくいきましたが、そこがいちばん心配していたところで、僕らには到底できませんが、タイヤ無交換で行けるクルマがありますから。実際まさにそうなって、僕がピットアウトした時には、15秒ぐらいの差があったんです。タイヤを労わりつつ、プッシュしてできる限りのことをやって。ヨコハマタイヤさんも今回、すごくいいタイヤを作ってくれて、今回の温度域に完璧にマッチしていました。とても感謝しています。GT300では初めての優勝で、GT500よりも時間がかかって、やっとという感じ。今シーズンはできるだけポイントを獲得していきたいと思っています。

小暮卓史 選手 [JLOCランボルギーニGT3]

【今回の成績 : GT300クラス 6位】
タイヤは今回すごくコンスタントで、良かったですよ。問題なく走らせてくれました。いいパフォーマンスを発揮してくれたので、どんどん後半は追いついていって、もう少し周回あったら、もっと面白かったと思うんですけどね。僕らは2本だけ、左側だけ換えました。次のレースはまた重くなってしまいますが、鈴鹿ですからね、また頑張りたいと思っています。

ENGINEER VOICE

白石貴之 [横浜ゴム MST開発部 技術開発1グループリーダー]

「リアライズ日産自動車大学校GT-R」には、予選でもかなりポテンシャルを発揮していただいていて、やっぱり富士のGT-Rの強さを証明してくれたので、こういう結果になりました。きっと最終戦の富士では、また期待できるのではないかと思っています。

「JLOCランボルギーニGT3」は富士での第1戦、第2戦は厳しい結果であり、特に耐久性の課題を踏まえて新しい構造にしたのが前回のもてぎからトライできました。前回も良い結果が得られたのですが、今回の富士でも同じように性能が発揮できるという事が確認できたので、我々にとっても嬉しくとらえています。

GT500では「リアライズコーポレーションADVAN GT-R」が、残念な結果となってしまいました。いろいろセッティングをかなり頑張っていただいて、予選からいいポジションに持っていけただけに残念ではありましたが、良かった部分を次回以降に活かしたいと思います。「Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT」に関しては富士の第1戦、第2戦で、特に耐久性のところで厳しい結果だったのですが、そこを踏まえて対策仕様を持ち込んだ結果が、ここで見られて良かったです。次の鈴鹿も負荷の高いコースなので、またうまく発揮できるんじゃないかと、すごく期待しています。「WedsSport ADVAN GR Supra」に関しては、後半のスティントで使ったコンパウンドが、実際のタイム的にも、ドライバーのコメント的にもかなり前向きな結果が得られているので、そういうところを次回の鈴鹿に活かせればいいな、と思っています。

鈴鹿は富士にまして高負荷のサーキットなので、それを踏まえたコンパウンドと構造が、両方必要になると思っていますので、両クラス共に第3戦の鈴鹿、今回の富士のデータを持ち込んで、うまく対応できる形のトライをしていきたいと思っています。