2020 SUPER GT Round 2 Report

【SUPER GT 第2戦 / 富士】

GT300クラスのシンティアム・アップル・ロータスが初優勝、
加藤選手は10年ぶり、柳田選手は復帰2戦目で表彰台の頂点へ!!

SUPER GT Round 2

開催日 2020年8月8日-9日
開催場所 富士スピードウェイ
(静岡県)
天候 曇り
路面 ドライ
決勝周回数 66周
(1周=4,563m)
参加台数 45台
(ヨコハマタイヤ装着車 23台)
SUPER GT 第2戦

大幅なリスケジュールが行われたSUPER GTは、まさしく連戦の様相を呈しており、開幕戦から3週間のインターバルで、引き続き富士スピードウェイを舞台に第2戦を迎えた。梅雨も明けたばかりとあって雨の心配だけはせずに済んだが、暑さが厳しく、本格的な夏の到来を感じさせる一戦ともなった。

通常どおり公式予選は土曜日に行われ、GT300のQ1は前回同様2組に分けられた。それぞれQ2進出が許されるのは上位8台。Q1で一際気を吐いたのが、「シンティアム・アップル・ロータス」の柳田真孝選手だった。B組トップで唯一1分36秒台をマーク。公式練習ではパートナーの加藤寛規選手も遜色ないタイムを出しており、Q2でも引き続きトップにつけることが期待された。なお、ヨコハマタイヤユーザーは両組合わせて、9台がQ1突破を果たしている。

続くQ2では加藤選手が柳田選手のタイムを上回ったものの、さらに上を行く車両も2台。そのため、「シンティアム・アップル・ロータス」は3番手となったが、2列目からのスタートは十分に勝機があることを期待させる。6番手に前回もらい事故で涙を飲んだ、青木孝行選手と柴田優作選手の「RUNUP RIVAUX GT-R」がつけ、7番手は前回3位の坂口夏月選手と平木湧也選手が駆る「マッハ車検GTNET MC86マッハ号」。そして7番手を藤波清斗選手とJP.デ・オリベイラ選手の「リアライズ日産自動車大学校GT-R」が獲得した。

GT500では前回に続いて、「Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT」の笹原右京選手がQ1突破を果たすかと思われたが、最後の最後に0.1秒差で逆転を許し、無念の9番手に。それでも武藤英紀選手とともに怒涛の追い上げを誓う。国本雄資選手と宮田莉朋選手の「WedsSport ADVAN GR Supra」は14番手から、そして高星明誠選手とヤン・マーデンボロー選手の「リアライズコーポレーションADVAN GT-R」は15番手から、決勝に臨むこととなった。

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決勝レースが行われた日曜日も、空に薄い雲が広がっていたが、終始ドライコンディションが保たれた状態でバトルが繰り広げられた。気温30度、路面温度40度は、予選とほぼ変わらず。

決勝がスタートを切って、オープニングラップのうちに2つポジションアップを果たしたのが「WedsSport ADVAN GR Supra」の宮田選手。予選の後に行ったセット変更がピタリと決まり、その後も安定したペースで周回を重ねていく。そしてGT500では最も早い、25周目にピットイン。交代した国本選手もハイペースで走行し、また早めのピットが功を奏して、36周目には8番手に浮上する。「トップ5も見えそう」と国本選手から無線で伝えられるも、なんとドライブシャフトにトラブルが……。ピットには戻れたものの、46周でのリタイアを強いられた。

「Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT」のスタートを担当したのは、今回も笹原選手。オープニングラップでひとつ順位を落としてしまうが、後続からプレッシャーをかけられぬ間隔を保って周回を重ねていく。28周目に武藤選手へとバトンタッチ。ピット作業にややロスがあり、14番手に順位を落としたものの、前走車のトラブルに乗じて、やがて11番手に浮上。入賞への期待がかかったものの、さらなるポジションアップはならず。が、5位でゴールの車両に「危険なドライブ行為」があり、ペナルティを課せられたことで繰り上がって10位を獲得した。

「リアライズコーポレーションADVAN GT-R」は「WedsSport ADVAN GR Supra」とは対照的に、高星選手からマーデンボロー選手への交代を35周目まで伸ばしたことで、一時は2番手まで上がったものの、コースに再び戻ると14番手に。リタイアした車両があったことでひとつ順位を上げ、また52周目にはマーデンボロー選手が自力でも1台をかわして12番手に浮上。少なからず意地を見せることとなった。

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GT300ではスタート直後から見せ場が。「シンティアム・アップル・ロータス」の加藤選手が、コカ・コーラコーナーで早くも2番手に浮上した。その後しばらく3台でのトップ争いを繰り広げるも、加藤選手はあえてトップに出ず、タイヤ温存策を採る。これが奏功し、トップより4周後の30周目までピットストップを伸ばし、代わった柳田選手がコースに戻るとポジションは入れ替わって、事実上のトップに浮上。全車がドライバー交代を済ませた33周目には、2番手に4秒もの差をつけていた。

後続にペースを合わせる余裕さえ見せ、そのまま「シンティアム・アップル・ロータス」は逃げ切りに成功。柳田選手はチーム加入2戦目にして優勝を飾り、加藤選手にとっては10年ぶりの勝利に。そしてロータスは、初入賞が初優勝となった。

5位でゴールは「リアライズ日産自動車大学校GT-R」。前回の4位に続く入賞を果たし、コツコツとポイントを稼ぐことに。これに続くポジションを一時は走行していた、谷口信輝選手と片岡龍也選手の「グッドスマイル初音ミクAMG」だったが、攻めのセットが裏目に出て予定外のピットストップを強いられることに。今回は完走を果たすに留まった。

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DRIVER VOICE

武藤英紀 選手 [Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT]

【今回の成績 : GT500クラス 10位】
ピットを出てすぐタイヤをピックアップさせてしまったのと、前半タイヤをいたわりすぎちゃって。後半のペースは良かったと聞いているので、もうちょっと使い方でやれることもあったかもしれません。前回、厳しい状態のレースになったので、それを繰り返さないための対策もヨコハマさんはしてくれましたし、チームも車体側でできることを対策してくれて挑んだレースだったので、前進はしたと思いますが、レースをすればするほど課題が山積みになる感じで、それを早く自分たちのものにしていきたいですね。ただ、チームの士気は上がっていますから、近いうちに自分たちの望む結果が残せると思っています。

高星明誠 選手 [リアライズコーポレーションADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 12位】
自分としては不本意なレースになっているのですが、何が悪いのか見極めなきゃいけない。予選でもレースでも同じヨコハマタイヤ勢にも劣っているので、タイヤとしても改善すべき部分はあると思うんですが、それ以前にチームとして改善しなければいけないポイントもあると思うので、そこを切り分けて、タイヤならタイヤ、セットならセットとひとつずつ切り分けて、問題を解決して、一歩一歩進んでいきたいと思います。

国本雄資 選手 [WedsSport ADVAN GR Supra]

【今回の成績 : GT500クラス 15位】
土曜日までは満足のいくようなレベルではなくて苦労していたのですが、エンジニアとチームがクルマの悪いところ、原因を見つけてくれてセットを大きく変えてレースに挑みました。それがけっこう良くて、開幕戦より収穫が多かったし、今後につながるレースになったと思います。まだまだウエイトが少ない状態で次の鈴鹿に行けます。鈴鹿は僕らの中ではいちばん負荷のかかるコースだと思うし、そういった部分ではタイヤのサポートが重要になるので、しっかりミーティングして、最善のタイヤを持ち込んで力強いレースができるように。チーム一丸となって優勝できるよう、精いっぱい走りたいです。

加藤寛規 選手 [シンティアム・アップル・ロータス]

【今回の成績 : GT300クラス 優勝】
本当に久しぶりの優勝で、嬉しいというのが素直な感想です。第1戦ではトラブルが出てしまって、それでも得られる情報が非常にいっぱいあったから少しずつアップデートして、さらにヨコハマタイヤさんもすごくいいタイヤを作ってきてくれて。ただ、実は決勝でタイヤ、どこまで保つか分からなかったので、付いていく作戦を採ったのですが、思ったよりこっちのペースが良くて、スティントも伸ばせて柳田選手に交代できたから、本当に「うまくいき過ぎたな」と思うぐらいうまくいったので、非常に良かったです。実はロータス、ウエイト積むのが初めてなので、またこれから未知の戦いになりますが、ライバルとのバトルではなくて、タイヤマネージメントに神経を集中していくような戦いが続いていくだろうな、と思っています。

柳田真孝 選手 [シンティアム・アップル・ロータス]

【今回の成績 : GT300クラス 優勝】
本当に僕ら、速さはあったと思うのですが、どのぐらいのペースで走れるか、正直不安だったし、トップ走っていても楽ではなかったですね。何が起こるか分からないので。その中で自分を落ち着かせていけば、勝てるんじゃないかと思って走っていました。そもそも僕は(SUPER GTを)2年走っていなくて3年ぶりで、こうして2戦目で優勝というのは非常に嬉しいです。やっとまたGTに乗れると思ったら、このコロナで乗れなくなって、非常にモチベーション保つのが難しかったのですが、いろんな人の努力、協力があって、ここにいられる自分が幸せだと思います。いつかまたお客さんの前のレースで、再び優勝したいと思います。

藤波清斗 選手 [リアライズ日産自動車大学校GT-R]

【今回の成績 : GT300クラス 5位】
オープニングラップで1台抜いて、その後にももう1台。ペースは悪くなかったですが、自分のスティントでウエイト積んだ、前回のウィナーに追い詰められてしまったのが悔しいですね。ただ、今回のレースで絶対オーバーテイクするというのを自分の中で決めていて、それがこなせたのはすごく良かった。後半のスティントを担当したJP選手もスピードがあって、さらに1台抜いてきてくれましたし、僕らのベストは尽くせたのではないでしょうか。

ENGINEER VOICE

白石貴之 [横浜ゴム MST開発部 技術開発1グループリーダー]

「シンティアム・アップル・ロータス」の初優勝に貢献できて、非常に嬉しく思います。マザーシャシーはダウンフォースの強いクルマなので、そういう部分に関してGT500でやっていることの方向性が活かせたのかもしれません。ただ、2〜4位は他社さんに取られてしまったので、そこはまだ反省かなと思っています。

「WedsSport ADVAN GR Supra」に関しては、決勝の序盤、中盤と頑張ってくれていたので、行けるかなと思ったのですが、トラブルによるリタイアは本当に残念です。「Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT」に関しては、前回トラブルがあったので、構造を耐久性重視のものを用意したんですが、その分パフォーマンスが低下していて……。今後は耐久性を維持しつつ、パフォーマンスを低下させないような、構造の取り組みをやらなければいけないと思っています。

「リアライズコーポレーションADVAN GT-R」は、全体的に厳しいところがあるので、この先につながる結果が得られるような作戦を、チームとも相談してやっていきたいと思います。

ただ全体的に、正直なところレース日程のこともあって、今回の結果に対して『弾』を込めるという時間がないので、基本的にもうすでに準備しているものを使って、という勝負になるので非常に厳しいところがあるのですが。その中で少しでも今後につながる指標を得られるように、作戦を練っていきたいと思います。